柊の前に現れたチームAのゴウトによって、教室は爆発し、リア監督が倒れた。
そして殿堂杯が始まろうとしていた。
殿堂杯。それは親善試合と言う名の地獄。
殿堂の証をもらった5人が三つのチームから選出された15人と戦い、才能のある能力者の芽を摘むというものだ。
特に今回は殿堂のさらに上のランク、伝説(レジェンド)を取るために二人の能力者が本気で戦うという。
一人はチームKに所属する、破壊を好む能力者、イーグル・ウィント。
そしてもう一人はチームAのリーダー、エースだ。
控え室にて、殿堂杯前の最後の作戦会議が行われてきた。
「今回は全員本気で戦え。特に雷帝は酒を持ち込むな」
「へいへい。」
雷帝は机の上に、普段から持っている酒の瓶を置いた。
「雷帝はクロサクと共に左から。四津野は自由に行動していい、妹と戦ってもかまわない。そしてキラと柊は右から、できるだけ敵との接触を避けろ」
オルガはピンマイクとヘッドホンをつけると、控え室から出ていく。指揮役であるオルガは指揮専用のモニタールームで指揮をしなければならない。
「俺らも行くか!」
キラは上機嫌だった。それもそのはず。いくら格上の相手といっても戦場でチームOとして戦えるのが久しぶりだったからだ。
俺と四津野はキラについていく。
「クロサク、一つ話がある」
だが、部屋に残ったクロサクと雷帝だけは違った。
「どうしたっスか?」
「もしも・・・
そこから先の話は聞こえなかったが、いつもの雷帝と違うというのはすぐにわかった。
真剣な顔で、クロサクに何かを言う雷帝・・・。なんだろう嫌な予感がする。
「ついに始まりましたッ!殿!堂!杯ッ!この学園の強者共が戦闘を繰り広げる最高で最強の祭典!司会はワタクシ、学園放送局長、加村がお送りいたします!今回の戦場はA、B、Fの三つのステージで戦ってもらいます!戦場のどこかに置かれたワープ装置を使用することで、他のステージに移動することが可能です!ワープ装置の場所は指揮のみが知っております!」
「そんなことはいい!早く始めろ!」
「こ、これは失礼しました!今回の解説はチームOの監督に来てもらうことになっておりましたが、急遽大ケガをしてしまい、代わりにチームZ監督、ドンさんに来てもらいました!」
ドンは司会のマイクを力で奪い取る。
「全員!今日は、悔いの無いように殺し会え!敵は殿堂!チームZよ。勝利したものには褒美を与えよう!」
その言葉を聞いて、俺はチームZが一斉に喜ぶかと思ったが、誰もマスクの奥から歓声の上がることなく、静まり返っていた。冷静なのか、人間味のない人間なのかわからないが、俺はそれが不気味で仕方なかった。
「それでは、全員配置につけ!殿堂共はすぐに来るぞ!ゲホッ、ゲホッ!」
「大丈夫ですか?・・・もう歳なんですから」
「ええぃ!そんなの関係ないわッ!全員、試合開始だ!」
作戦通り、俺とキラは戦場F、王宮内の右の壁近くの道を進んでいく。
歩いていると、一人の男を見つけた。あの武装は確か・・・
「おぉ、大和じゃないか!」
数日前にあった大和が王宮内を歩いていた。前よりも重装備な大和はキラを見つけると、ゆっくりと歩いてきた。
「キラ!今日は味方として頼むぞ」
「おう!任せとけ!」
キラはその右腕に力こぶを作る。タンクトップから弾けそうな大胸筋はいつもより厚くなっている気がした。
「それで、そっちはどういった作戦でいくんだ?」
「ん?そんなの簡単だ!片っ端からぶっ潰す!それだけだ」
「相変わらずの脳筋だな、キラは。ちょっとは考えて動かないのか?」
「毎回考えているさ。どうすれば敵の顔面や急所を捕らえることができるかってな」
「・・・確か、柊君だよね?今日はよろしく頼むよ」
「こちらこそよろしくお願いします!」
「良い返事だ」
そんな話をしていると準備時間の終了を告げるサイレンがなる。
このサイレンがなり終わると同時に、ワープ装置から殿堂入り六人が現れるという。
「よし、来いーッ!殿堂ッ!」
「とりあえず移動しよう」
俺たち三人は王宮の二階にあるワープ装置のところへ走っていった。
「始まったスね」
「だな・・・」
クロサクと雷帝は戦場Bの森林地帯を歩いていた。
クロサクは緊張のあまり、少しだが震えていた。
「緊張してるのか?」
「雷帝こそ、いつもの雷帝らしくないっスよ。」
「酒を飲んでないときはいつもこうだ。・・・冷静に物事を考えたくないから酒を飲むんだ。案外、こんな面をしてるが怖がりなんだ」
「意外ですね」
怖がりとかそんなことを言うが、それでも雷帝の強さは滲み出ている。経験と実績、そして能力が雷帝の強さを示していた。
「クロサク・・・言ったことは覚えてるな」
控え室。
「雷帝・・・それって」
「もう一度言う。俺の余命は残りわずかだ。そして、もし俺が死ぬことがあったら、お前にこの力を継承しようと考えた」
「そんな・・・でも、まだ28なんじゃ・・・」
「俺の種族は短命で、一般人の倍の歳を食っている。28ということはつまり」
「56・・・てことスか?」
「そうだ。そして俺は57で死ぬ。」
「もしもということがあったら、俺はお前に力を渡す。そしてこの世を去ることにした。お前は唯一、俺の雷を受けて何事もなく立ち上がった男だ」
「・・・」
「つまりそれなりの器を持っているということだ」
「アンタは・・・アンタはそんな弱い人間だったのかよ!俺の尊敬する雷帝はどこいったんだよ!」
グオンッ!
何かが二人の上を通りすぎる。
「外したか・・・」
クロサクはそれが飛んできた方を恐る恐る見た。
そこにはイーグルの姿があった。
「話しているところをすまない。・・・俺のために死んでくれ」
「クロサク!逃げろ!」
雷帝はクロサクを突き飛ばす。
イーグルの右手は雷帝の右腕に触れていた。
「ふぅんぬッ!」
雷帝は近づいてきたイーグルに頭突きを入れる。
右腕は触った部分から粉々になっていく。
「ぐああああッ!」
雷帝は体まで上らせまいと、右腕を切り落とした。
電気に戻った右腕は空中で消え、その頃には雷帝の右肩からは新しい腕が生成されていた。
「雷の能力者、雷帝・・・。最後がこの人とは、俺も運が良いな・・・。ゲームで最後の最後に出てくるボス、ラスボスみたいなものか」
「クロサク!一度、逃げるぞ!」
雷帝は左手でクロサクを抱きかかえると、その場から退散した。クロサクの視界には晴れた空と灰になっていく木の枝と葉が見えていた。
「オルガ、ワープ装置はどこだ!」
「ここから少し離れた場所にある。その道を進めば、着くが・・・!雷帝、上だ!」
雷帝は上を見る。イーグルが木から木へと飛び移って追いかけてきていた。
「ッ!・・・ここで戦わないとか!雷撃、鳥!」
電気で作られた鳥のような形の攻撃が、上にいるイーグル目掛けて飛んでいく。だが、イーグルはその攻撃をその手で消してしまう。
「覚悟をッ!えぇいッ!」
地面はイーグルの能力によって地盤沈下を起こす。それに二人は巻き込まれた。
「ッ!雷撃、蛇!」
雷帝の手のひらから鞭のような蛇が飛んでいき、共に地盤沈下に捲き込まれた木の枝を掴む。
左手に掴んだクロサクを上に向けて投げると、落ちていくイーグルに向かって雷を放つ。
イーグルは雷を手のひらで受け止めると灰にした。
「・・・ハッ!ら、雷帝!」
宙で気絶状態から目を覚ましたクロサクは、下に落ちていく雷帝とイーグルを見ることしかできない。
雷帝はクロサクが起きたことに気付くと、手のひらに雷を作り、大きな鳥へと変えた。
「上で待ってろ!こいつを倒したら、すぐにそっちにいく!」
雷帝の雷で作った大きな鳥はクロサクを乗せると、うえへと飛んでいく。
「雷帝ーーーッ!」
地面が崩れて、その下の階へ落とされた二人は瓦礫が降り注ぐなか、静かに見合っていた。
相手の力がわかっているからだ。二人とも、相手の強さを理解しているから動こうにも動けない。
そこで雷帝はあることを切り出した。
「ここにコインがある。これが落ちた瞬間が勝負だ」
「いいだろう。」
雷帝はポケットに入っていたパチンコのコインを上に向かって投げた。
コインが落下していくのがとても遅く感じる世界に雷帝は拳を構え、イーグルは手のひらを向ける。
そして今、コインは落ちた。
能力者解説
イーグル・ウィント
チーム? 五年生
能力:破壊
触れたものを破壊する能力。灰のように粉々にすることから角切りのようなブロック状にすることも可能。とりあえず破壊するという能力。
無口で、作戦を伝えるときも小さな声で一言呟く程度なので、指揮だけは成績が低い。