殿堂杯もいよいよ終わりに近づいてきた。
殿堂はエースと四津野 万理のみ。
挑戦者はチームAとチームOの雷帝以外とチームZのアリスのみとなった。
一方戦場Bでは・・・
「戦場B、こちらでは完全な森林地帯のなかで二人の女子が戦っております!一人は殿堂の一人、相手の動きを止める力を持つ能力者、四津野 万理!そしてもう一人はなんと、無能力者の一人、その身体能力を生かした戦い方をする戦士、四津野 千理だ!」
「二人は姉妹。それに使用武器は剣と刀。さすが姉妹といったところだな」
私は、今日こそ妹に勝たないといけない。
私はここに来て大きな差を作ってしまった。
「チームT、2年生。四津野 万理」
私の前を通り、壇上に上がって表彰される。
「四津野 万理。今日より殿堂の一人として、能力者の代表の一人として、訓練や授業、あらゆる場面で代表として貢献できるように」
「ありがとうございます。」
あの一件があってから私と妹の間に高く分厚い壁ができた。
「おい、四津野!お前の怪物じみた身体能力はどうした!このままじゃ今回も負けてしまうぞ!」
「すみませ・・・」
「お姉ちゃん、今回も私の勝ちみたいだね」
「しまった!」
「ここで試合終了!やはり殿堂の一人、姉を越えてさらに先へと進むか!?」
「これで、三回目・・・二度あることは三度あるとはこれを言うのですかね」
私は弱かった・・・
けど今は違う!
今日こそは万理に勝つ!
今日までキラやオルガ、柊やルナや玲華ちゃんと鍛えてきた。能力者との戦い方をさらに勉強し、実行し、そして今、ここに立っているんだ!
「お姉ちゃん、今日もごめんね」
万理の能力は相手の動きを止める能力。具体的には万理が能力を発動した5秒間に、目に見えた動いているものを止める能力。
「情け無用!」
万理が能力を発動したとわかったとき、その視界から消えればいいんだ。
千理は万理の目が光った一瞬を見逃さなかった。
千理は地面に胸を擦らせるくらいまで潜らせ、左手で万理の顎を上に押し上げた。
「目が上を見た今なら、攻撃できる!」
だが、万理も体が仰け反り、千理の剣を避けた。
「甘いな、お姉ちゃんは」
万理はすぐに千理を見る。
「そんなこと言ってられるのかな?」
そのとき、万理の視界に千理と共に、もう一人の姿が入ってきた。
それは万理自身だった。
「メデューサって知ってる?ここ最近、初めて知ったんだ。昔から本なんて頭いたくなるから読まなかったけど、たまには開いてみるもんだね」
「ま、まさか・・・」
「リアに頼んで作ってもらったの、この剣をね!」
今日、千理が持ってきた剣はいつもの物と違かった。それは鏡のような相手がくっきりと写るくらいの仕上がりになっていた。
「でも剣じゃダメだったなー。だって、私の体も止められちゃったから」
二人はその場で止まっていた。解除したくても、解除したら千理が来る。その場で止まっていることが一番平和で、一番安全だということを万理は気付いた。
「・・・負けたよ、お姉ちゃん」
「ここで四津野 万理選手リタイアだーッ!ついに、ついに姉妹対決、姉が!四津野 千理が勝ちましたーッ!」
「やっとか・・・もっと正々堂々勝ちたかったけどなー。とりあえずさ、解除して」
★
「残りはこの俺だけか・・・」
「今日こそは、俺の槍が火を噴くぜ!」
「アレックス・・・お前が敵か」
赤い槍を持ったアレックスと呼ばれる男が、狐の上に座るエースの前に立つ。
(エース、やれるか?)
「勿論」
アレックスは槍を上で回しながら飛びかかる。
「食らえ!伸縮自在の炎の槍を!」
「お前じゃ到底、俺には敵わない」
「な、え?ぐぇぁぁぁぁぁーーーッ!」
アレックスは次の瞬間、槍を折られて後ろのビルの二階に投げられた。
「さて、次は・・・お前か」
(あの槍、大丈夫かなー?)
「大丈夫じゃねぇの?ま、俺には関係ないけどな」
エースの前に現れたのは柊だった。
柊は横にタマを出し、すでに戦闘体勢に入っていた。
「お前が最後だよな?」
「・・・聞いたぞ、アキネから俺を倒せと言われてるらしいな」
「そうだよ。」
(アンタのところの副隊長、アンタ倒して隊長狙ってるみたいね)
「ほぅ・・・。この戦場に来てないのが残念だよ。目の前で君がボロボロになって死ぬところを見せられないのは」
エースは自分の狐を体にしまうことなく、そのまま走ってきた。
エースの狐は身に纏うタイプなのか、その拳に爪のようなものが見える。
「日の浅い小僧に、この俺を倒せるとでも?」
エースは俺の放った炎を裂いて、俺を攻撃する。
俺は間一髪でそれを避けると、エースの体に妖術で作った炎を叩きつけた。だが、エースには全く効いていない。
「お前は、狐術を使えないのか?」
「・・・何?コジュツって?」
(狐の術と書いて狐術。妖術はあくまでも妖怪専用のもの。狐術はさらに上、稲荷神などが使う力。私じゃ無理)
「憑き狐に聞かないとわからない・・・か。そんな狐のことも知らない小僧が俺に狐で挑むのか!」
エースは爪をしまい、手のひらから刀を作り上げる。
「これが狐術の一つだ。狐術は妖術や魔術、さらには錬金術までも超越する神の術!それもできぬ、狐はただの妖怪だ!」
俺はアレックスが持っていたと思われる槍の刃と柄の部分で、エースの剣に対抗するが、力では勝てるはずがなく、はじかれてしまう。
「狐術は全ての術を超越する!それを使えぬ狐も、憑かれた者も弱者だ!・・・狐術、雷剣(タケミカヅチ)!」
剣が振り下ろされると共に発生した雷は辺りを炎の海に変えた。
「狐術、鎌鼬!」
次はその剣が横に振られ、そこから斬撃波のようなものが飛んできた。斬撃波は俺の腕や足を掠める。
「狐術、業火!」
そして炎はさらに燃え広がり、俺の退路を閉ざした。
「さぁ、退路はない!目の前にいる俺と戦うのみだ!」
エースは剣を構え、炎のなか俺に向かって走ってきた。エースの羽織るマントは少しずつ燃え広がり始めたが、足の進みには全く関係ない話だ。
「いくぞッ!」
「あのとき以来だな、こうやって戦場で会うのは」
俺の前に現れた男は目から衝撃波を出し、炎のなか向かってくるエースを弾き返す。
「だが、今日は仲間だ」
「東条・・・シュウ・・・」
「やはり、殿堂杯に出させない方が良かったか。シュウよ、お前は裏切るのか」
「あぁ、裏切る。なぜなら、お前がこれまでにやってきた闇取引を全て知ったからな」
「ッ!アキネか。・・・だが、そんなことはもういい。監督よ、俺はすでに、新たな世界へと進むための切符を得てしまったからな」
「何!?」
俺の前で行われるチームA同士の会話。俺には訳がわからなかった。
「ときに小僧よ、この学校に存在すると言われる三神の話を知っているか?」
「三神?」
「知らぬか・・・。言わば、俺と小僧は狐の神によって力を得ている。シュウの目は破壊神、小僧のチームの榊原 玲華は創造神によって力を得ている。・・・わかるか?」
破壊神と創造神だけなら理解できる。だが、なぜそこにタマやエースの狐の類いが入ってくるのか、俺にはわからない。
前に破壊と創造の二神なら話を聞いた。そのとき狐は出てこなかった。
「俺は創造神を復活させる。それを目標にこの地位まで上り詰めた。そして、ようやく今日、手に入れた!殿堂の次、伝説の座をな!」
「伝、説?」
「それも知らぬか。まぁいい、ここで死ぬのだからな」
「来るぞ!」
「なぁ、アイツはいったい」
「今は、ヤツから逃げることを考えろ!ここにいたらいずれは死ぬ!」
俺たちはすぐに炎の海を走って、近くにあったワープゾーンに入る。
「チッ!逃がしたか。」
(だが、いずれかは我らのもとに来るだろう。ヤツの目的はお主の命だからな)
「ワープゾーンの同時通過は二人まで、次に入る場合は30秒はかかる」
俺たちがワープした先は戦場Bの森林地帯で、大木の根元の穴から出た。
「危なかった・・・ということか」
俺は額の汗を拭い、頭を抱えた。
「あれほどに怪物だったとは・・・」
「チームAの隊長って聞いて強いと思わなかったのか」
「予想以上ってこと。雷帝と同等かそれ以下かと」
「雷帝なんて酔っ払いに負けるヤツじゃない。ヤツは今、伝説になった」
「悪いけど・・・伝説って?」
「簡単にいうと、殿堂の上だ」
「理解できた。・・・そんなのに勝てと、お前の姉は言ったのか?」
「そうだ。なんで雷帝じゃなく、こんなヤツに」
「こんなヤツにとはなんだよ」
「こんなヤツはこんなヤツだ」
「「・・・」」
森のなかに少しの間静寂が続く。戦っている人数も減り、今となっては俺とシュウとエースだけだろう。
「聞こえるか、柊」
耳に付けた小型通信機からオルガの声が聞こえる。
「とりあえず生きてます」
「それは知っている。・・・いいか、驚かないでくれ。大事な話がある。」
「大事な話?」
「雷帝が死んだ。エースを倒す確率のあるものは残っていない。」
能力者解説
エース チームA 5年生
能力:狐術
チームAの隊長、エース。
狐術こそが最強と言う。
今回の殿堂杯で伝説になったが、殿堂杯で生きて帰ってくる。または挑戦者を全員倒さない限り、伝説とは呼ばれない。