千理vs万理は万理の動きを止める力を、千理が跳ね返したことが、千理も跳ね返しきれず、両者行動不能で引き分けとなる。
そして柊vsエース。経験値と高い能力値の前に柊はなす統べなく、シュウに助けられその場から退却することになった。
「ちょっと失礼、お嬢さん」
止められたアリスは後ろを振り返らず、そのままどこかへ行こうとする。
「俺たちと話しようぜ?なぁ、アリスさんよ。いつもの話だぜ、いつもの。」
「・・・何?私はもう研究室に戻りたいんだけど。指揮のカラスから撤退命令来たし」
アリスは歩みを止めない。そのまま、リタイアを申請する連絡用の機械へと向かっていた。
「・・・今はカメラのないところですから、話しましょうよ・・・」
アリサ・ハズソードさん?
鯰の呼んだその名前に、アリスは足を止める。
「な、何を言ってるの?私は有栖川」
「それはウソっぱちだろ?ホントはアリサ」
「それ以上、言わないで!・・・チームZは名前を隠してるの」
「おや、変ですね。それにしては有栖川と名乗りましたよね?僕はあのE-vil事件で有名なアリサさんの名前を、"間違えて" 呼んだだけですが」
「おう、そうだったな。お前の名前は有栖川だったな」
鯰と後藤の言葉にアリスは追い込まれる。
アリスはこれ以上ないくらいに、鼓動が大きくなって、心拍数が増えていく。
「・・・何が目的なの?」
「目的?そうですね・・・あなたが甦らそうとしている創造神でしょうか?」
「・・・どこまで知ってるの?」
「さぁ、あくまでも知っていることだけですよ。」
鯰の口から飛び出す攻撃はさっきまで冷静だったアリスを振り返らすまでになっていた。
だが、振り返る理由は・・・
「な、」
銃を撃つためだった。
「あなた達は知りすぎた・・・それだけ」
アリスはリタイアを申請しに走っていく。そして機械に向かって、
「チームZ、アリス。リタイアします」
と言った。
「おっと・・・チームZのアリス選手、リタイアです。やっぱり最初の殿堂二人組との相手で負傷していたみたいだ!」
「それじゃあ、二人ともごきげんよう」
ワープするアリスを見る鯰は不適な笑みを浮かべていた。銃弾を防ぐように作られた空気の膜は、銃弾を包み込んでいた。
「クソッ!逃げられたか・・・大丈夫か?鯰」
「あぁ、平気だ。・・・逃がしませんよ、青山への鍵」
★
「嘘だろ?・・・オルガさん、嘘だよな?」
「本当だ。解説は雷帝の姿は見つからないと言っていたが、雷帝が戦った相手の能力と、クロサクの話からして事実だろうな」
俺は途中からオルガの声が聞こえなくなる。オルガは雷帝が死んだと言っている。あの雷帝が。
「どうした、柊。何か」
「雷帝が・・・死んだ・・・。」
「・・・本当か、それは。」
「信じたくないが、本当だ・・・」
視界がしだいに見えなくなっていく。
「どうした、柊!おい、返事をしろ!」
「オルガさん!俺は、俺はいったい何をすればいいですか!?指示を・・・早く、指示をください!」
「落ち着け、柊。・・・これから先、戦場で誰かが死んだとき、お前は毎回そう言うのか?」
「・・・」
「俺は昔、雷帝から教わった。戦場で誰かが死んだら、それを踏み越えていけるような戦士になれ。ってな」
「踏み越えて・・・いく」
「そうだ。雷帝が死んだことを一番に悲しんでいるのは、最後まで近くにいたクロサクだと俺は思う。確かに昔の仲間や、俺たちも悲しいが、誰よりも悲しいのは、最後に雷帝が消える姿を見たクロサクなんだ」
作戦会議のとき、クロサクは雷帝と組んで行くことになっていた。ということは、クロサクは雷帝の死ぬ姿を見ている。イーグルの能力は破壊。触れたものを消し炭にする。・・・イーグルに殺されたということになる。
「それで今、クロサクは何をやっているんですか?」
「クロサクは今、戦場Aに向かっている。地下に突き落とされたが、戦場Aへのワープ装置は近いところにあるみたいだ」
「戦場Aは今行ってはいけません!」
「わかってる。でも、クロサクは雷帝のために行くんだ。いち早く、この殿堂杯を終わらせたいんだよ、雷帝のためにな」
「なんで、そんなにクロサクは強いんですか」
「・・・雷帝から戦い方を教わったからだ。」
前に見たときよりも被害の大きくなった町中を走る。
クロサクはエースを倒すことだけを考えていた。
「雷帝、良い場所に墓を作ってやるからな」
雷帝のものはこの戦場にほとんど残っていない。あるのは、クロサクのなかにある雷帝の能力値だけだ。それさえもクロサクと混ざりつつある。
「単身乗り込んでくるとは大したヤツだ」
炎のなかから、エースは現れた。着ている服に引火しているが、エースはそれをなんとも思っていない。
「ッ!ラスボスのお出座しか。」
クロサクは人差し指から雷の銃弾を放つ。
銃弾はエースの左肩に直撃した。
「やった!」
「その程度で俺がひるむとでも?」
エースは喜びで気を緩めたクロサクを蹴り飛ばす。
クロサクはサッカーボールのように弾みながら、地面を転がる。
「クソ・・・今のでわき腹が」
「お前のような小僧がなぜ、雷帝の能力を使える?そしてその能力値、雷帝を食べたとでも言うのか?」
「半分正解・・・ってところだ。教えられねぇけどな」
雷帝は近づいてきたエースを雷の檻で閉じ込める。
「これは、雷帝の!まさか、能力を受け継いだとでもいうのか!」
「ご名答、そして俺の勝ちだ!」
檻は雷をエースに向かって放つ。エースは苦しみながら、膝から崩れ落ちる。
「・・・やったか」
クロサクは倒れるエースの心臓部を触る。そして動いていないことを確認した。
「終わったか・・・」
クロサクはそれを知ると、エースの死体に背中を向けて、歩き始めた。
「終わったぜ、雷帝」
「終わった?・・・そうか」
クロサクはその声を聞き、後ろを見た。
死んだはずのエースが立っていた。
「おいおい、こいつゾンビとでもいうのか?」
「俺は、能力を受け継いだというのは見たことがない。なぜなら、能力の継承には十年近くかかるからだ。まさか、それを数十分、いや数分でやってみせたとでもいうのか?」
クロサクはエースが近寄ってくるのに恐怖を感じ、銃弾を撃ちまくる。
「く、来るな!」
「教えろ、お前の可能性を。そして俺の実験台となれ!」
エースは何も感じず、銃弾を受けながらクロサクに近づく。エースはクロサクの右手首を左手で掴むと、右手にエネルギーを集めた。
「狐術、」
「ちょっと待ったーーーッ!」
そこに現れたのは一人の女だった。
観客のほとんどがその姿を見たことがなく、戦場に現れたそれを見た誰もが、侵入者だと言い始める。
「まさか・・・お前は・・・」
「顔覚えててくれたんだ、うれしいね、エース」
八つの尻尾に頭から生えた先のとがった三角形の耳。着物姿に身を包んだそれは、いつも柊を近くで見守っていたタマだった。
「ヨーコ!」
「その通り!でも今は柊 海都の狐、タマでーす。みんなよろしくー!」
話は数分前に戻る。
タマはこんなことを言った。
(前に海都が倒れてるとき、私は外に出られたじゃん。あのときみたいに、私が戦うってどうかな?)
「できなくもないな」
「シュウ、聞こえるのか?」
「あぁ、そういう霊体は能力の波で聞こえることがあるんだ」
能力の波とは能力者から発せられる能力値が音波などの波になることをいう。特に音波になりやすく、高い能力値を持つ能力なら、他の能力者が考えていることを読み取ることも可能だという。
「特にその狐、俺達以上の能力値を持っている。だから聞こえてもおかしくないってことだ」
(ということは・・・)
「他にも聞かれてたってことか」
「新人戦とか、丸聞こえだった。で、その狐のいう作戦はやってみるのか?」
「もしやるなら、俺が倒れてないとできないんじゃないか?」
(いや、そうじゃなくて。前のクロードみたく纏うってことはできるんじゃないか?)
以前、クロードはルナを守るために、ルナの体に自分の身体を纏わせて守ったという。
「・・・できるのか?そんなこと」
(やってみなきゃわからない・・・よね?)
「キサマッ!まさかあの封印を解いて!・・・また閉じ込めてくれる、今度は二度とこの世界に戻れなくなるくらいにな・・・」
「やってみろよ。私から力を奪うだけ奪って逃げた負け犬が」
能力者解説
東条 シュウ チームA 1年生
能力:破壊の眼、スピードアップ(瞬間移動)、?
能力の三つ持つ、ごく稀に見る能力者。
東条 アキネの弟で冷静沈着な部分があり、たまに悪い顔を見せる。
最初は悪役、敵キャラでいこうと思ったが、どうしてもコイツを悪役にはできなかった。