柊とエースの決戦。
エースは死んでもなお、エースに憑いていた狐によって体を操られ戦う。
エースの狐術に押されるなか、柊はタマと意識を合わせることになる。
そして50%意識を合わせた柊はその力でエースを倒すことに成功した。
殿堂杯は終わった。
結果は殿堂、エースが消えたため、殿堂チームの敗北となった。
各チームの監督とサポーターは戦場に倒れた俺たちを担架で戦場から運ぶ。リア監督は出れないため、オルガとリリー、そして動けるキラや千理が、俺とクロサクを運ぶことになった。
そして・・・
終わってから一週間が経った。
俺たちはあらためて色々なものを失ったことに気づく。
何よりも辛かったものそれは・・・
★
『チームO、雷帝。ここに眠る』
英語でそう刻まれた墓石が青空と校舎全体が見える山の木々の無い草原に立てられた。
「ここに眠るか・・・何も残らなかったがこれでいいのか?」
墓石を作る係りの能力者が、墓石に刻まれた文字を読んで、そう言った。
「良いんです。これだけ・・・これだけで十分です」
リアは以前、雷帝から貰った小さな十字架のペンダントを握る。
「雷帝、安らかに眠ってくれ・・・俺がお前の代わりにこの能力で」
クロサクは拳を強く握りしめた。
「監督!」
墓の前で立つ俺たちの後ろを知らない男が走ってきた。
男は喪服で額から汗を流していた。
「兼城(かねしろ)・・・君?」
「知ってるんですか?」
「えぇ。雷帝が昔、LOST討伐部隊の隊長をやっていたときに副隊長を任されていた能力者。でも、どうしてここに?」
「隊長が!隊長が死んだと聞いて!」
兼城は墓石の前に立つと、我慢していた涙を溢した。
「もう・・・俺しか残ってないじゃないですか。あのときの約束、守ってくださいよ」
雷帝のお墓を作ってきた帰り道で、
「雷帝ってそんな大きな部隊の隊長だったんですか?」
俺は思いきってリア監督に聞いた。
「LOST討伐部隊・・・この学校に現れたLostを倒すためだけに作られた部隊だ。その初代隊長を雷帝はやっていた」
「初代?」
「今は三代目。まぁ、三代目も死んだけどね・・・」
「三代目はエースだ。だが、エースの裏の顔がわかった以上、LOST討伐部隊はどうなるか・・・話が変わったな、監督すまない」
「いいよ、全然。柊君も聞きたかったみたいだしね・・・。で、雷帝の話だよね。雷帝ら初代討伐部隊はね・・・
「雷帝さん!こっちにもヤツの卵が!」
「わかってる!・・・絶対に生き延びるぞ!」
「はい!」
雷帝達が討伐したLostは、そのときにはもう遅く、肥大化し大きくなっていた。
そして隊員の9割は死んで、残りの1割もすでに負傷しているものが多かった。
そんななか、あの人と雷帝は仲間を庇いながら戦っていた。
雷帝に関しては能力のお陰もあってほとんど無傷だったけど、兼城は左腕を失っていたんだ。
兼城は狙撃の天才で能力は銃弾に付属効果を付ける能力だった。ゲームで言うところの状態異常だ。火傷や毒、当たった一定の範囲を凍らせるということもできた。だが、どんなに目が良くても、左手が無ければ、それを押さえることも照準を合わせることもできない。だから隊員の死体を氷の銃弾で凍らせて、そこに銃を置いて撃っていたんだ。
「雷帝さん、これ以上は危険です!俺の銃弾も残りが・・・」
「諦めるな!もう少しで・・・もう少しで何とか・・・!」
雷帝が少し目を離した瞬間、そのLOSTは兼城と負傷者を襲ったんだ。
兼城は雷帝によって助かったが、他のみんなはその一瞬で死んでしまった。
結果、LOSTは学校から逃げ、雷帝と兼城以外の全員は死んでしまった。
雷帝は次の日、辞表を提出して討伐部隊をやめたんだ。
「じゃあ、兼城さんの左手って」
「義手だよ。あのとき、兼城さんは三年生だっけな?」
「はい、残りの二年間、なかなか辛かったですね。チームZの技術ですぐに慣れましたが」
兼城は笑ってみせるが、心ではまだどこか笑えない悲しみが満ち溢れていた。
「それで、クロサク君だっけ?」
「・・・何スか?」
「俺と戦ってくれないか?君の力が知りたい」
「いいッスけど」
「さぁ、雷帝さん、いや隊長。隊長が残した、最後の希望を俺に見せてください」
貸し出している戦場は一つもなく、クロサクと兼城はチームOの練習場で戦うことになった。少し狭いが、兼城さんは狙撃銃ではなく、拳銃で戦うみたいだ。
「さぁ、かかってこい。先輩が相手なんだから、手加減はいらないぞ」
「なら、遠慮なく」
「それじゃあ・・・始め!」
監督はすぐに練習場から走って出る。
練習場の大きなガラス窓から中の様子は良く見える。
兼城は拳銃を構えると、まずは一発と引き金を引く。
銃弾はクロサクの足下に穴を開け、そこから炎を吹き出した。
「これが、俺の能力。どうだ?」
「雷撃、散弾!」
クロサクは兼城の質問を無視して、右人差し指から雷の銃弾を放つ。それは何発にも分かれ、兼城に飛んでいく。
「これなんてどうかな?」
兼城はわざと、自分の足下に向けて銃を撃つ。
すると、兼城の目の前に氷の壁が現れた。
「現役より、ちょっと小さいかな。でも、十分」
散弾は氷の壁に当たり、兼城に届かない。
「俺の銃弾は攻防どちらにも向いている。まぁ、数に限界があるから、そこが弱点だけど・・・ね!」
兼城は何の捻りもなく、クロサクに向かって銃を撃つ。銃弾は炎を上げ飛んでいく。
「雷撃、跳弾!」
「跳弾・・・てことは、ここまで飛んでくるか」
クロサクは燃え上がる銃弾を避けると、雷の銃弾を地面と壁に向かって三発放った。
兼城の予想通り、銃弾は兼城のところまで飛んできた。
「なら、俺もそれ、使わせてもらうかな」
兼城は飛んできた雷の銃弾に雷を付与させた銃弾を一発放った。
銃弾は、雷の銃弾を三角形を描くように跳ね、雷の銃弾を撃ち落とす。
「クロサク君。やっぱり迷いがあるね。隊長が死んで、辛いだろう」
「?」
クロサクは攻撃の手を止める。
「俺も辛いよ。俺が帰ってきたら、一緒に酒を飲もうって約束してたんだ。でも、それが叶わなかった。正直、俺はもう死んでもいい。それくらいの考えだよ」
「お、俺はまだ雷帝が死んだと思っていない!確かに、この目で雷帝が消えていくのを見た。だけど、雷帝はずっと俺の前にいるんだ。ついてこいって、その足を止めるなって!」
クロサクは前みたいにエネルギーを手のひらに込めて、兼城にぶつかっていく。
「・・・俺の思う迷いってのはどうやら、俺自身の迷いだったみたいだ。すでに君は、隊長の左腕みたいだ」
兼城の持っていた拳銃はクロサクの手のひらに込められたエネルギー弾によって、大きく弾き飛ばされ、壁で止まった。
「俺は現実を見すぎていた。死んだ=この世から消えたと思っていたのかもしれないな。確実に、君の横には隊長がいるみたいだ」
「これを持っていってくれ」
クロサクはさっきまで兼城が使っていた拳銃を渡された。
「これは隊長が俺の初陣のときに渡した拳銃だ。護身用にでも持っていてくれればありがたい。」
「でも、これは兼城さんの武器なんじゃ」
「俺にはもう必要ないからな。隊長がいなくなった以上、ここに帰ってくる理由もない」
兼城は静かに振り返ると、学校の出口へと歩いていく。
そして、俺たちの声が聞こえなくなったところまで行くと、何かを言って校門から外へ出ていった。
★
「チームA隊長、東条 アキネ。前へ」
その頃、チームA専用体育館では、アキネの隊長就任記念が始まっていた。
壇上にはチームAの監督が立ち、その前へアキネは行く。
「四年、東条アキネ。今日から君がこのチームを引っ張っていくことになる。リーダーとして、このチームを勝利へと導くことを期待する」
「ありがとうございます」
「そして、隊長補佐、壇上へ」
カツンカツンと足音が体育館に響く。壇上に現れたのは黒髪ショートの前髪を真っ直ぐ水平に切った髪型の女だった。アキネと同じ、この学校の制服を着て、手には制服と同じ色の黒い手袋をしている。
「二年、ロカ セルナード。よろしく頼むよ」
「こちらこそ、あのアキネ様の補佐としてあなたの力になれること、光栄に思っています」
チームAの第一部隊の誰かか、アキネの弟であり殿堂杯で成果を残したシュウがアキネの補佐になることが有力だった中、全く名前が上がらず、あまり知られていないロカが壇上に現れたことに、チームAのメンバーとそれを見ていた他チームのスパイはざわつき始めた。
「強すぎる武器は最後までしまっておく。それが常識よ。アキネさん」
柱の影で誰かがそう言い残し、去っていった。
その言葉はそこにいた違うチームのスパイ以外は聞くこともなかった。