殿堂杯が終わった。
チームOのところに、雷帝と共にLost討伐部隊で戦っていた仲間、兼城が現れた。
一方、チームAは新たなチームの隊長と隊長補佐が決定した。
次の日・・・
「アキネさん!今日はどうしますか?」
「あなた、そんなキャラだったっけ?」
壇上で見せた冷静そうなキャラとは変わり、元気なキャラへと変貌したロカに、思わず引いてしまう。
「だって、あのアキネさんですよ!女子の間では、強い、頭良い、カッコいい・・・注目のマトですよ!」
「そうなの・・・。そうだ、今日の予定が一個あったわ」
「何ですか?」
「あなたをとある場所へ連れていってあげる」
「で、ここに来たと」
チームOの授業中、教室に入ってきたアキネとロカを見て、全員が動かしていた手を止めた。と、言ってもはなから動かしていないのもいるが・・・。
「時間・・・大丈夫じゃないみたいね」
「チームA隊長になったアキネと・・・」
「その補佐のロカ・・・、なかなか可愛いね」
入り口に近い机で授業を受ける四津野は立ち上がり、ロカの頭を撫でる。
「えへへ、それほどでも~」
ロカの態度に、おもわずアキネはため息をついた。
アキネからすれば、補佐といえば冷静沈着で、もっと空気の読めるクールな性格の補佐を予想していたため、少し幻滅しているというのはある。
「あ、オルガさん、お久しぶりです!」
「・・・セルナード」
「知ってるんですか?」
「あぁ。・・・何でかは聞くな」
「はいぃ・・・」
オルガは俺に睨みを利かせる。
俺は口を閉じた。
「それで話があるんだけど。柊君、約束してたよね?エースのこと」
「・・・あ、そういえば」
「これより、あなたたちチームOとの停戦契約を結ぶ!」
停戦契約とは、結ぶことによって、授業や大会で戦うことなく(例外あり)、どちらかの人員が減ったときに、人員をそのチームに渡すなど、様々なところで役立つ契約である。一つデメリットがあるとすれば、成績、戦績点数は渡せないことである。
「よっしゃぁぁぁぁぁッ!」
「敵が減ったぞーーーッ!」
「ありがとう、柊。これはすばらしいことだ」
先輩三人が喜び、ハイタッチや握手をする。
俺たち後輩にはまだ停戦契約の凄みがわからないため、ポカンと口を開けていた。
「では、チームO隊長のオルガさん、ここにサインを」
オルガは渡されたボールペンで、紙の真ん中に名前を書く。後で聞いたが、本来はチームの監督であるリアが書くことになっていたらしい。
「ありがとうございます。それでは」
「アキネさん、ちょっといいですか?」
「ん?どうしたの?」
ロカがアキネの服を親指と人差し指で掴んで引っ張る。
「あの柊って人と戦ってみたいです。確か、エース元隊長を倒したんですよね?」
「倒したって言っても・・・」
あれは俺だけでなく、シュウやクロサクの力があってだから、一人で倒したわけではないしな・・・
「そうだね。それなりの実力はあるよ」
「ちょっと、アキネさんまで」
「じゃあ、いいですか?」
「・・・」
(いいんじゃないの?別に、この子殺意とかは感じられないし)
「わかりました・・・」
戦場I。
中は白一色のドーム状の構造になっていて、何も障害物はなく、観客席と戦える分の広い空間があった。
「さーて、お手並み拝見といこうか」
アキネは観客席でロカを見る。
その言葉はたぶん、ロカに言っているのだろう。
「ルールはどちらかが再起不能になるか、降参したら勝負ありってことでいいかな」
四津野が俺とロカの真ん中に立つ。
「いいですよ。ま、私はあまり攻撃は苦手なんで」
ロカは制服のポケットから手袋を取り出して両手に身に付けると、体に三日月のような形をした何かを纏った。
三層ほどになるそれは肩、腰、膝部分を囲うように、空中に浮いて、ロカを守る。
(防御型の能力か・・・力をぶつけるより、数で戦った方がいいかもね)
タマがそう助言する。
「また、融合頼むぜ。タマ」
(了解)
タマの魂は俺の拳に炎を灯し、腰部分から五つの尻尾を生やした。
「狐・・・エース元隊長と同じですか」
「じゃあ、二人ともOK?・・・試合開始!」
四津野は手を下げるとすぐに観客席へ避難した。
「いくぞ、タマ!」
小手調べに俺はロカの三日月のヴェールを回し蹴りで攻撃する。
そのとき、一瞬何が起きたのかわからなかった。
空間でも歪んだかのようにロカは俺の攻撃を避けた。避けたというよりも、攻撃がロカを避けた、というべきか。
「な!?」
俺は間合いを空ける。
「私の能力、このヴェールは相手の攻撃を逃がす」
「なら、真っ正面からの攻撃はどうだ!」
俺は飛び蹴りで、ロカの芯を狙うように攻撃するが、ロカのヴェールが空間を歪ませて、俺の攻撃を避けた。
このとき、アキネはロカの足元を見ていた。柊の攻撃に対して、ロカはあの床にある一辺およそ50cmの四角のタイルから足が出ていない。
「この子の能力。私よりも防御力は高いかもね」
「!?」
「私の能力はあくまでも空間を裂いて、それで攻撃を無効化させる。だけど、ロカのあのヴェールはその場で攻撃を受け流している。一切動かず、大半の攻撃に防御できる。・・・でも、あの防御は」
「攻撃回数には勝てない・・・はずだ」
俺はタマの案通り、攻撃を止めず、ヴェールの攻略を続ける。
数撃ってもそのヴェールは壊れたり、防御しきれなかったりしない。
「数打ちゃ当たる、そんな考えはいずれ、体力の限界で崩れ始める。・・・エース元隊長と手合わせしたとき、この防御を最強の盾と誉めてくれた」
ロカの言う通り、だんだんと疲れで体が重たくなってきた。
ただでさえ、タマと融合しているのに、こんなにも動いていると、疲れるに決まっている。
「キツイな」
(作戦変更なんてどう?範囲攻撃とかやってみない?)
「そうだな」
俺は一度距離を空け、集中する。そして
「狐術!狐火"改"!」
手のひらから一面を火の海にする炎を放った。
「なん、だと・・・!?」
上から見たロカの周囲は全く燃えてなく、火の粉一つ入りそうになかった。まるで、バリアでも張られているような。
「だが、タイルから少し足が出た。」
アキネの言葉に、炎の消えた後のロカの足元を見た。アキネの見ていたと思われるタイルから片足が出ていた。
「あれだけやって片足だけなのか・・・」
「すごいですね。さすがエース元隊長を倒しただけあります」
ロカは拍手をする。でも、どこかバカにされてるような・・・。
「さて、私も本気を出しましょうか・・・今宵も月は赤く染まり始める。さぁ、さらなる防壁を築け」
ロカの言う通り、ロカの纏う三日月のヴェールは赤く染まり、肩、腰、膝から感覚を狭め、上半身だけを守るような形になる。
「これを見て、『脚部のガードが消えた』と考えるか、『動けるようになった』と考えるかは、あなたのこれまでの経験しだいですね」
(来るよ・・・彼女の本気が)
「え?」
ロカは少しずつこちらに向かって、一歩ずつ歩いてくる。それはエースのようなオーラを放つ。
(こんな可愛らしい小動物のような女の子が、こんなオーラを放つなんてね。融合状態の私にまで伝わってくるよ。気をつけて対処して)
「わかってるよ!」
俺は立ち向かっていく。最初は左からと拳を出すが、やはりあのヴェールによって避けられてしまう。だが、あのヴェールの感覚なら、
「足を狙うまでだ!」
(ダメ!)
俺の蹴りを待っていたかのように、飛んで避けたロカは体勢が少し崩れた俺に回し蹴りで対抗する。
「カウンター!」
重たいハンマーで横から殴られたような衝撃が俺を襲う。俺はその勢いで、地面を転がり壁に激突する。
「これが、カウンターモード。デュフェンスモードより、防御範囲は狭くなるけど、カウンターが追加される。カウンターは相手の攻撃を2、3倍にして返すことも可能。触れようが触れまいが、攻撃は必ず返される」
「ッ!・・・蹴りだったから威力はそこまでないが、もしもこれが狐術だったら」
(おそらく、死んでいたね)
「柊、再起不能!・・・というより、これ以上の戦闘訓練は危険と見なします」
「監督・・・時間か」
キラが時計を見たときにはもう遅く、授業時間を越えていた。
「タイムアップですか・・・柊さん、ありがとうございました!」
ロカは手袋を外し、壁近くで倒れる俺のところに歩み寄って礼をする。
そのときにはもう三日月はなく、さっきまで真剣だった顔は笑顔に戻っていた。
「あ、ありがとうございました・・・」
ロカは観客席にいるアキネのところに行くと、アキネに何かを言ったあと、一礼してどこかへと消えた。
(チームA・・・エースが消えても健在か)
俺は立ち上がると、観客席に待つチームO全員のところへ向かった。
★
ここは校門前、フードを被った男が学校に入ろうとしていた。
「君、何者かね?この学校の生徒なら、学生証を見せろ」
監視員が男を止める。
男はズボンのポケットからボロボロになった紙切れを見せた。
監視員は顔を真っ青にすると、
「失礼しました!どうぞ、お通りください!」
と言って、すぐに男から離れた。
男はズボンに紙切れをしまうと門を通過し、校内へと入っていった。
「久しぶりだな・・・この施設」