チームOのクラスに入ってきた勅使河原。
オルガは勅使河原の過去を語り、勅使河原はそれを否定する。
そして勅使河原の目的であった訓練の的になった柊は、勅使河原の波動に完膚なきまでに叩きのめされた。
「勅使河原、ちょっといいですか?」
「おぉ、監督。どうした?」
屋上の隅、学校付近を見ていた勅使河原は屋上でリアと会っていた。
「教室での柊との戦闘を見て思いました。あなたは柊をどう思っていましたか?」
「・・・あの狐。どこかで見たことあると思っていた。柊はあくまでもあの狐を動かすための器だ。どうでもいい」
「面白いことを教えましょう。あの狐、本当はエースの憑き狐なんですよ」
「そんなことはすぐにわかった。エースは俺が消える前に既に憑き狐を変えていた。あいつは強さこそ正義だったからな」
「・・・違います、狐のことを話に来たんじゃありません。柊 海都君のことですよ!」
「?だから俺は言ってるだろ。アイツはあくまでも、あの狐の器に過ぎないとな」
「じゃあどうしてあんなことを言ったんですか?お前ならもっと先にいける・・・なんて」
「・・・知らん。そう思っただけだ」
「見つけたぞ、勅使河原!」
屋上に何かが舞い降りてきた。
それは白い翼と、手に鋭い槍を持ち、長く白い髪をマフラーのように首に巻いている。
服装はその姿とは真逆で上から下まで黒一色だった。
「チッ!ここまで追ってきやがったか」
「勅使河原、これはいったい。キャッ!」
「リア!・・・クロノス!お前、どこまで俺をストーキングすれば気が済む」
クロノスと呼ばれた男はリアに向けて、槍の先からエネルギー弾を撃つ。
勅使河原はそれを見て、今にも堪忍袋の緒が切れそうだった。
「俺をストーカー呼ばわりか。・・・おとなしく、キサマの仲間を出せばいいものの」
「渡さねぇと何回言えばいい、百回か?千回か?」
「なら、そこの女に聞こう」
「堕天使、オルガ・アーガイルを渡せ!」
★
「何ですか・・・あれ?」
玲華が空を指差す。
曇り空から現れたそれはまるで船艦のような形をしていた。
「天空母艦・・・どうしてここに」
「知ってるのか?オルガ。」
「・・・天空母艦 ティアラ号。それは天空兵、言わば神に遣える天使を乗せた船艦だ」
「天使だぁ?オルガ、何を言ってんだ。天使なんてもんいるわけねぇだろうが」
「悪魔が何を言ってんだかねぇー。ぷーくすくす。」
「とりあえず、みんなは安全な場所に避難しろ!柊、四津野、玲華の三人は病室にいるルナとリリーを頼む」
「了解!」 「わかった!」 「うん!」
オルガは通信機を俺たちに渡す。
「俺たちはあの天空母艦ってヤツを壊せばいいんだな?」
キラはそう言い、指間接を鳴らした。
「無理だ。例え、この学校全ての技術を詰め込んでも、あの船艦に外から穴一つ開けることはできない。あの船艦の周りは何層ものバリアが張ってあり、あれに攻撃すればその攻撃が何十倍にもなってここいったいに降り注ぐ」
「おい、なんでそれを知ってんだよ」
「それは・・・」
俺はあの船艦の整備技士であり、仲間に指示を出していたからだ。
★
「見ろ、勅使河原!これが天空母艦 ティアラ号だ!これをお前にまた見せるときが来るとはなぁッ!」
「チッ!また壊されに来たか」
「勅使河原、それって?」
「一度、アイツにオルガのことで喧嘩を売られてな。そのとき、艦内から穴を開けてやったんだ。あのときのアイツの顔ときたら」
「キサマ!何をごちゃごちゃ言ってやがる!早く渡さねぇとこの学校をこの船艦でぶち壊すぞ!」
クロノスは槍の先を勅使河原に向ける。
「はぁ~。お前なぁ、あのときも言ったが、今俺がオルガ・アーガイルを持っていると思ってるのか?オルガは俺の荷物じゃねぇんだぜ」
「お前がチームの隊長で、そのチームにオルガがいることは知ってんだよ!だから、オルガを出すことくらい容易いことだろう?」
「どこからその情報を手に入れやがった」
「さぁね、風の噂ってやつさ」
「相変わらず、腹立たせるのがうまいな。お前は」
話していると、船艦の方から二人の天使がやってきた。
一人はクリーム色のセミロングくらいの髪に骸骨を肩に乗せた男。
もう一人は人と比べると少し長いくらいの舌を出した大きな耳のような髪の男だった。
「クロノスさんよぉ、ミッションてのはなんだい?なんでも聞くぜ?命に関わること以外ならなーッ!」
「準備完了ですよ。いつでもいけますよ。」
「ダビデ、ガロ。お前たちはこの学校を荒らせ!荒らすだけ荒らすんだ!」
「荒らし!良い響きだーッ!」
「わかりましたよ。ダビデ、いきますよ」
二人は翼を広げ、病院の方へ飛んでいく。
「試しにあそこからだ!」
「はしゃがないでくださいよ」
「リア、通信機を貸せ」
勅使河原は通信機をリアから渡されると、ダイアルを回し、オルガと連絡を取ろうとする。
「ん?オルガさんからかな?」
そのとき勅使河原からの通信に出たのは俺だった。
「オルガさん?どうしました?」
「俺だ、勅使河原だ」
低い声で名乗る勅使河原。それに動揺して俺は通信機を落としそうになる。
「て、勅使河原さん?どうして俺の通信機に・・・ってこれ、オルガさんのやつじゃないですか!」
「アイツッ!・・・今病院の方向に天使が二匹ほど飛んでいった。メンバーがそっちにいるんだろう?全力で守れ」
「天使ですか!?わかりました!」
俺は返事をして通信機の電源を切ったそのとき、
「獲物発見!やるぜ!ガロ!」
二人の天使が窓を突き破って病院内に入ってきた。
「ヒィャッハーーーッ!お前ら!オルガを知っているかー!」
「会って早々、自己紹介をしないとは、礼儀が悪いですよ。あ、失礼しましたよ、僕はガロで、こっちのうるさいのはダビデだよ」
「ダルク・ビンセント・デスティアーノ!テメェが略すんじゃねぇ、ガリガリ野郎」
「うるさいですよ、ダビデ」
「グヌヌヌ、あとで覚えてやがれ」
天使が内輪揉めをしているなか、四津野は立ち止まり、剣を抜く。
「二人とも下がって。ここは私がやる」
「先輩!俺も」
「後輩を守るのが先輩の仕事・・・でしょ?」
「あーあ、何をカッコつけてんだか」
四津野の言葉を聞くと、玲華はあくびをしながら四津野の前に出た。
「アタシ、ここ最近能力使えなくて鈍ってんの!戦わせなさいっての!」
「玲華」
「何?年齢が年齢だから戦っちゃダメと?・・・生きるか死ぬかのところでそんなことを言ってるつもり?」
「いや、私はお前が戦うことに大賛成だ」
「俺たちを忘れてるのか!」
ダビデは持ってきた槍を振り回しながら、こっちに向かって飛んでくる。
「うるせぇ!アンタはここで止まってな」
玲華は能力でダビデの槍を凍らせる。
「な、氷!?」
「そして、砕く!」
玲華の能力で凍った槍は四津野によって粉々になってしまう。
「に、人間ごときが!」
「アタシ、久しぶりに戦えて・・・手加減できないみたいだ」
玲華の足元から床が凍り始め、天使二人の足元にまで広がる。そして、氷は二人を捕らえた。
「な、なんとかするんだ、ガロ!テメェの天銀は残ってるだろ!」
「この寒さで、銀が凍ってるよ・・・。僕の体も凍る寸前だよ・・・」
ガロの手から何かが落ちる。それは銀色の液体だった。
「さて、四津野さんお願いします!」
四津野は既に氷で覆われ、頭だけが出た二人のところへ氷の床を歩いていく。
「お前ら、氷像になる準備はできてるか。」
「に、人間!許さねぇ、絶対許さねぇーーー!」
四津野の剣は二人を砕き、上半身と下半身が分かれてしまう。その断面からは血が出ず、赤くなっていた。
「ルナのところにいくよ!みんな!」
「了解!」 「うん!」
俺たち二人は返事をすると、スケートリンクのような凍った廊下を転ばないように慎重に進んでいった。
俺はそのとき、ガロの手からこぼれた液体を踏んでいたのを知らなかった。
★
「ハーッ、ハッハッハーッ!どうした勅使河原よ!お前の力はこんなものか?」
「ッ!・・・こいつ、前に会ったときよりもあの銀が強化されてやがる」
俺の壊波はクロノスの身に纏った銀色の何かによって防がれてしまう。あれはスライムのように滑らかで濁りのない銀色をしている。まるで伸縮自在の盾だ。
「この天銀は我ら天使の魔力技術による集大成!盾から武器、あらゆる物へと変化する最強の天銀だ!」
バカ笑いをするクロノス。波が通用しない以上、ヤツを倒すにはあの天銀を剥ぐしかない。
クロノスの攻撃に対応しているなか、俺の持っている通信機に緊急通知が入る。
「勅使河原さん!天使二人は倒しました!」
「了解、ただちにお前のチームの負傷者を連れて、安全な場所に逃げろ。上の船は俺が壊す」
「了解です!」
「壊すか・・・言ってくれるじゃねぇか!」
クロノスは少しずつこちらへと歩いてくる。
「待て」
屋上の扉が開かれ、今一番この場に来てはならない男が現れた。
「久しぶりだな・・・オルガ」