東条アキネはロカに襲われ、自身の能力で逃げたために行方不明の存在になってしまう。
逃げた先にあった寺には元チームAのリーダー、エースがいた。
柊 山岳・・・それが本当の名前なんですね。
私は山岳からもらった味噌汁を飲む。
とても深みのある味。まるでこの場所でずっと研究しながら至高の一品を作っていたような。
「おいしいです。」
「ありがとう。・・・それでは、準備をするか」
山岳は壁にかけてあったコートを羽織り、薪を割る斧を肩に担ぐ。
「準備って?」
「山を下る準備だ。ここは熊が出る。実際に俺は戦ったからな。その味噌汁のなかにある肉、それは熊肉だ。」
「え!?」
「・・・冗談だ。さすがに能力を失った俺じゃあ熊には勝てない」
「能力を・・・失った?」
「俺たち、柊はたぶん『能力を誰かから受け継ぐ能力』なんだ。柊は八尾狐から、俺は二匹の狐から能力を得た。能力者が決めた法律ではそれは有罪なんだろうが、そういう能力は仕方ないと思っている」
「チームOのクロサクやルナは?」
「あれは例外だ。二人は能力を使えるだけの素質はあった。俺たちには受け継ぐ以外、能力を得る方法はない」
「大会のとき言っていた『能力を受け継ぐのを見たことがない』というのは?」
「あれは他の人間がということだ。俺の予想では十年は余裕でかかると言うまでだ」
私は囲炉裏の火を消して靴を履く。
山岳はとっくに用意を終え、扉を開けて待っていた。
「遅いぞ。夜が明けるまでに、俺たちは学校に着かなければならない。あの学校に嵐が来る前に・・・」
「嵐?」
「嵐だ。特大のな」
私たちは外へ出ると、寺の前の草によって消えた道なき道を歩くことに決めた。
★
ロカと話したその夜。
「尻尾か・・・」
尻尾で思ったが、タマの尻尾は何度数えても八つしかない。
「タマー。」
「どうしたんだ?」
タマはここ最近、夜になると俺の体から出てはココアを一杯飲み、また俺の体に入る。
俺はその飲んでいる間を狙った。
「タマの尻尾、どうしたらあと一本生えるんだ?」
「あれ?話さなかったっけ?」
「たぶん、話してない・・・あれ?」
「もー、覚えててよ。そうだな・・・えい!」
タマは立ち上がると、急に俺を押し倒した。
はだけた着物からタマの胸元が見える。
「海都との子供を授かることができたらかな?」
「ま、また冗談だよな?なぁ?」
「・・・むー、悪かった、悪かったよ。冗談だって」
タマは帯をきつく絞め、イスに座ってまたココアを飲み始めた。
「でも、君ともう少し力を合わせて、強者を倒すことができたら生えるかもしれないなー」
「それは・・・冗談じゃないな?」
「うん!」
「強者か・・・。勅使河原さんとか?」
「確かに!あの人は強いね」
オルガとか、キラとか、四津野とかたくさん強い人はいる。だが、何よりも俺が思う強い人。それは・・・
「監督・・・かな」
「・・・え?」
「え?監督だよ、監督!あの人は強いだろ!火災のなか、火をデータ化したり、爆発を被害なく一人で防いだり、能力値で動かす船を一人で長期間動かしたり、たぶんあの人は強いよ!」
「うーん、強いかな・・・。確かにあのでーた?ってのは面白い能力だけどさ」
「もしも最後卒業するときに戦うならあの人だな」
「・・・」
タマは黙り込み、ココアの無くなったマグカップの底をじっと見ていた。
「そうだね。・・・それじゃ、私はもう寝るよ」
「そうか、おやすみ。」
「おやすみ・・・」
タマは何かを隠しているようだった。俺の外に出ている間はタマの心の声は何も聞こえない。
だから外へ出たとき、タマはまれに悲しい顔をする。
「今日は一日授業なしで特訓だ。この前の戦績もあってか、戦場の一つを貸し切ることができた」
リアは入ってくると、鍵を片手にそう言った。
キラは喜んで、リアから鍵を貰うと四津野と共に部屋から走って出ていった。
チームOは話を聞くと、あまり戦場の貸し切りができないようだ。最高でも二時間だという。
先輩方が喜ぶなか、勅使河原はずっと窓の外を見ていた。何かを考えているようだった。
「柊」
「ど、どうしました?」
俺はオルガに肩を叩かれ、振り返った。
「あの人が窓の外を見てるときは話しかけない方がいい。・・・訓練は一年組で準備体操してからやるように」
「はい!」
オルガは壁にかかったチームO専用の研究室の鍵を取ると教室から出た。
(オルガも何か考え事かね・・・研究室の鍵持っていったし)
「そうなのかな・・・」
戦場Z。
障害物のブロックが十何個か床から生えている戦場で、普段はチームZやLOST討伐部隊の隊員が使っている場所だという。
「全面真っ白って落ち着かないですね・・・」
「まぁ、ルナはずっと寝てたしな。みんな、準備体操するぞー」
俺たちはクロサク、ルナと集まり、準備体操を行う。
そして一通り準備体操をした後、全員いつもの戦闘体勢になる。ルナはクロードの剣を持ち、クロサクは雷を纏う。
「ちょっといいか?」
準備後、初めて口を開いたのはクロサクだった。
「どうした?クロサク」
「俺は雷帝の力を受け継いだ。けど、俺はまだ自分が弱く感じる。この力を最大限に引き出せていないような」
「クロサク・・・」
「だから、今日は俺対お前ら二人で特訓したい!雷帝は前に二人相手に手加減したという!だから!」
「・・・そんなこと言わなくてもいいよ。むしろ、雷帝が手加減をしていたなんて聞いたら、クロサクを殴りたくなってきた。ルナもいいだろ?」
「私も、あの事件を経て強くなったってことを証明しないとね」
「じゃあ・・・かかってこい!」
クロサクは手のひらに電気を貯め、俺たちが来るのを待つ。
「いくぞ、ルナ!」
「うん!」
俺たちがクロサクへと走り始めたそのとき、
『これより、チームZの戦闘訓練を開始します!目標はチームOメンバーの全滅!開始!』
という放送がサイレンと共に鳴り始めた。。
俺たちは攻撃の手を止め、放送のあったスピーカーの方を向く。
「なんだ・・・?」
(嫌な予感がする・・・。)
タマは何かを察知したのか、俺とすぐに融合した。
「どうした、タマ!」
(いつでも戦える準備をして。他にも伝えて)
「あ、あぁ!・・・みなさん、戦闘準備をしてください!こちらに何かが向かってきているようです!」
サイレンは止み、戦場の真ん中の穴が開く。
『アンドロイドS、チームOを殲滅せよ』
アンドロイドS、それはフードを目深に被り、服の間からわずかに肌色をちらつかせていた。
(人間?いや、機械だ!)
「これより、チームOメンバーを排除します」
アンドロイドは一斉に俺たちに襲いかかってきた。数はざっと数えて10体は越えている。・・・12体くらいか。
「ッ!ルナ、クロサク、大丈夫か!」
「私は大丈夫、でもクロサク君の方に3体向かっていった!」
俺とルナは1体を対処する。武器はサーベルのような細い剣を両手に持つものがいれば、短刀のような短い刀を片手に持つものもいる。同じ部分があるとすれば、どれも素早い動きで俺たちに攻撃するという部分だ。
「雷撃"飛び魚"!」
クロサクは電気で魚の形を作ってミサイルのように飛ばす。
それはアンドロイドの体に刺さって放電する。
「どうよッ!」
先に走ってきていた2体はそれで止めることができたが、それを踏み台にして現れたサーベル持ちの1体の攻撃を防ぎきれずに、クロサクは左肩を少し切られてしまう。
「うぐぁッ!・・・チッ!」
クロサクは舌打ちをするとすぐに電気で槍を作り上げ、アンドロイドの頭めがけて投げる。槍はアンドロイドの首を貫いた。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・。柊、大丈夫か」
俺とルナは2体、キラと四津野は3体倒していた。
クロサクが肩に切り傷を負ってしまった以外、ケガはなかった。
「・・・なんでチームZが俺たちを」
「前々から気になっていたけど、まさか攻めてくるなんてね。・・・宣戦布告と受け取ってOK?」
四津野はそう言い、戦場を出ようとする。
「あれ?」
戦場の扉が開かない・・・。まさか、
「閉じ込められたみたい・・・」