チームOに新たな仲間、東条 シュウが加わった。
そしてチームZの悪事を暴く作戦が始まった。
何事もなく、施設内を進むチームO+α。
先頭で四津野、キラ、シュウが道を開け、俺やルナ、クロサク、玲華が、指揮役のオルガ、治療役のリリーを守り、監督のデータ解析で遠距離から扉のロックを解除していた。
チームZの警備兵はほとんどアンドロイドで、人間は少なく、今のところ血は一滴も流れていなかった。
「案外、楽勝なんじゃないの?」
「油断するな。チームZの本領は地下だ。地下5階に及ぶ秘密施設。アリスや創造主ってやつはきっと地下5階にいる」
(それにしても変だ・・・。)
「どうした?」
タマは何か嫌な予感を感じていた。
(まるで人の気配がない。)
夜だし、みんな寝てるんじゃないのか?
(いや、さっきから妖気を辺りに張り巡らしているが、この階と上の階に誰も人の気配がないんだ)
「そんなレーダーみたいなことができるのか?」
「柊、どうした?・・・もしかして狐が何か察したか?」
「はい、言っていいよな?」
(もちろん)
「タマによると、地上の階全てに人が一人もいないみたいです」
「何?」
「やはりか。さっきから監視カメラを見ているのだが、おかしいことに地上階の監視カメラ全てに私たち以外の人の姿がないんだ」
監督はすでにほとんどの監視カメラをハッキングしていた。
「そして地上と地下で、まるで別の建物のように回線が分断されている。普通なら全ての回線が建物1つに固まっているはず。おかしい・・・」
「・・・まぁ、進んでみればわかるでしょ。・・・監督、エレベーターとか階段って?」
「それが・・・」
「この建物に地下へとつながるエレベーターも階段も見つからないんだ。」
私のデータ解析はすでにこの建物のカメラ全てをジャックし、全ての映像がこの画面で見れるようになっている。だけど以前に私が盗んだデータと全く違うんだ。建物の部屋の区分や壁、床。火事になった後建てられた建物のデータと一部以外全く別のものになっているんだ。
「・・・ということは、ここにチームZの地下研究所がないという可能性も」
「なきにしもあらず・・・かな。」
いきなり足踏み状態になった俺たちは一階の壊れたアンドロイドの残骸だらけのなか、立ち往生してしまう。
「よし、ここに立っていてもなんだ。手分けして探すのはどうだ?タマも監督も地上階に人はいないと言っているんだ。危険な場所はないだろう。」
キラの提案に監督は賛成し、
「わかった、それでは班を分けて行動しよう。私とリリーはここでみんなの通信機にデータを送る。残りは地下へと続く道を探して」
三つの班に分かれることにした。
「手分けして探すと言ったが・・・なんでお前と同じ班なんだよ」
「監督の采配だ。俺は知らん」
監督によって決められたチーム。キラは納得できず、原因であるオルガに怒りをぶつけていた。
「まぁまぁ、喧嘩はやめましょうよ。」
それを止めようとするクロサク。内心、クロサクも納得していなかった。
「他が心配だな。柊とルナ・・・とかな」
「大丈夫だろ、お前よりは戦力あるはずだぜ。」
「お前もその力には制限がある。使えなくなったらただのサボり魔になるな」
「んだと、お前の
「天銀は消耗品ではない。それに今日のためにこれだけ用意してきた」
オルガは来ていたコートを広げる。そこには十個の小瓶があった。
「瓶1つに100ml、この剣がおよそ100mlだ。」
「結局使い捨てじゃねぇかよ」
「使い捨てではない。・・・あれはなんだ?」
廊下の奥からこちらへと歩いてくる人を三人は見た。
黒いローブにペストマスク。手には大鎌を持ち、不気味さの塊のようだった。
「あれは・・・チームZのリーダーさんか?」
「カラス・・・。要するに敵だ。」
チームZのリーダー、カラスは一瞬でキラの前に現れ、その鎌でキラの腕を切る。
瞬間的に悪魔の契約の効果で守ったキラは勢いに負け、廊下の壁に叩きつけられる。
「ッ!」
オルガはそれを見て、剣をカラスの首目掛けて振るうが、カラスは鎌のグリップ部分で剣を防ぎ、鎌の切る方とは逆の先端でオルガの腹を押す。
「クロサク、今だ!」
キラとオルガに気を取られたカラスは、クロサクが電気を溜めていることに気づかなかった。
「食らえ!」
溜められた電気は銃弾のように一直線にカラスへと飛んでいく。カラスはすぐに避けようとするが、廊下の幅目一杯の大きさの電気の銃弾を浴びて、その場に倒れる。
「いくら強くても能力者でない以上、能力値のエネルギーの塊を体に食らえば耐えられずに死ぬ。」
だが、クロサクの予想は外れ、カラスは立ち上がった。
「嘘だろ?・・・溜めが足りなかったのか?」
「クロサクッ!油断するな!」
カラスの大鎌の刃はその一瞬で、クロサクの右腕を切り落とした。
クロサクの声は廊下に響き渡った。
「きゃぁッ!」
「ルナ!・・・ッ!こいつら強い!」
白いローブに身を包み、短剣を振るう小柄な女と、黒いローブに身を包み、ロカのような手袋を付けた2m近い身長の男が俺、ルナ、シュウの行く手を阻んだ。
シュウは男一人を相手にし、俺とルナは女を相手にしていた。
二人係りで攻めても、女の服に傷一つ付けることができない。両手に持った短剣が、ルナの剣を守り、俺の放つ炎を跳ね返す。
(あの短剣、もしかしたらロカの手袋に付いていたものと同じものが付いているのかもしれない。)
確かに短剣の刃に赤色に光る宝石のような装飾が施されているのが見てわかる。
「ッ!こいつのガードを抜けることができない!」
シュウは男を四方八方から攻撃するが、太い腕の周りを囲うリングや、胴体を包むように囲う三日月のヴェールがシュウの刃を通さない作りになっていた。
「オモチャ・・・」
「人を玩具呼ばわりか。」
俺たちは目配せをすると、奴らの攻撃を避けて逃げることにした。
とにかく、監督達のいるロビーに行ってはならない。それを第一に考え、俺は狐火を廊下にばら蒔きながら走っていた。
女はその身軽な体で炎を避け、男は炎などの障害物を壊しながらこちらへ向かってきていた。
途中で俺たちは階段を上り、二階へと行く。もちろん、俺たちの排除を目的とする奴らも階段で二階へとやって来る。
「シュウ、ここからどうするよ」
「広い場所で奴らを迎え撃つ。データが正しければこの先に広い食堂があるはずだ」
「はぁ、はぁ、ま、待って、キツイ・・・」
シュウは能力でスピードを上げ、俺はタマの力で体力、筋力を強化させているが、ルナは俺たちの走りについていくのは精一杯だった。
クロードから教えてもらった血の魔術とかなんかで、ちょっとはマシになったらしいが。
「あともう少しだ。・・・見えたぞ!入れ!」
シュウは入り口のドアを破壊すると、食堂のテーブルを壁のようにして隠れる。
「ルナ、大丈夫か?」
「だ、大丈夫・・・でも、もう走れない・・・かな」
ルナは息が上がり、すでに足が震えていた。
「つまり、ここで奴等を倒せということか・・・。柊、今度はお前があのデカブツの相手をしろ。俺がすぐにあの女を倒す」
「わかった。」
シュウはやつらが食堂に足を踏み入れるのを息を殺して待つ。俺も手に能力値を溜める。
「出てこい!テメェらはもう籠の中の鳥なんだよ!」
「・・・(もう少し、もう少し入ってこい)」
シュウは俺とルナに聞こえるくらいの小さな声で願う。そして、
「オモチャ、ドコ?」
「バカ!押すんじゃないよ!」
チャンスが生まれた。
俺は大男を、シュウは女を狙う。
女は大男に押され体勢を崩したことで、出遅れてしまう。
シュウの刀は女の片足を捕らえた。
「ッ!」
女はその場から転がるように倒れ、立ち上がれなくなる。大男は状況に付いていけず、パニックになってしまう。
「狐術、螺旋炎」
手に持った狐火の火炎弾を相手に連発する新たな狐術を生み出し、男に炎を浴びせるが、既にヴェールを張られ防御される。
「これを食らいな!」
女は持っていた短剣を俺に向けて投げる。
短剣はシュウによって弾かれたが、二本目を防御できずに、軌道に出たシュウの腹に刺さる。
「ガッ!」
「どうよ!エリートさんよぉ!」
「・・・だが、武器は失った」
無能力者から武器を取れば、疲れはてた能力者でも簡単に倒せる。
平手打ちのように振られたルナの剣に、女を気絶させる程度の力は十分にあった。
「あとはそのデカブツだ・・・な?」
男はまるで電池を失ったオモチャのように、手を振り上げたまま止まっていた。
「・・・なるほどな。ようするにこいつはこの女の操り人形だったということだ。この男はどうでもいい、女は連れていくぞ」
「別に連れていかなくても・・・」
「死んでいないなら、それを捕虜、人質として使うべきだ。使い道はいくらでもある。それが嫌であれば、自分で死を選ぶだろうな。」