釘宮円で葛藤   作:NANA@

10 / 26
今回は魔法世界編一話です。



そろそろエンと柿崎の戦闘能力も載せていかないと……


キャラ紹介とかって入れたほうがいいんですかねえ……


第九話「柿崎美砂で交渉」

 

 

 

 

 アルシア山、パボニス山、アスクレウス山の三つを横に眺めながら、円たち三人が歩くこと三日。

 

 彼らは目的地であるテンペテルラに到達していた。

 

 その服装は薄汚れていて、ところどころが茶色い。

 

 もともと肌の露出が多い甚平がところどころ破けてしまって、社会的にも肉体的にも、何より周りからの目線的な何かが大変なことになってしまっているエンは、

 

 「どこかで休もうぜ……」

 

 魔法世界初めての人里に来たこととか、獣人を初めて見たことに関する感動を持てないほどに疲弊しきっていた。

 

 「本当に大変そうですね……」

 

 「あはは……、たくさん歩いたからね……、途中で山賊にもあったし……」

 

 そう呟くのは柿崎美砂と椎名桜子だ。

 

 彼らの移動ははじめ予想されていた三日を過ぎ、五日に及んだ。

 

 原因は先ほど言った山賊と、魔法世界の魔法生物だ。

 

 何度か襲われた三人は早さよりも安全をとり、こまめに休憩し、魔力を蓄え、いつ敵が来ても迎え打てるように最新の注意を払って進んだ。

 

 そのせいで、休憩に時間を取られ、先頭に時間を取られ……

 

 「休憩したいのは私も同じですが、まずは食い扶持を稼ぎませんと」

 

 そう言った柿崎は人と人とが歩く通りの中をなれない様子で進んでいく。

 

 「畜生、やっと休めると思ったのに……」

 

 エンと桜子は露骨に嫌そうな顔をしながら、それに続いた。

 

 お金がないんじゃ仕方がない……

 

 「大丈夫だよ……。私達は可愛い女の子だから、雇ってくれるところはたくさんあるよ♪」

 

 「それはどんな仕事だよ……」

 

 「ええっと、み「言わせねえよ」」

 

 エンはパンツが見えるか見えないかくらいの丈のはでなワンピースを身につけた自分を想像して、若干の嫌悪感を感じながら、

 

 「しかし、人が多い町だな。来るまでの交通はあまりよくなかったはずだぞ」

 

 「鉄鋼業で栄えた町だからね。陸路が悪くても航路がよければそれで栄えるんだよ」

 

 「あれが港です」

 

 柿崎が指差した方向を見てみると、たしかに青い海と、いくつかの船が見えた。

 

 それらは何かを積荷として乗せられている。

 

 あれが輸出される鉱石なのだろう。

 

 「そんなもんなのか……さっきから焦げ臭いのはそれが原因か?」

 

 「加工には膨大な熱量が必要ですからね。それなりの燃えカスは残ります」

 

 そう答えるのは柿崎である。

 

 エンはぽっちゃり系の中年男性のあいだを息苦しそうに通り抜けると、

 

 「ぷはあ……てか、俺たちどこに向かってるの!! さっき市場みたいなところは通り過ぎたと思うんだけど!! 俺らが働けるって言ったらああいう娯楽や店員じゃね? 知らねえけど……」

 

 「別に、知らない人に愛想振りまくだけが仕事じゃないんですよ。こう言う警察や軍隊がきちんと機能していない国にはあるんです。私たちみたいな流れ人が簡単に食い扶持を稼げる場所が」

 

 「それなんてハロワ?」

 

 そんな感想を抱いてしまうのも無理はないだろう。

 

 彼の中の常識は、未だ前世のものが強いのだ。

 

 「ハロワが何かはわからないけど……私たちみたいに無駄に戦力だけある奴らには、お誂え向けなんだよ」

 

 

 

 

 

 

 人ごみに揉まれて歩くこと数分、着いたのは大きな酒場だった。

 

 かなり無骨な作りで、受ける印象は大きなテントといったところ。

 

 龍の骨だろうか、(けやき)の巨木ほどの高さのそれを中心に、木材や骨や岩、そしてロープなどでで組み立てられている。

 

 周りには魔法道具を取り扱う商店や、何かの道具を売買する骨董屋。

 

 そして、旅をしながらものを扱う旅商人。

 

 傭兵の詰所に鍛冶屋など、おおかた戦闘に関係する店が軒を連ねている。

 

 中には注文を受けるのであろうカウンターが有り、大きめの石や木製のテーブルが無造作に並べられていた。

 

 「ここは……」

 

 「見ての通り酒場です」

 

 「いや、それはわかるが……」

 

 心の中では『やべえ……リアルモンハンだ……』と呟きながらエンは言った。

 

 そんな円の背中を椎名がポンポンと叩く。

 

 「美砂に任せようよ。私には何をするつもりなのかわからないけど、きっと目的があるんだから……」

 

 「わかった……」

 

 「それでは、仕事を見つけてきます」

 

 その言葉に柿崎は満足そうに頷くと、ひとり、酒場の奥へと向かっていく。

 

 

 

 

 

 

 柿崎美砂は魔法剣士である。

 

 そして彼女はその戦士たちの特徴を全て知り得ている。

 

 武器や防具、魔法具が何で、どれだけ高価なものであるか。

 

 人間の纏う空気。

 

 そして、その仕草。

 

 それらすべてを総合して、柿崎美砂はこの場で仕事を探す。

 

 狙うのは、武器の手入れがなされていて集中している者。

 

 あるいは、それとは真逆の、武器と防具が傷つき、真新しい生傷を持つ者だ。

 

 そんな集団を装備とその人本人の強さを予想し、どれほどの獲物に挑んだか、挑むかを予想する。

 

 そうしてこれから戦闘に向かうものには、『ついて行っていいですか?』といい、負けて帰ってきたものには『代わりに倒してきましょうか?』と言い、賞金をいただく。

 

 記録に名前を残したくない時、柿崎が多用した手だ。

 

 少し賞金は減るが、うまくいけば普段以上の報酬を得られる上、準備した道具も向こうのものを使うことができる。

 

 昔の感覚を取り戻しながら柿崎は鴨を探していた。

 

 「いたいた……」

 

 そんな中、とある一派が柿崎の目に留まる。

 

 ガラの悪そうな集団で、状態はボロボロ。

 

 澱んだ空気でちびちびと酒をすすっていた。

 

 その反面、装備などは統率のとれた集団。

 

 その武器も戦艦に積むような大砲があったりと、いかんせん大げさだ。

 

 そこまでして失敗したんだ。よほどの大物に違いない。

 

 そう当たりをつけると柿崎は近くの適当な椅子に腰掛け、その男たちの話に耳を傾ける。

 

 ほかにも商売の相手に集団を選んだのには、いくつか美点があるが……

 

 黒い服にスキンヘッドの男が口を開いた。

 

 「畜生……これで『黒い猟犬』の信用はがた落ちだ……これから仕事が来るかどうか……」

 

 「兄貴、気を落とさねえでくだせえ……まだ三日ありやす。そのあいだに、準備すればきっと……」

 

 「うまくいくってか? 無理だな、10日も準備して挑んで無理だったんだ……。依頼人には失敗したって伝えるしかねえ……」

 

 「そりゃあ、黒龍がいてじゃあそうかもしれないっすけど……でも、角なら市場を探せばあるかも……」

 

 いい鴨を見つけたと、柿崎は内心ほくそ笑む。

 

 柿崎はいつもの無表情から、できるだけ朗らかな顔を作り出し、彼らの席に向かう。

 

 そして、その中でも下っ端らしき人間の横に座り、こう話しかけた。

 

 「相席いいですか?」

 

 「なんだい、嬢ちゃん。こんなおやじ連中と飲んでも、何もいいことねえぞ……」

 

 「ふふん、それは肯定と受け取ります」

 

 柿崎は、椎名を連れてきたほうが良かったなあとか思いながらその人のとなりの席に着く。

 

 「物好きな嬢ちゃんだ……」

 

 「あっ、お酒次ぎますよ」

 

 「ん、ああ。悪いな」

 

 「お安い御用ですって……」

 

 柿崎は慣れた手つきで酒瓶を受け取ると、その人のグラスにそれを注いでいく。

 

 その腕をみて、杖を見て、かけてあるナイフを見て、ある結論をつけた。

 

 この人、下っ端じゃない。

 

 「お嬢ちゃんはどうした? この街では見ない格好だが?」

 

 「あっ、わかります? ここに来たのは最近なんですよー。実は連れとはぐれちゃって……仕事を任されてるのに……」

 

 彼から集団のトップに近づく算段から、彼自身に話を通す三段に話を切り替えた柿崎は、少し引きつった笑顔を作り出し、そう言った。

 

 「連れってどんなやつらだ?」

 

 「私と同い年の女の子です、ええっと、一人が猫族で……もうひとりは一緒にいると思うんですけど……こまったな。酒場にはいると思うんですけど」

 

 「そうか……」

 

 そう聞くと、男は立ち上がった。

 

 「おい、てめえら!! 少し探しもんだ!! この嬢ちゃんと同い年くらいの猫族の女の子を探して連れて来い!!」

 

 「えっと……なんでまた」

 

 「あん」

 

 立ち上がったナイフの男が睨みをきかせる。

 

 「行ってきます」

 

 そこに座っていた男たちがいなくなった。

 

 これで実力の証明は彼女たちがしてくれるだろうと、内心ガッツポーズをしながら、美砂は

 

 「あっ、すみません……」

 

 「いや……それくらいしか今はできねえからな……」

 

 男は酒をあおった。

 

 「それで……あんたみたいな若い嬢ちゃん三人に任された仕事ってなんなんだ?」

 

 柿崎はその質問に間髪いれずに、

 

 「黒龍の討伐です」

 

 にこやかにそう言った。

 

 男は一瞬だけ驚いた素振りをみせ、

 

 「嬢ちゃんが……か?」

 

 「いやあ……私は手伝いなんですけどね……。その、さっき言った女の子の一人の……」

 

 「それで黒龍に勝てるのか?」

 

 「別に勝たなくてもいいんですよお……角を切り落とせば、追い払えるんで」

 

 ニコニコと笑いながら柿崎は答える。

 

 そして、誰に言われるでもなくグラスに酒を注ぐ。

 

 「……そうか……」

 

 その男があけた間に、柿崎はほくそ笑んだ。

 

 そこに、

 

 「隊長!! 大変です!!」

 

 男が駆け込んできた。

 

 「どうした!!」

 

 「猫族の少女を発見しましたが……その付き人の少女が……あまりに強く……」

 

 「あちゃー」

 

 柿崎は白々しい笑顔でそう言った。

 

 

 

 

 

 

 ナイフの男と、柿崎美砂が現場に向かった時にはそこはもう、ただの独壇場だった。

 

 数々の男たちの中に立っていたのはひとりの少女。

 

 左右の手には彼女の武器である十手が握られ、周りには倒れた男たち。

 

 黒い髪は戦闘のあととは思えないほど艶やかにまとまり、その瞳は鋭い光で獲物を射抜く。

 

 エンの姿がそこにはあった。

 

 「エンちん……何もそんなに怒らなくても……」

 

 「こいつらが俺になんて言ったかわかってて言ってるなら、今夜の飯を抜くぞ……」

 

 「ごめんなさい……」

 

 椎名の説得も失敗に終わり、倒れた男にエンが近づいたその時、

 

 「エン様、おやめください」

 

 柿崎の声がそれをやめさせた。

 

 「んあ……」

 

 エンは眉間に最大限のシワを寄せながら柿崎を射抜く。

 

 柿崎は全く動じず、

 

 「参考までに、なんと言われたのですか?」

 

 「『チッ……なんだよ……ガキじゃねえかよ……。お粗末なもんつけてんなぁ』」

 

 「それは……全面的にこちらが悪いな……申し訳ない……てか、情けない……。なんとおわびを言ったらいいか……」

 

 柿崎のあとについてきた男が頭を抱えながらそう言った。

 

 そんなこと、エンは気にした素振りもせずに、

 

 「それで美砂。仕事はどうなったんだよ……」

 

 「今から行きます。黒龍狩りです。行きましょう。それで美味しいご飯を食べましょう。今夜はご馳走です」

 

 美砂は笑顔で二人と肩を組み、出口へ向かおうとする。

 

 「おっおう……それならいいんだが……」

 

 「ご馳走なんだよ!! 黒龍のしっぽは脂がのってて美味しいんだよ!!」

 

 「待ってくれ……」

 

 そこに口を挟む人が一人、先ほどの男である。

 

 「どうしました?」

 

 そこに柿崎が必死で笑をこらえながら聞いた。

 

 「もし君たちが成功したらその角を売ってくれないか? 10万ドラクマだそう……」

 

 「もう一声」

 

 柿崎が告げる。

 

 「15万ドラクマでどうだ……」

 

 「契約成立です。明日の朝にはとってくるんでここで待っていてください」

 

 柿崎はその言葉に凄絶な笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 黒龍というとわかりづらいが、こいつらは種類の多い龍種の中でも比較的上位に君臨している種族だ。

 

 “龍樹(ナーガシャ)”や“氷原と不動の王(ニーズヘッグ)”、“創造神の申し子(カンヘル)”をはじめとした、最強種と呼ばれる者たちを除けばかなり上位に食い込む強さを持っている。

 

 口から吐く炎や毒。

 

 人とは比べ物にならない強靭な肉体。

 

 その体を動かし続ける体力。

 

 切ることよりも砕き、潰すことに特化した屈強な爪や牙。

 

 下手な魔法なら軽々と弾き返す堅牢な魔法障壁。

 

 魔法艦隊が一団体出てきてやっと相手をするような化物である。

 

 それにもかかわらず、エンはめちゃくちゃ軽装備できていた。

 

 「流石にもう少し着込んだり準備したりしたほうが良かったんじゃないのか?」

 

 エンの疑問は的を得ていて、それゆえ、柿崎は何も答えない。

 

 歴戦の勇士である柿崎だって、一人で黒龍に挑むとなればある程度の準備はする。

 

 今回それがないのは、エン、椎名桜子という戦力を引き連れているだけで、過剰戦力だからだ。

 

 そして、この二人は自分がどれほどの位置にいるのか気づいていない節がある。

 

 一通り仕事を終えたらグラゴニスあたりにわたり、剣闘士でもやらせてみるかと結論を付けたところで、彼女はいいことを思いついた

 

 「そうだ。ジャンケンをして負けた人一人が黒龍の相手をしましょう」

 

 「へっ!!」

 

 「本気で言ってるのか!?」

 

 椎名とエンがそれぞれ言った。

 

 黒龍について、ある程度知識がある柿崎ならともかく、椎名とエンは黒龍がなんであるかさえ知らないというのに。

 

 「まじです。そもそも私達は共闘したことがないじゃないですか……ぶっつけ本番でそれをやるのは危険ですし……」

 

 詭弁だ

 

 そうエンは思った。

 

 その証拠に柿崎のほほが先程からプルプル震えているじゃないか……

 

 そう文句を言おうとした矢先、

 

 「それは面白そうなんだよ!!」

 

 椎名が目を爛々と輝かせてそう言った。

 

 多数決の原理とは、どこまでも残酷だった。

 

 そして、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 神の判決も、驚く程残酷だった。




誰が負けたかは想像におまかせします。

桜子は強運の持ち主ですし、柿崎が勝ったら黒龍なんて三秒で終わりますから、そんなことはしません。

となると戦わなくてはいけないのは……

次回は金髪ロリ回になりそうな予感

お兄ちゃんの世界に、金髪ロリはどのように向かうのでしょうか……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。