釘宮円で葛藤   作:NANA@

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いきあたりばったりな作品ですが、これからもよろしくお願いしますペコリ


第十六話「偉大な魔法使いで……」

 

 

 

 

 

 

 釘宮円は目を覚ました。

 

 「んーにゃっ」

 

 体を起こし、思い切り背筋を伸ばす。

 

 少し意識は朦朧としている。

 

 彼女は周りをきょろきょろと見渡した。

 

 そして、

 

 「朝ごはんを作らないと……」

 

 続いた日々の習慣は、今日も問題なく発揮された。

 

 「龍のしっぽが残ってたっけ……使い切ろう……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間は朝の六時。

 

 比較的早この時間から、釘宮円の一日は始まる。

 

 彼女は虚ろな目をしたまま、店用に大きく作ったキッチンの中で作業に勤しんでいた。

 

 金属のボールの中身をこねる。

 

 こねる。

 

 そして、こねる。

 

 中に入っているのは龍のしっぽのミンチに玉ねぎのみじん切り、そして牛乳と塩コショウを少々。

 

 その中にとうもろこし粉とパン粉を入れてさらに混ぜる。

 

 本来であれば、豆腐などでかさ増しをしたいところだが、ここでは手に入らなかった。

 

 そして、フライパンを火にかけ、その種を三つに分けて投下。

 

 塊の下1/4を水に浸して軽く蓋をし、強火で蒸し焼きにしていく。

 

 チーン!!

 

 「はんにゃん」

 

 釘宮は気の抜けた声と共に、音のなったオーブンへと向かってゆく。

 

 一般家庭用のそれよりも少しだけ大きいオーブンに、両手を気で強化してつっこみ、中で焼いていたパンを取り出す。

 

 ハンバーガーバンズだ。

 

 釘宮の好みで多めに振ったごまが香ばしい。

 

 釘宮は包丁を手に取り、そのパン三つを縦に分かれるように切ってゆく。

 

 そして、トマトを輪切りにして、レタスを出したら、さらにフライパンを追加。

 

 卵を片手で割り、ベーコンと卵をを焼いてゆく。

 

 「チーズチーズ……」

 

 冷蔵庫から取り出し、軽く火に炙る。

 

 そして、ベーコンエッグとチーズをパンの上の部分に乗せた。

 

 「バーガー……せいやっ!!」

 

 釘宮は慣れた手つきで、その手でフライパンの中で蒸し焼きになっているハンバーグをひっくり返す。

 

 そして、再び放置。

 

 ソースを作ろう。

 

 ケチャップを下のパンに塗りたくるだけなのだが……

 

 「ふんふふんふふーん♪」

 

 円は左右に頭を振りながら、ハンバーグの焼き上がりを待つ。

 

 その顔は無邪気というかなんというか……

 

 どうやら焼きあがったらしく、釘宮はパンの上にハンバーグとチーズをのせ、目玉焼きとベーコンをのせ、ケチャップと塩コショウをして、レタス、トマトの順に並べ、最後に上からもう一度ケチャップをかける。

 

 「ほっほっほ!! 龍のしっぽは使い切っちゃったもんねー!! 店で売ったら三百ドラクマはかたいぜ!! さあ、あいつらを起こしに行くか……」

 

 釘宮はその足で、柿崎と椎名を起こしに行く。

 

 起こしに行って……

 

 ベッドの上に二人の姿はなかった。

 

 「およよ……」

 

 釘宮の中で昨日の出来事がフラッシュバックする。

 

 ピンポーン!!

 

 とても近代的なベルがなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「よう!! 昨日は世話になったな!! 忘れもんを届けに来たぜ」

 

 「エンちーん!!」

 

 「エンさまー!!」

 

 来客用の玄関から入ってきたのは妙に暑苦しいおっさんと、二人の美少女だった。

 

 昨日の夜に、体がぼろぼろになるまで戦った少女たちは驚異的な回復力だった。

 

 回復力だったのだが、全回復とは言い難い。

 

 そんな状態で二人が釘宮に抱きついてきたのだ。

 

 釘宮の体も、もう昨日の戦いの無理がたたっているわけで、

 

 あちこちにガタが来ているわけで、

 

 簡単に言ってしまうと、少女二人の突撃を支え切れるほどの体力は残っていなかったりする。

 

 「のわっつぁ!!」

 

 誰も倒れていく体を支えることができず、倒れ、下敷きとなった釘宮が盛大に頭を打ってしまった。

 

 まさか倒れるとは思っていなかったのだろうか、柿崎と椎名が少し申し訳なさそうな目で釘宮の顔を見ていた。

 

 釘宮の額には青筋が浮かんでいた。

 

 「あの……怒ってる?」

 

 椎名が恐る恐る聞く。

 

 「人がせっかくいい気分で朝飯作ってたっつうのに……」

 

 「言われてみればいい匂い……」

 

 美砂がくんくん鼻を鳴らす。

 

 カチン……

 

 釘宮の額にさらに大きな青筋が浮かんだ。

 

 それはそれはもうくっきりと……

 

 あの“創造主”(緑髪のババア)も余計な機能をつけてくれる。

 

 「てめぇら二人朝飯抜きじゃぁあああああああ!!!!」

 

 円が、美砂と桜子に死刑宣告を下した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「これ……本当に俺が食っちまっていいのか?」

 

 「おう、食え。味は心配すんな自信あるから」

 

 メガロメセンブリアに認められた“偉大な魔法使い(マギステル・マギ)”であるナント・ラマテスは目の前に二つのハンバーガーを並べられていた。

 

 この二つのハンバーガーはもともと椎名と柿崎のために作られたものである。

 

 可愛い顔文字までついた旗が立ってるし……

 

 カタカナで『♪シーナ♪』とか、『☆ミーサ☆』とか書いてあるし……

 

 その柿崎と椎名は、先ほどの罰としてナントの椅子の横で、正座をさせられていた。

 

 その二人が小さな声でつぶやくのだ……

 

 「はんばぁがぁ……はんばぁがぁ……」

 

 と。

 

 ナント・ラマテスは繰り返すようだが正義の魔法使い“偉大な魔法使い(マギステル・マギ)”である。

 

 並々ならぬ良心がある。

 

 つまり、お腹を鳴らしながら目尻に涙を浮かべる見た目14歳程の少女の前でハンバーガーを食べることはなかなかの苦痛を生じるのだ。

 

 「ものすごく食べづらいんだが……」

 

 「気にするな。バツだ……」

 

 釘宮は冷たく言い放つ。

 

 それに対してナントは苦笑い。

 

 仕方がないので一口かぶりつく。

 

 その瞬間、口の中にはパンのもちもちした触感。

 

 ベーコンの独特の油。

 

 野菜の水気。

 

 ハンバーグのえも言えぬジューシーさが広がった。

 

 ナントはそれを口に含み、ゆっくりと咀嚼した。

 

 「俺に毎日ハンバーガーを作ってくれないか?」

 

 そんな言葉が、意識しないうちに飛び出していた。

 

 それに対して釘宮は清々しいほどに爽やかな笑みを浮かべると、

 

 「ごめん、私レズだから」

 

 

 

 

 …………

 

 

 

 

 

 …………

 

 

 

 

 

 沈黙がその場を支配する。

 

 

 

 

 

 ヒゥールルル……

 

 

 

 

 

 窓枠から入り込む風の音でさえ、その空間全体に響く

 

 

 

 

 

 …………

 

 

 

 

 

 椎名と柿崎の二人の目は見開き、その瞳はふるふると揺れ、釘宮の顔に釘づけになる。

 

 

 

 

 

 釘宮は今まで見せたことがないような、いい笑顔で座っていた。

 

 

 

 

 

 …………

 

 

 

 

 

 「いや、そんな驚愕のあまり目を見開いても突っ込まねえぞ……。事実だからな」

 

 「桜子、あなたはなにか聞きましたか?」

 

 「さぁ、今日も爽やよかな朝で何より、ご機嫌麗しゅうございます、美砂ちゃん」

 

 痛い。現実逃避が痛い。

 

 「朝日は綺麗だな、嬢ちゃんたち。心までキレイになる」

 

 「エン様もどうですか? 心がキレイになるそうですよ」

 

 「美砂、人の心が汚れてるみたいに言うな……。俺は至ってピュアだ。他人とは違うものを愛せるっていいことだと思うんだ」

 

 「非生産的だよ!!」

 

 「それの何が悪い!! そもそも俺って妊娠出来んのか!?」

 

 「そういうことなら協力しよう。“偉大な魔法使い(マギステル・マギ)”としての経験から言わせてもらえば、何事も試してみるのが一番いい」

 

 ナントが脱ぎだした。

 

 「桜子ォォォォォォおおお!! そのオヤジを止めろぉおおおおおおおおおおおお!! その汚いものをエンに見せるなぁあああああああ!!」

 

 「エンちんの{ピーーー(テイソー)}を守れー♪」

 

 「いや、俺としては女とならしてもいいけど、男となんてありえないから……安心しろ、桜子」

 

 「ノーーーーーン!! こっちもダメだ!! 早く何とかしないと!!」

 

 「あぁ、畜生!! とりあえず二人共力ずくで黙らせましょう!!」

 

 

 

 

 

 

 なんだろう……なんというか……そう、カオスだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数分後、釘宮はなぜかロープでぐるぐる巻きにされていた。

 

 「やっぱり、私たちの育て方が間違っていたのよ、美砂お父さん」

 

 「そうだな、桜子母さん。エン様の周りいた男は、幼女にばかり興奮するクズみたいな奴(ルー)だったから、きっと世の中の男に幻滅してしまってんだ」

 

 「ああ、最初に会った男があの変態紳士(ルー)じゃなかったら、エンちんもきちんと男の人と恋に落ちるはずだったのに」

 

 「いや、そこのバカ二人。なんか知らんが棒読みで安っぽい寸劇をすんな……。そして、ルーさんに謝れ」

 

 釘宮は完全に苦笑いでそう言った。

 

 額の方で青筋がピクピクしていたり、口に力を入れすぎて歯がギチギチと音を立てているのはご愛嬌だ。

 

 「この男の方は{ピー(キョセー)}してもいいですか?」

 

 「いいと思うよ……」

 

 「やめておけ、あとが面倒くさい。なんかピクピクしてんじゃん……何したんだよお前ら……」

 

 「何って、とりあえず腹にグーパン」

 

 「血を抜かせていたがきました。三リットルほど……」

 

 「成人の平均総血液量だぞそれ!! 今すぐ戻せ!! そして治療しろ!!」

 

 釘宮によって、ナント・ラマテスは何とか一命を取り留めたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「おやじが起きるまでにこのハンバーガー冷めちまうな……」

 

 釘宮はまたしても正座をさせられた二人を見ながら、そんなことを言った。

 

 ちなみにナントは現在釘宮のベッドで眠りについている。

 

 と言うのも、どこで寝かせるかという話になった時に椎名と柿崎が本気で嫌そうな顔をしたためである。

 

 何も気にせず自分のベッドを貸す釘宮はすごいのか……それともすごくないのか……

 

 まあ、ナントに食べさせるはずだったハンバーガーがまだ一個余っているのだ。

 

 釘宮が二個食べればいいのではないかという意見もあるのだが、余り物の龍のしっぽを大量に入れた馬鹿バーガーである。

 

 何がすごいってカロリーがすごい。

 

 油がすごい。

 

 一つは美味しく消費できるのだが、もう一つとなると厳しいものがあるのだ。

 

 そんなわけで、食べられる可能性のでてきたことで椎名と柿崎の目は、獲物を狙うハイエナのごとく、らんらんと輝いていたりする。

 

 「仕方ねぇ……お前ら食う――ピンポーン!!――客か?」

 

 またインターホンがなった。

 

 釘宮は、ここに来てあいつ以外の知り合いがいたっけな? なんて思いながら、玄関へと向かう。

 

 そして扉を開けた先には、金髪の幼女が立っていた。

 

 「よぉ、くぅぽん!! こっちに来たのか? 久しぶりだなぁ!!」

 

 「わーい!! お兄ちゃんなのー♪」

 

 くぅぽんが釘宮に飛びつく。

 

 それを釘宮はふらつくことなく受け止めた。

 

 そして、そのまま抱きかかえて、リビングまで連れてくる。

 

 「私ね私ね、お兄ちゃんのこと探して回ったんだよ。そしたらね、メガロの兵隊さんが連れてきてくれたの♪」

 

 「そうかそうか、遠かったのに頑張ったな!!」

 

 そんな風に仲良さげに話す釘宮とくぅぽん。

 

 そんな予想していなかった金髪ロリの登場に、柿崎と椎名は内心穏やかではなかった。

 

 このままだとまずい。

 

 何がまずいってこのままだとあのジューシーハンバーガーが……

 

 「そうだ、くぅぽん。ハンバーガー食うか?」

 

 終わった……

 

 椎名と柿崎が地面に突っ伏した。

 

 ハンバーガー食べたかったな……

 

 黒龍のしっぽって高いんだよなぁ……

 

 「はんばぁがぁ? うーん、私はいいよ……。ついさっき兵隊さんにパンおごってもらったし」

 

 「そうか……ならしょうがねぇな……。柿崎、椎名食っていいぞ」

 

 「「よっしゃぁぁあああああああああ!!」」

 

 落として落として落として上げる。

 

 歓喜の瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「お兄ちゃん、なんであのお姉ちゃん達は泣きながらご飯を食べてるの?」

 

 「さぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「本日も美味しかったです」

 

 「美味しかったです」

 

 「くるしゅーないのらしゃ♪」

 

 「いや、お礼なら俺にしろよ……」

 

 柿崎と椎名は満面の笑みだった。

 

 「それで、エン様。一つ聞いてもよろしいですか?」

 

 柿崎が言った。

 

 「様をつけんな」

 

 柿崎がそれを聞いてモジモジしていると、

 

 「俺は女の子が恥じらう姿を見ながら名前を呼ばれることに多大な興奮を覚える人間だから気をつけたほうがいいぞ。まぁ、俺としてはごちそうさまなんだが……」

 

 「エン、そちらのお嬢さんとはどのような関係で……」

 

 「一瞬でそこまで冷たい眼差しを作れるお前はすごいよ。尊敬するわ……」

 

 釘宮はそんな柿崎を見てため息をついた。

 

 「たしかに、エンちんはずっと私たちといたよね? いつ知り合ったの?」

 

 釘宮はその返事に困る。

 

 そんな釘宮に変わって、くぅぽんが答える。

 

 「私は旅商人なんだよ。お兄ちゃんは朝市でたくさん買ってくれるんだよ♪」

 

 それだけを聞いて、釘宮と椎名は悟った。

 

 この子は戦争孤児だ。

 

 まぁ、もちろんその場をごまかすための嘘なのだが。

 

 「辛かったんだね……よしよし……」

 

 「手持ちはそんなに多くありませんが……私たちにも何か買わせてください……」

 

 そんな二人の態度の急変具合に、釘宮とくぅぽんは首をかしげた。

 

 「なんだかよくわからないけど、お姉ちゃん達が何か買ってくれるってことだよね。ちょっと待ってて、売り物持ってくるのらしゃ」

 

 この次、彼女が取り扱う売り物の数々に、彼女たちは驚くことになるのだが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃のナント・ラマテス

 

 

 「くんかくんか……はぁはぁエンたんのベッドはぁはぁ。甘酸っぱいいい香り……枕、枕はぁはぁ……くんかくんか……いい匂いくんかくんか……エンたんペロペロしたいはぁはぁ……エンたんのエンたんの枕はぁはぁ、髪の毛!! エンたんの髪の毛見つけたはあはあ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 柿崎と椎名の前に並べられた数々の魔法具。

 

 くぅぽんの売り物らしいのだが、どれもこれも馬鹿としか言い様がない品物だった。

 

 「じゃじゃん!! これがこのくぅぽん・まいるどぴぃたんがあちこちで調達や交換を繰り返して手に入れた商品なのらしゃ!!」

 

 「“超小型精霊炉”に“長距離転移魔法符”、“アルテミスの葉”こっちには“五帝召喚符”まであります……」

 

 「この丸いのは何? 見たことないんだよ……」

 

 「それはただの“毛糸”なのらしゃ……別に珍しくもないのら……」

 

 「こっちには不思議な木で出来たハンマーがあります!! 東洋の武器でしょうか……鉄球と槌を合わせるとは……、侮りがたし……」

 

 「それは“けん玉”。おもちゃなのらしゃ……」

 

 「このちっちゃくて丸いものは何? これにも魔法学的意味が!!」

 

 「それはB玉なのら……」

 

 「お前らは世間知らずだったんだな……よくわかったわ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 椎名と柿崎は不思議な道具(サイコロと毛糸玉)や、いくつかの魔法具を購入した。

 

 そして、くぅぽんを三人でもふもふしたあと、くぅぽんは帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あっと……。そうだ、忘れるところだった」

 

 釘宮は座っていた椅子から立ち上がって、そう言った。

 

 「どうかしたの?」

 

 声を聞いて階段から降りてきた椎名がその理由を聞く。

 

 首を三十度傾ける仕草は彼女の癖だ。

 

 「あぁ、桜子か……。そういや、オヤジを眠らせたままだったなって」

 

 釘宮はやれやれといった様子で立ち上った。

 

 ちなみに、現在柿崎はメガロまで行くための飛空艇を買いに行っている。

 

 椎名はニコニコ笑顔で、

 

 「それじゃあ、私が起こしてくるんだよ♪」

 

 そんなことを言って、階段を駆け上り、釘宮の部屋へ急ぐ。

 

 なんだかんだ言って、彼女は釘宮の下僕だ。

 

 彼女の役に立つことが嬉しいのだ。

 

 そして、扉を開けた。

 

 「おっちゃん!! もう起きれるでしょ…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「くんかくんか……ハァハァ……。エンちゃんの……ハァハァ……ハァハァ……いい匂い。ずっと嗅いでたいよ。ハァハァ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「キャーーーーーーー!!!! 変態がいるーーーーーーーーー!!!!」

 

 

 

 

 

 

 椎名が見たものは、女物の下着を身にまとい、女物の下着に包まって悶えている中年男性の姿だった。

 

 「死ね!! 死んじゃえ!!」

 

 その光景を見た椎名がナントを思い切り殴りつけることは仕方のないことだろう?

 

 そんなこともあって、ナントが目を覚ますのはもう二、三時間あとになったそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その二時間後、美砂が帰ってきた時の会話。

 

 「それで、あなたは拘束されているのですか……」

 

 「美砂ちゃん……助けて……」

 

 「誰が助けますか!! 女の敵め!!」

 

 「いや、俺、気にしてねえし」

 

 「エンはもう少し気にしてください……」

 

 「俺も美少女の下着に包まりたいときだってあるぞ!! 健全な男子だからな!!」

 

 「自分で美少女とか言うな!! あなたは男子ではない!! そんなことを考える男子は健全ではない!!」

 

 「いや、それは健全な男の発想だ!!」

 

 「あんたは黙ってろクソおやじ!!」

 

 このあと、ナント・ラマテスはこんがり焼きあがった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その数分後、釘宮たちはナント・ラマテスの部下である騎士と話をしていた。

 

 その空気はどこか軽く、ただ女子高生が話しているように見えなくもない。

 

 「それで、“氷原と不動の王(ニーズヘッグ)”を見失ってしまって……」

 

 「うわヤッバ!! それじゃあどこにいんのかわかんないんだ」

 

 「洗脳の魔法陣の方はエンさんの攻撃で破壊されたようなので……そう簡単に次は使役できないとは思います」

 

 女戦士が、少し申し訳なさそうにそう言った。

 

 それを柿崎は笑って返す。

 

 「一応、一安心ってことでいいはず。私たちもいくつか予測は立ってるし、すぐに奴を操っていたやつの名前も炙り出せるはずよ」

 

 「エンちんが魔方陣を暗記してるからね♪ 後は中に入ってる意味や記号、筆跡なんかから民族を割り出せば、犯人も割り出せるよ♪」

 

 椎名も笑顔でそう伝える。

 

 「そうですよね!! そもそも最強種を召喚できるくらいの組織ですから、ぼろが出ないわけがありません」

 

 女戦士も、ハキハキとした声でそう答える。

 

 「そろそろ金の話をしようぜ……。メガロメセンブリアの相場って相当たけえんだよ……」

 

 釘宮がそう言って切り出した。

 

 その瞳で冷たく女戦士を見つめる。

 

 「ええっと、今回の我々に支給される分が8000万ドラクマでして、そのうち今回の被害額が1600万ドラクマほど……エン様たちに支給する分は残りの一割ほどで640万ドラクマ程を考えております……」

 

 「640万ドラクマ!! ちょっと凄めの豪邸が経つんだよ!!」

 

 椎名がほっぺたを量の手で押しつぶし、飛び上がって喜びを表現する。

 

 柿崎に至っては、お肉……お肉……と、どこかに旅立っていた。

 

 「640万か……。その内、今回あのオヤジにまわる分はどれくらいなんだ?」

 

 釘宮が真剣な眼差しでそう聞いた。

 

 「ええと、ナント様にまわる分は大体2000万ドラクマ程になるかと……」

 

 「そこからまわせ」

 

 「「えっ!!」」

 

 釘宮の若干横暴とも言える言葉に、柿崎と椎名、そして女戦士が驚きの声をあげた。

 

 「それは……少し難しいかと……」

 

 「ふむ……ならば仕方がないな……」

 

 釘宮はその可愛らしい頬をくっと釣り上げ、柔らかい笑みで女剣士を見る。

 

 そして、片手に何か魔法具を取り出すと、そこについていたスイッチを容赦なく押した。

 

 すると、

 

 

 

 

 

 

 

 『くんかくんか……はぁはぁエンたんのベッドはぁはぁ。甘酸っぱいいい香り……枕、枕はぁはぁ……くんかくんか……いい匂いくんかくんか……エンたんペロペロしたいはぁはぁ……エンたんのエンたんの枕はぁはぁ、髪の毛!! エンたんの髪の毛見つけたはあはあ……』

 

 『えっ!! 何……なんで私縛られてるんですか!!』

 

 『エンたん……ハァハァ……』

 

 むにっ!!

 

 『ひっ!!』

 

 『くんかくんか……ハァハァ……。エンちゃんの……ハァハァ……ハァハァ……いい匂い。ずっと嗅いでたいよ。ハァハァ……』

 

 『えっと……その……なんで武装解除を……ひっ!! やだ……』

 

 『エンたん……すべすべしてる、なんていい触り心地……』

 

 『いやぁああああああ!!』

 

 ブチッ!!

 

 

 

 

 釘宮がその機械、ラジカセのスイッチを切った。

 

 そして、殺気を込めた目で女戦士を睨みつける。

 

 女戦士の顔には汗がもうだらだらと……

 

 だらだらと……

 

 彼女自身が悪いわけではないのだが、彼女の上司は実際にこれをやりそうな人間なのだ。

 

 遠出をしていた“偉大な魔法使い(マギステル・マギ)”が一般市民に性的暴行を加えたなんてことがバレたら大問題だ。

 

 実際はナントが釘宮のベッドの上で眠ってた際に録音した内容に、釘宮が上書きで音を足しただけなのであるが、そこはナントの普段の行いが悪い。

 

 そのことを知っている柿崎と椎名は苦笑い。

 

 「初めてだったのに……初めては好きな人に……」

 

 釘宮は目に涙をためて言う。

 

 全部芝居なのだが……

 

 釘宮の迫真の演技に押されて、その女剣士は、

 

 「ナントが受け取るであろう2000万ドラクマ、耳を揃えてお支払いいたします!!」

 

 それはそれは見事な土下座だった。

 

 

 

 

 

 

 そんな騒がしい一日を終えた三人は、部屋のリビングで横になっていた。

 

 灯りはついておらず、窓からさす月の光だけがその部屋を照らしていた。

 

 何をしているかと言えば、なんてことはない。

 

 普段通りベッドで寝ようとした釘宮が椎名と柿崎に止められたのだ。

 

 なんだか、白濁がどうとか……擦りつけるだとか……

 

 きっと空耳だろう。

 

 そんなどうでもいいようなことを思い出しながら、釘宮は口を開いた。

 

 「美砂……」

 

 「何ですか?」

 

 その囁くような、か細い声に柿崎はそう答える。

 

 「明日、ここを出るんだよな……」

 

 「そうですね……。ここに長居する理由もありませんし……」

 

 「そうか、二週間、楽しかったな」

 

 「そうですね。今、私は幸せです」

 

 「はは、俺もだ」

 

 「私もなんだよ♪」

 

 それに椎名が答えた。

 

 「椎名」

 

 「何? エンちん」

 

 「お前は……その……大丈夫か?」

 

 「大丈夫だよ。エンちんや美砂とならどこでも」

 

 暗闇ではその顔は見えないが、きっと笑っているのだろう。

 

 「美砂……」

 

 釘宮はまたか細い声で聞いた。

 

 「何ですか?」

 

 「お前って、寝るとき服を着ない派なんだな……」

 

 「悪いですか?」

 

 「いや……全然。むしろどんと来い。大好物だ!! 俺には抱き癖があって、明日の朝には美砂に抱きついているかもしれないが、気にせず隣で寝ていてくれ!! むしろ寝てください!!」

 

 「……着替えてきます」

 

 「やっぱ、一瞬でそこまで冷たい目を作れるお前はすごいわ……。尊敬する……」

 

 彼女たちの夜は更けていく。

 

 

 

 

 

 

 





反省はしよう。

シリアスを書きたいが、ギャグのほうが楽しい……

私はどうすれば……(作者は処女なのでこういうのがよくわかりません……矛盾点などがございましたら報告ください)

頑張って書くので楽しんで読んでくださいお

感想もお待ちしております



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