釘宮円で葛藤   作:NANA@

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戦闘描写が難しい……




第二十話「三人娘で決戦」

 

 

 

 

 

 

 植物魔法という独自の魔法を操る猫族の魔法使い、椎名桜子。

 

 あらゆる魔法の解析、干渉に長け、莫大な魔力量で全てを押しつぶす“水の泡(クラッシャー)”、柿崎美砂。

 

 そして、転移魔方陣を多種多様の方法で扱い、正確に敵を討つ初心者戦士、釘宮円。

 

 そんな三人は、彼女たちの飛空艇“フライマンタ7000”の内部で作戦会議を行っていた。

 

 その中の一人、普段とは違い、ウェーブのかかった髪の毛を後ろで束ねている少女、柿崎は、

 

 「敵兵力は100以上の戦艦に、歩兵、騎龍兵と膨大。我々の勢力は我ら三人だけと見ていいでしょう」

 

 いつも通り、前提を淡々と述べた。

 

 そこには焦りも憤りもない

 

 それに対して釘宮は、

 

 「桜子の“樹”である程度はごまかせるだろうけど……。それも長くはもたない。かと言って100以上の戦艦相手に短期決戦を挑める程の戦力があるわけじゃないしな……」

 

 「そうですね。戦艦を相手にする以上はエン様の言うとおり、短期決戦はありえません。長期戦を覚悟していくべきかと……」

 

 「テンペテルラの自警団の手は借りられないか?」

 

 釘宮の質問に、柿崎は困ったような顔をして、

 

 「無理でしょうね……テンペテルラの戦艦とメガロメセンブリアの戦艦とは、入り混じった状態で待機していましたので、おそらく簡単に全滅するかと……」

 

 釘宮は腕を組んだ。

 

 今回の戦い、思っていたよりもしんどいものになるかもしれない。

 

 おそらく、今のままでは、釘宮円は柿崎美砂と椎名桜子の足手まといになってしまう。

 

 椎名桜子も、柿崎美砂も、個人で戦艦と戦えるほどのスペックを持つ魔法使いだ。

 

 まだ素人の釘宮とは違う。

 

 早急に戦闘力をあげる手段が必要だ。

 

 「じゃあ本当に三人なんだな……相手の戦艦ってのはどんなもんなんだ?」

 

 「強力な魔法障壁を持ち、精霊砲をはじめとする、様々な武装で戦闘を行います。あれは人間一人の魔法障壁で防げるものではありません。かわす、あるいは超接近戦を試みるべきかと」

 

 そこに、いままで黙っていた椎名が口を挟む。

 

 「でも……そんな戦い方をしてたら……長期戦は無理だよ……。私は、短期決戦を目指して数体の戦艦を撃破して、撤退を促すほうがいいと思う」

 

 その顔色は悪く、息も絶え絶え。

 

 原因は乗り物酔いだ。

 

 「出し惜しみなしで……数体を撃破して……、ナントとドレを……始末すれば敵の士気は落ちる」

 

 その目はうつろで、焦点は合ってない。

 

 「確かにそうだな……それがいいのか……」

 

 「……死ぬ……」

 

 椎名桜子は乗り物酔いで沈没した。

 

 「堕ちましたね……。まぁ、頑張った方ですが。エン様、何か戦艦に対抗する策はあるのですか? 無いようでしたら、私と桜子だけでやりますが」

 

 「まだテンペテルラにつくまで数時間ある。策はあるし、できるだけあがいてみるよ……」

 

 「戦艦の魔法障壁は硬いですよ……」

 

 「知ってるぞ」

 

 「きっと、転移妨害の術式もかかっていますよ……」

 

 「知ってるぞ」

 

 「エン様の火力で相手をするのは厳しいかと思われますが……」

 

 「なぁ、俺ってそんなに信用ない?」

 

 少し悲しくなる釘宮だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 話し合いをしてみたはいいものの、彼女たちの飛空艇“フライマンタ7000”でテンペテルラに向かうには少なくとも五時間かかる。

 

 釘宮に与えられた時間は残りの四時間半。

 

 その間に、戦艦や騎龍と戦う装備を作り終えなくてはならない。

 

 釘宮は一人、倉庫にやってきた。

 

 「さてと」

 

 釘宮はそう言って椅子に座り、自身の得物である十手を取り出した。

 

 そして、その先端部分に魔方陣を描いてゆく。

 

 その笑顔はもう悪戯が成功した悪ガキのような笑顔。

 

 彼女自身が初めて作る魔法具でもあるのだから当然といえば当然かもしれない。

 

 嬉しいのだ。

 

 そして、もう一本の十手にも魔方陣を描いてゆく。

 

 書き終えたのを満足げに眺めると、何かを確かめるようにその十手を数回振った後、それを机の上に捨てる。

 

 「もう一仕事だな。桜子と美砂の度肝を抜いてやる!!」

 

 何やら元気にガッツポーズを決めると、十手で、地面に魔方陣を描いていく。

 

 彼女お得意の転移魔法陣だ。

 

 今回は“フライマンタ7000”を転移させた時ほど慎重ではなく、スラスラとものの数秒で描き上げてしまった。

 

 「『現れろ』!!」

 

 それに釘宮は声をかけた。

 

 すると、ブクブクと泡を立てながら、何やら金属の物体が出現する。

 

 形は十字架。

 

 釘宮の体よりも一回り大きいその白銀の物体は、神々しい存在感を醸し出していた。

 

 釘宮はそれを一通り眺めると満足げに頷く。

 

 「いっやぁ、やっぱ材料は金をかけないとねぇ。最高の魔法鎧を作ってしまいましょう!! この二ヶ月、必死こいて勉強したすべてを今ここに!!」

 

 凄まじい活力でもって、釘宮はその十字架に魔力を込め、形を変えていく。

 

 「……四時間半で間に合うかどうかは正直微妙だが、なんとか形にしねえと……でなきゃ俺はお荷物決定だ……」

 

 釘宮は金属と格闘を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちょうどその頃、椎名桜子はというと、

 

 「オロオロオロオロオロオロ…………」

 

 顔面蒼白、完全なるグロッキー状態だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのきっかり四時間半後、テンペテルラは混沌状態だった。

 

 あちこちで火の手が上がり、“精霊砲”の雄叫びが轟々と木霊する。

 

 光の柱が街を焼く。

 

 テンペテルラの自警団は既に無力化され、上空には百を超える戦艦が浮かんでいる。

 

 虐殺が行われているかもしれない。

 

 あの白い戦艦団の下に広がるのは間違いなく地獄だろう。

 

 ただ、それにしては彼女たちは緊張感がなかったりする。

 

 「オロオロオロオロオロ……エンジン……ブルブル……やだ……」

 

 結局、釘宮は最後まで何かを作ることに没頭し、柿崎は運転に集中。

 

 椎名はこの四時間半、“フライマンタ7000”のソファに放置され続けた。

 

 ブルブルとした小刻みの振動にめっぽう弱い彼女は、メガロメセンブリアに向かったときのように釘宮に“眠りの霧”をかけてもらうことすらかなわず、グロッキー状態のまま耐え続けたようで、魂らしきものが口からこぼれ落ちてしまっている。

 

 そんな彼女が精神的にも肉体的にも安定しているわけがなく、釘宮達一行は先頭の前に少しの休息をとることになってしまったのだ。

 

 「ヒック……、ごめんね、エンちん。私のせいで……」

 

 「はは、気にするな……。柿崎、俺は準備があるから、少しだけここを頼むな」

 

 「お任せ下さい」

 

 釘宮は面倒くさくなったわけではないだろうが、椎名を置いて、自分の準備をしてしまうことに決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 釘宮がやってきたのは再び倉庫。

 

 ただ一つの入口を閉め、彼女は服を脱ぎだした。

 

 始めの頃は、自分の体に欲情し、それを防ぐために目隠しをしながら作業していたこともあったが、今となっては慣れたものである。

 

 釘宮は黙々と服を脱ぎ、ついに全裸になる。

 

 「よし!! まだ試したこともない装備だが……桜子も植物を体につけて戦ったりしてるし、大丈夫だろう」

 

 そう言って釘宮は布と金属が混ざった、真っ黒な鎧を着込んでいく。

 

 まずはじめに、真っ黒なインナー。

 

 黒龍の革を使ったもので、釘宮の体にフィットするように作られているほか、自分の体と変わらないほどに、魔力と気が馴染む作りになっている。

 

 次にチェインメイル。

 

 こちらは釘宮が手がけたもので、一つ一つのチェインの内部に魔方陣が描かれており、障壁を皮膚のすぐそばに貼る効果がある。

 

 最後に関節部分にいくつか盾のような部品を取り付け、頭にゴツゴツしたカチューシャを取り付ける。

 

 「よっしゃー!! 釘宮円様特性、魔法の鎧壱号、敵陣制圧用遠距離移動砲台“鏡鳳”(ファルテンスバード)初仕事だぜい!!」

 

 釘宮は二本の十手を嬉々として持ち上げると、それを足についたホルダーに差し込み、柿崎のもとへと急いだ。

 

 「エン様、準備は出来ましたか?」

 

 「うぉお!! エンちん何それ、鎧!! かっこいいよ♪」

 

 「復活早いなぁ……もう大丈夫なのか……」

 

 「うん!! じゃあ、誰が一番戦艦を落とせるか、勝負だね!!」

 

 「ふっふっふ、相手が戦艦なら、負ける気はさらさらありませんので……」

 

 「それじゃあ行くか!!」

 

 三人は一斉に大空へと飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ある戦艦内部、メガロメセンブリア艦隊の指揮をとっている男、ナント・ラマテスは頭を抱えていた。

 

 ここにあるメガロメセンブリアの戦艦は総126隻。

 

 テンペテルラの戦力はすでに無力化に成功した。

 

 あとは父親、ドレ・ラマテスが交渉を成功させればメガロメセンブリアには膨大な鉱物資源が流れ込み、さらなる兵力増強につながる。

 

 計画の不安因子である三人の少女たちも取り除いた。

 

 すでに本国の自警団に拘束されているだろう。

 

 拘束されていなくてもここと本国を往復するだけで四日はかかる。

 

 彼が今の地位にいるのは父親のおかげ。

 

 そして、父親が自分をこの地位においているのは自分が父親にとって役に立つ存在だからだ。

 

 ナント・ラマテスは父親のためになる、様々なことをやってきた。

 

 多くの亜人を犠牲にした人間と帝国の守護聖獣との融合実験。

 

 300人の孤児を生贄にした“氷原と不動の王(ニーズヘッグ)”の召喚。

 

 成功のたびに、ナント・ラマテスは父ドレ・ラマテスから、地位と名声を授かってきた。

 

 今回もその一つ。

 

 ナントは、父親には逆らえないことを免罪符にして、戦場に立ったのだ。

 

 彼は自身の後悔や罪悪感を吐き出すように深く深く、ため息をついた。

 

 そして、艦隊の指揮官としての顔を作る。

 

 

 

 

 

 その時、戦艦が揺れた。

 

 

 

 

 

 そのまま、何かに引きずり込まれるように、地面に近づいていく。

 

 

 

 

 

 感じるのは強烈な浮遊感。

 

 

 

 

 

 しかし、彼らは慌てない。

 

 

 

 

 

 この揺れは身に覚えがあった。

 

 

 

 

 

 かつて、彼らを“氷原と不動の王(ニーズヘッグ)”の暴走から救った少女の力。

 

 

 

 

 

 そして、職員の一人が叫んだ。

 

 

 

 

 「植物です!! 何かの(つた)がこの船を引っ張ってます!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦艦に揺れを起こした張本人。

 

 猫族の少女が地面から頭を出した。

 

 そして、その顔を顕にする。

 

 目は爛々と輝き、額にしわがより、噛み締めた唇からは血が滴る。

 

 普段の柔和ですべてを受け入れる笑みはどこにもない。

 

 彼女は三人の中で唯一、他人のために怒ることができる人間だ。

 

 彼女は、必要以上の力で弱者を従わせる人間が嫌いだ。

 

 彼女は、正義のためにと悪をなす人間が嫌いだ。

 

 彼女はなにより、騙されてしまった自分が許せなかった。

 

 そして、叫ぶ。

 

 ただただ自身の怒りに身を任せる。

 

 「てめえの正義ぐらいてめえで背負え!!」

 

 椎名が地面を殴りつけた瞬間、地面が揺れた。

 

 言い変えよう、地面が割れた。

 

 そして、その中から禍々しいほどの蔦が伸び、絡まり、凄まじい勢いでテンペテルラをおおっていく。

 

 テンペテルラが森に覆われた。

 

 外界から隔離された。

 

 戦艦は外にあり、中を攻撃することは困難。

 

 さらに蔦は伸び太く絡まり合い、龍の首を造形する。

 

 それも一つではない。

 

 テンペテルラをおおった蔦の森のいたるところから伸びている。

 

 “蛇樹”、椎名桜子の“樹”の中でも、特に単純な種類で、多くの魔力を持つ存在だ。

 

 その機能は簡単。

 

 主人が命じたもののところまで首を伸ばし、噛み砕くのみ。

 

 そして、涙を浮かべ、肩を震わせ、おそらくテンペテルラの住民であった人々の惨状を見た椎名の審判が下る。

 

 「“蛇樹”!! 浮かんだ戦艦全部、噛み潰せ!! 本物の地獄を見せてやれ!!」

 

 叫び声とともに、龍の首が戦艦に襲いかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「始まりました……か、あの力。やはり桜子だけは敵に回したくないものです……」

 

 植物の焼ける音と、鉄が砕ける音を気持ちよさげに聞きながら、柿崎美砂は楽しげにその光景を眺めていた。

 

 彼女の戦う理由は椎名ほど人道的なものではない。

 

 ただただ、騙されてムカついたのだ。

 

 だから壊す。

 

 だから殺す。

 

 それだけで、柿崎が戦う理由になる。

 

 「うん、熱いビートを奏でていますね……。それなら、私は気が滅入るような鎮魂歌でも奏でましょうか……」

 

 柿崎は浮遊術を使い空を飛び、“蛇樹”と戦っている戦艦に、背後から忍び寄る。

 

 そして、歌うように、呪文の詠唱を始める。

 

 「シュガー・キャンディ・ドロップス 契約に従い(ト・シュンボライオン)()我に従え(ディアーコネートー・モイ)()炎の覇王(ホ・テュラネ・フロゴス)

 

 その目は標的を決める戦士の目、百以上の戦艦から、もっとも破壊するのに効果的な戦艦を探す。

 

 つまり、母戦艦。

 

 司令塔であるそれを破壊すれば、あとに残るのは烏合の衆。

 

 そして、柿崎はひときわ大きく、厚い魔法障壁で覆われた戦艦を発見する。

 

 「来たれ(エピゲネーテートー)()浄化の炎(フロクス・カタルセオース)()燃え盛る大剣(フロギネー・ロンファイア)()ほとばしれよ(レウサントーン)()ソドムを(ピュール・カイ・)焼きし(ティオン・)火と硫黄(ハ・エペフレゴン・ソドマ)

 

 柿崎は笑顔でその戦艦に接近する。

 

 高等技術“虚空瞬動”、空に足場を作り、瞬動術を行う戦闘術。

 

 そして、戦艦に張り付いた。

 

 「罪ありし者を(ハマルトートゥス)()死の塵に(エイス・クーン・タナトゥ)!!() 『燃える天空』(ウーラニア・フロゴーシス)!!」

 

 柿崎美砂の右手に魔力が集まる。

 

 そして、柿崎はその手で戦艦を殴りつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「うっひゃー……派手にやってんなぁ」

 

 その三次を見ていた第三の少女、釘宮円は、肩まで覆った黒装束で岩場に腰掛けていた。

 

 そのまま自分の得物である十手をくるくると弄ぶ。

 

 彼女が戦う理由は単純明快。

 

 人が死んだとか、騙されていたとか、彼女にとってはどうでもいいことなのだ。

 

 ただ、彼女には新たな力ができた。

 

 目の前にはそれを試すのに好都合な戦艦がある。

 

 なら、

 

 「やることはひとつしかないっしょ!!」

 

 満面の笑みで立ち上がる。

 

 その顔は、ただ無邪気に新しく買ってもらったおもちゃで遊ぶような、そんな笑顔だ。

 

 今の彼女にとっては、目の前の惨劇も、戦艦も、人も、自分が楽しむ為の玩具でしかない。

 

 「行くぜ、壱号敵陣制圧用遠距離移動砲台“鏡鳳”(ファルテンスバード)!! 試運転開始だ!!」

 

 そして、彼女は大空に飛び立った。

 

 敵陣制圧用遠距離移動砲台“鏡鳳”(ファルテンスバード)には、彼女が組んだプログラムが施されている。

 

 まず、自身の周りに結界を貼り、物体や魔力の流れを感知し、半自動で移動する。

 

 それによって彼女は、今の彼女では知覚できない速度で、戦艦と戦艦の間をぬうことが可能になる。

 

 釘宮はその性能を楽しむように戦艦の中に飛びこんだ。

 

 様々な攻撃が釘宮を襲う。

 

 魔法の射手に砲撃。榴弾に閃光なんてものまである。

 

 釘宮はそれら全てをかわし、弾き、やり過ごしてゆく。

 

 「最高だ!! いい感じだ!!」

 

 釘宮は自分の魔法障壁と戦艦の魔法障壁とをすり合わせ、その強度を確認する。

 

 そして、わかった結果は、

 

 「俺のどんな攻撃手段でも、この魔法障壁は突破できない……か……」

 

 敵陣制圧用遠距離移動砲台“鏡鳳”(ファルテンスバード)はこれ以上の接近戦は無意味と判断したらしく、戦艦のはるか上空に避難する。

 

 「うっわぁ、あいつらふたりは普通に落としてんのに……正直へこむなぁ……。まぁいいけど……」

 

 釘宮はその瞳で戦艦を睨みつける。

 

 ひとつの戦艦が、一際大きな砲口を釘宮に向けた。

 

 そこに、魔力が収束されていくのを感じる。

 

 ジリジリと緊張が肌を焼く。

 

 それをかんじて、釘宮はなお笑った。

 

 「それじゃあ、敵陣制圧用遠距離移動砲台“鏡鳳”(ファルテンスバード)の真骨頂。直線放射系魔法に対して絶対の性能を持つ……試してみようか……」

 

 釘宮は十手を戦艦に向けた。

 

 次の瞬間、釘宮の体は白い閃光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「やったか!!」

 

 戦艦内で歓喜の声が上がる。

 

 精霊砲はメガロメセンブリアの戦艦の中でもっとも威力の高い攻撃方法だ。

 

 単純な破壊力なら、広域殲滅呪文ともわたりあえる。

 

 人一人の魔法障壁で耐えきれるものではない。

 

 しかし、その御伽噺も、一瞬でひっくり返されることになる。

 

 彼らの死をもって……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 釘宮に精霊砲を放った戦艦が爆発した。

 

 その光景を見た柿崎美砂は口笛を吹いた。

 

 瞳は楽しそうに爛々と輝いている。

 

 「暴発……とは思えませんね……。エン様が何かしたのでしょうが、一体何を……」

 

 柿崎は“燃える天空”(ウーラニア・フロゴーシス)をまとった拳で戦艦を殴りつけ、撃墜する。

 

 「戦艦は変わらず統率の取れた攻撃をしているようですし、母戦艦は外してしまったようですし、まぁ、いいとしましょう」

 

 柿崎に向かって精霊砲が発射される。

 

 それを柿崎は魔法障壁で受け止めた。

 

 「エン様の魔法障壁はあれを受け止められるほど強力ではありません……シュガー・キャンディ・ドロップス 九つの鍵を開きて(グラディウス)()レーギャルンの筺より(ディウィヌス・)出て来れ(フランマエ)!!() 『燃え盛る炎の神剣』(アルデンティス)!!」

 

 柿崎の腕から戦艦の二倍はあろうかというほどの炎の剣が燃え上がった。

 

 「はぁぁぁあああああああ!!」

 

 柿崎はそれを振るった。

 

 その剣は戦艦の魔法障壁をものともせず、戦艦を分割する。

 

 鉄の焦げる匂いが充満する。

 

 「どんなネタかはわかりませんが……さて、エン様には負けていられませんね!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦艦を撃墜した釘宮は、何事もなかったかのように戦場に復帰していた。

 

 「なんだよ……意外にあっけねえもんだな」

 

 釘宮のしたことは簡単だ。

 

 発射された砲撃を、チェインメイルのチェイン一つ一つに施された転移魔法陣で転移させ、その全てを十手の先端に施した魔法陣から発射する。

 

 その密度は放射された精霊砲の数十倍。

 

 つまるところ、相手の攻撃を絞り上げ、跳ね返すだけの単純な能力だ。

 

 ただの転移魔法陣を少しいじれば、理論上は可能だ。

 

 欠点がないわけではないが……

 

 釘宮がこの方法をとった理由は簡単。

 

 メガロメセンブリアの戦艦の障壁はメガロメセンブリアの精霊砲をを防ぐほどに強力だ。

 

 つまり、精霊砲発射時のその砲口は魔法障壁張られていない穴になる。

 

 釘宮は自身の考えが間違っていなかったことに満足げに笑い、キョトンとした顔をする。

 

 「てか、あの精霊砲って精霊炉とまっすぐ繋がってんだな、まっすぐ精霊炉を打ち抜かなきゃ、あんな爆発おこんねえし……」

 

 バシュッ!!

 

 釘宮に対して砲撃が開始された。

 

 「うわっ!! やべ、敵陣制圧用遠距離移動砲台“鏡鳳”(ファルテンスバード)!!」

 

 敵陣制圧用遠距離移動砲台“鏡鳳”(ファルテンスバード)が自動回避モードに突入する。

 

 銃弾を回避し、牽制程度の“魔法の射手”を放つ。

 

 そのうちに、転移魔方陣を書き出し、なかに飛び込み、戦艦の後ろがわに転移する。

 

 「敵陣制圧用遠距離移動砲台“鏡鳳”(ファルテンスバード)!!」

 

 釘宮は叫び、わざと距離をとり精霊砲を待つ。

 

 業を煮やした戦艦から精霊砲が発射された。

 

 それを確認すると釘宮はにやりと笑い、十手を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 椎名桜子が戦闘、もとい虐殺を行う森は着々に成長していく。

 

 森が広がり、テンペテルラを守護するかのように龍の首が並んでいた。

 

 「よっしゃあ!! 椎名桜子様爆裂だ!! バーカバーカ、連合のバーカ!!」

 

 もうすっかり満足したのか、椎名桜子は木々の城壁の中を闊歩している。

 

 椎名はポケットから種を取り出すと、それを蒔き始めた。

 

 「プラコテ・ビギナル 我が眷属に光あれ!! 神殿の住民に安らぎの子守唄を……」

 

 その種から光が広がり、“樹”が成長し、街全体に治癒魔法をかけてゆく。

 

 「うん、いい街だ。いい街だ。私決めた。ここ、私の守護区域に決めた。」

 

 落ち着いていたわけではないらしい。

 

 椎名の瞳は半開きで、完全に理性を失っていた。

 

 「ドレ・ラマテス、殺す。異端者。ブチ殺す!!」

 

 左右にゆらゆら揺れなから、椎名は、街の中央の屋敷に向かっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「桜子の治癒魔法が成功しましたか……。これでテンペテルラの住人に対してできることは終わりましたね。いささか、時間がかかったようですが……」

 

 柿崎は地面に降り立った。

 

 周りの戦艦は既に撤退した。

 

 釘宮の顔も、既に割れているだろう。

 

 「さてと、時間が経てばメガロメセンブリアの戦艦街にたどり着いて、我々を報告してしまいますし、少々面倒くさいですが、洗脳魔法でもかけてきますか……」

 

 柿崎は走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、釘宮は未曾有の危機に陥っていた。

 

 「頭が痛い……」

 

 「おいおいおいおい……、何もここまでやることなかっただろうよ!!」

 

 「うっぜえ」

 

 簡単に説明しよう。

 

 変態ナント・ラマテスに遭遇したのだ。

 

 「なんだっとぅううううう!!」

 

 「なんの用だよ。てか、岩陰に隠れてろよ。死んだふりしてろよ。殺すぜ」

 

 「はっはっは、本当にその気ならもう俺は死んでる」

 

 「それが遺言でいいのか変態」

 

 「なぁ、俺、何かしたっけ?」

 

 「俺の布団に頭突っ込んで欲情してただろ」

 

 「ごめんなさい」

 

 ナント・ラマテスの土下座が決まった。

 

 「ったく……。てか、なんだってんだよ俺は自分から攻撃してねえぞ!! 調べてみろよ!! 俺の魔法の痕跡なんかねえから!!」

 

 「だろうな……全く、転移魔方陣だろ。流石にわかるわ」

 

 「いきなりシリアス入るのはやめてくれねえかなあ……」

 

 「はっはっは、得意技だぜ」

 

 釘宮は頭を抱えてしゃがみこんだ。

 

 本気で苦手な人間らしい。

 

 腕に鳥肌が立っている。

 

 「てか、いいのかよ。早いところ街に戻ったほうがいいんじゃねえの? 父ちゃん死んじまうぞ」

 

 「いや、その父ちゃんのことで忠告に来たんだ」

 

 ナントはそこに座り込み、真剣な顔で言った。

 

 「オヤジは既に“氷原と不動の王(ニーズヘッグ)”を支配下においている。気をつけろよ」

 

 

 

 

 






次回でおそらく一章終了。

多分二章の前フリをばら撒きまくる回になると思う。
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