今回もオリジナルです
( ^ω^)_凵 どうぞ
プロローグ「変態紳士で参上」
戦闘から三日後、ナントのおっちゃんに洗脳魔法を施した俺たちはテンペテルラの内部で出かける準備を終えた。
あれからいろいろと大変だったんだよ……
まず、連合に指名手配された。
出回っている情報はリーダーである俺の名前“エン”と三人の性別、後は髪の色くらいだ。
似顔絵は発表されたんだが……似ていない。
完全な悪人面だった。
未だに自分の顔とは思えないがショックだったよ……
まぁ、いい機会ではあったから、俺は“釘宮円”と名乗ることにしようとおもう。
名前を発表した初日にクギミーと呼ばれたのはびっくりしたがな。
話がそれた……、話題を戻そう。
そして、テンペテルラだが連合から脱退し、桃源とともに独立した。
前々から話には出ていたらしく、今回椎名が残した“蛇樹”と“魔森のくまさん”が決め手になったようだ。
あぁ、あとテンペテルラの法律に「“磔の城の輪廻”を我が国永遠の盟主とする」という一文が追加された。
自衛団にそう名乗ったのはまずかったな……
なんか知らんが椎名が建てた神殿にダマスカス鋼をたっぷり使った像が建設されているようだ……
現実逃避のためにも早くここをさろう。
そして、三日間の間俺が何をしていたのかというと……
「“フライマンタ7000”の改良だよ畜生!!」
全身真っ黒に様変わりした“フライマンタ7000”を前に、少女釘宮は満足げに頷く。
先の戦で釘宮が使った兵器である
これで椎名の酔いは解消されるだろう。
“フライマンタ7000”の質量の関係上、作業に三日もかかってしまったのは釘宮にとって計算外だったが……
「やっと終わりましたか……ご苦労さまです」
そう釘宮に声をかけるのは柿崎美砂。
ウェーブのかかった紫色の長髪が特徴的な少女だ。
手にはグローブをはめ、いかにも出発の準備は万端といった様子。
「ごめんね、クギミー。私のせいで……」
そう言って申し訳なさそうに謝るのは椎名桜子。
猫族の少女で、三人の中では主に頭脳労働を担当することが多い。
「いいって、早速出発しようぜ!! それとクギミー言うな」
釘宮は軽く椎名に会釈する。
「「うん!!」」
そう言った二人を確認すると、釘宮は満足げに“フライマンタ7000”内部に入って行く。
「よしきた!! 運転なら任せてください!!」
柿崎は意気揚々と運転席に乗り込もうとする。
しかし、そうは問屋が下ろさなかった……
「あぁ、ついでに自動操縦もつけたから。三人でお話でもしながらゆっくり行こうぜ」
「……もしかして……、いや、もしかしなくても時間がかかっていたのはそっちですか……」
「アハハハハハハ」
“フライマンタ7000”の奥に進む。
それに椎名と柿崎も続いた。
「おい、美砂。行き先はどうするんだ?」
そのまま操縦席に乗り込んだ釘宮が聞く。
「フォエニクスに向かいましょう。その近くの
「わかった」
そういって、釘宮はカタカタと何かを入力する。
「よし、無理なく行けば五日程で到着だとよ……あと、魔力は一応柿崎のを使うようにしておくから……三人で三時間交代な」
「別に、ずっと私でも構いませんよ」
「いや、回復する時間は必要だよ」
そんなわけで俺たち三人はリビングでリラックスしているわけなんだが……
「なんだか、こうして向かい合うと……何をはなしたらいいかわからないな」
「そうですね……」
「あははははは……」
この三人、飯とか戦闘とかそんな話ばかりでこういう時に本当に何を話したらいいのかわからなくなる……
見た目は年頃の女の子なんだけどな。
この世界では見た目の年齢と実際の年齢がかなり違うことがあるからなんとも言えんが。
おそらくこの二人の実年齢も14歳なんてことはないだろう
「天気がいいですね」
「室内だぞ……」
「……」
美砂が黙り込んでしまった。
「それにしても揺れないし、音もないし、エン……円ちんはすごいね♪」
「まどかちん言うな。言いづらいだろ……」
「じゃあ、ドカチン」
「それじゃあ、常時切れてる人みたいだろ」
「じゃあデカち……「言わせねえよ」
「じゃあ、くぎみー♪」
「くぎみー言うな!!」
これ言ってみたかった。夢が叶った。
「うーん、魔法の話っていうのも味気ないですし、というよりくぎみーのあの魔法に関して言えば、私は役にたてそうにありませんし……」
「だからくぎみー言うなっての……」
「でも、確かにくぎみーの魔法は特徴的かも……相手の位置や行動、魔法を探査して逃走したり……戦うプログラムだね……。流石に専門外だよ」
「もうくぎみーでいいよ……」
「しかし、円の力がまだまだ付け焼刃であることも事実です。個人でもそれなりに戦えるようになってもらわなくては……」
「この天邪鬼どもめ!!」
釘宮は声を荒げて言った。
「でも、まぁ、確かに戦力増強はすぐに解決しないといけない問題ではあるよな……。そういや、お前らって近接武器は使えるのか?」
その質問に対して、柿崎と釘宮は決まりが悪そうに笑うと、
「それでしたら、私たち二人とも不可能です……」
「私は基本的に近接の対人戦闘は苦手だしね♪」
「だよな……。武器持って戦ってるのを見たことねえし……ってことは武器戦闘は独学でやんなくちゃいけねえのか……」
そんなことを言って釘宮は天を仰ぐ。
聞いた柿崎は彼女に似合わない素っ頓狂な声を上げた。
「ほへ!! それならば私がお教えできますが……」
「近接武器は使えねえんじゃねえの?」
「使えませんよ」
「それじゃあ無理だろ」
「いえ、お教えできますよ」
「どうやって……」
「ストーーーーーーーーップ!!」
なんだか収拾がつかなくなりそうだったのを見かねた椎名が二人の無益なやりとりを止めた。
「百聞は一見に如かず!! 美砂が武器を使うとどうなるか、見てみるのが早いと思うよ……」
そう言って椎名は右手をポケットにつっこみ、種を出し、木刀を創りだす。
それを柿崎に渡した。
柿崎はそれに魔力を込めた。
木刀は白く輝き始める。
釘宮はその剣を凝視する。
「すげえな……視界が滲んでやがる……空気が歪んでるのか……」
「私の魔力は膨大です。それこそ圧縮すれば空間が歪むほどに……しかし、私は出力を抑えるなんて器用な真似はできません」
柿崎が一層魔力を込めると、先端から砂となり、崩壊してゆく。
「私は武器の扱いには長けている方ですが、私の魔力に耐えられる武器がありませんので……。戦闘で近接武器は使えませんが、武器の扱い自体はお教えできますよ」
釘宮はそれを聞いて笑顔になる。
「それじゃあ、俺の相手をしてくれよ」
「了解いたしました」
「それじゃあ、船を停めるか……場所がねぇしな……」
釘宮は操縦室に向かおうとする。
それを止めたのは椎名だった。
「ふっふっふ……それには及ばないよ♪ 近接戦闘は完全に門外漢だから役にたてないけど、“空間掌握魔法”とか、“結界魔法”は任せてよ♪」
椎名は笑顔でそう言うと、その指先から茶色の蔦を伸ばす。
それは手のひらの上で球を作り、さらに何重にも重なって行く。
「構築『樹王の球体』♪」
……
……
……
「何も起こらないぞ……」
「いいえ、起こっていますよ」
「円、この球体の中に転移してみてよ♪」
釘宮は前髪を弄りながら怪訝そうな顔をすると、椎名の持っている球体の中にまず、小さな粒を転移させ、自分の足元に魔方陣を開く。
釘宮が正確に転移魔法を発動させるための媒体だ。
「それじゃあ、まぁ、行ってみるわ……」
柿崎と釘宮はその魔方陣の中に飛び込んで行く。
「いってらっしゃーい♪」
椎名はその場を離れると、一人操縦席に向かった。
ソファに座り込む。
「さてと、周りを警戒しながらメガロメセンブリアでくすねた本でも読むとしましょうか♪」
釘宮と柿崎は真っ暗な空間へと躍り出ていた。
「暗いな……」
「少し待ってください。いま準備しますので……
柿崎の周りに幾つか光球が現れる。
それは輝き、辺りを照らした。
釘宮と柿崎は地面に降り立った。
あたり一面は茶色い樹木で覆われている。
「なるほど……空間を引っ張って無理矢理広げたか……あるいはどこかからか空間を持ってきたか……」
「そんなところでしょうか……まあ、桜子の魔法ですし、心配ないでしょう」
柿崎は軽く現状を受け流すと、何やら金属の剣を地面から取り出した。
「たまにあいつ、とんでもないボケをかますからなぁ……。あんまり信用しすぎるのもどうかと思うが……、まあいいか」
釘宮は目の前に魔方陣を描き出した。
そして、そこに手をつっこみ、二本の十手を取り出した。
「そんじゃ、魔力切ってやるか……ご指導お願いする」
「魔力、使ってもいいですよ」
「へっ?」
「魔力が使えない程度で、気が使えない程度で私はやられませんので……。私は現段階では人間として最強ですので……」
柿崎は軽い笑みを浮かべながら言った。
「あなたに仕える戦士はたかだか数ヶ月前に生まれた程度のひよっこ魔法使いに、魔力が使えない程度のハンデで勝てないとでも? だとしたら、それはうぬぼれです」
柿崎は地面に魔力を込めた両足を叩きつけた。
震脚、地面が揺れる。
「そうかよ……それじゃあ、全力で行くわ!!」
釘宮は瞬動術で柿崎に接近する。
そして、十手を叩きつけた。
「微温い!!」
球体内に金属音が鳴り響いた。
椎名は読書を続けていた。
すでに10冊以上の本を読んでいる。
速読なんてレベルじゃないが、椎名はそれを読み取っていく。
椎名は次の本に手を伸ばした。
「あれ……」
椎名はその本に違和感を覚えた。
触ってみると、拒絶するように椎名の手を弾いた。
「ええと……
本を開いた。
「封印されてる? 本が? なんで?」
椎名は少し考えると極めて軽い感覚でその封印に手を伸ばす。
「『解除』」
そして、極めて軽い感覚で封印を解いた。
ぼふう……
気が抜ける音と共に周りに煙が漂い始める。
油断していた椎名はそれを思い切り吸い込み、咳き込む。
「けほけほ!! うわぁ……なんて古びた封印魔法……時間立ちすぎて術式が腐ってんじゃないの♪」
「心外ですね……腐ってなんかないです。煙は私の趣味ですよ」
椎名は声のした方を見る。
そこには、一人の男性がたっていた。
白いローブに身を包み、真っ青な眺めの髪をひとつにまとめ、見るからに魔法使いを体現しているその男。
「…………だれ?」
椎名の心の声だった。
鉄が飛び交い、空気を裂き、命を絶つ。
そんな高速の戦闘の中に柿崎と釘宮はいた。
瞬動術を駆使し、十手による打撃で攻撃する釘宮と、それをことごとく捌き、隙を突いた一撃を決める柿崎美砂。
身体能力だけで言ったら、魔力で体を強化している釘宮が圧倒的だ。
しかし、現時点では柿崎が優勢。
才能や経験なんて言葉では推し量れないような、戦士としての格の違いを釘宮の目前に叩きつけるような動きだった。
柿崎は舞うように攻撃をかわしては、気合一閃。
魔力をこめれば明らかに致命傷であろう一撃を釘宮に叩き込む。
「重心を低く!! 瞬動の入りの重心移動が顕著すぎます!!」
柿崎はそんな戦闘のなか、釘宮のなすべきを叫ぶ。
それに応えるように、釘宮の動きは改善されてゆく。
アーウェルンクスの学習プログラム。
それが本領を発揮する瞬間だった。
「インプット完了っと……せいやっ!!」
釘宮が下から柿崎をカチ上げようとするが、剣に受け流され失敗に終わる。
その隙に、柿崎は釘宮を蹴り飛ばした。
「油断しすぎです。相手の足運び、重心移動、筋肉の収縮から全身の動きを予想し、対応しなさい!!」
「むちゃくちゃだろうが!!」
「なら慣れるまで、御相手いたします!!」
「むちゃくちゃだぁぁああああ!!」
釘宮は叫ぶと、十手を魔法陣の中に放り込む。
そして、素手で柿崎に特攻した。
柿崎も剣を捨て、身構える。
柿崎の体に魔力がこもった。
そして、二人は激突した。
二人が白熱したバトルを繰り広げる中、椎名はまったりと過ごしていた。
机をはさんでソファに座る椎名と青年。
ついさっきあったばかりのはずなのに、この二人のあいだには長年連れ添った老夫婦の雰囲気がにじみ出ていた。
高齢者の定義で言えば、二人とも後期高齢者の後期なんて突破しているほどに高齢ではあるのだが……
「それで、あなたは一体誰なのさ♪」
目の前に座る青髪の青年に訪ねた。
青年は一口椎名の入れたお茶をすすり、
「アルビレオ・イマと申します」
「アルビレオ……じゃあ、あるびーだね♪」
椎名が思い切りアルビレオを指差す。
「へっ!?」
「嫌なの? じゃあ……あるビンビン!!」
「それは勘弁してください!!」
アルビレオが叫ぶ。
その時、地面に真っ黒な魔方陣が広がった。
その中から黒髪の少女、釘宮と紫髪の少女、柿崎があらわれた。
すぐさま、椎名が二人に念話を入れる。
(正体不明の魔法使いがいる。名前は黒鞭、砂鳥、エンで通そう!!)
椎名の言葉に二人は反応する。
「桜桃、疲れた……治癒魔法をお願い」
釘宮はそう言いながら倒れ込んだ。
「さてと……エン様は根性がないですね……腕がちぎれた程度で……」
「いや、腕がちぎれるって相当だぜ……まあ、くっつくからいいけど……」
柿崎がドスンとソファに座る。
「それで……その男は?」
柿崎が剣に魔力を込め、崩壊させながら言った。
「あぁ、私は……」
「この人はビンビンだよ♪」
アルビレオの自己紹介を椎名が遮った。
「なんだかメガロで私が買ってきた本に封印されてたみたいだけど……」
「それよりも、本自体のようですね……。本の精霊、本の付喪神、あるいは自身を本に封印した人間ですかね……落としましょう。今すぐ再封印して落としましょう。あるいは私が破壊しましょうか……」
「あはは、結構な美形だし、売りに出せば売れるんじゃないかな……えーっと、完全従属用の魔法具どこにやったっけ……」
「本のページを破ったらどうなりますかね……」
アルビレオの顔がどんどん青くなっていく。
「ビンビンさんとやら、あいつら二人が盛り上がるとしばらく止まんねえんだ……腕をつなげてくれねえか? 出来んだろ」
釘宮は涙目でそう言った。
「さてと、お前ら反省できてんのか?」
「「ごめんなさい」」
釘宮が作ったガパオライスなるもののお預けを喰らいながら、椎名と柿崎は謝った。
それを片目に口に運ぶ者が一人。
「美味しいですね……旧世界の料理ですか?」
「あぁ、旧世界の料理だ」
釘宮はアルビレオに水をつぎながら言った。
「それで、エンさん。この集団は一体何の集まりですか? 三人とも高位の魔法使いということはわかるのですが……」
「うぅん……、言うなればトレジャーハンターかな」
「トレジャーハンターですか……何をお探しで?」
「一応、今は
「相手の真名を知るというあの魔法具ですか……」
「まあそうだな……で、お前は誰だ? ビンビンなんてそんな妙な名前じゃないんだろ?」
釘宮の言葉に、アルビレオは苦笑を浮かべ、答える。
「私はアルビレオ・イマです。無所属の魔法使いですよ……」
アルビレオ・イマ……一番好きなキャラ……