釘宮円で葛藤   作:NANA@

7 / 26
第六話「猫耳少女で逃走」

 俺ってよく生きてるなあ。

 

 毎日毎日鬼のような師匠たちにしごかれて

 

 それはもう谷から落とされて、必死に登っていったら、

 

 「何だ……、登れたんですか……」

 

 とか何とか言って地面の“中”に転移させるような連中に

 

 生き埋めって本当に苦しいんだな、初めて知ったわ

 

 土が動かねえと思ったら上からコンクリートで押し固められてたわ……

 

 ……そういえば一度だけ肺の中に寄生植物を植え付けられたことがあったっけ……

 あれは本気で死ぬかと思った。

 

 まぁ、過ぎ去ったことはもういいか。

 

 大事なのはこれからだし

 

 けして、過去のことを忘れてしまいたいなんて理由じゃない!!

 男ってのはどんなに理不尽な世界でも、不条理な運命でも、ガッツで乗り越えていく生き物なんだ!!

 

 俺は女だけど……

 

 

 さて、俺が生まれてから早くも三ヶ月がたった。

 

 俺の体のことだが、生後一週間ほどからめきめきと成長を始め、それから五日で身長約160㎝まで大きくなり、止まった。

 

 それから考えるに、どうやら俺は人間では無いらしい……

 

 まあ、ここは悪魔や精霊が存在する『ネギま』の世界。

 自分が人間じゃないくらいで驚かないさ……

 身近に猫耳の亜人もいるんだ。

 

 

 しかしそうは言っても、外見は完全に人間だ。

 

 黒い艶のある髪の毛に、少し好戦的な瞳。

 

 そして、低めでハスキーな声。

 

 ここまで外見的な特徴を上げればわかるだろう。

 

 間違いなく原作に出てきた『釘宮円』その人だ。

 

 気がついたときは興奮した。

 

 俺の場合憑依って形になるんだと思うけれど、やっぱり、原作キャラに会うって興奮するよね!!

 

 もう嬉しくて走り回ったよ!!

 

 それはもう砂漠の中をどこまでも走って、気持ちよかった。

 

 

 

 でも、冷静になって考えてみると明らかにおかしい。

 

 釘宮円は原作キャラの中でも魔法に関わることのなかった、めづらしく普通の女子中学生だったはずだ。

 

 普通であることが周りから見れば異常であるくらい普通だ。

 

 無論、人間だったはず……

 

 それがこんな魔法に満ちた環境で生まれるのは明らかにおかしい。

 

 その証拠に、俺は自然に魔法に関わっている。

 

 自分の意志には関係なかったはずだ。

 

 そう考えると原作のときには釘宮円は魔法をしっていたはずだ。

 

 それにもかかわらず、魔法に関わっていない……

 

 何か目的があったのだろう。

 

 

 俺が思い付く可能性としては、

 

 『創造主が封印されている世界樹の監視』

 

 『英雄の息子であるネギ・スプリングフィールドの成長を見届ける』

 

 『学園都市結界による魔力の隠蔽』

 

 などであるが、正解はわからない。

 

 そもそも他人の空似って可能性もあるんだし……

 

 考えてもどうしようもないか。

 

 考えるにしても情報が少なすぎるからな、まだ、結論を出すのもあぶないだろう。

 

 

 

 

 

 

 と、まあ、そんなことを考えながら、俺は昼飯の後の腹ごなしに十手を振っていた。

 

 始めてからまだ時間はあまりたっていないが、十手というのは奥深い武器で、使えば使うだけ引き込まれる面白さがある。

 

 打撃という単純な攻撃方法。

 

 相手の攻撃を搦め捕るための側面についた鉤。

 

 中に仕込んだ鎖分銅等の様々なギミック。

 

 どこまでも武骨で、その多様性といったらたまらない。

 

 いつまでも振っていたい衝動にかられる。

 

 “気”を練り上げ、武器に纏わせそれが発散しないように慎重に奮う。

 

 たたき付け、搦め捕り、打ち上げて薙ぎ払う。

 

 そして中から収納してある鎖分銅を解放し、振り回す。

 

 「ふう……」

 

 一連の動作を終えると俺は一息ついた。

 

 魔法障壁も張れるようになったが、俺にとっては“気”を練り上げ体をまるごと強化するほうが楽でいい。

 

 ここ三ヶ月でできるようになったことはほかにもいくつかある。

 簡単な転移魔法に、肉体変化の魔法、そして、薬品を使った魔法生物“樹”の生産だ。

 

 転移魔法と言っても、俺の転移魔法は魔方陣を媒体として使うため、出発点と到着点の両方に魔方陣が存在していなくてはならない。

 

 ぶっちゃけ、転移魔法と言うよりも、空間同士を繋げる扉を作る魔法だ。

 

 だから、逃げたりするのに使うのは不可能だし、効率もいくらか悪い。

 

 でも、転移魔法の基礎だからなあ……

 

 逃げるための魔法は影や水、炎を媒体とした転移魔法は現在進行形で修業をしている。

 

 それにしても、自分がどれだけ強うくなったかはわからないからなあ……

 

 何か腕試しをする機会があればいいんだけど……

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ねえ エンっち、日本に行かない?」

 

 髪の毛と同じ、橙色の猫耳少女黒鞭(くろむち)がそんなことを言った。

 

 ふかふかの絨毯の敷かれた自室でだらけつつ、ワイン……もとい、ぶどうジュースを飲んでいたエンは

 

 「ノックぐらいしろ、ビッチ」

 

 「ビッチって酷くない!! そりゃあ、完全に恋とかに興味がなさそうなエンっちと比べたら、そうなのかもしれないけどさ……」

 

 「それで、日本だっけ?」

 

 「無視!! 放置プレイ!! いつもの激しいツッコミはどこにいったの!?」

 

 黒鞭は若干涙目になりながら、言った。

 

 「俺も新しい仁平がほしいし、良いんじゃねぇの?」

 

 対してエンは、黒鞭の方を見ようともせず、絨毯の糸の数を数えるという不毛な行為に神経をすり減らしながら……

 

 「畜生……俺だって……周りにいい人がいれば恋のひとつやふたつ……」

 

 「ごめんなさい!! ふざけないから許して!!」

 

 半ば悲鳴のような願いとともに、黒鞭桜桃は華麗にジャパニーズ土下座をきめた。

 

 

 

 

 

 

 「で、日本だったっけ?」

 

 エンはとりあえず黒鞭を部屋の椅子に座らせると、自信はベッドに腰を下ろした。

 

 一応、満足はしたようで、その顔にはいつもと同じ、好戦的な笑みが浮かんでいる。

 

 「そう、私のが新しく創った“樹”がこの辺りの土じゃまるで育たなくて……、日本の土なら育つと思うんだけど……」

 

 「土を持ってくるのか?」

 

 「ううん……、そうじゃなくて向こうに植えてしまおうかと……」

 

 そう言って黒鞭は一枚の紙を取り出した。

 

 それをエンに手渡す。

 

 「これは土地の権利書か……」

 

 「そう、欲しい土地があったから買ったの。」

 

 エンは慎重に目を通した。

 

 日本という場所は“原作”と関わりの深い場所である。

 

 そうなるとどうしても慎重にならなくてはならない。

 

 「埼玉県、麻帆良か……」

 

 そして、そこには間違いなく“原作”との関係が深い場所の名前があった。

 

 (ってことは、“樹”っつうのは間違いなくあれよだな……一応確認しておくか……)

 

 エンは真剣な眼差しで黒鞭を見つめた。

 

 「なあ、ビッチ。ちなみにどんな“樹”だ? お前がそうまでして植えたいのがただの魔法の木ってわけじゃねぇんだろう?」

 

 そのエンの確認の言葉に、黒鞭は食らいついた。

 

 それはもう手負いのヌーに群がるピラニアのように!!

 

 まあ、ヌーはアフリカにいて、ピラニアは南アメリカにいるから、そんな自体にはならないだろうが……

 

 「あたりまえじゃないか!! 凄いんだよ!! その名もSGE(スゲェの)1号!! 全長250メートルを越える大きさは言うまでもなく、その力はなんと周りの魔力を!!!!!!」

 

 「わかった、落ち着け!!」

 

 「地下の魔力と空中の魔力との循環スピー!!!」

 

 「落ち着け、馬鹿!!」

 

 エンは暴走を始めたマッド・サイエンティストをビンタで黙らせた。

 

 そして、エンの中で予想が確信にかわる。

 

 あの木とは原作では“世界樹”とか呼ばれてたアホみたいに大きな魔法の木だ。

 

 その木の力は強大で発光の時期ともなれば、周りで行われる告白の成功率が120%を上回る……らしい。

 

 あれ? これって凄いのだろうか?

 

 とにかく、原作では大切な意味を持った木だったはずだ。

 

 と、まぁ、エンがそんなことを考え、少し気になったことを聞いてみることにした。

 

 「それ……、連合や他の所属の魔法使いたちがほうっておいてくれるのか? そのサイズになると、内容する魔力量も凄まじいことになるんだろう?」

 

 「そのへんは大丈夫……。私は植えたあとに正常に機能が働くかどうかさえ確認できれば、後はどうでもいいんだ」

 

 黒鞭はいつもどおりの無邪気な笑顔を浮かべてそういった。

 

 それを見たエンは諦めたように立ち上がり、クローゼットに手をかけた。

 

 そして、中にあるものを手当たり次第に影の中にぶち込んでいく。

 

 転移魔法という高等技術の大いなる無駄遣いなのだが、エンは便利な収納としか、思っていない。

 

 「しょうがないな……。どうせ俺が何を言ったって行くんだろ? このマッド」

 

 「もちろん。グルグルに縛り上げてでも連れていくよ」

 

 「何でとは聞かない……」

 

 「私特製の蔦で……」

 

 ポケットから植物の種を取り出し笑を浮かべる黒鞭を確認すると、

 

 エンは目にも止まらぬ速さで逃走していた……

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで、黒鞭によって洗練された蔦植物から逃れることが今のエンにできるはずもなく、簡単に捕まってしまった。

 

 「畜生!! いたいけな女の子を縛り上げて何が楽しいんだ!!」

 

 エンは必死に講義をしながら、力づくで蔦を切ろうと、必死にもがく。

 

 「止めたほうがいいよ……、その子には石化の毒を付けてあるから……」

 

 エンの動きがぴたりとやんだ。

 

 そのままエンは黒鞭に担がれて、紫色の髪の毛のどこか高貴雰囲気の人間のもとにたどり着いた。

 

 その人物に声をかける。

 

 「なあ、すれ違ったら思わず三回くらい見直しちゃうくらい整った顔立ちの姉ちゃん。このビッチを止める方法ってなんかないの?」

 

 その命乞いのような質問に、何やら龍のようなものにまたがっている砂皿御前(すなざらみさき)は、

 

 「ご命令とあらば、今すぐにでも処分いたしますが……」

 

 「そこまでは、いいや」

 

 砂皿は「左様で……」とだけ返事をすると、赤い翼を持った龍に向かってを話した。

 

 その内容を理解したのかどうかはわからないが、黒鞭の表情が面白いように引きつってゆく。

 

 龍に砂皿がまたがり、龍が軽く飛んだ。

 

 そして、

 

 黒鞭とエンは龍の足の鉤爪によって乱暴に掴まれた。

 

 「やっぱり」

 

 「へっ!!」

 

 絶望的な声を上げる二人に対し砂皿は天使のような笑顔で、

 

 「このまま日本に飛びます。龍の足にないように、しっかりと魔法障壁をはっておいてくださいね」

 

 と、悪魔のような死刑宣告をした。




 今回も駄文に付き合っていただき、ありがとうございました。

 どうですかね・・・・・

 次回は日本でひと悶着。

 楽しんでいただければ幸いです。

 展開が早いのはごめんなさい……

 
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。