「やっぱりだ。目当ての人はいたみたいだよ、先生」
「クシナさん、こんばんは。あ、綱手さんもこんばんは。それに、シズネとヒノキも」
「こんばんは綱手さん。それに、他のみんなもね」
ラーメンを食べていると、見知った人達が現れた。
上忍のミナトをリーダーとした、4人組だ。
彼等は母さんにうやうやしく挨拶した後、僕と反対側のハバネロの隣に座った。
「ミナト、今日はどんな任務だったの?」
「ん? そうだね」
「はいはい! 俺が言う!」
「オビト、言うのはいいけど、依頼人のことまで話しちゃダメよ。秘匿する義務ってのがあるんだからね」
「分かってるって、リン。えーっと、あれは不吉な曇り空の……」
調子のいい男、オビトが己の武勇伝を語るように仰々しく語っていく。
「……だからそこで、俺が依頼人を担いで走ったんだ。もう敵さんも驚いただろうね。この歳で、なんてスピードだろうって」
長い話だ。それにところどころ都合のいい解釈が混じっている。
おもしろくなくはないが、そろそろ話題を変えてほしい。
なんかハバネロは、話を聞きながらチラチラとミナトの方を見ているし。
ミナトも時たまハバネロの方を見るから、目が合って2人して恥ずかしそうに視線をそらすし。
オビトはハバネロに聞かせていたはずが、いつの間にかリンに向かって話しているし。
リンはうなずきながらカカシをチラチラ見ているし。
カカシだけは1人で黙々とラーメンを食べているし。
「なんだこりゃ」
「ふふっ、お前もな」
お手上げのようなポーズをすると、母さんにガシッと頭をつかまれた。
そのまま撫でられる。
「もういい。食べ終わったし、帰ろう」
あまりこの場にいたくない。
不満げな顔を母さんに向ける。
「分かった。それじゃあ帰ろうか」
母さんは「ふふっ」と笑ってから立ち上がった。
家に帰りながら、先ほど出会った男のことを考えてみる。
波風ミナト。金髪青目のイケメン。忍術の才能もピカイチ。
やつは次の世代のトップ、四代目火影に最も近い男だと言われている。母さんにそう聞いた。母さんと同じ班だった大蛇丸ってやつも有力らしいけど、そいつはたぶん無理なんだってさ。
話を戻す。
やつはさらに、ハバネロといい仲であるらしい。同世代だとか。
と言っても、ふつうに考えると、才能と血筋は僕の方が上だ。やつもそこそこできるらしいけど、僕はそこそこどころじゃないからね。だからネックになるのは年齢。それだけ。
それに、あまり詳しくは聞いてないけど、ハバネロは子供を産みにくい状態にあるらしい。だけど、木遁の使える僕がそばにいれば子供を産んでも安心らしい。
「結婚が先延ばしにされる可能性は高い」「ヒノキがソバにいてくれたらうれしいだろうとは思う」なんてことを母さんは言っていた。重大な何かを隠されているみたいで、よく分からないけど。
でも、とりあえずミナトは倒すべきでライバルである気がする。
そこそこやるみたいだし、相手にとっても不足はない。こちらも本気で勝負してやる。
明日からは霊化の術でミナトの周辺も調査してみよう。弱点とかが分かるかもしれないから。
ついでに、僕自身の修行も本気を出してみようかな。
母さんにも内容を変えるように頼んでみよう。
「綱手様ですね」
と、そこで知らない声が聞こえてきた。
振り向くと、犬の仮面をした忍びがいた。
「そうだが」
「至急、ケガ人の治療を頼みたいのですが」
「ちっ、しゃあねえな。ヒノキ、シズネ、先に帰ってな」
戦争が始まってからというもの、こういうことがよくある。
「うん、分かったよ」
「分かりました」
と言ってから小さくため息をつき、にこりと笑って母さんに手を振る。
母さんもにこりと笑って応えてくれる。が、すぐに真剣な顔になって「行くぞ」と言って犬仮面の忍びにうながす。
しかし彼は動かない。
「申し訳ないのですが、そちらのシズネさんも一緒に」
これは滅多にないことだ。よほど医療忍者が不足しているらしい。
シズネさんは「私はかまいませんよ」と答えた。
となると、僕は一人か。いや、付いて行けばいいのかな。
「ヒノキを一人で家に置いておくわけにはいかない。連れ去られたらどうするんだ」
「御同行願えれば」
「僕はそれでかまわないよ」
ちょうど医療忍術を学びたいと思っていたところだしね。
母さんは複雑そうな表情を浮かべている。悲惨な現場を見せたくないのだろう。
だけど、心配しなくていい。僕はそういう場面を何度も目にしている。生霊の状態でだけどね。
というわけで、とある病院に到着。
着いてから気付いたんだけど、普通に全力で走っちゃったよ。
言い訳のしようがないほどに、力の一端がバレちゃったね。犬さんにだけだけど。
「お前は受付で待ってな」
「え、うん」
いざ、というところで母さんに止められた。
現場を覗くつもりだったけど、やっぱそうなるよね。
まあ霊化の術を使えば覗けるけどね。
……あまり言いたくないけど、赤かったと言っておこう。
時折見える内臓の色は、さらに不気味なものだった。
ちなみにだけど、母さんの医療忍術はここ何年かスランプだったらしい。僕がケガした時に久しぶりにやってみて、それで昔の感覚を取り戻したんだってさ。