リンさんのことは気になったけど、母さんが強い口調で「聞くな」と言うから聞かなかった。
よっぽど本人にとって見られたくないような状態なのだろう。
それに任務に忙しくて、自分のことだけで精一杯でもあった。僕は自分のできることをがんばるから、リンさんについては母さんたちに任せようと思った。
ちなみにだけど、僕は基本的にシズネさんと一緒に行動で、他の大きなかたまりに交じって後ろの方でケガ人を治療しまくったよ。やることは初めからずっと変わらなかったね。
この点は助かったよ。さしたる経験もないのに応用なんてやられされたらパニックになって失敗してしまっていたと思うよ。
それで、1年ぐらいずっとそんな調子でやっていると、ようやく戦争が終わったよ。よかったね。
里中お祭り騒ぎ、とまではいかないけど、概ねみんな喜んでいるよ。
さらに、今日は僕の家にお偉いさんが集まってくるらしいよ。詳しくは教えてくれなかったけど、終戦記念にぱあっと楽しんじゃうのかな。
というか、既にたくさん集まってるよ。
「だああ。ばぶう」
どこの子か知らないけど、かわいらしい赤ちゃんが1人いるよ。
「おおー、よしよし。スズネちゃんかわいいよスズネちゃん」
赤ちゃんの名はスズネと言うらしい。
あやしているのは“三忍”の一人、自来也。
「スズネよ。わしの下には来てくれんのか」
その反対側で両の手のひらを前に出してがっくりと肩を落としているのは火影様。
「本当にかわいい。私も早く子供がほしいってばね」
「そ、そうだね」
と、一方は苦笑しつつもラブラブっぷりを見せつけてくれるのは、ミナトとハバネロ。
「ああ、本当にいいカップルですね。平和という幸せを教えてくれているようです」
「シズネさん。棒読みになってますよ。素直に嫉妬していると言えばどうですか」
「それを言葉にすれば、余計みじめな思いをすることになる」
「そうですね。そんな気もします」
実はミナトはかなりモテている。いや、それも当然だろう。整った顔、やさしい性格、里一番の実力、今回の戦争で残した実績、それら全てがモテる要因となっているのだから。
ハバネロの方はそこそこと言ったところ。彼女ほど美しい女性はそういないが、性格がきつい分敬遠されている。
「あとはカカシだけか。大蛇丸はどうせ来ないしな」
母さんも買い物から帰って来たようだ。
「すいません。カカシも、少し前までは」
「ああいや、分かっている。気にしなくていい」
謝ろうとするミナトを母さんが制する。
その理由は僕だって知っている。
カカシはオビトが死んでしまってから、約束も忘れて墓参りに入り浸るようになってしまったのだ。
「おじゃましまーす」
「お、噂をすればなんとやらかな」
そのカカシもやってきた。思ったよりは遅く無かったかな。
「だぶううう」
「ああっ」
「ん? なに、この子」
カカシが現れるや、スズネは自来也から離れ、ハイハイでカカシにすり寄っていく。
そして両手を広げ、抱きついた。
「さて。では、本日集まってもらったわけを話そうか。ずばり、この子についてなんだが」
と言って母さんが指さすのはカカシ、の足に抱きついている赤子。
というか、どんちゃん騒ぐために集まったわけじゃなかったんだね。
「今から、誰が親になるかを決めたいと思う」
これは予想外の言葉を聞いた。
いや、つい最近まで戦争があったのだ。そういう子はいくらでもいるだろう。
でもふつうの孤児なら孤児院にあずけるはず。わざわざお偉いさんが集まって決めるということは、それなりの血筋の子ということだろう。
「DNAとしては、ヒノキとリンの子ということになる」
なるほど。親は僕とリンさんか。
「って、ええっ?」
な、なんだって?
「ああヒノキ、すまない。今までこんな重要なことを黙っていて」
母さんは頭を下げる。
周りに目を向けると、みんな難しそうな顔になっている。いや、ハバネロだけはキョロキョロとあたりを見回している。
やっぱり聞き間違いじゃなかったんだ。でも、僕は精通すらしていないし。
思い当たる節と言えば、大蛇丸が暴走したとしか。……うん。ありえそうだ。
「皆も分かっているとは思うが、リンは大蛇丸の下にあずけていたのだ。ヒノキの木分身もな。それで、あいつはついついやってしまったらしい」
ついついて。
反省の足りなさそうな顔が目に浮かぶよ。
もう苦笑いするしかないね。火影様と自来也なんてむしろ僕より苦い顔になってるし。
「さっぱり分かんないってばね。ミナト、子供って愛し合った男女の下に産まれるんじゃなかったってばね?」
「うん、そうなんだけど、大蛇丸さんはいろいろと特殊だからね」
「特殊? 大蛇丸さんはすごいってばね?」
「うん。すごいとは思うよ」
ははは、とミナトも苦笑している。ハバネロは未だよく分からない様子。DNAとか知らないのかな。説明しても分からない可能性もあるけど。
「あいつも一応はリンを救おうとしていたようだがな。この子も、リンの新しい器として用意したらしい。新たな転生先として」
「転生? それってもしかして、転生を医療に生かそうとしたの?」
「そうなる」
それはすごい発想だ。
でも確かに、転生できればどんなケガや病気でも治せそうだ。
「この子にもリンの意思を宿らせたらしい。まだ目覚めていないし、今後目覚めるとも限らないけどな」
「宿らせただって? それはつまり、この子はリンってことなのか?」
と、カカシが足元の赤ちゃんを指さして言う。
「厳密には違うが、混ざっているのは確実らしい」
「混ざるって……。じゃあ、本体のリンは?」
「もはや抜け殻だ」
もう僕も口ぽかんだ。やっぱり大蛇丸はやばいやつだっだ。
でも、リンさんが生き残るにはこれしかなかったのかもしれないし、責めることもできない。
あとの問題は、スズネを幸せにできるかどうかなのだろう。たぶん。
「というかスズネの名前って、リンだから鈴の音ってことでスズネにしたの?」
「そうだ。大蛇丸はそう言っていた」
なんだあの人。意外とシャレてるんだな。