ところで、一応議題であった「スズネを誰の子として育てるか」についてだけど、あっさり母さんに決まったよ。
年齢、生活の余裕、DNAなんかを総合して判断されたよ。
年齢で僕とシズネさんとカカシがアウト。
今後の忙しさを考えてミナトと火影様がアウト。
自来也とハバネロは「子育てを任せるのにはちょっと精神年齢が」とは言いにくいから、DNAの近い母さんでいいじゃんってことになったよ。
よかったよ。家族が1人増えたよ。
かわいい妹であり、DNA的には娘だよ。すごい背徳的な響きだね。
ともかく、もう戦争は終わったのだし、仲間思いのとってもいい子に育てたいと思うよ。リンさんの記憶が目覚めてもふつうの家族として接するつもりだよ。前からそんな感じだったしね。僕はあまり相手にされてなかったけどね。
ついでに、この機にシズネさんをシズネ姉さんと呼ぶことにしたよ。スズネと名前が似ていてややこしいし、元々シズネさんが母さんに引き取られた時点で姉みたいなものだったわけだしね。
「シズネ姉さん、スズネはカカシのことが好きみたいだね」
いろいろと決まった後に宴会が始まったけど、スズネはずっとカカシに引っ付いているよ。
「そうね。ひょっとしたら、リンの影響が出ているのかもしれないわね」
お兄ちゃんとしては複雑な気分だよ。だけど、スズネ本人は幸せそうな顔をしているし、これでいいのかもしれない。
年齢差は気合で乗り越えろ。
僕だって年上大好きだしね。年下が嫌いってわけでもないけどね。
その日はみんなでゆっくりわいわいやっていたけど、それからはとても忙しい毎日が続いたよ。
僕はさして忙しくないけどね。シズネ姉さんと一緒に妹の面倒をみるだけでよかったから。復興を手伝ったりはしたけどね。
でも大人達、特にミナトや火影様はとても忙しそうだったよ。
戦争の条約とか平和会議とかであっちこっち飛び回っていたよ。
そう言えば、ミナトはもうすぐ火影になるみたいだよ。戦争が終わったこの機に世代交代を進めるんだってさ。
逆に言えばチャンスでもあるよ。ハバネロ改めクシナさんは、1人お里でお留守番中だからね。そりゃそうさ。彼女はそういう頭を使うものは苦手なんだもん。
「よっしゃーーー。今日も張り切って復興を手伝うってばねーーー」
1人でも元気だけどね。
今も1人で200キロくらいの荷物を乗せた人力車を引っ張っているよ。
「クシナさん。僕も手伝いましょうか?」
「いいってばね。ヒノキは体力を温存しといてほしいってばね」
手伝おうとしても笑顔で断られるよ。
僕の木遁は復興にとても便利だから重宝しているらしいよ。
あと、母さん曰く木遁が使えることはもうバレてもいいんだって。大変な時期だし、隠してもどうせバレるかもしれないからだってさ。
戦争で荒れ果てた町に着くと、真っ先にこの術を唱えるよ。
「木遁・連柱家の術」
一瞬で住宅街になるよ。僕のチャクラも一瞬でなくなっちゃうよ。
「すっごーーーっい。やっぱりヒノキは頼りになるってばね」
喜んでいるクシナさんに背中をバーンと叩かれる。
少し咳き込んじゃうけど、悪い気はしない。
「どうも」
だけど、これをするだけで動けなくなっちゃうから少しむなしい。
あとは応援するだけだもん。今日はシズネ姉さんもスズネも別の場所にいるし。
まあ、クシナさんを見ているのもそれはそれで楽しいけどね。
「よおヒノキ。見てたぜ」
と、後ろから話しかけられた。
高い声。僕と同い年くらい。聞き覚えもある。
「もしかして、イルカ?」
「ああそうさ」
振り返ると、かつてのクラスメイトがいる。
「しっかし驚いたぜ。力を隠しているとは思ったが、ここまでだとはな」
「まあ僕の場合は親が親だしね。物心ついた時にはチャクラを練る訓練やってたし」
「ははは。すげえな、そりゃあ」
イルカは苦笑する。僕も「ははは」と笑う。
「でも、なんで力を隠していたんだ?」
と、久しぶりの質問も。
「そうだね。実力もバレちゃったし、言ってあげてもいいよ」
僕は説明していく。
母さんから聞いた父さんとおじさんの話と、母さんが僕に言っていた理想の生き方の話を。
「なるほどな。確かに、そういう生き方もありなのかもしれねえな」
意外とイルカは納得したふうだった。
「イルカはそういう生き方したい?」
「さあな、分かんねえ。どうせ俺にゃあ無理だしな。精一杯に生きても平凡だから」
「精一杯? あれで全力だったの?」
「何気に毒づくんだな。お前」
「ああ、ごめんごめん」
僕はもう一度「ははは」と笑う。
イルカは笑わなかった。
「ところでよ。お前、クシナさんのこと好きなのか?」
と、ここで急な話題転換が。
「それがどうかしたの?」
と言っても、僕もこういう話には慣れている。
「なんだよお前。恥ずかしがんねえのかよ」
「よくあることだからね」
「そうなのか。そんじゃあ、告白とかはしてんのか?」
「やってるよ」
「そうなのか」
まあ、あんまり真剣には相手してもらえていないんだけどね。
「好き」と言えば「私も好き」と笑顔で言われて、頭を撫でられて、それで終わりだから。
「まあ、今回ばっかりは相手が悪すぎたな」
「年齢以外は全部僕が勝ってるよ」
なだめてほしくないね。
まだ僕は諦めてないから。
「ええっ。いや、そうか。悪かったな」
「いいんだ、別に。これは自分に言い聞かせているだけみたいなものだから」
ある日のこと。
明日にミナトが久しぶりに里へ戻ってくるとなって、クシナさんが妙にそわそわし始めた。
気持ちは分からないでもない。が、どこか怪しい。いつもとは違う緊張感を感じる。
その日の夜に、めずらしく彼女一人でうちにやってきた。なんでも、母さんに相談があるらしい。僕たちには秘密で。
僕は覗くなと言われたけど、気になったので霊化の術で盗み聞きすることにした。いや、結界に弾かれた。この徹底ぶりはなんだ。
次の日。
平和条約を結んだ火影様たちを迎えるとあって、里はちょっとしたお祭りのようになった。特に、火影様の通り道はパレードのような形で人垣を作るらしい。
僕も母さんたちと一緒にそこに並ぶつもりだった。だけど「私たちはすることがあるから先に行っててね」と言われて、1人で向かうことになった。
その道の途中。突然、キツネの面を被った忍びに話しかけられた。
「綱手様よりあずかっております」
と言って一通の封筒を差し出してくる。密書と書いてある。
見るに、確かに字の書き方は母さんに似ている。
僕はなんとはなしにそれを手に取る。
「えっ」
すると突然、忍びは挨拶も無しにどこかへと行ってしまった。かなり素早かった。たぶん上忍だな。
仕方ないので、ひとまず手紙を読むことにする。少しだけ周りにも警戒しながら。
「ふむふむ。……って、ええっ」
驚くべき内容だった。
なんと、クシナさんを連れ去れと書いてあるのだ。場所も指定されている。神社のすぐ近くだ。
そこでミナトと戦う場を用意してやると書いてある。勝てば結婚は取り消しにしてやるとも。
「何これ。勝ったところでクシナさんと付き合えるわけでもないと思うんだけど。何を考えているのかな。というか、結婚て」
いや、思い当たる節はある。
昨日のことだ。クシナさんはやけに顔が赤かった。もしからしたら、母さんにそういう相談をしに来たのかもしれない。
だとしたら、もうどうしようもない気もする。こういうのって本人たちの問題でしょ。
でも、よく見ると火影様の判も押してある。どうにかなるのかな。
「とりあえず、やるだけやってみようか。僕ももう半ば投げやりだったしね」
うん。どうせクシナさんを取られるなら、負けてからの方が諦めもつくよね。
ここは乗せられてみよう。
歩いていると、また先ほどの忍びがやってきた。
次の密書には集合場所が書いてある。
面もわたされた。キツネの面だった。
指定された場所、アカデミー前に着くと、すでに4人の忍びがいた。
みんなキツネの面を被っている。
「来たか、ヒノキ」
と言いながら、1人が面を脱ぐ。
「あなたは、奈良家の奈良シカクさん!」
「わしもいるぞ」
「わたしもだ」
「俺もな」
「秋道チョウザさんに、山中いのいちさん。それに知らない人まで」
「なっ。俺は油目……」
「では早速。今回の作戦の説明を始めよう」
語り始めるのは、木の葉のブレーンとも言われるシカクさん。
どんだけ本気なんだ。この作戦。
「いいか。ミナトの目の前でクシナを攫ってやるんだ。俺が影縛りで皆の動きを封じたところで作戦スタートだ」
すいすいと話は進んで行く。
油目なんとかさんとチョウザさんは協力してミナトを足止めする。いのいちさんはカカシに心転身してミナトにクシナさんの居場所を伝える。
「クシナを縛るのはヒノキの木遁だ。任せたぞ」
そして、肝心の連れ去るのは僕の役目。
「分かりました」
返事したはいいけど、できるかなあ。
クシナさん、すごく力が強いもんなあ。ちょっと不安だ。
「なお、この作戦には火影様と綱手様と自来也様が全面的に協力してくれることになっている。他にも味方がいる。バックアップの方は安心すればいい」
そうなのか。なら、心配はいらないのかな。