“冥府の炎王”コロナ・ティミル 作:冥府の炎王
『お集まりの皆様。本日はミッドチルダ格闘技大会、年齢無制限の部へようこそお越し下さいました。もう間もなく開催いたしますので、少々お待ちください』
アナウンスが流れる中、セッテやフェイトさんと共に選手控室で待っています。予選からあるので、他の人も沢山居ます。大人達に交じっている私とセッテは明らかに浮いていますヴィヴィオとリオはなのはさんと一緒に観覧席に居ます。
『コロナ、大丈夫ですか?』
「問題ありません。セッテ、デバイスは?」
「ベル、大丈夫。試合用に調整した」
「私としては、心配だからここで止めて欲しいんだけどね……」
「駄目です」
眼を瞑って、瞑想します。ちなみにフェイトさんが管理局の制服を着ているので、因縁をつけてくる人は居ません。
『これより、Dブロックの予選を開始します。選手の皆さんは入場してください』
ぞろぞろと有象無象が進んでいく中、私はゆっくりと最後を進む事にします。
「では、行って参ります。皆はセコンド用の所で待機していてください」
「わかったよ」
「ん」
三人と別れ、女性用の軍服姿でマントを付けながら歩いていきます。マントにはガレアの王家の紋章を入れてあります。
通路を歩いていくと、光が降り注ぐリングへと到着します。即座に押さえていた力を解放し、堂々と進んでいきます。
『そうですよ、ちゃんと威圧しないと駄目ですよ。王様の出陣ですからね』
(わかっています)
大量の視線が集まります。しかし、周りは
『しっ、失礼いたしました。これより、Dブロック予選を開始したいと思います。各リングに呼び出しを行います。まずは……』
私の番号が呼ばれて、指定されたリングを探します。
『右奥の二番目ですね』
(ありがとうございます)
リングに登ると、相手の対戦相手が待っていました。相手の身長は目測で196センチ。筋肉隆々な大男です。
「はっはっはっ、子供が相手かよ。ここは大人の部だぜ、怪我をしない内に棄権しな」
「問題ありません。それより、速く合図を」
「了解しました。これより、ヘルマン・ギリシャ選手とコロナ・ティミル選手の試合を開始致しました。レディ、ファイトっ!」
「さっさと終わらせてやる!」
大男さんが私に突っ込んできます。回りからは悲痛な叫びが聞こえます。傍から見れば子供を襲っている野獣です。変態ですね。ですが――
「『王の御前ですよ、無礼です』」
――私とイクスの言葉が重なり、相手が殴りかかってきた手を添えて軌道をずらし、そのまま入り込んで相手の力を利用して投げます。
「なっ⁉」
リングが揺れ、直ぐに立ち上がろうとします。
「ぐえっ!?」
ですが、私が首の、頸動脈を踏みつけ碧色と藍色の瞳で見詰めます。無表情のまま、力を入れていき殺気もプレゼントします。すると、気絶してしまいました。私は審判を見詰めます。
「そこまでっ! 勝者っ、コロナ・ティミル!」
震えながら青い顔色で宣言した審判の言葉にマントを翻して、優雅に歩いてリングから降りて行きます。セッテとフェイトさんの所に向かいます。
「おめ、でとう」
「先ずはおめでとう」
「ありがとうございます」
「でも、最後のは駄目だよ? 他の人が震えちゃってるからね」
「あの程度で震えるなど、戦う価値もないという事ですよ」
「いやいや、時代が違うからね! 戦乱の世界と同じ扱いは駄目だからね!」
「問題ありません。ルールは守っています。殺気を出してはいけないというルールはありませんから」
『ですね。戦いに殺気は普通の事ですし』
「この子は……」
そんな感じでドリンクをちゅうちゅうしていると、直ぐに呼ばれましたので、次の試合です。相手はガタガタと震えていて、相手にすらなりませんでした。殺気を放ってイメージで手刀で斬り刻んであげたら、倒れてしまいました。本当に、この時代の人は惰弱ですね。
『全くですね。下級騎士にすら及びませんし……かと思えばフェイトさんやなのはさんみたいな可笑しい人達もいますし』
(色んな世界が合わさってますからね)
そんな感じで、予選は簡単に終わって本戦になりました。4ブロックある内、勝者は一人のみが本戦に進めます。つまり、残り二戦です。
夕方になり、戦いが始まった私の相手は変態でした。上半身裸の巨体です。
『冥府の炎王の継承者、コロナ・ティミル選手。彼女は既に有名人でしょう。幼いながらも無数のゴーレム兵を作り出し、管理世界の平和に貢献しています。ですが、参加して大丈夫なのでしょうか?』
『本来なら9歳という年齢からいくら年齢無制限でも参加はできないはずでした。ですが、彼女からオーバーSの魔導師との戦闘データを提供されて、参加許可が下りました』
『なるほど。ですが、次の戦いは253cmのギリシャ選手と130㎝のコロナ・ティミル選手の戦いです。これはほぼ倍の身長ですね』
『これは凄い戦いになりそうです。年齢も18歳と9歳ですからね』
私達は互いにリングの上で無手で対峙します。この巨体から放たれる殺気は並大抵の者ではありません。私も殺気を出しながら、構えます。
『コロナ、この相手は私達と同じです。彼は
「でしょうね。本当に、楽しいです」
私は笑いながら相手を見ます。相手も楽しそうに笑っています。かの者は私でも知っています。何せ、私の対戦相手は――
「それでは、ヘラクレス・ギリシャ選手とコロナ・ティミル選手の試合を始めます」
――ギリシャ神話の大英雄、ヘラクレス。それも、FATEのバーサーカーさんです。
「始めっ!」
互いに駆け出し、相手の大きな拳と私の小さな拳が中間点で合わさり、回りに衝撃波が放たれます。体格と体勢の差から、私が不利でしょう。
「ふふふふふ」
「くっくくく」
互いに笑いながら、全力で殺気を互いに放ちあい、確実に相手を叩き潰すイメージを探ります。
「「面白い」」
『魔法は駄目ですよ。あくまで、肉体のみで殺し合ってくださいね?』
「無論です」
突っ込んで来るヘラクレスの拳を避けます。拳はリングを粉砕します。速度を上げて背後に回り、飛び上がって蹴りを首に叩き込みます。相手は吹き飛びますが、リングを指で破壊しながら止まります。立ち上がって、首を左右に振ってコキコキと鳴らします。更には手を付き出して、こいこいとするではないですか。にゃろう。
『無礼ですね』
「ええ、全くです。身の程を教えて差し上げましょう」
突撃し、攻撃します。速さは私の方が上ですが、パワーは相手が上のようです。ですが、耐久力は私が勝っています。基本的に避けながら、合気道を使って相手の力を利用します。ですが、直ぐに対応されます。久しぶりになのはさんとフェイトさん以外に殴られて血を流しました。
「どうした、その程度か?」
「下郎が、舐めるな」
瞬時にトップスピードに入り、懐に入りこんで急所を八極拳で殴りつけます。内部破壊です。気持ち悪い感触がしましたが、気にしません。
「っ―――!」
急所を攻撃されて、ヘラクレスが倒れます。股間から血を撒き散らかして。回りは静まり返り、男性は股間を押さえています。私は手を振って汚れを取ってからハンカチを取り出して拭いて捨てます。
『勝ちましたか?』
「いいえ、まだです」
そのまま飛び上がり、心臓に蹴りの断空拳を叩き込みます。しかし、直ぐに足を掴まれて立ち上がった
「■■■■■■■■■■■―――! 」
ヘラクレスは私をリングに何度も叩きつけます。まったく、リングが壊れるじゃないですか。それに
『コロナ、大丈夫。ですか?』
「ええ、大丈夫です。右腕が逝かれた程度です」
無理矢理、砕かれた右腕を無視して左手で戦います。暴走しているヘラクレスですが、私相手に暴走するなど、愚かです。相手の攻撃を避ける事に集中して行動パターンを洗い出します。ただ暴れているだけなので、威力が上がっても攻撃が単調になります。人が技術を捨てて獣になれば容易く刈り取れます。
「パターン、解析終了です。では、虐殺を始めましょう」
『はい、コロナ。でも、大丈夫ですか? 相手の回復力は凄まじいですよ』
相手の攻撃を紙一重で避けて、腕を拳と膝で同時に攻めて破壊します。
「ヘラクレスなんですから、たった十二回殺せばいいだけです」
『なら
「ええ、簡単です。王に働いた無礼、しっかりと支払っていただきましょう」
両手両足を破壊していきます。それから、首を破壊しようと思って別の所から殺気が飛んできました。そちらを見ると、なのはさんとフェイトさんがこちらを睨んでいました。
「ちっ、今なら確実にやれるんですが……」
おそらく、このヘラクレスは生前成した十二の偉業を具現化した
『仕方ありませんね』
「このままリング外に放りだしましょうか」
首筋に両手を食い込ませ、噛まれないようにしながらリングの外に叩き出します。これで私の勝利は確定しました。
「久しぶりに心地良い戦いでした」
本気の殺し合い。ベルカの記憶の中でしか体験できませんでしたから。
「しょ、勝者っ、コロナ・ティミルっ!」
さて、どうしますか? これでも立ち上がるというなら次は魔法を使って殺しますが。そんな事をしていると、ヘルマン・ギリシャ選手がヘラクレスさんを連れていきました。これで終わりですね。
「さて、さっさと消毒に参りましょうか」
『そうですね。入念に身体を洗わねばなりません』
血塗れになりながら、崩壊しかけているリングから後にして控えの所に戻ります。とりあえず、治療はいいのでシャワーを浴びて着替えだけしましょう。次の戦いまではどうせリングの修復で時間がかかりますし。そう思っていたのですが、相手が棄権したのでそのまま優勝になりました。解せません。
ヘラクレス「惑星規模には装備無しじゃ勝てなかったよ……」