結局、何も聞かずに引き受けてしまってた俺こと比企谷八幡は内容を帝様から聞かされた。
「実はな、クローンを川神学園に転入させようと思ってな。その護衛についてもらいたい」
「護衛ですか」
「勿論八幡以外にもいるが身近に一人くらい強力な奴を置いておきたいものだ」
「ならば、ヒュームを置かないのですか?」
「その事なんだが、実は俺の娘を川神学園に入学させて、その護衛をヒュームに頼んでいる」
「…………成る程。九鬼紋白様ですか。それならば納得です。クラウディオさんは…言わずともあの人は忙しい。それで川神学園でなにもしていない自分に白羽の矢が立ったわけですか」
「内容は以上だが、何かあるか?」
「いえ、ないです。…………質問がひとつあります」
「何だ?」
「この仕事は護衛であって、それ以上のことは求めていないと解釈してもよろしいのでしょうか?」
「…本当に必要最低限しかしようとしねぇな。それで構わないぞ。ただ、護衛対象とは仲良くしてた方が良いんじゃないのか?」
「忍は陰から守るのが道理です。忍足が可笑しいだけです」
「全く、揚羽以外なら適当かつ最低限にしかしないからそこを直せば一流なんだけどな。ま、こちらが望んだことはしてくれるから文句の言いようがないが」
忍の存在を知られていては、それ相応の対応を取られるから極力存在を消していなければ難易度は難しくなるというのに。
「いつから彼らは転入するのでしょうか?」
「あ、それは東西交流戦が終わってからだ」
となると、五日後か……そうなると、明後日には東西交流戦があるのか。手加減するより逃げた方が俺らしいな。
「そうですか……護衛は四六時中がお望みですか?」
「いや、そんなにキチンとしなくて良いから。ユルくやったら良いぞ」
「はぁ、しかし……」
「八幡。お主は難しく考えすぎなのだ。友を守る程度の認識でやればよい」
俺が帝様の曖昧な言葉に悩んでいると、揚羽様から助言をいただいた。
「……分かりました。ある程度の識別でしてみせます」
俺が出来る最大限の言葉がこれだ。てか、友達とか持ったことがないから全然分からないってのが本音なんだけどな。
「うむ!!頼んだぞ、八幡!!」
「はい」
やっぱり主から激励を受けると俺の士気が上がる。ま、そういうのを持っているのが九鬼家だろうな。
「あ、あの」
「……何か?」
話がまとまり、もう解散ムードであったところにいかにも文学少女と呼べそうな黒い長髪にヒナゲシの髪飾りをつけた女こと葉桜清楚が俺に話しかけてきた。
一応は護衛対象だ。どいつにも敬語は必須だ。
「君一人で私たちを護衛するの?」
「……」
あろうことか俺に対して、そんなふざけたことを言うやつがいるなんて思っても見なかったな。
……いや、俺に会うやつ会うやつ全員こうやって言ってくるから、もう馴れてる。
しかし、他の奴等の顔を見るに同じことを考えているみたいだな。
「フハハハハ、今回は言われないと思ったが、これで完敗だな」
「揚羽様。流石にここまで言われるとむしろ完勝ですよ」
「えっ!?ご、ごめんなさい!!気分を悪くしちゃったなら……」
この人いい人だな。すぐに謝ってくれる人なんてそうそういなかったからちょっと感激。
「清楚よ。そんなに気にしなくても良いぞ?なんせ貧弱そうななりだからな」
俺が訂正する前に揚羽様がフォローしてくれた。俺の主はやっぱりそこらの凡人とは違う。
「ほ、本当に?」
「はい、大丈夫です。葉桜さんが言ったことより酷いことを言われたことがあるので、そんなもの痛くも痒くもないです」
そういや、俺の事をキモいとか守られたくないとか言われたことがあったな。
言ったヤツは決まって、俺も守りたくない対象だったから良かったけど。
「……ごめんね」
「要するに八幡は強いの?」
再び突如として会話に割り込んできたものがいた。そしてまた俺の傷をえぐろうとしている。そんなに俺が嫌いなの?やめて良い?黒刀『夜』だけ貰うから。
…?それより何で俺の事を名前で呼んでいるんだ?あ、自己紹介をしてなかったわ。そりゃ聞こえた名前を言うわな。
「お、俺のなゃまえ……俺の名前は比企谷八幡だ。比企谷と呼べ。名前で呼ぶな。呼んで良いのは俺がよく知っている人だけだ」
「なら、私の事を知ってくれたら呼んで良いの?」
急に良い体の女が話し掛けてきたせいで、最初噛んじゃったし、意味わからない言い訳まで並べてしまった。
そしてそのせいで良い体の女こと武蔵坊弁慶が俺に話しかける理由を作ってしまったかもしれんな。
……自意識過剰すぎたか。声に出さなかっただけでもトラウマにならないから安心だ。
「…出来たらな。それよりさっきの俺が強いかという質問だが、多少は強いと思うぞ」
「馬鹿が、誤魔化すな。貴様は九鬼の誰よりも強い」
「ヒュームさん、おかしな事言わないでください。そんな、はた迷惑な話をしないでくだ……」
「それは本当か!?」
……あのね……言いたいことは言わせてくれよ!!なんか悲しい気分になるだろうが!!そこのポニーテール女。
「違う。ここで一番強いのはヒュームさんだ」
「ふんっ!」
俺がヒュームさんの顔を立てたにもかかわらず、俺の側頭部に向けて蹴りが飛んできた。
"ドンッ!!!"
「はぁ、やめてくださいよ。そんな面倒な事」
「その割には随分と好戦的な態度だな」
「これは忍としての反射神経ですよ。一応今も任務中なので」
ヒュームさんの脚は俺の頭には当たらず、その前に俺の黒くなっている腕がそれを阻んだ。
そしてヒュームさんの手には俺が無意識に飛ばしたクナイが存在した。
「これでも、こいつが強くないと思うか?」
ヒュームさんは俺を弱いと解釈してそうなクローンに向かって問いかける。
ま、これ以上話を長引かされるのも面倒だから、とっとと理解してもらえば十分だな。
「べ、弁慶。良いだろうか?」
「義経の好きにしなよ」
「何かあるのですか?」
「…比企谷くん、義経と戦ってほしい!!!」
「はい?」
「ふっ、当然と言えば当然の反応だな。武士娘の本能と言うべきなのか、強いものと戦うのは。貴様には分かっているだろう、八幡?川神学園で学んだだろ」
ああ、そうだな。強いものと戦いたくてうずうずしている川神先輩が良い例だ。そのせいもあるから正体を隠さなきゃいけないんだが……まさか、ここにも武士道を持ったものがいるとは。
「そんなことはおこ……」
「良いではないか。クローン達へ良い刺激になろう」
「しかし、揚羽様。それだと彼らの自意識を破壊してしまう事になりますが…」
「ふむ、自意識を持っているとは思わないが……どうしてそう思ったのだ?」
「
「なら、そんな下らない自意識は壊しちまいな。武士道プランには必要ないよ」
おお、マープルさんは容赦ねぇな。クローンを作り出した謂わば生みの親というのに……いや、子供に厳しくする精神と同じか。
「それでいいなら自分は構いませんが……源さんはどうですか?」
「よろしく頼むぞ!!」
「それでは場所を移動しましょうか」
こうして俺と源義経の戦いが始まろうとしていた。
次回が八幡の戦闘です。
俺ガイルのキャラは戦いがあまり書けなければ、次回になるかもしれません。