刀を元の場所に戻し、川神学園に戻ると、解散している途中であった。
「ラッキー。これで終わってなかったら身を潜めてないといけないところだったわ」
流れに身を任せて教室に戻ろうとするが、
「おい」
「あ?なんだ、ヒュームかよ。何のようだ?」
「貴様今までどこにいた」
「わかってるだろ。不審者がいたんだよ」
「ふっ、隠そうとしないで何よりだ。それより、どうだったんだ?」
「あ~、強かったぞ。戦闘力から考えれば源より強いぞ」
「ほぉ。逃がしたのか?」
「別に捕まえろなんて言われてないからな。それに組織単位で動いているから調査が先だろ」
「嘘をつくな。貴様は面倒だから逃がしたのだろ?」
「……別に。捕まえたら捕まえたらで、新たな敵を相手にしないといけないなんて言ってないだろ?」
「まあ良い。貴様も早く教室に戻ることだな。楽しいことが待っているぞ」
「アンタが引き留めたんだろ……楽しいこと?嫌な予感しかしないんだが」
「じゃあな」
「……行っちまったよ。あいつ何したんだ?」
俺はヒュームの言葉を面倒に思いながら、教室に向かうのであった。
ーーーーーーーー
教室に戻る最中、なぜか俺は奇異の目で見られていたことに嫌な予感を加速させた。
「おい、あいつが比企谷だぞ」
「あんな奴が……」
「俺の方があんな奴より強いに決まってんだろ!」
?強さの話をしているのか?……あの野郎もしかして…。
俺は真相を確かめるために、急いで教室に戻る。
そして教室に入ると、俺へと視線が集中した。
「……いた」
教室の中を見渡し、一番話し掛けやすくきちんと教えてくれる人物を見つけ出した。
「戸塚」
「あ、八幡!!遅かったね!」
そう、俺のオアシスこと戸塚彩加に声をかける。
「ああ、少しな。それより……」
「驚いたよ。まさか八幡が九鬼で働いているなんて!!」
「…えっ」
「それに最強だなんて、なんで教えてくれなかったの?」
……そう言うことかよ!!野郎、ばらしやがった!!
「八幡?」
俺があまりにも強烈な言葉に硬直していると、戸塚が俺の顔を下から覗きこんで心配している顔をしてくれた。
「あ、ああ。大丈夫だぞ。と、戸塚。一つ聞きたいんだが」
「?何?」
「その事は全校生徒の前で言ってたのか?」
「うん。そうだよ。それがどうしたの?」
「い、いや。なんでも無いぞ。そ、それより黙ってて悪かったな」
「少しだけ教えてくれてなくて、寂しかったけど、八幡の事をもっと知れたから僕は嬉しいよ!」
……やっぱり戸塚は戸塚だな。俺、もう戸塚に隠し事をするのが憚られるわ。
「わりぃな。今度からは、きちんと伝えるわ」
「うん!ありがとう、八幡」
それより俺のクラスだけではなく、まさか本当に全校生徒の前で言いやがったのか……今度、あいつと戦うことがあれば本気でいこ。
いや、その前に闇討ちをして永久欠番をすぐさま作るまである。
「ちょっと、ヒッキー!!」
ああ、もう一人話しかけやすい奴はいたが、要領を得れないところが傷だ。
「なんだよ」
「なんで、黙ってたし!!」
「は?いや別に聞かれなかったし」
「そ、そうだけど……」
「それに俺がありのままに『九鬼従者だったんだ』とか言ってもどうせ信じないだろ」
「……」
俺の言葉に思うところがあるのか、黙りこんで俯いてしまった。
「話すことがないなら、さっさと元の所へ戻れ。あいつらがこっちを見ているぞ」
「……でも……た…こ……だ…………」
「あ?なんて?」
「でも……知りたいって思うことはだめなのかな?」
「…っ」
お前らは……本当に同じことを言うよな。
……でもな、俺が小さい頃から武器を持ち、人の命の灯火を消していたと言っても、その言葉を放つことができるのか?
答えはNoだろ。そもそもがリアリティーではないし、もし目の前でそれを確認すれば、自分の知りたくないことを知ってしまい耳を塞ぐだろ。
「……さっさと戻れ」
「あ、う、うん。ごめんね」
「なんであやまんだよ」
自分でも驚くくらいに低い俺の声音に、いち早く気がついた由比ヶ浜は困惑した顔をしながら葉山のところに戻っていった。
「……なんでこんなことを思ってしまったんだ?……『本物』に近いからこそ、気がついてほしい、か」
どこの仮面つけた腹黒女子大学生だよ。あの人は俺の正体を知ってそうだ。
授業が始まるまで、俺の方に視線が集中していた。
ーーーーーーーー
視線を無視しながら、ようやく訪れた待ち望んだ放課後。
俺は習慣で奉仕部へと足を運ぼうとするが、今朝の由比ヶ浜の件があり、瞬時に足を止めた。
「……雪ノ下とか、他の奴等に色々言われそうだな」
はぁ、あいつ俺の交友関係が少ないとか思って適当なことしやがって。……少ないのは事実だけど。
「とりあえず……」
俺の正体がバレて、信じてるやつと信じてない奴が居るだろうけど、俺は俺の仕事をするか。
「どうせ、信じざるを得ない状況を作るだろうし」
俺は教室を出て、護衛対象であるクローン組がいるところに向かうことにした。
S組の教室の近くに来ると、野次馬たちがゴミのようにいた。
俺はそれを六式の一つ『紙絵』にて、潜り抜けていく。そもそもの技が、相手の攻撃によって起こる風圧に身を任せて避ける技だ。それは応用が可能で、人のわずかな動きで出来た風を、その身に受け、少しだけずれることでこんなところでも紙絵を発揮できる。
……てか、こんなところで六式を使いたくないんけど。
そして、先頭へと出るとロングな赤髪の眼帯軍人が教室に入らせまいと通せん坊している。
また面倒なのが立ってるな。
俺は六式の『剃』を使い通りすぎてもよかったのだが、使う気力も失せ、そのまま通してもらうことにした。
「あぁ……ちょっと良いか?」
「この先は立ち入り禁止と知りなさい」
「いや、俺はクローンに用があるんだが」
「それを禁止していると言っている」
「……言い方が悪かった。クローンを護衛するために来た比企谷八幡だ。通してくれ」
「!お前があの比企谷八幡ですか」
「あのって何だよ。気になる言い方をすんじゃねぇよ」
「気になるなら教えてあげましょう。『比企谷は一人で居て、気持ち悪い奴』と言うことです」
「あ、うん。悪口な事は最初から分かってた」
「他にも……」
「いや、もう言わなくて良いから」
「……私に勝てばここを通してあげましょう」
「は?」
「比企谷八幡の実力が知りたくなった、ということです」
こいつも戦闘狂かよ。流石川神、俺の予想通り血の気が多い奴ばっかりだ。
眼帯軍人ことマルギッテ・エーデルバッハは俺に向けてトンファーを構えてきた。
「嫌だね。そんな面倒なことは。それに戦うとしても実力が匹敵する奴しか戦わないし……。ま、そんな奴いないけど」
「ならば、その気にさせてみましょう。最強と言われるものが目の前にいるのだから」
マルギッテはいきなり俺にトンファーで殴りかかってきた。
「わりぃけど、俺が相手をするほどの実力じゃねぇんだわ。紙絵」
マルギッテの攻撃の風圧を利用して、紙のようにヒラヒラと避ける。
「剃」
「消えた!?」
そしてマルギッテをかわすために、最初から使っていれば良い六式を使う。
教室に飛び込むように入ると、那須が武蔵坊に窓から投げられそうになっているところだった。
「は?……っち、無駄な事を増やすなよ」
武蔵坊を止めようとしたが、ちょうど俺が入ってくるときには那須を解き放とうとしている時だった。
だから俺は止めるのではなく、受け止めることに作戦を変更した。
「月歩」
瞬時に窓から那須の方向へ身を乗りだし、まるで地面があるかのように空を蹴る。
飛ばされている那須の腕をとり、その場で空を蹴り続ける。
「はぁ、お前らの学校生活とはロクでもないな」
「お前は……それに浮いてる。俺に隠された力があるとは……!」
「浮いてるんじゃなくて、蹴ってんだよ。足をよく見ろ」
「……ふっ、貴様もこのくだらない世界で生きる屍と成り果てた男か」
「……ごたくは良いから、戻るぞ」
「それは俺にもう一度死ねと言うのか!?」
どうやら、これで帰るのはお気に召さないようだ。てか、武蔵坊と那須って血筋の関係なんだろ?……ま、それで仲が良いとか、言えるとは限らないだろうな、多分。そもそも俺に兄弟とかいねぇから分からないけど。
「なら、このまま帰るか。川神姉も来そうだし、クラウディオさんだっているからな」
「ふっ、やはり貴様と俺は引かれあうようだな」
「はいはい、口閉じとけ。飛ばすぞ。
「うおおおぉっ!!?」
那須をしっかりと掴み、空を走っていると、ポケットに入っている普段は鳴るはずもない携帯がなり始めた。
「……この曲は…那須、一旦おりるぞ」
「あ?…まさか、この俺を陥れようと…!」
「違うから」
すぐ下に降りると、ゲームセンターの目の前であった。
「少し待っててくれ」
俺は少しだけ那須から離れ、携帯を手に取ると、案の定、完璧執事と、タイトルにしているクラウディオさんであった。
「…比企谷です」
『八幡。今どこにいるのですか?』
「那須与一と本部に帰ろうとしている途中ですが、どうかしましたか?」
『いえ、少し引き返してください。少々厄介なことが発生してしまいました』
「……わかりました」
電話を切り那須の方を向くと、ゲームセンターの方を見ていた。
「今から俺は川神学園に引き返すことになったけど、那須はどうする?」
「たまには定められた因果から解き放たれたいものだ」
「つまり、ゲーセンで遊びたいと…ま、ここは川神市内だから問題はないか」
俺の見聞色の覇気は、やろうとすれば川神市内を感知するなんて容易い。でも、やろうとすればの話だ。普段は神経すり減らしたくないから使わないが、仕方がない。
「那須、別にここで遊んでても良いぞ。その代わり川神市内には居てくれよ」
「本当か!?」
「ああ、金は持ってるよな?」
「何時でも何が起こっても良いように準備はしている。組織の奴等がいつ……」
「分かった。じゃあな」
俺は那須の中二を軽くあしらいつつ、来た道を引き返すのであった。