忍?剣士?術者?執事?ボッチ?   作:仮初

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八話

六式の応用技の剃刀で、川神学園に着き、俺を引き戻した張本人であるクラウディオさんの気配を探す。

 

「……ん?…嫌な予感しかしないな。それに猛獣のような闘争心が鬱陶しいほど、まとわりつく」

 

覇気で感知しているせいか、心まで読んでしまう。切ろうとすれば切れるが、そっちの方が労力を使うから我慢するか。

 

「……クラウディオさんは2-Sにまだいるのか」

 

俺はすぐに窓からそこに戻った。そこには野次馬に、さっき俺が見た風間ファミリーに、なぜか闘争心丸出しの生徒がいた。

 

「クラウディオさん」

 

「来てくれましたか、八幡」

 

「はぁ、それでこの状況は?」

 

「ヒュームが中途半端な事をしてくれたお陰で、風評被害を受けてましてね」

 

「…大方、俺の強さで、でしょう?」

 

「その通りです。『本当にそうなのか』とか『九鬼はくだらない嘘をつくのか』など言われてます」

 

「無視すれば良いのでは?」

 

「それに加え、『本当かどうか戦わせろ』などの苦情が収まりそうにないのです」

 

「……それはまた、命知らずな野郎がたくさんいますね」

 

「そして、我々が立てていた計画が一部瓦解しようとしています」

 

そう言うと、クラウディオさんはある方に視線を向けた。俺もつられて見ると、俺をギラギラとした目で見てくる川神百代の姿があった。

 

「……もしかして、源義経の件ですか?」

 

「はい。彼女は比企谷八幡と戦わせるなら、引き受けても良いとおっしゃりましてね」

 

「……つまり、川神百代と決闘することで、強さを見せつけ、そして生徒を納得させろと言うことですか?」

 

「やってくれますか?」

 

……待てよ。でも、九鬼紋白さまが計画してたよな?

俺はそれの確認をするために、他に聞こえないようにクラウディオさんに近づき、小声で話す。

 

「……良いんですか?松永燕は」

 

「……八幡は勝たなくても良いです。ただ、彼女よりも強いと判断させた上で、彼女に負けてください」

 

「それは……随分と難しい注文をしますね」

 

「貴方なら可能ですよね?」

 

「……決闘のルールを変えれば、大丈夫です」

 

「なら、決まりです」

 

「おぉい、まだなのか!?」

 

俺とクラウディオさんが話終えた後すぐに、川神百代から催促の言葉が投げ掛けられた。

 

「貴女の申し受けを受けましょう」

 

「本当ですか!?」

 

「八幡。良いでしょう?」

 

「はい。しかし、ルールは変えさせてもらいます。それで良いですよね?川神先輩」

 

「ああ、あの人のお墨付きと戦えるのなら、そんなもん安いものだ!」

 

「なら…」

 

俺は学園のルールに乗っとり、ポケットから川神学園のワッペンを取りだし、川神百代の前に叩きつける。

 

「勝負だ!!」

 

「川神学園の校則により、決闘を認める!!」

 

川神百代もそれに乗り、ワッペンを放り出し、陰から見ていた川神学園の学長である川神鉄心が決闘の承認を宣言した。

 

 

 

場所は変わり、生徒がワラワラと集まっている運動場で俺と川神百代は見つめ合っていた。そんな照れ臭い事は俺には続けられず、チラリと周りを見ると、一際目立っている集団を発見した。

……俺のよく知っている奴等ばっかりだ。しかも顔が少し拗ねてるし。ああ、この後話すのやだな。

俺はひそかに刀を二本、パクティオー・カードの魔法具により取り出して腰に携えている事を再確認する。

 

「それで?ルールはどうなんだ?」

 

「学長にはすでに話してあるんで。そして、認めてもらいました」

 

「なら、さっさと言え、じじい」

 

「うむ、これからルール説明をする。基本的には戦闘での決闘となるが、百代の勝利条件が挑戦者により変更された」

 

「勝利条件?なんだ?面倒なのは勘弁してくれよ」

 

「百代の勝利条件は……比企谷八幡に一発でも攻撃を当てること!」

 

「なっ、なんだそれは!?」

 

学長の言葉に、川神百代や周りの生徒はざわざわとなり始めた。

 

「じじい、どういうことだ!?」

 

「それが比企谷くんのルール変更じゃ」

 

「ふざけているのか!」

 

「別に、これだけしないとハンデにならないからな」

 

「おいおい、まじかよあいつ。命知らずにも程があるだろ。川神先輩を怒らせやがった」

 

「本当に馬鹿だな。愚か者だ」

 

「それを危惧してルールを変えたのかもな。逃げ腰にもほどがある」

 

周りも俺のルール変更を馬鹿にするものばかりだった。

でもこれが俺の強さを証明しつつ、公式戦に負ける方法だ。これなら油断して負けたとか言い訳がつく。

 

「そんなことをしたら、すぐに終わってしまうではないか!?」

 

「問題ないな。それに、やれば分かる」

 

「良いだろう。すぐに終わらせてやる」

 

川神百代は本当にすぐに終わらせる勢いで、俺に構えをとる。対する俺も初めから刀を一本抜いておく。

 

「二人とも準備はよいな」

 

「ああ!!」

 

「はい」

 

「それでは…始め!!!!」

 

「川神流・無双正拳突き!!」

 

開始の合図と共に、川神百代は俺に向かってただの突きを繰り出してきた。

 

「紙絵」

 

それに対して俺は、六式『紙絵』を使い、対抗する。

 

「はあっ!!」

 

「紙絵を使っているが、どっちにしろ覇気を使っているからその程度なら避けれる」

 

「避けられた!なら、これでどうだ!」

 

「連続でしようと変わらん」

 

「くっ、なぜ当たらない!?」

 

川神百代の攻撃は俺が意図して避けているのではなく、ただ単に風に身を任しているだけ。強い攻撃にはより強い風圧がつきまとうからな。

 

「そろそろ反撃しても良いか?」

 

「まだだ!これならどうだ!川神流・致死蛍!!」

 

彼女は、一旦俺から離れて俺に気弾を放ってきた。

 

「気弾って斬れるのか?……一刀流…馬鬼!!」

 

向かってくる気弾に、俺は刀を振るい一刀両断する。そして気弾は半分にされ俺の左右を通り過ぎていった。

 

「案外斬れるもんだな」

 

「……なるほど。あんなふざけたルールを加えるだけはあるな。それなら、こちらも全力でいくぞ!!」

 

「ったく、倒さないってのは面倒だな」

 

「はあっ!」

 

彼女は俺に上段からさっきより速い攻撃の蹴りを当てこようとした。

 

「それをして良いのか?」

 

俺はその足に向かって斬る思いで、刀を振るおうとする。

 

「っ!!!」

 

何かを感じたのか、彼女はその攻撃を強制的に中断させて後ろに下がる。

俺は構わずに何もないところに空振りする。しかし、風圧が起こり砂ぼこりが巻き起こった。

 

「…惜しかったな。もう少しでその脚は今ごろ俺の足下にあったぜ」

 

「…っ」

 

砂ぼこりが晴れると、俺の太刀筋にはスッパリと地面が割れており、太刀筋に入っていた校舎にも深く斬り込まれていた。

それを見た川神百代は冷や汗を流していた。

 

「さっきのは避けられる速度にしてたんだぞ?それに俺は斬ろうと思えば、人だろうと斬るぜ?」

 

「………ふふ、ふふふっ、ふははははははっ!!」

 

戦闘の途中だと言うのに、突然川神百代が笑い始めた。

俺の殺気に当てられたのか?

 

「これだ!!この殺気!!これこそ私の求めていた、いや!!武道家の本能だ!!」

 

「まさか、ここまでの戦闘狂だったとはな。いや、ヘボい周りが悪いのか……ま、良い」

 

「さあ、この手足がグチャグチャになるまでしようか!?」

 

「俺はそこまでしたら、仕事できないし。それに一発でも受けたらダメっていうルールだから」

 

「川神流・地球割り!!!」

 

俺の返しに問答無用で、地面を殴りつけ衝撃波を直線上に向けてきた。

 

「一刀流…三十六煩悩鳳!!!」

 

それを俺も負けじと、斬撃で弾き返す。

 

「はははっ、川神流・無双正拳突き!!」

 

先程よりも跳ね上がっているスピードや気が俺に襲いかかってくる。

スロースターターとテンションで上がるのが組み合わされると、ここまで化けるのか。

 

「ま、それでもまだまだだ」

 

普段の俺なら六式『鉄塊』を使って難を逃れるか、腕を斬り落とすところだろうが、どちらも今はNG行動だ。

 

「一刀流…順流(じゅんる)

 

俺は拳の来るところに刀の刃を持ってくる。すると、拳は刃に当たったところで一瞬止まり、すぐさまその拳が後ろに持っていかれていた。

 

「攻撃すれば反動が来る。それをこっちの反動をゼロにして、川神先輩の反動に移した。ま、それには相手が使っている力をこちらが使えなければ、発動できない。あいにく、俺は気を習得済みだ」

 

川神百代は後ろに弾き返された事に少し驚いていたが、すぐに体勢を立て直し、神妙な顔をしてこちらを向く。

 

「……私の拳に傷がないのは何故だ?」

 

「それは簡単だ。本当の剣士はなんでも斬れて、なにも斬れないのだからな。それにこの技は斬る技じゃない」

 

「…矛盾してないか?」

 

「してないな。……てか、そんな事はどうでも良いんだよ。まだやるんだろ?」

 

「当然だ!!!」

 

俺の呼び掛けに彼女は、思い出したかのように俺を仕留めんと躍起になる。

 

「かわかみ波っ!!!」

 

手から極太のエネルギー砲が俺に向けて飛び出してきた。

俺はすかさず、左右の腰に一刀ずつ分け、どちらの刀にも手を掛けて居合いの姿勢をとる。

 

「二刀流・居合……」

 

エネルギー砲が俺の直前まで来るのを待ち、俺とエネルギー砲があと数メートルのところになったとき、俺は二刀を一気に抜き放つ。

 

「……羅生門」

 

俺の前のエネルギーは縦に半分に斬れ、俺と川神百代の間にはなにも無くなっていた。

しかしよく見ると、川神百代のちょうどシャツのボタンのところが全部斬れていた。それどころか、その下の肌もシャツに血を大量に滲ませてるあたり、結構深く入ったな。

 

「あ、しまった。手加減を間違えた」

 

「ぐっ…ガッ……!…かわかみ波を斬られるだけじゃなくて、まさか…私もついでに斬られるなんて……!!」

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

「瞬間回復!!…ふぅ。……さぁ、続きをやろうか!!」

 

「あ、完全に忘れてたわ」

 

瞬間回復って便利だよな。師匠の不老不死と比べたら屁でもないが、人間の力、マジパネェ。そういや、腕を斬り落としたら瞬間回復で瞬間接着的なノリでくっつくのか?ニュアンスは似てるからなんかできそう。

 

……兎にも角にも、今ので多分、俺がそこそこ強いってのは周りに印象付けれたな。……そろそろ潮時か。

 

「時間が押してることだし、次で決めるか」

 

「ッ!!……やっとやる気になってくれたか!!」

 

「別に最初からやる気でしたが?」

 

「はっ!!お前の態度はただやっているだけに感じられたんだよ」

 

「……そっすか」

 

俺は一刀流の居合の姿勢をとる。

 

「私も本気で殴るからな!!」

 

えっ………大丈夫だろ。あんな怠惰な女に負けるほど柔な鍛え方はしてないからな、うん。………ヤベェ、ちょっとびっくりしたわ。

 

俺と川神百代は構えを取りながら先輩は俺に隙ができるのを待っている。俺はただ川神百代が来るのを待ってるだけだ。相手の隙なんてやろうと思えばいくらでも作れる。

 

「くしゅんっ!」

 

どこからともなく可愛らしいくしゃみを合図にお互い相手に向かっていく。

 

「はぁっ!!!」

 

「……ふっ」

 

そして、俺の方が攻撃範囲内に相手が来るのが早い。しかし、そこは敢えてなにもせず、相手の拳が来るのを待つ。

 

「はぁっ!!!………え!?」

 

「……っ、それほど痛くはないな」

 

"ドンッ"という鈍い音がグラウンドに響き渡る。

さっきまで静かだった周りは一段と静かになり、それを出した張本人たちは、片や相手を見て唖然とし、片や殴られた頬をかいていた。

 

「………これで良いよな。学長」

 

「うむ。勝者、川神百代!!!!!」

 

「え……はっ?」

 

『『『ええぇっーーーーーーー!!!!』』』

 

今日は騒がしい日だな。

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