忍?剣士?術者?執事?ボッチ?   作:仮初

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九話

「勝者、川神百代!!!!!」

 

学長の勝敗宣言と共に、生徒たちの驚愕が響き渡り、俺は顔をしかめた。

 

「うっせぇな。ルールを聞いたら勝つ気がないことなんて分かってただろ」

 

誰にでも聞かせるわけでもなく、呟き、そして、クラウディオさんのところに向かった。

 

「おい!!こんな決着じゃ、余計に欲求不満になっちゃうだろ!」

 

「知りませんよ。それより、ちゃんと戦いましたから約束、守ってくださいね」

 

まだ、背中越しに聞こえる不満の声を無視して、観客の中に行こうとする。

 

「あ、あの!!」

 

「お、おい。まゆっち!!」

 

「あ?………黛由紀江か。なんだ?」

 

しかし、黛由紀江が俺に声を掛けてきた。後ろには風間ファミリーが川神百代を抑えつつ、黛を止めようとしていた。

 

「不躾なお願いかもしれませんが、その刀を見せてもらっても良いですか!?」

 

「お、おう。そんな食い付きそうな勢いで話しかけなくても良いだろう」

 

「す、すいません」

 

「ほら。これで良いのか?」

 

俺は刀を抜き、黛の方に寄せる。それに応じて彼女は顔を近づけてくる。

 

「………やっぱり。これは大業物の二つですね」

 

「お目が高いな、そうだぞ。名前は知ってるよな?」

 

「……『和道一文字』と『秋水』ですね」

 

「ああ。有名だから知ってても当然か」

 

「……まゆっち。その大業物って何だ?」

 

川神百代を止めている風間ファミリーの中の一人である軍師・直江大和が黛に尋ねる。

 

「最上大業物12工、大業物21工、良業物50工。世界中に名刀と呼ばれるものが、それぞれランク分けされています。その内、比企谷さんが持っているのが、上から二番目のランクに位置する大業物『和道一文字』と『秋水』です」

 

「えっ………それって、今二本揃ってるのって、結構奇跡なんじゃね?」

 

「いや、俺が集めたから奇跡じゃないぞ。ま、刀マニアがこの二本を見たら興奮すると思うぞ」

 

………あ、それより『夜』はいつ届くんだ?危うくこれを引き受けた理由を忘れるところだったぜ。

俺はいまだに刀をみている黛を無視して鞘に納める。

……そんな残念そうな顔で見るなよ。可愛いと思ったじゃねぇか。

 

「じゃあ、俺は用事があるから」

 

「あ、はい!ありがとうございました!!!」

 

「ん。じゃあな」

 

そそくさと他の有象無象を無視して、クラウディオさんの方に向かう。

 

「お疲れ様です、八幡」

 

「そうですね、疲れました」

 

「しかし苦戦するほどの相手ではなかったでしょう?」

 

「…俺が苦戦すれば、誰が揚羽さまを護るんですか?ま、ヒューム程では無かったです」

 

「鍛練を決して欠かさない事は良いことです。彼女も見習ってほしいものです」

 

「それは無理でしょ。目標を設定していなければ鍛える意義がなくなりますからね」

 

「なら、貴方の目標は何ですか?」

 

「世界一の大剣豪。揚羽さまの従者であるならば、これくらいは当然でしょう?」

 

「……!…そうですか……それより、与一はどこにいるのですか?」

 

「与一なら今ゲーセンで遊んでますよ」

 

「護衛なしにですか?」

 

「そこはご心配なく。覇気で今も探知しているので問題ありません。むしろ他の護衛より対象を不快にさせませんので」

 

「そこは心配していませんよ。一人でいることを知られれば余計に狙われる可能性が高いと思いますよ」

 

「……あぁ…でも、逆に考えれば組織を一網打尽にするチャンスになります」

 

「与一を囮にするのか!?」

 

「耳元でうるさいぞ、源。それに襲ってきたらの話であって、計画で囮にするとか言ってるんじゃないんだから怒鳴るな」

 

「結局与一を囮にすることは変わらないじゃん」

 

…この武蔵坊は、那須を適当に扱うが大切なのかどうか分からないんだが。

 

「もう、面倒だな。……囮にすることはしないから。そんなに詰めよって来るな」

 

「それなら安心だ」

 

「……」

 

源は納得してくれたが、武蔵坊は本当かと疑惑の眼差しを俺に送ってきてくれた。

 

「はぁ、俺は那須のところに戻るので他のクローンの事をお願いします」

 

「はい、気を付けてお帰りなさい」

 

「では…剃刀」

 

俺は那須が襲われている訳でもないから、ゆっくりとしたスピードで、那須が楽しめる時間を作るために向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

那須がいるゲーセンにつき、俺も中に入ると外とは全く違う空間が広がっていた。

うるさい・目がチカチカする、そして頭が痛くなりそう。

 

「那須には悪いが、そろそろおいとまの時間だぜ」

 

覇気でもともと位置を把握していたため、スムーズに那須の元に向かうことができた。

 

「おい、那須。もう戻るぞ」

 

「…ッ!…ふっ、時の因果からは逃れられない定めか」

 

俺が話しかけると、一瞬だけビクッとなったせいで、格闘ゲームで負けてしまっていた。

那須はそれを俺のせいにするわけでもなく、俺について外へと出る。

 

「歩いて帰るか。てか六式を使うと疲れるし」

 

「……静寂や喧騒の中で歩くのも悪くはない」

 

「要は大丈夫ってことかよ。なら行こうぜ」

 

「ああ」

 

那須の性格を前もって少しだけ教えられていたが聞かされているのとは少しだけ違う。

中々言うことを聞かないと言うことだったが、俺が接したときはそうでもないんだが……どうなってんだ?

 

俺と那須は商店街を歩きながら、小腹を満たすために惣菜屋によりコロッケを二つ買い、かじりつきながら並んで歩く。

………あれ?なんかこれも青春じゃね?男と男の青春劇には欠かせない場面だ、多分。よく知らんが。

 

「そういや、那須のところにも決闘の申し出が来ると思うが、するのか?」

 

「はっ、そんな面倒な事を誰がするかよ」

 

「俺も同じ考えだな。相手の欲を満たすために武道をやってるんじゃねぇんだよってな」

 

「確かにな」

 

「でも那須は少しはやれとか、ヒュームに言われそうだな」

 

「………あんな奴に俺の平穏を崩されるとは…!」

 

「ま、九鬼にいる時点で平穏なんて無いようなものだから平穏を求めるなら逃げるしかない。……ん?」

 

「?なにか……もしや、組織の追手が俺を狙っているのか!?」

 

「組織と言うのは違うが、狙っているという部分は合ってるらしいな」

 

俺と那須はいつのまにか人がいない場所に来ていた。そしてそれに応じて周囲に賊が取り囲んでいた。

 

「那須。武器かなんかは持ってるか?」

 

「俺は常に自由を手にするために持っているが、今回はその志すら置いてきてしまったようだ」

 

「なら俺がすべてを殺るから何もしなくていいぞ」

 

「くっ!俺の力が暴れだす前に何とかしてくれ!」

 

「はいはい……久しぶりに手加減をしないで良いような気がするな…3本出しとくか」

 

あらかじめ二本の刀を腰に差していたが、新たに3本目を謎の空間から引き抜く。

 

『和道一文字』『秋水』『雪走』

 

今回はこの3本でいくか。てか今日はなんだか俺に歯向かって来る奴が多いな。

 

俺が準備を終えた頃にワラワラとスーツを着た賊が俺らの周りに取り囲んだ。

 

「那須与一だな。悪いが我々と来てもらう」

 

「おいおい、俺を無視すんじゃねぇよ。まあ影が薄い事は認めるがな、有象無象」

 

「怪我をしたくなければ大人しくすることだ」

 

「……ぷっ…くくくっ……ふはははっ。俺にそうやって言ってくる奴なんて久しぶりだ」

 

「仕方がない……やれ」

 

リーダーらしき男が命じると、一斉に賊が俺たちに迫ってきた。

男が迫ってくるって、ところだけを聞いたら海老名さんが喜びそうなシーンが想像されそうな……いや、されない、決して。

 

「那須。少ししゃがむか、飛べ」

 

「ああ、ならしゃがもう」

 

俺は那須がしゃがんだのを確認し、『秋水』と『雪走』を抜く。そして二本とも逆手に持ち、刀の切っ先を天に向ける。

 

「"二刀流"……」

 

「大人しくしろ!!」

 

「逃げ道はねえぞ!」

 

「…"(サイ)"」

 

犀のような構えから、回転斬りをする。

 

「"(クル)"!!!」

 

そして回転斬りしたことにより生み出された衝撃波で賊が俺の周りから吹き飛んでいった。

 

「ぶぎぁ~~っ!!!」

 

「なっ!?」

 

「一旦下がれ!!!」

 

「無駄無駄。そもそもそこは俺の射程範囲内だ」

 

俺は下がっている敵に構わず、こちらから距離を取り斬撃を飛ばす。

 

「やむを得ない。少々瀕死になっても捕らえろ!!」

 

リーダーがそういうと賊たちは懐からハンドガンを取り出して俺たちに向ける。

 

「そんな鉛玉なんて遅すぎてあくびが出る」

 

頭と心臓以外を狙って何十という銃口から鉛玉を飛ばしてくる。

しかしそれを、俺は全てを二刀で真っ二つにしていく。那須に流れないように考慮しながら。

 

「こいつ人間かよ!?」

 

「失礼な。れっきとした人間だ……それにこんなことも出来るんだぞ」

 

いまだに射ち続けている賊の銃口に狙いを定めて、鉛玉を斬らずに打ち返す。

 

「うわぁっ!?」

 

「いたっ!」

 

「くそっ!!銃が使い物にならない!!?」

 

思惑通りに次々と銃が悲鳴を上げていった。…覇気で感じていたが、こいつら弱すぎ。

道力20くらいしか無いんじゃないのか?ショボすぎて笑いも出ねぇ。

 

「そんな隙を見せて良いのか?俺は待たないぞ?」

 

銃に気をとられている奴等に向かって斬り込みをかける。

 

「"二刀流"」

 

再び俺は斬撃の放つが、今回は波状だ。

 

「"鷹波"!!!」

 

敵の足元に向かって波状の衝撃波を喰らわせる。すると、思い通りにどんどん敵が転んでいく。

これだけ壮大に転けてると、無様の一言に限る。

 

「……この使えない奴等が!!退いてろ!!俺が殺る!!」

 

部下の失態をとうとう我慢できなくなったリーダーとおぼしき男がナイフを持って、こちらに切っ先を向けた。

俺に歯向かうのは良い……でもな、一つ言いたい事がある。

 

「あんたも大して強くないだろ」

 

「はっ!?この糞ガキは何を言ってるんだ!俺はこれでもナンバー……」

 

「わりぃな」

 

「話の途中で……」

 

「お前がナンバー1とか100とかはどうでも良いんだよ。だから斬らせてもらった」

 

「何を言って……は……は?」

 

俺が二刀しまう頃には、奴のナイフはさらさらの砂のごとくキラキラとした破片に変わっていた。

 

「ひぃ!?」

 

「さっさと帰れ。そうすれば見逃してやる」

 

「あ…あ……た、助けてくれ!!」

 

俺が腐った目で睨みを効かせると、脚をぶるぶると震わせ、後ずさりしながら逃げていった。

 

「……忘れもんをしてるぞ」

 

腰に帯刀しっぱなしの『和道一文字』を抜き、口にくわえる。

 

「"三刀流"…」

 

そして乱雑に、かつ風の軌道を合わせていく。

 

「"龍巻き"!!!」

 

俺を台風の目にしたかのような龍巻が現れる。周りにいた倒れている敵たちはどんどんと浮いていく。

 

「さっさと上司にでも泣きついとけ」

 

次の瞬間、リーダーの元に数十という敵が吹き飛ばされていった。

敵が目的の場所に落下したのを確認して、静かに刀を納める。

 

「ふぅ…雑魚の相手は疲れる」

 

「さすが俺と同じ特異点だな。やはりその封じられし力は危険だ」

 

「当たり前だろ。俺は大剣豪になる男だ。…そんなことよりさっさと帰ろうぜ」

 

「ふっ、そうだな」

 

「……」

 

「…?どうした?」

 

二人並んで帰ろうとしたが、俺は自然とは異なる気配を感じた。それらはこちらを見ている。

念のためと思い、覇気を使い詳細を確認するが、特に殺気でもなく、ただ単に観察しているだけだった。

数は3つ。どれもさっきの奴とは違い武人と呼べるレベルにいる奴等だ。

 

「……ま、触れぬが仏か……いや、なんでもない」

 

「そうか」

 

こうして俺の騒がしい一日が幕を下ろしたのであった。

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