「紅の流れ星」って通じるかな……
さあ、下校だ。
俺としず、
「あれ~? サトルンじゃないっすかぁ?」
この声は。
その方向に振り返る。
「ナーちゃんもしずちゃんもこんな時間までいたんすか?」
やはり、暴走お騒がせ娘、
「なんかいま二つ名付きで紹介されたような気がしたっす」
「心を読むな……。お前はしずか………。」
しずがクリンとこちらを見る。
「お?! ほんとに二つ名で紹介したんすか!? どんなっす!? ”赤い
ふむ、たしかに狼布須の赤い髪と疾風のごとき機動性はまさに赤い
「……それは三倍の速さの持ち主か、それともチンピラ映画の意味合いを言ってるのか」
「主題歌の途中で毎回セリフが入るやつっす!」
それは”
ていうか世代がズレてるとワカンネーヨ!!
「サトルンもチンピラ映画とか発想が出てくるあたり、ちょっと世代古すぎっす! 」
「変わんないよ!! 俺とおまえ
うへぁ、とのけぞる狼布須。
これは帰化名らしい。
ラテンの血をひく子で、まさに太陽のような
本人がテスト用紙の名前欄に記入するときは『狼布須レジーナ』と書くときが多い。
理由は「あんな細かいのいちいち書いてらんないっす!」だそうだ。
帰化名には元の名前に漢字を当てるそうだから、おそらくこの『レジーナ』が本名だろう。
……ちなみにさっきからこいつが度々
これで陸上部にでも入ってればたぶんエースくらいにはなってたんじゃないだろうか。
前に一度聞いたことがある、『陸上部とかはやらないのか』と。
その返ってきた答えが
『ん~、飽きたっす』
だったのだ。
……『飽きた』、ということは…以前は活動していたのだろうか。
「……で? なんでこんな時間まで残ってたっすか?」
狼布須の声に思考から呼び戻される。
「…ただの
「うーあ、あれくらっちゃったっすか。てことは今週はずっとこんな時間に帰るってことっすね」
「どうせあと四回だ。五回あるうちの一回は今日クリアした。減りはするけど増えることはないからな」
「ポジティブっすねぇ! その考え方、嫌いじゃないっすよ」
「そりゃどうも…。そういうそっちはどうしたんだよ? こんな時間まで学校に残ってるとかさ?」
俺の場合は週番、しずはそれが終わるのを鍋原と一緒に待っていてくれたからこんな時間になった。
さっきも述べたがこいつは飽きっぽいから部活動はやらないと聞いたが。
「ああ~、ちょっと陸上部の新人さんと遊んでたっす。走るフォームとかいろいろ悩んでたから」
そういやこいつすごく走るの早いよな。まるで
「で? 悩みは解決したのか?」
「フォーム以前の問題だったっす!」
「ほう、何が原因?」
「ケツの穴っす!! その
大きな声で
自身の口を抑えた俺の手を振りほどき、「ちょっ! 何するッすか! ホントっすよ、ケツの穴締めると足の
「ホントかもしれないけど天下の
「サトルン意外と純情っすね?! わかったっす……じゃあ言い換えて…アナもがっ」
こいつ全然わかってねぇぇえぇぇぇぇぇぇ
「ふむ……
鍋原は鍋原で何やら真剣に考え込んでいる……
…しかし鍋原よ、横文字シリーズはあまり先生には効果的ではないと思うが……。
しずは……
「?」
うん、いつも通りだ。
「狼布須……お前さんもうちょっとデリカシーってものをだね……」
「アハハハ! 私からすればそれこそ
コイツはホント大物だな。
……そういえばこいつと一緒に帰るって初めてじゃないか?
今年に入ってから登校は基本的に俺、しず、鍋原の三人、たまにタイミングが合えば
──ちなみに今日の場合、由利はいない。
昼のラウンジでのタイトルマッチの一件で
昼………
「そういや狼布須ってさ」
「ん~? 美人なのはわかってるっすよ?」
なにこの自信。
「……いや、そういう話じゃなくてさ」
「……なんだ、違うっすか………」
話が進まないからここはスルーだっっっ
「狼布須ってさ、モノマネすごくうまいよな。昼のラウンジの時、由利や祖流の声マネしてたろ?」
「アハハ、気づいてたっすか」
そりゃ気づくって。
見てたし。
「声マネってゆーとー……」
なんか顔を抑えてうつむく狼布須。
「こぉぉオんな感じ~────!?
っすか?」
「「「うわぁぁぁぁぁぁァぁぁぁぁぁ!!!!」」」
こっっっこれだ!!祖流の声そのまんま!!!!
俺どころかしず、鍋原まで叫んでしまった……
ていうか卑怯だろなにいまの顔!!
「他にも…ッ!」
というと眉間に力を込める狼布須。
そこに現れたのは……
「
由利?!
「しずちゃんのほっぺはボクが守る!(キリッ」
キラリと輝く
青い顔をしたしずの「やめて」のつぶやきをよそに狼布須の芸は続く。
そして俺は気づいてしまった。
狼布須、ちょっとおまえ緊急事態が……。
「お兄ちゃんが全然あそんでくれない…」
そんなセリフが飛び込んできた。
今度はしずか。
……そういえばしずってそんな風に甘えてきたりしないからなぁ……。
違和感があるとすればそこか。
あー……というか
そんなことより、狼布須、うしろ。
「鈴木くん、たすけて」と鍋原のような声を上げながら由利と祖流に引きずられていく狼布須。
『私はそんなこと言わない』とつぶやく鍋原を追うように俺達は家路を急いだ。
…どうせなら
◇
俺は先ほどの狼布須の人マネを思い出す。
「"人に
「当然」と妹のしず。
「ドッペルゲンガーほどではないにせよ
どっぺ…?
じんろー?
しずの言葉に鍋原が反応する。
「赤ずきん…?、ああ、あの
「あらすじの途中まではあってるけどジャンルが全然違う」
さっきから君たちは何の話をしとるのかねオニイチャンモマゼテヨ。
◇
そしていつも鍋原と朝合流するゆるやかな坂にさしかかり。
「さて、俺は夕飯の材料の買い出しがあるからここでお別れだ。しずは先に帰って……」
「私もいく」
「…お? そうか? ……言っとくがお菓子は買ってやらんぞ?」
「……それは仕方がないけれど…、購入物の輸送随伴が主眼」
「えと、つまり荷物持ってくれるってことか?それは助かる」
たまにしずの言ってることがよくわからないが…
「じゃあ鍋原、また明日」
「はい、また明日。お気をつけて……シズ、あとは頼んだわよ」
「ラジャー」
………『あとは頼んだ』ってなにをだろう???
まあいい、早く買い物を済ませてしまおう。
ぺこりと頭を下げる鍋原に見送られ、俺たちは道を少し行った先のスーパーへ向かう。
道すがら。
さっきの狼布須のモノマネを思い出す。
あれは本当に見事だった。
目をつぶって聞けば”本人か”と間違うやもしれない。
だからこそ。
『お兄ちゃんが全然あそんでくれない…』
この声がすごく胸に引っかかっていた。
違和感を感じたのだ、『シズハ ソンナフウニ アマエテキタリハ シナイ』と。
それが、『”違和感”であると自分が納得していた』ということに。
「……しず」
「?」
「今度、どっかに遊びに行こうか?」
「…………………」
返事はない。
表情は変わらない。
けれどなんとなく。
なんとなくではあるが。
こちらをまっすぐ見るしずの雰囲気が。
どことなく、歓喜に似た驚きを含んでいるように感じられた。
昔同級生に北米系の帰化した人がいました。
やはりその人も帰化名で名簿登録していましたが…。
これ日本人でも書くのに一苦労だぞって画数でしたね。
ましてや英語文化圏からきて数年の子には大変だろうに。
モノマネ。
皆さん一発芸ってお持ちですか。
私の場合は声帯模写ですね。
マイクなしならドナルドダックの鳴き声が得意です。
寮生活してた時に披露したらアンコール求められるくらいにはうまいと自負してますぜ?