ナザリック学園 ~カラクリ仕掛けの小劇場~   作:兄浜隼矢

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………とりあえず私の中ではガガーランは17歳だとこうなりました。



帰宅~藍銅鑼邸・鍋原のアパート~

時は少し(さかのぼ)る───

 

 ◇

 

狩根(かるね)町・藍銅鑼(あいどら)邸~

 

ここはナザリック学園より中央線を(はさ)んで南西の狩根(かるね)町に位置する藍銅鑼(あいどら)邸。

といってもここは本家とは違う。

 

いわば分家(ぶんけ)──というべきなんだろーか。

 

本家は衛守堤世(えすてぜ)市東部、『衛守堤世(えすてぜ)本町(ほんちょう)』に邸宅を構える。

ここはちょっとしたお家事情により狩根(かるね)家より土地を借りた別宅……いや、もうここが『私たち』にとっての”巣”といえる。

 

──事情を知るものあれば、ここを”屯所(とんしょ)”と呼ぶものもあろう───

 

そしてここを預かるのは──おっと、ちょうどその本人のご帰宅。

 

 

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藍銅鑼(あいどら) ラキ

名家・藍銅鑼(あいどら)一族に名を連ねる娘。

私立ナザリック学園高等部二年一組 出席番号一番。

(いち)()くし。

本人によると一年の時も一組だったらしい。

「こうなったら三年生も一組ねらうかー」とは本人の弁。

剣道部所属、『筋肉(きんにく)兄貴(あにき)』によるとたびたび妙な気合を張り上げて顧問の先生に叱られるとか。

 

そしてその隣には───前述の『筋肉(きんにく)兄貴(あにき)』も並んでいた。

 

筋肉(きんにく)兄貴(あにき)──

風雲急を告げる乱世に突如出現した豪傑。

その大剣の一振りは地を穿(うが)ち、海を割ったという。

 

「…おい」

 

生物としてはあり得ない『大脳筋(だいのうきん)』の持ち主。

橋桁(はしげた)手前で荷物が数センチの高さの差のせいで通れずトラックが立ち往生したとき、賢い少女が「タイヤの空気を抜いて通ればいいのよ」ととんちを利かせた横で「橋を落とせばよい」と大剣で橋を切り飛ばしたエピソードはあまりにも有名。

 

「おい、あんまりいい加減なことばっか言ってると名誉棄損(めいよきそん)で収穫すっぞこの根野菜(こんやさい)ども」

「む」

「なぜバレた」

「この家の植え込みにそんな大きな野菜は植えられていないからさ」

 

 

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しょうがない、収穫は困るので最初から。

……それにしてもこのスカートから伸びる足だけみるとボディービルダーが女装しているようにしか見えない。

 

 

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加賀(かが) ラン

私立ナザリック学園高等部二年六組 出席番号七番。

剣道部所属、その風貌(ふうぼう)、容姿と実力から『女子剣道界最強の”(おとこ)”』の異名がつけられる。

『筋肉の塊』、『豪傑』、『産まれてくる時代を間違えた』などなど、(かの)……(じょ)?…を言い表す言葉は多聞に女性とはかけ離れたものが多い。

 

「……失礼なやっちゃ。こんな可憐(かれん)なお姉さんをつかまえておきながら……」

 

「こんなフルアーマー兄貴の」

「どこが可憐だというのか」

 

「…よし、今夜はマンドラゴラのスープだ。覚悟しろ、お野菜(やさい)姉妹」

 

「なにをする」

「はなせー」

本性を現したな大魔神。

 

 

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「はいはいもう家に入るよ。夕飯の支度だってしないといけないしさ……ところでアイは?」

木野(きの)アイなら」

「お掃除当番と、途中買い物するからとで、だいぶ遅くなるみたいなこと言ってた」

「買い物…そうだ! 青ノリ切らしてたから買っとくはずだったんだ!!」

 

筋肉兄貴が携帯をカバンから取り出す。

文明の利器とはすごい、こんなゴリラにも最先端技術が扱えるようになるんだから……。

 

「……おまえの考えてることは大体お見通しだからな………?」

 

──神様はなんて厄介な能力をこの者に与え(たも)うた。

 

「……お、アイか?………そうだ、『可憐(かれん)(ほう)』のお姉さんだ。ちっと買い物頼みたいんだが大丈夫か?」

詐欺めいた名乗りのあと、筋肉兄貴は木野(きの)アイに今夜のメニューに不可欠な調味料の購入を頼んでいる。

どうやら今夜のメニューは豚肉焼きそばらしい。

じゅるり。

 

カギを開ける藍銅鑼(あいどら)ラキ。

「さ、みんな(そろ)って」

この家に帰ったものは必ずしなければならない仕来(しきた)りがある。

それは──

 

「ただ今(よっ)つの名、(もど)りました」

揃い頭を深く下げる。

そして数秒ののち─

頭を上げる。

 

藍銅鑼(あいどら)の家に古くから伝わる帰宅の挨拶の儀礼。

帰宅したものは必ず揃い、帰宅した人数を告げてお辞儀をする。

これはこの家を(まも)る先代たちの御霊(みたま)への敬意を表すと同時に───招かれざる客がいた場合への警報となる。

 

この家には、そうする事情が───ある。

 

 

~side 鍋原(なべら)

 

一軒のアパートの前に立つ。

 

『この世界』の基準であっているかわからないが、ごく普通の集合住宅ね。

事実、周りの建物ともそう変わりない色調の建造物。

 

階段を上り、一つの部屋の前へたどり着き。

その表札へと目をやる。

『205 鍋原』

 

『鍋原』は黒マジックで書いた紙の、簡素なもの。

 

衛守堤世(えすてぜ)蘭照(らんてる)町2-5-18

ハイツ・ランティール 205

 

──ここが私の生活拠点。

 

カギを取り出し、鍵穴に挿す。

チャリ、と鍵に括り付けたキーホルダーが音を立てる。

小さなウサギの模型だ、可愛いな……。

 

ドアを開ける、わずかな空気の抵抗とともに扉は開かれる。

特に(きし)んだ音などはしない、ちゃんとしたドアだ。

 

帰宅(きたく)───

 

と、言うことになるのかな。

とにかく私の学校以外の生活の場はここになる。

 

 

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靴を脱ぎ、揃える。

靴の数は変わりない。

種類も変わりない。

 

廊下を通る。

途中の調理台の下にある貯蔵庫──冷蔵庫の扉を開ける。

これの仕組みはいまだにわからない……なんで箱の中はこんなに冷えてるの?

 

『以前』…シズにその仕組みについて聞いたら………。

レイバイ……霊媒(れいばい)?、がどうとか、抑圧してなにかが上がって、解放して気化したなにかを…奪い取る?

 

……シャーマンを弾圧して、反乱の機運が上がったところを解放してなにかを略奪(りゃくだつ)する……らしい、のかな?

なるほど、植民化の現地人懐柔(かいじゅう)策を利用して……。

 

……この箱の冷却効果とどう関係あるんだろう。

いまいち理解できない……。

 

冷蔵庫の中を見る。

手前の扉部分に数本の飲料水。このうちの一本の黒いのは甘いのだがピリピリと舌を刺激して正直あまり好みじゃない…。

オレンジジュースのボトルが『一本だけ』あるのでそれを取る。

これはとてもおいしい。

 

廊下の奥、この部屋の中心となる場所へと進む。

 

ここが……私の過ごす部屋。

ベッドが一つ、小さなテーブル一卓(いったく)、ワードローブ一棹(ひとさお)、チェストが二棹(ふたさお)

そしてテレビ──初めはこれにいろいろ悩まされた……。

あの時はシズにいろいろ助けられたわね……。

 

──さて、着替えよう。

この部屋にはくつろぐのに適した部屋着がそれなりにある。

なかなか気に入ったものも中にはある………のだけど。

 

 

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──この下着の趣味だけはいかんともしがたい。

可愛いんだけどね。

 

 

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どうせなら下着は黒が好みなのよ。

なぜこのようなお子様趣味なんだろう……。

 

 

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 ◇

 

ふぅ。

やはりお風呂は生き返る。

 

 

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手足を十分に伸ばせないのは残念だけど、一人で気兼ねなく使えるというのはやはりいいものね。

お湯の(あたた)かさがゆっくりと……じんわりと……

 

体に染み込んで……

 

………

…………

……………

………………

 

寝てしまうところだった。

 

 ◇

 

お風呂から上がり、チェストからお気に入りの部屋着を取り出す。

 

濃緑色で落ち着いた色調、白のラインが控えめに服を彩る。

無駄がなく、ゆったりとして、それでいて着心地がいい。

通気性がよく、それでいて保温性がいい。

伸縮性に富み、折り目がつかずシワにならない。

しかも()入りとは……!

 

これほど至れり尽くせりの服はそうはない……!

 

 

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そうだ、制服をハンガーにかけておこう。

シワになると困る。

 

カバンを部屋の隅にどけようとした時、ふと思い出した。

 

ああ、コキュ…虎丘(こきゅう)先生からいただいたおせんべいが入ってたんだ。

そうだ、世俗に慣れるようにと先ほどの帰り道に「カズラヤ」に寄って買ってきた書物も入ってるんだった。

 

これで少しは文化的な日常知識に後れを取らぬようにと………。

 

と、いうよりも。

表紙にあるこの文言に興味を()かれたのよね。

女子力(じょしりょく)向上! スキルアップ20』

 

女子力(じょしりょく)……、文字から察するに女性特有のステータス値といったところか。

 

スキルアップ…!『技能(スキル)向上(アップ)』というからには未知の固有技能に関することね……!

とても甘美な響き………!

 

まさかこんなところでかのような秘奥義(ひおうぎ)書に出会うとは………!!

 

 

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さっそく本を開いてみる。

『夏のスタイル 今年はこれだ!』

『アクターズレポート 今月は… 官野(かんの)マモル さん』

そんなのどうでもいい、例の特集は……、あった!

 

 

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ふむ…、どうも女性の生活における立ち回り方の、指南書(しなんしょ)……の、ようね………。

 

…期待外れだったか……あら?

この服……いま私が来ている服にそっくり………?

ジャージ、というのね、この服。

 

しかしなぜ大きな赤い×印(ばつじるし)が………?

 

「やってはいけないこと!!ジャージ生活に慣れてしまうこと。(特にスクールジャージ)」

 

私は本をソッと閉じた。

 

~side しず~

 

わたしは歩いている

夜の街を歩いている

 

光にあふれた昼の町

闇にしずんだ夜の街

 

(ひと)』の絶えた夜の道、そこを歩く『偽人(ぎじん)』の私

 

前から気になるこの()についた

そして私は空を向く

そこは満天、星の河

季節外(きせつはず)れ』の、星の河──

 

 

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~side 鈴木(すずき)サトル~

 

しずが警察に補導(ほどう)されてきた。

愛妹(まないも)よ、コンビニに行くといって二時間もどこをほっつき歩いていた……!

 

「いやーまずいよねー」

しずを連れてきた女性警察官が言う。

「『小学生』がこんな時間に出歩いてたらさー?」

 

すいませんこいつこれでも高校生………

 

 

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しず、あとで説教(せっきょう)だ。

お兄ちゃんは心配したんだぞ?!

 

 




いつも思うんですが「後書きはこう書こう!」「前書きにはこんな見出しつけよう!」と思っててもいざ投稿する時になると忘れちゃうんですよね。

ちなみに作中に登場する記事の「官野マモル」とは…
まあだいたい予想はつきますね。
この世界では「俳優(アクター)」です。

そういえば原作の五巻読んでて「あれっ」と思ったんですが作中だとガガーランは「短く刈り込んだ髪」とあるんですね。
しかしso-bin先生のイラストだとなぜかロングウェーブ……。
これはあれかな、くがね先生がso-bin先生にガガーランのイメージ伝える際「『コナン・ザ・グレート』をそのまんま女にしたような感じ」とでも伝えたのかな?
そして髪型もそのまま……とか。
私としてはロングの方が描きやすいかなとw
ペテルもそうなんですけど短髪ってちと描くの苦手なんで…。
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