ナザリック学園 ~カラクリ仕掛けの小劇場~   作:兄浜隼矢

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寒い時期のお布団って魔の魅力がありますね。



翌朝~また新しい一日~

暗い空。

そう、夜空。

 

()で照らされてる街は光に()(あふ)れている。

が。

その()(うしな)えば、街はおろかこの世は(やみ)()たされる。

 

しかし人間は幾年月(いくとしつき)()て、この闇にも打ち克つ手段を得た。

(あか)りである。

灯りを得て、人間は夜も光を手に入れた。

 

現代の町は、(いつわ)りの光に()(あふ)れている。

 

ご存じ?

(あか)りはね、火が起源なのよ。

そう、今お前たち──下等生物の街を照らしてるようなね!!

 

ああ………よく燃えているわね。

きれい……。

下等生物(アブラムシ)が火の中をチョロチョロ逃げ惑ってて滑稽だわ……。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「いやぁぁぁぁ!!!!」

「燃える!! 家が燃えてしまう!!」

「ぱぱー!! ままー!!」

 

ふふふ……。

下等生物が………。

しょせんお前たちは一夏(ひとなつ)の虫なのよ……。

なら火にくべなきゃね…?

 

この『ジドウシャ』って〈雷撃(ライトニング)〉程度であっけなく爆発するから面白い……。

……いや、(はがね)でできているからか。

たしか……電気伝導率(でんきでんどうりつ)が高いから導体(どうたい)として金属は優秀、と授業で言ってたわね。

そして『がそりん』という燃料がつまっているらしいから……。

あはは、まさに雷属性魔法には格好のオモチャってわけね!

 

えいっ、燃えなさい!!

 

 

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同じ(はがね)でできた『デンシャ』はどうだろう?

 

 

【挿絵表示】

 

 

…………う~ん、あまりパッとしないわね。

やはり『がそりん』のつまった『ジドウシャ』の方がつぶしていて楽しい。

 

ああ……。

なんてすがすがしい光景………。

なんで今までこうしなかったのかしら……?

もうやめよ、やめやめ。

こんな下等生物にまみれた暮らしなんて。

 

 

【挿絵表示】

 

 

お前たちにはこの光景がふさわしいのよ。

 

「助けてぇぇぇぇぇ!!」

「はやく!! 安全な場所へ!!!」

 

あら、()げようというの……?

へぇ……。

 

「逃がさん!キサマら全員皆殺しだ!!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

ケシズミにして…………!!

 

………

…………

……………

………………

…………………あら?

 

朝。

見慣れた(かべ)

見慣れた天井(てんじょう)

見慣れた室内(しつない)

 

ここは……(わたし)部屋(へや)

ぼんやりとした頭で現状(げんじょう)を整理する。

 

……なんだろう、何か楽しい(ゆめ)を見ていたような気がしたんだけど………。

思い出せない、何かこうスカッとする夢を見ていたような。

 

時計の時刻は──午前六時半。

少し早起きだったようね。

 

ちょっと早いけど洗顔でも始めましょう……、あら。

昨日()んだオレンジジュースのボトル……。

そうだ、昨夜飲んだ後そのままだったわね。

さて……、()()()()()いるか………。

 

冷蔵庫(れいぞうこ)の扉を()けた。

………やはり。

 

『一本しかない』オレンジジュースのボトルが……ある。

この片手に握られた空のオレンジジュースのボトル以外に、だ。

 

この家は、一体何なのだろうか。

冷蔵庫には食料や飲料がたくさん入っている。

そのすべてが…消費しても帰宅時、あるいは就寝(しゅうしん)後には『すべて元に戻っている』。

まるで絵画(かいが)のように……そっくりそのまま、消費する前に『戻っている』

誰かが留守中に補充(ほじゅう)しているかのように。

 

面白いのは……使った分は消滅するのではなく、こうして手元に残っている。

中身を飲み干しても『ボトル』としての物体は残っているところね。

 

そしてもうひとつ。

 

制服のかけてあるハンガーにも足を向ける。

ブレザーに入れてある財布(さいふ)を取り出す。

 

昨日は紙パックジュース110円、総菜パン二点280円、鮮傑亭(せんけつてい)での夕食に890円、書籍代600円の合計1880円が支出として消えた。

 

中を(あらた)める。

紙幣(しへい)数を数えるだけでいい、なにしろ……。

ふだんは千円の紙幣が三枚と、五千円の紙幣が一枚あるだけなのだから。

そして……その数は、今の時点でも変わらなかった。

 

確かに昨夜は千円紙幣を二回使用し、お釣りの小銭も受け取った。

 

しかし───紙幣数は使う前と変わらず、釣り銭としてもらった分の小銭も存在しない。

 

『8798円』、それがこの財布に(つね)に入っている額なのだ。

また中途半端な……。

 

()うに困らず、さりとて(おご)るに足りず。

必要最低限の額がそこには入っている。

 

なんなのだろう、この都合(つごう)の良さは。

これが来歴のしっかりしたお金ならまだ話は分かる。

しかし気づかぬ間に、いつのまにか『されている』というところに薄気味悪さを感じる。

 

気づいたら背後から刃物を首筋にあてられて「どう? ヒンヤリするでしょう?」と嘲笑(あざわら)われているかのようだ。

しかもそれが私の経済的な生命線に関わることというのがもっとも(かん)(さわ)る。

 

ここは。

この家は。

そして私は。

誰かに、あるいは「何か」に管理されている。

 

おそらく、この家にはその『何か』が───いる。

 

…………

まあいい、そろそろ学校へ行く支度(したく)をしなくては。

 

飼いたければ飼うがいい。

その『ご厚意(こうい)』を、せいぜい有効活用させてもらうわ……。

 

 

~狩根町・藍銅鑼(あいどら)邸~

 

「…78…79…80…81……」

 

室内にカウントを数える声がこだまする。

規則正しく、落ち着いて。

 

声の主は筋肉兄貴───加賀(かが)ランだ。

今朝もこの筋肉の申し子はその筋肉を存分(ぞんぶん)にマッする。

「………なんだ、その、『マッする』って」

「あんたの筋肉活用を的確に表現する言葉がないから」

「私たちで新語を作った」

「…おまえたちも、ヒマなら、体鍛えろ、よ、ティア、ティナ」

「あんたは私たちまで筋肉怪人にするつもりか」

「というかさりげなく私たちの名前をカウントリズムに使わないでほしい」

 

「99……500、と」

「……加賀(かが)ラン、知ってる?」

「『99』の次は『100』なんだよ?」

鍛えすぎてお脳がとうとう数の数え方まで忘れちゃったんだね。

オーノゥ、なんちゃって。

ぷーくすくす。

 

「ああ? いちいち『498』『499』なんて数えてらんないっての」

「……まさか」

「……『500』のカウントの方が正解とは」

「そんなことでいちいち驚くなよ。ちょっと鍛えればこんなのラクショーだぞ」

「いやいやいやいや」

「腕立て連続500回やって息も乱れてないあんたがおかしい」

こいつ本当に人類?

 

「逆にアイとか心配になるくらいひ弱だからそっち心配しろ。腕立て30回でもうヒーヒーいうんだぞ」

「……あれは気の毒だった」

「……次の日の学校で(とびら)も開けられないくらいの筋肉痛に見舞(みま)われてた」

「……お(はし)持つ手が常にプルプルしてた」

「……その日の木野(きの)アイのノート見てみな? 地震計みたいになってるから」

「かゆい うま」

「(ノートはここで終わっている)」

「わかったよ! 俺が悪かったって!!」

 

「おはよーぅ……今朝もこの部屋(あった)かいね」

藍銅鑼(あいどら)ラキ……ボスが入ってきた。

彼女の言葉に室温計を見る。

現在の室内温度 24℃

 

たぶん……このうちの3~4℃は加賀ランの発熱量によるものだと思う……。

 

「あれー、アイは? また寝坊助(ねぼすけ)さん? …アイー?」

ボスがアイの部屋まで起こしに行ったらしい。

…が。

「あれー? アイいないよー? …ああ、もしかしてまた?」

「そう」

「昨夜また私たちの部屋に来て()てた」

 

 

「……こりゃまたこの世の平和を一身(いっしん)に集めたような寝顔してるね…」

「うん」

「寝床があったかくなって助かる」

 

 

【挿絵表示】

 

 

木野(きの) アイ

ゆるフワ(なぞ)生き物。

私立ナザリック学園高等部一年一組 出席番号六番。

たまに私たちの寝床(ねどこ)に寝ぼけて潜り込むクセがある。

特徴:異音(いおん)を発する、テンパる。

 

「……ティナはそれでいいかもだけど…ほら、アイー? 起きなさーい」

「ふぅぅん……うぇへへへへへ……」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「……ねぇ、ちょっとこの()大丈夫?」

「もともと木野アイはすこし寝起きが悪い」

「さらに言うと昨日なにかいい事あったらしくてずっとこんな感じ」

「昨日変わったことって言ったら……青ノリとバジル間違って買ってきたことくらい?」

「よいにほい」

「学校では特に変わった様子はなかったし、買い物の時に何かあったと思う」

「サラサラ髪の指どおりがいい」

「買い物オマケしてもらったとか? …でもスーパーでしょ?一般商店ならまだしも……」

「この(やわ)らかほっぺはサイコー。他にも……」

………

…………

……………

 

「……ボス、ティアがのっぴきならないことになってる」

()めなさい、この作品がR-18指定にならないうちに。今すぐ!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

~side しず~

 

AM 6:50

待機(スリープ)モード解除。

覚醒(アライズ)モードに移行。

 

 

【挿絵表示】

 

 

シーケンススタート

メインパワーON

各部状態チェック…

オペレーションシステム・・・・・・チェック

メモリー・・・・・・チェック

メインカメラ良好

スピーカー良好

ジェネレータ出力安定

パワーゲイン上昇

各部アクチュエーターエネルギー供給開始

バランサー正常作動

各動作良好

 

出力……”日常行動(ノーマル)”に設定

 

CZ-2128 ”DELTA” ────

 

 

────起床(アクティベート)

 

【挿絵表示】

 

 

これより作戦行動に移る。

 

 

~side 鈴木(すずき)サトル~

 

うぉぉぉおおおお!!!!

ニャンコぉぉぉぉおおおお!!!!

「ニャー」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

この鈴木サトルさまが可愛がってくれるわァ!!

かわゆかわゆ!!

かわゆかわゆ!!!

頭なでなでなでなで!!!

ペロペロ!!ペロペロ!!

おなかモフモフぅぅうぅ!!!

くんかくんかうおおおお!!

「ニャー」

(やわ)らかいなあ(ちっ)さいなあ()っそいなあエエ(かお)りだなあ

 

ええい!!! チューだ!! チューしてやる!!

ちゅ──────

 

「にゃあああああああああ!!!!!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

──────ぅ?

 

………

…………

……………

………………あれ?

ニャンコがしずに???

はぁ、しず、こんなに()っそいんだな…

いい香り…やーらかいなあ…

……………あれ

 

店主(てんしゅ)、ニャンコはいかがいたした。

 

……ん?

目の前のニャンコがしずで

するってぇと、俺はおそらく朝()こしに来てくれたしずに

抱きしめて

頭なでなでして

ペロペロして

おなかモフモフして

くんかくんかして

 

あまつさえチューしようとしてたのけ?

 

……うわぁ「血の気が引く」時の音ってこんな音がするんだぁ…

 

「すまんんんんん!!!しずchang、いえサマ!!許してくださいぃぃぃ!!!お願いだから……」

 

 

『覚悟完了』

 

「…みたいな顔するのやめてー!!」

 

 ◇

 

一悶着(ひともんちゃく)』のあと家を出る俺としず。

 

そこへいつものように坂のてっぺんでクラスメートの鍋原(なべら)と合流する。

「おはようございます、アイ───ザワくん」

……だから誰だよそれ。

 

いつも思うんだが……しずと鍋原(なべら)って妙に仲いいよな。

なんというか、こう、姉妹(しまい)みたいな。

妹であるしずの世話を焼く姉の鍋原、って感じ。

一緒に登校するようになってまだ三週間くらいなのに、まるで長年親しんだ間柄(あいだがら)のような……。

 

……なんか()けるぞ

 

しずは俺の可愛い可愛い妹だ、だれにもやらん。

でも……鍋原がしずの姉…か…それはそれで微笑(ほほえ)ましいな。

……あれっ、なんかこっちまでドキッとしたぞ?

 

「……どうしたの?」

「身近に妖怪(ようかい)がもう一人いたのを今朝(けさ)知った……」

だからごめんようしず、それに例の妖怪はたぶんそろそろ……。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「おはよぉぉぉぉう しずちゃぁぁぁぁぁぁん」

 

 

【挿絵表示】

 

 

ほらいわんこっちゃない!!

というか由利(ゆり)センセーもほどほどにしないとしずが夜トイレにいけなくなる!

 

「おはよう、由利センセー(しずなめ)

「……気のせいかしら、読みがなに悪意を感じたような気がしたわよ?」

気のせい気のせい。

 

さあ、いつものメンツ?も(そろ)った。

今日もナザリック学園へ登校だ!

 

ああ………週番(しゅうばん)だるぅ………

 




さて、今回で『基本的な一日』編はお終いです。
お疲れ様でした。
次回からはそんな日常の中のエピソードが始まります。

本当は前回の帰宅編で『基本的な一日』は終わろうと思ってたんですが…。
今回の鍋原の謎を描く必要あったんで…。

さて…ここからは完全に新規エピソードなんで少し時間かかるかも…。

今後ともおつきあいどうぞよろしくお願いします。
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