ナザリック学園 ~カラクリ仕掛けの小劇場~   作:兄浜隼矢

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ちょうど今日ネコ屋敷のニュースがあって正直微妙な気分になりました。


ゴールデンウィーク
GW前~ネコ・あの日の夕暮~


登校途中。

 

「?、しず、どうした?」

やおら立ち止まり、塀の上をじっと見つめているしず。

壁の段差のせいで何を見ているのかわからない。

 

近づいてその視線の先を見る。

その先には───

「ああ、なんだニャンコか」

「……ニャンコ?」

「…………ネコ」

由利(ゆり)の指摘にあらためて言い直す。

 

丸っこいネコがいたのだ。

………というよりおなかが大きい。

あれは赤ちゃんがいるのかな。

「……子猫、増える?」

「ああ、たぶん近々産むんじゃないかな」

「ほぉ………」

しずが興味津々(きょうみしんしん)といった具合だ。

 

何というか……ネコ、すっごい胡散臭(うさんくさ)げな目でこっち見てる……。

あ、いっちゃった………。

 

「備考:(エヌ)0013(マルマルヒトサン)に出産兆候あり」

「……なんだ、その『えぬまるまるひとさん』って」

「先ほどのネコの個体番号」

「おまえ結構ドライだね?!」

「ドライ。………乾燥?」

「いやべつに乾き具合じゃなくて。ふつう番号じゃなくて可愛い名前とか付けないか?! ネコ(まる)とかポンコとか」

「可愛い名前ですね」

「……鈴木(すずき)くんもだけど鍋原(なべら)さんもたいがいよね……」

 

「というかしず、一匹一匹に番号ふってるのか?」

「うん、この地域に三匹、飛部之森(とぶのもり)公園に九匹の計十二匹を把握している」

 

あの公園のネコまで把握してんのか、すごいな……。

 

「………あれ?、しずちゃんさっき13番目のカウントしてなかった? 一匹足りなくない?」

「そのとおり、先ほどのネコは13番目に発見した個体。この町では(エヌ)0003(マルマルマルサン)から(エヌ)0014(マルマルヒトヨン)まで発見、登録している」

「………さらにもう一匹足りなくなったわね。その……足りない(エヌ)……1番さんと2番さんはどうしたの? 別の場所にいるの?」

(エヌ)0001(マルマルマルヒト)(エヌ)0002(マルマルマルニー)は………」

しずが一瞬()(よど)んだ。

 

「……()()()()()で、見かけた」

 

 

【挿絵表示】

 

 

ああ、学校(ナザリック学園)にいるのか。

まああそこは敷地デカいし、ネコが()みついててもおかしくないか。

 

 

4月28日 木曜日

 

木曜日にもかかわらず、今日は学校として(しゅう)最後の日である。

そう、明日からは……ゴールデンウィークである!

「と、いっても5月2日は普通に学校あるし、休み期間(きかん)中も宿直(しゅくちょく)もあるしねー。教師にはあまり恩恵(おんけい)がないのが非情よね……」

大変だなー、先生も……。

「そんなわけでGW中はくれぐれも問題起こさないでね、割喰(わりく)うのは先生たちなんだから」

俺の同情を返せっ。

 

「あ、そうそう。GW(ゴールデンウィーク)()けたらすぐに一年生が校外(こうがい)学習で四日間長野(ながの)に行きます。あなたたちも去年行ったでしょ?」

ああ、あそこは涼しくていいところだったな……。

空気もきれいだった……。

というか長野からの帰路にトンネル抜けたら都会の空気の灰色(はいいろ)具合に思わず絶句したな、『これからあそこに帰らなきゃならんの?!』てさ。

 

「で、その間は週番(しゅうばん)が足りないので各クラス一名ずつ、つまりその週は三名選出の形になります。詳細は5月2日ね」

「……あー、順当(じゅんとう)にいけば俺か……」

「で、あるな」

「ま、どうせいずれ回ってくるもんだろ」

「がんばってねペテル」

仁那(にな)……頼むからバンド以外ではやめてくれ……その呼び名(ステージネーム)……」

 

「はい! では連休(れんきゅう)中はハメ外しすぎないように適度(てきど)にダラけてね!」

先生の立場でいうことか?!

「宿題出てる教科もあると思うからちゃんとやってくるように! では日直! 号令よろしく!」

「きぃりぃつ♪」

フワワン

「きょぉつけぇ♪」

フワワワン

「れぇい♪」

ポワァァァァン

 

「………いまいち()まらないわね」

それが演真(えんま)changの特殊能力です、先生。

 

 ◇

 

流れるぅ 雲をぉ 数えていたらぁ~♪

 

高校A棟(わき)のベンチ。

しずも鍋原(なべら)由利(ゆり)もいない。

今このベンチに座ってるのは俺一人(ひとり)

 

なんだか、ここ(ナザリック学園)に入りたてだったころを思い出す。

あの頃は、ただひたすら希望(のぞみ)を叶えるために頑張(がんば)って頑張って頑張りぬいて、不安(ふあん)焦燥(しょうそう)の果てにやっと希望の糸を(つか)んだ直後だった。

 

それでもやはり……最初は孤独(こどく)だった。

なにせ、この学校は中高一貫制だ。

大方のやつは中等部()がり、その時からの仲間とつるむ人間がほとんどだ。

別にいじめられやしなかったさ。

ただ、すでに出来上がっていた仲間の輪の中に、新参者(しんざんもの)は入りにくかっただけの事だ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

で、まあ、休み時間とかはこういう(ひら)けたベンチで一人でいることが多かった。

 

そんでもって、こうして歌を(つぶや)いていたりしたわけさ

「流れる 雲を 数えていたら

 いつのまにか こんなにも 時間(とき)がたっていた」

 

……むかし、父さんが鼻歌で歌っていたのを(おぼ)えている。

 

青空(あおぞら)が (あかね)色に

 あったかな風も ひえたくなり」

 

そう、そんなとき………

「♪遊んでた子供たちもどこへ~ だっけ?」

うしろから声がかかったんだった。

 

……?!

黄昏(たそがれ)てるわね、鈴木(すずき)くん」

ゆ、由利(ゆり)!?

「はい、由利さんですよ。……なんか見覚えのある光景だな~、と思ってたら」

 

うん、ちょうどあの時もこんな感じで由利と鍋原が後ろにいて、由利が今みたいに歌詞を(つぶや)いたんだ。

「若者よ、まだ黄昏(たそがれ)るには早すぎる歳だぞ?」

「……なんかますます先生みたいになってきたな………」

「それは言いっこなしよ………」

「はい…………」

 

「さて、あとはシズだけですね」

そんな鍋原に由利は

「ええ……そこに隠れてるけどね」

 

 

【挿絵表示】

 

 

しずは玄関の(はしら)(かげ)にソッと隠れていた。

……いやマジでその探知能力どういうことなの由利センセー………。

 

 ◇

 

「そういえばみんなゴールデンウィークはどっかいくの?」

「う~ん、特にこれといった遠出(とおで)は考えていないが……」

「お兄ちゃんがそういうなら同じく」

「私も特には」

「みんなインドアね……。鍋原さん、実家に帰省とかしないの?」

「……私には他に帰る場所など『この世界』にはないし」

……なんかすごい重い事サラッと言ったぞこいつ。

「……まあそれでもいいわ。私も家の仕事に(そな)えないといけないし」

へぇ、なんかお店でもやってるのかな、由利の実家。

 

お店……そういえばGW(ゴールデンウィーク)明けにしず達一年生は校外(こうがい)学習だっていってたな。

その買い物をしとかないと。

 

「しず、たしか一年は長野に行くんだよな?」

「うん、三泊四日の遠征(えんせい)予定」

遠征……って試合じゃないんだから。

「あそこけっこう夜は寒いから、少し防寒対策の買い物しておいたほうがいいな。帰ったら持ち物確認しとこう」

了解(ラジャー)

 

狩根(かるね)町・藍銅鑼(あいどら)邸~

 

「というわけで」

「長野に行くための準備のための」

「お小遣いをくださいっっ」

 

「……いつもの二人に加えてさらに一人増えたぞ」

「ん~? ああ、あの学校の遠足ね」

「遠足………」

「小学生(あつか)いか」

「長野楽しみだよねっ」

……アイが目をキラキラさせている。

 

「アイのハイテンションが」

「うらやましい」

「ふぇっ!? 楽しみじゃないの?!」

「……いまさら山中(さんちゅう)など」

「物珍しくもない……」

むしろ修行の頃を思い出して「あい へいと いっと」

 

「………そうかなぁ……みんなでお(とま)り、楽しいと思うけどなぁ……」

「アイは」

「お子様だー」

「こっっっ子供じゃないもんっっ!!!」

「はいはい、とりあえずお金渡しとくから、必要なもん(そろ)えときなさい」

「感謝」

「感謝」

「か、かんしゃ」

……これだけあれば少しくらいお菓子を……

 

 

「……たくさんお金あるからってお菓子とか買ってくるんじゃないよ!?」

「…ッそんなこと」

「…ッしない……ッ」

 

「おいラキ、こいつらお菓子買う気マンマンだ」

なぜバレた。

筋肉兄貴め、我らの目的を邪魔する気か。

「私よりティアたちの方が子供じゃん……っ!」

「……アイに預けとくから。いい? この二人の甘言(かんげん)に乗っちゃだめよ!?」

「ふぇっ!? はいぃっ!!」

「……こいつスゲェ頼りねぇぞオイ」




小さい頃、けっこう引っ越すことが多かった時期がありました。
しかも海外。
まだ小学校に入る前の時期だったので使える英語なんて数字とアルファベットの数え歌、それとなぜか知っていたいくつかの単語のみ。
ある意味これも異世界に飛ばされるのと似たようなもんですよね。
モンスターとかいないだけで。

でもまあ何とかなったから不思議なもんだった。
そんなもんです、異世界ライフって。

今回の話は…まあつなぎのようなものだったからあまり楽しめないかもしれない。
ただ、サトルたちも生きているんです、いろいろな記憶や想いもあります。
いずれはそこも書いていければいいな、と思っています。
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