ナザリック学園 ~カラクリ仕掛けの小劇場~   作:兄浜隼矢

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さて、今回はコキュートスが人間形態(ヒューマンフォーム)で登場します。



放課後~週番・修武館~

ナザリック学園の夕方は遅い。

いや、正確には俺の夕方が遅いだけなんだが…。

 

みんなも覚えているだろうが今週、自分が週番(しゅうばん)なのを思いっきり忘れてしまってな。

 

…ああ、もう一回説明しておくと日直が一日交替(こうたい)制のクラスの業務当番に対し、週番は一週間単位で担当する学校全体の諸事(しょじ)にあたるのである。

例えば朝の軽い清掃、昼の食堂(ラウンジ)の整列、椅子の整頓、放課後の各所ゴミ箱のゴミ出し、その集積と報告。

まあほとんどが美化(びか)に関わるものだな、それを朝、昼、放課後の三セクションにわけて(おこな)われる。

 

そしていちばん割を食うのが放課後(ぐみ)なのだ。

(ぐみ)が20分、昼(ぐみ)が50分程度に対し、放課後組は1時間半は足止めを食らう。

なにせ一日の総()めくくりなうえ、教室、屋外すべてのゴミが集められるのだ。

そりゃもう結構な量になる、時間も手間もかかるというものだ。

 

そんな厄介な役回りに今朝(けさ)週番の集まりをド忘れしてこってり絞られたこの俺、鈴木(すずき)サトルが就任の運びと相成りました。

 

はぁ……………………………………めんどい。

 

可燃物と不燃物の選り分け、空き缶の洗浄やペットボトルの分類などが主な仕事だ。

ゴム手袋をしていてもこのベタベタする液体の感触が気持ち悪い。

()よ一週間()たないかな……。

そんな時。

 

「ク、クソが────ッ!!」

な、なんぞ?!

どこか遠くから野太い、そして怒りに満ちた叫びが轟いてきた。

他の放課後組の週番連中も思わず手を止め顔を見合(みあ)わせる。

喧嘩でも起きたか!?

「先輩、手が止まっています」

「先輩、チャッチャと()ませちゃいましょう」

「お、おう」

一年の後輩女子の二人に(たしな)められる。

 

というかこの二人の後輩、双子なのか顔も声もそっくりだ。

違うのは髪の結び目がそれぞれ左右に偏っているくらいか。

眼差(まなざ)しが(するど)めの……

 

 

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「「先輩どうしました?」」

うおっ、綺麗にハモってる!!

「ああ!ごめん!ついボーっと…」

思わず二人をぼんやりと眺めてしまっていた。

 

「……先輩、私たちに()れたら」

火傷(やけど)をするぜ?」

 

なぜそうなる。

すると二人は髪の結び目をほどいたと思ったら(これが二人同時に(そろ)い)、二人とも真ん中で同じように結びなおす。

なんかパイナップルっぽい。

「さあ」

「それでは」

突然二人がぐるぐると俺を中心に回り始める。

ど、どうした!?

あ、もしかしてこれって……。

 

「「どっちがだーれだ?」」

やはり、双子ネタの定番。

「私たちが()しくばー」

「どっちがどっちか見破るがよいー」

スフィンクスか!!

その前に『欲しい』ってなんだ!!

 

 

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「……えーっと………こっちがヨーコちゃん?」

「「ブブーッ。…………ところでヨーコってだれ」」

これまた綺麗にハモる。

「そもそも俺は君たちの名前を知らないんだが」

「「おうふ」」

………これ打ち合わせ無しでハモってるんだとしたら大したものだ……。

「これは段取りを失敗した」

名乗(なの)らなければ()(よう)もない」

この子たち意外と抜けてるな。

 

「「私の名は……む」」

名乗ろうとして口を閉じ、こっちをジッと見るパイナップルズ。

 

貴様(きさま)、人に()を尋ねるときは」

「まず自分から名乗(なの)るものだ」

()を」

「「()名乗(なの)れ────ぃ」」

棒読みなのにすごくきれいに音が並ぶな。

というか俺は先輩だぞ。

……まあいい、そんなことは気にしない。

「…鈴木サトルだよ、よろしく」

すると双子はこちらをジッと見、

「マジメに返された」

「もう(ひと)ひねりすればよいものを」

 

ダメ出しされたっっっ!?

 

「それでも名乗られた以上は」

「こちらも名乗らねばなるまい」

うん。

「私の名は篠備野(しのびの)ティ「ア」「ナ」

うん?

「ごめん、声が(かぶ)って最後聞き取りづらかった」

「「む、それは仕方ない、もう一回」」

 

「私の名は篠備野(しのびの)ティ「ナ」「ア」

………………

「……なぜ邪魔をする」

「……それはこちらのセリフ」

バチバチと睨み合いを始める二人。

この二人、息があってるのかいないのか。

「わかった、わかったから。俺が指名するからそっちから答えて!! ハイ! そっちの青いバンドの方!」

篠備野(しのびの)……ティア!」

ピシっとポーズを決める。

「ではそっちの赤い方!」

篠備野(しのびの)……ティナ!」

同じくこちらもポーズを決める。

こちらはティアとは対称のポーズだ。

 

「「二人そろって………篠備野(しのびの)三姉妹」」

 

三姉妹?!

もう一人いるんか!!

 

「三人とも……早く片付けないといつまで()っても帰れないよ……?」

いかん、油を売りすぎた。

 

「すいませーん、遅くなりまし……あれ? 鈴木君?」

ゴミ袋を持った生徒が来た……あれ?

「やあ仁那(にな)くん…そうか、掃除当番だっけ」

クラスメイトの仁那(にな)ムツミくんだ。

 

 

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「いや、本当は違うんだけどね……仕方なかったというか」

「へ? そりゃまたなぜ?」

「当番のはずの玉井(たまい)君がさぁ……」

 

───『先生によろしく!ってね』『ごめんよぉ』

 

「イミナちゃんと一緒に掃除当番サボって帰っちゃったんだ……」

あらら……

「問題はそのあとでさぁ……日直のダイちゃんがものすごく怒り狂って……」

 

───『ク、クソが────ッ!!』

 

……さっきの(さけ)びはそれか!!

ダイちゃん──森下(もりした)ダイサク君。

普段温厚(おんこう)な彼なんだが、怒ると大地を揺るがす怒りとなる。

…彼を怒らせたか………。

 

古杜(ふると)さんが言うには今日『お(たから)』の発売日らしくて…いや、どういうものかは具体的には知らなかったらしいんだけど」

なるほど、それでエスケープか。

よくもまぁ逃げおおせたものだ。

 

「まあ何とかなだめて、どうせだからと僕も掃除手伝っていたというわけなんだ…」

仁那くんマジ天使。

「…さて、もういくよ。じゃあね鈴木君」

「ああ、気を付けて」

 

「……かわいい」

傍らからそんな言葉が。

おお、篠備野(しのびの)三姉妹…の二人。

すっかり忘れてた。

「いまの、先輩の知り合い?」

「知り合いっていうかクラスメイトだな」

「ほー………」

なにやら青い方(ティアだっけ?)が…仁那くんの背中を目で追っている。

「なるほど、面白い」

な、なにが?

 

そこへ。

「三人とも………手を動かす!」

さっきの人に怒られた。

 

 

その後、放課後組は九号館、『ラウンジ』脇のゴミ集積所にゴミを運んで本日の業務を終えた。

 

ふぅ、ようやく仕事が終わった。

これをあと一週間……正確に言うとあと四回か。

ん~……

……………まあいっか、厄介事の一つ目を潰したと思えばいい。

減ることはあっても増えることはまずないからだ。

 

そうだ、しずに連絡を取ろう。

あいつもたしか放課後(のこ)るみたいなことをさっきメールで送ってきていた。

 

こちらの当番が終わった旨をメールで送ったあと、一分もしないうちにしずから返信が返ってきた。

早いなぁ。

 

「from: ラブリーしず

 件名: Re:いま終わった

 

 現在、八号館にて待機中」

 

八号館…………修武館(しゅうぶかん)

なんであんなところに?

あそこは武道系の部活が集中して使っているところで、しずとはとくに接点はないはず……。

見学でもしているのか?

 

まあいい、修武館へ急ごう───

 

 ◇

 

修武館(しゅうぶかん)内、第一修練場(しゅうれんじょう)

剣道部が主に使っている稽古場、中からは活気のある踏み込みの音や竹刀の打ちこみの音が(あふ)れ出す。

 

 

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ナザリック学園剣道部───

 

我が学園の剣道部ははっきり言って強豪の部類に入る。

何でも全国大会の常連で、過去には優勝の栄冠も勝ち取った。

ちなみに今年は特に女子部が強いらしい。

中でも「女子剣道界最強の”漢(おとこ)”」の異名を持つ………お、しずだ。

「そこで私の名前をもってこないでほしい」

「俺の心読んだ!?…ところでこんな所で何やってんの?」

 

その武道場入口に、我が愛妹しずはいた。

 

「おまたせ、しず」

「お疲れ様、お兄ちゃん」

まったくだ、早く帰ろう。

「待ってほしい、その前に」

ん、なんだ?

「彼女の戦いが佳境(かきょう)に入っている」

戦い…、いったいなにを…?

ん、あれは鍋原(なべら)…と、その隣に座るのは…

 

剣道部顧問の虎丘(こきゅう)先生だ。

授業では主に古文を担当しており、その立ち振る舞いから”先生”の意味合いが別の意味に聞こえてくるなかなかの…サムライ?

この剣道部を古くから指導しており、その指導は部を前述のとおり全国大会の常連、そして優勝へと導いたこともある。

本人も凄腕の猛者(もさ)、とは男子剣道部の倉井(くらい)君の弁。

 

 

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…そんな武人の隣で並んで正座して鍋原はなにを…?

 

鍋原が突然キッと(まなこ)を開き──、

「ふっとい足!」

──そう言い放った。

 

 

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こて───ッ!

打ち込んだ女子部員の声が響く。

 

……え?

な、なんですと?

 

「ふむ…小手(こて)調べか……『Foot(フット)(足)』と『(ふと)い』をかけたのだな……」

「……………」

鍋原は答えず()ました顔をしている。

俺には()かる…、あれは鍋原のドヤ顔だ。

「古文の教師ならばと横文字で仕掛けてきたか…ならば(こた)えねばな……」

シッブい声でそうつぶやく虎丘先生。

 

周囲の音が()む。

いや、周りの状況は先ほどと変わらない。

剣道部は絶えず動き鍛錬にいそしんでいる。

音が止むはずがない。

ならばなぜ周囲の音は止んでいるのか。

 

───俺の全神経が虎丘先生に向けられているからだ。

 

フッ

そう、風がそよいだ気がした。

 

(くるま)()るまで…」

…!?

風が……動いた…………!!

 

「待とうCAR(かー)!!」

 

まとうかー 

まとうかー 

まとうかー………

 

残響(ざんきょう)(ひび)いた……ような、気がした。

 

ど────うッ!!

男子部員の気合が一閃する。

 

これは……

「『!?、横文字返しのみならず三重畳み?!』」

うん、鍋原の心の声読まなくていいぞしず。

 

 

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「さて……次はお前の番だぞ、鍋原」

「う……ん、ん~~!」

苦悩の声を漏らす鍋原。

どうも旗色が悪そうだ。

「ふむ、相手の隙を狙おうとするところまでは良かった、だが返された時の立ち回りも備えておかねば…それは己を脅かす両刃の剣と化す」

 

 

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さすが…剣豪(けんごう)………!

いやまて。

 

「手がないならばゆくぞ鍋原。とくと聞け───!!」

カッ

虎丘先生の眼が(きら)めいた───ッ!!

 

 

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()()られるのは……()ARROW(あろう)!!!!!!」

 

あろう

あろう

あろう……(エコー)

 

(けっ)した……。

 

めがいんぱくと────ッ!

女子部員の掛け声が響く。

 

「コラァ!! 藍銅鑼(あいどら)!!! また妙な掛け声をするな!!!」

えー、と女子部員さんがブーたれる。

 

「ようし本日はここまで!! 片づけをはじめェっ!!」

虎丘先生が部員たちに指示を出すと鍋原に振り返り、

「ふむ、鍋原、また付き合わせて悪かったな。せんべいが余ってるから少し持っていくといい」

「いえ、こちらこそ…。いつもありがとうございます」

いつもこんなことしてんのか。

 

「さてと……どうやらお前の連れも来たようだし、待たせてもいかんだろう」

チラとこちらを見る虎丘先生。

うおっ、気づいてたのか。

「!………、申し訳ありません! 気づかずに…っ!」

いやそこまでかしこまらなくても。

 

「では、失礼します!」

「うむ、気を付けて」

そんな虎丘先生の言葉を背に、俺たちは稽古場をあとにした。

 

~side ??? ~

 

「なあ、ラキー………」

「どした、ランちゃん」

「あの尻尾(しっぽ)頭………あいつよくここ来るよな」

「ん~? ああ、由利(ゆり)んトコの子だね……」

「由利? てことは百合之原(ゆりのはら)所縁(ゆかり)のものか?」

「ああいや、由利(ゆり)ヒロミとよくつるんでる同じクラスの子ってだけでとくにそういったつながりは……どしたランちゃん、何か気になるのかい?」

「………気になるといやぁ……気になるねぇ………」

「……………ほぉ?」

 

藍銅鑼(あいどら)ぁ!! 加賀(かが)ぁ!! 油を売っとるのかァ!!」

 

「おおっと、虎の尾を踏まないようにとっとと(かた)しますか…」

「その方がいいね…」

「そぉいやあの尻尾頭の名前は知ってるのか?」

「ん~……下の名前までは知らないけど…たしか虎丘先生は”鍋原(なべら)”とかいってたねぇ……」

「…ふ~ん………」

 

 

鍋原(なべら)”───か……!

 

 

【挿絵表示】

 




……切れ長目の人を後ろ斜めから描くって難しいですね…。

さてまた今回も新しいキャラ(名前のみも含む)がたくさん登場します。
まあしょうがない、出さないと後の話に出ないし。

恒例のキャラ解説です。
篠備野(しのびの)ティア・ティナ…なんもひねりありませんね。下の名前はカタカナという法則のおかげで助かったというか。ちなみに今作ではだいぶ後になりますがかなり重要な立ち位置を占めるキャラのひと…二人です。

仁那ムツミ…ニニャくんです。…ちなみにニニャって名前なんですかね? ツアレはツアレニニャだし…

玉井くん…ヘッケラン・ターマイトです…これキーワード言わせないと絶対わからないよね…
イミナちゃん…イミーナです。玉井君と付き合っちゃってます。クソが───ッ!

森下ダイサク(ダイちゃん)…ダイン・ウッドワンダーです。「ウッドアンダー」になっちゃいますね訳すと。

虎丘(こきゅう)先生…コキュートス。守護者勢からついに一人目登場です。ただ…人間形態なため外観は全く違います。まあ三宅健太さんの声で脳内再生お願いします。「パンプキンシザース」のオーランド伍長役がとても味のある演技でした。

藍銅鑼(あいどら)ラキ…ラキュース(中略)アインドラです。…こうして和名にするとわかりにくいキャラの一人。漢字で書くと楽喜(らき)となります。

加賀(かが)ラン…「筋肉が恋人」のガガーランです。さあ、このキャラ、原作だと東ドイツのオリンピック選手みたいな風貌なのですが…まあさすがに彼女が17歳の世界なので少し風貌変えます…のでご容赦ください。
篠備野姉妹(ティア・ティナ)、藍銅鑼ラキ(ラキュース)、彼女(ガガーラン)、とくれば「最後の一人」。当然います。
ティナ・ティアのところにも書きましたがこの五人は今作では「ある問題」が解決するためには必ず必要となるキーパーソンです。しかしそれはだいぶ先の話。
話は変わりますが某画像掲示板で投稿していた時のこと。とても絵のうまい方が10歳verと15?歳verを描かれたことがありまして。これがまた可愛かった…。我々の間では「ロリーラン」と呼ばれるように。あの人また描かないかな…。

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