ナザリック学園の夕方は遅い。
いや、正確には俺の夕方が遅いだけなんだが…。
みんなも覚えているだろうが今週、自分が
…ああ、もう一回説明しておくと日直が一日
例えば朝の軽い清掃、昼の
まあほとんどが
そしていちばん割を食うのが放課後
朝
なにせ一日の総
そりゃもう結構な量になる、時間も手間もかかるというものだ。
そんな厄介な役回りに
はぁ……………………………………めんどい。
可燃物と不燃物の選り分け、空き缶の洗浄やペットボトルの分類などが主な仕事だ。
ゴム手袋をしていてもこのベタベタする液体の感触が気持ち悪い。
そんな時。
「ク、クソが────ッ!!」
な、なんぞ?!
どこか遠くから野太い、そして怒りに満ちた叫びが轟いてきた。
他の放課後組の週番連中も思わず手を止め顔を
喧嘩でも起きたか!?
「先輩、手が止まっています」
「先輩、チャッチャと
「お、おう」
一年の後輩女子の二人に
というかこの二人の後輩、双子なのか顔も声もそっくりだ。
違うのは髪の結び目がそれぞれ左右に偏っているくらいか。
「「先輩どうしました?」」
うおっ、綺麗にハモってる!!
「ああ!ごめん!ついボーっと…」
思わず二人をぼんやりと眺めてしまっていた。
「……先輩、私たちに
「
なぜそうなる。
すると二人は髪の結び目をほどいたと思ったら(これが二人同時に
なんかパイナップルっぽい。
「さあ」
「それでは」
突然二人がぐるぐると俺を中心に回り始める。
ど、どうした!?
あ、もしかしてこれって……。
「「どっちがだーれだ?」」
やはり、双子ネタの定番。
「私たちが
「どっちがどっちか見破るがよいー」
スフィンクスか!!
その前に『欲しい』ってなんだ!!
「……えーっと………こっちがヨーコちゃん?」
「「ブブーッ。…………ところでヨーコってだれ」」
これまた綺麗にハモる。
「そもそも俺は君たちの名前を知らないんだが」
「「おうふ」」
………これ打ち合わせ無しでハモってるんだとしたら大したものだ……。
「これは段取りを失敗した」
「
この子たち意外と抜けてるな。
「「私の名は……む」」
名乗ろうとして口を閉じ、こっちをジッと見るパイナップルズ。
「
「まず自分から
「
「「
棒読みなのにすごくきれいに音が並ぶな。
というか俺は先輩だぞ。
……まあいい、そんなことは気にしない。
「…鈴木サトルだよ、よろしく」
すると双子はこちらをジッと見、
「マジメに返された」
「もう
ダメ出しされたっっっ!?
「それでも名乗られた以上は」
「こちらも名乗らねばなるまい」
うん。
「私の名は
うん?
「ごめん、声が
「「む、それは仕方ない、もう一回」」
「私の名は
………………
「……なぜ邪魔をする」
「……それはこちらのセリフ」
バチバチと睨み合いを始める二人。
この二人、息があってるのかいないのか。
「わかった、わかったから。俺が指名するからそっちから答えて!! ハイ! そっちの青いバンドの方!」
「
ピシっとポーズを決める。
「ではそっちの赤い方!」
「
同じくこちらもポーズを決める。
こちらはティアとは対称のポーズだ。
「「二人そろって………
三姉妹?!
もう一人いるんか!!
「三人とも……早く片付けないといつまで
いかん、油を売りすぎた。
「すいませーん、遅くなりまし……あれ? 鈴木君?」
ゴミ袋を持った生徒が来た……あれ?
「やあ
クラスメイトの
「いや、本当は違うんだけどね……仕方なかったというか」
「へ? そりゃまたなぜ?」
「当番のはずの
───『先生によろしく!ってね』『ごめんよぉ』
「イミナちゃんと一緒に掃除当番サボって帰っちゃったんだ……」
あらら……
「問題はそのあとでさぁ……日直のダイちゃんがものすごく怒り狂って……」
───『ク、クソが────ッ!!』
……さっきの
ダイちゃん──
普段
…彼を怒らせたか………。
「
なるほど、それでエスケープか。
よくもまぁ逃げおおせたものだ。
「まあ何とかなだめて、どうせだからと僕も掃除手伝っていたというわけなんだ…」
仁那くんマジ天使。
「…さて、もういくよ。じゃあね鈴木君」
「ああ、気を付けて」
「……かわいい」
傍らからそんな言葉が。
おお、
すっかり忘れてた。
「いまの、先輩の知り合い?」
「知り合いっていうかクラスメイトだな」
「ほー………」
なにやら青い方(ティアだっけ?)が…仁那くんの背中を目で追っている。
「なるほど、面白い」
な、なにが?
そこへ。
「三人とも………手を動かす!」
さっきの人に怒られた。
◇
その後、放課後組は九号館、『ラウンジ』脇のゴミ集積所にゴミを運んで本日の業務を終えた。
ふぅ、ようやく仕事が終わった。
これをあと一週間……正確に言うとあと四回か。
ん~……
……………まあいっか、厄介事の一つ目を潰したと思えばいい。
減ることはあっても増えることはまずないからだ。
そうだ、しずに連絡を取ろう。
あいつもたしか放課後
こちらの当番が終わった旨をメールで送ったあと、一分もしないうちにしずから返信が返ってきた。
早いなぁ。
「from: ラブリーしず
件名: Re:いま終わった
現在、八号館にて待機中」
八号館…………
なんであんなところに?
あそこは武道系の部活が集中して使っているところで、しずとはとくに接点はないはず……。
見学でもしているのか?
まあいい、修武館へ急ごう───
◇
剣道部が主に使っている稽古場、中からは活気のある踏み込みの音や竹刀の打ちこみの音が
ナザリック学園剣道部───
我が学園の剣道部ははっきり言って強豪の部類に入る。
何でも全国大会の常連で、過去には優勝の栄冠も勝ち取った。
ちなみに今年は特に女子部が強いらしい。
中でも「女子剣道界最強の”漢(おとこ)”」の異名を持つ………お、しずだ。
「そこで私の名前をもってこないでほしい」
「俺の心読んだ!?…ところでこんな所で何やってんの?」
その武道場入口に、我が愛妹しずはいた。
「おまたせ、しず」
「お疲れ様、お兄ちゃん」
まったくだ、早く帰ろう。
「待ってほしい、その前に」
ん、なんだ?
「彼女の戦いが
戦い…、いったいなにを…?
ん、あれは
剣道部顧問の
授業では主に古文を担当しており、その立ち振る舞いから”先生”の意味合いが別の意味に聞こえてくるなかなかの…サムライ?
この剣道部を古くから指導しており、その指導は部を前述のとおり全国大会の常連、そして優勝へと導いたこともある。
本人も凄腕の
…そんな武人の隣で並んで正座して鍋原はなにを…?
鍋原が突然キッと
「ふっとい足!」
──そう言い放った。
こて───ッ!
打ち込んだ女子部員の声が響く。
……え?
な、なんですと?
「ふむ…
「……………」
鍋原は答えず
俺には
「古文の教師ならばと横文字で仕掛けてきたか…ならば
シッブい声でそうつぶやく虎丘先生。
周囲の音が
いや、周りの状況は先ほどと変わらない。
剣道部は絶えず動き鍛錬にいそしんでいる。
音が止むはずがない。
ならばなぜ周囲の音は止んでいるのか。
───俺の全神経が虎丘先生に向けられているからだ。
フッ
そう、風がそよいだ気がした。
「
…!?
風が……動いた…………!!
「待とう
まとうかー
まとうかー
まとうかー………
ど────うッ!!
男子部員の気合が一閃する。
これは……
「『!?、横文字返しのみならず三重畳み?!』」
うん、鍋原の心の声読まなくていいぞしず。
「さて……次はお前の番だぞ、鍋原」
「う……ん、ん~~!」
苦悩の声を漏らす鍋原。
どうも旗色が悪そうだ。
「ふむ、相手の隙を狙おうとするところまでは良かった、だが返された時の立ち回りも備えておかねば…それは己を脅かす両刃の剣と化す」
さすが…
いやまて。
「手がないならばゆくぞ鍋原。とくと聞け───!!」
カッ
虎丘先生の眼が
「
あろう
あろう
あろう……(エコー)
めがいんぱくと────ッ!
女子部員の掛け声が響く。
「コラァ!!
えー、と女子部員さんがブーたれる。
「ようし本日はここまで!! 片づけをはじめェっ!!」
虎丘先生が部員たちに指示を出すと鍋原に振り返り、
「ふむ、鍋原、また付き合わせて悪かったな。せんべいが余ってるから少し持っていくといい」
「いえ、こちらこそ…。いつもありがとうございます」
いつもこんなことしてんのか。
「さてと……どうやらお前の連れも来たようだし、待たせてもいかんだろう」
チラとこちらを見る虎丘先生。
うおっ、気づいてたのか。
「!………、申し訳ありません! 気づかずに…っ!」
いやそこまでかしこまらなくても。
「では、失礼します!」
「うむ、気を付けて」
そんな虎丘先生の言葉を背に、俺たちは稽古場をあとにした。
~side ??? ~
「なあ、ラキー………」
「どした、ランちゃん」
「あの
「ん~? ああ、
「由利? てことは
「ああいや、
「………気になるといやぁ……気になるねぇ………」
「……………ほぉ?」
「
「おおっと、虎の尾を踏まないようにとっとと
「その方がいいね…」
「そぉいやあの尻尾頭の名前は知ってるのか?」
「ん~……下の名前までは知らないけど…たしか虎丘先生は”
「…ふ~ん………」
”
……切れ長目の人を後ろ斜めから描くって難しいですね…。
さてまた今回も新しいキャラ(名前のみも含む)がたくさん登場します。
まあしょうがない、出さないと後の話に出ないし。
恒例のキャラ解説です。
仁那ムツミ…ニニャくんです。…ちなみにニニャって名前なんですかね? ツアレはツアレニニャだし…
玉井くん…ヘッケラン・ターマイトです…これキーワード言わせないと絶対わからないよね…
イミナちゃん…イミーナです。玉井君と付き合っちゃってます。クソが───ッ!
森下ダイサク(ダイちゃん)…ダイン・ウッドワンダーです。「ウッドアンダー」になっちゃいますね訳すと。
篠備野姉妹(ティア・ティナ)、藍銅鑼ラキ(ラキュース)、彼女(ガガーラン)、とくれば「最後の一人」。当然います。
ティナ・ティアのところにも書きましたがこの五人は今作では「ある問題」が解決するためには必ず必要となるキーパーソンです。しかしそれはだいぶ先の話。
話は変わりますが某画像掲示板で投稿していた時のこと。とても絵のうまい方が10歳verと15?歳verを描かれたことがありまして。これがまた可愛かった…。我々の間では「ロリーラン」と呼ばれるように。あの人また描かないかな…。