鬱蒼と生い茂る森。その中で人の子の鳴き声が木霊していた。
森に住む動物達はその声に耳を傾け、その彷徨っている様をただ見守っていた。
その子は泣きじゃくりながら母を呼んでいた。
イギリス、デボン州に住むニコラス・フラメル氏は森に木霊する泣き声を聞いた。
「これは…」
ニコラス・フラメルは泣き声のする方へ駆け出した。
森の常とは違うその様子に、ニコラス・フラメルは驚き思わず立ち止まる。
いつになく静かだった。
いや、子供の泣き声で普段より喧しいのだが、森が、森に住む生物が、息を潜めているかのように静かだった。
ニコラス・フラメルは驚いて止めた足を、ゆっくりと声の主の元へ踏み出す。
段々と声が近付いてきた。
そこでニコラス・フラメルは、黒い動くものを見付けた。周りの動物達がじっとしているなか、それだけはひょこひょこと動いていた。
草むらよりも少しばかり高い頭が揺れているのだ。
ニコラス・フラメルがその頭を追うと、開けた所に出た。
黒髪の少年だった。
ぼろぼろと涙を零し、止まらないそれを両手で拭っている。
ニコラス・フラメルと少年の間にはもう遮るものはない。
その時、子供の体から霧のように白い光が浮き出すように現れた。
そう、守護霊の呪文に近い霧のような光だ。
白い光は少年の体を包み、より一層光輝いたかと思うと離れる。
すると、その子は膝を折って地面に座り込んでしまった。
どうやら白い光によって眠らされた様子だ。
次にその光は、ニコラス・フラメルの目の前まで漂ってきた。
光は形を変え、文字を表した。
それはニコラス・フラメルに対する謝罪から始まる彼に対する伝言であった。
全てを伝え終えると、役割を終えた事を表すかのように、白い霧のような光は霧散した。
ニコラス・フラメルは、しばらく固まっていたが、考えがまとまったのか、地面に寝ている子供を腕に抱いて家へと向かった。
少年の名前は、サフィロス・
彼は、故郷を追われながらも、故郷の名を知らなかった。
彼は、母の声を、優しさを、姿を知っていながらも、母の過去を知らなかった。
彼は、何も知らなかった。何も。
彼は、自分の特殊な生活も、一族についても、母のことも、共に暮らしていた青年のことも…本当に、何も知らなかった。
これは、そんな少年と彼の友人の物語。
「サフィロス。貴方に星女神の御加護があります様に、祈っているわ。…もう行かなきゃ。彼一人に任せきりには出来ないもの。」
「強くありなさい。」
「…愛しているわ、サフィロス。」
文才が欲しい。読者としての立場ではこういう文章が良いな、と思う文章があるのですが、中々自分が書くとなると上手くいきません。
納得がいかなくて、何度も修正したので日本語がおかしい部分があるかもしれません。宜しければ指摘お願いします。