アルバス・ダンブルドアと星の魔法使い   作:十人十色

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前話『邂逅』の視点違いになります


湖畔

 さて寮の組み分け直後から寮内で明らかに浮いてしまったサフィロスであるが、物事を覚えることをさして苦だと思わない性質が功を奏したのか、学業については大した問題もなく過ごしていた。

 

 そう、「学業のついては」だ。スリザリンの上級生は責任感からか最低限の声掛けをサフィロスにしたが、同学年は彼と関わりを持とうとはしなかった。寮内での人間関係は絶望的と言っても良かったが、彼はなまじ1人で熟せる実力と性質を持っており、本人は問題だと思っていない。

 

 それよりもサフィロスが問題だと思っていたのは、慣れない生活様式だ。

 彼は何よりきっちりとした制服に辟易していた。ネクタイはまず息が苦しくなる。靴は微妙に足が圧迫されて歩き慣れない。魔法族の服そのものはゆったりとしているので良かったものの、その2点だけはどうしても我慢ならなかった。

あぁ、こんな調子でやっていけるのだろうか、と珍しく弱気なことを考える。

自由な時間ができると彼は注意されるのが分かっているので、人目の少ない場所で良く靴やネクタイを外して歩き回った。ネクタイに至っては、教科書を寮に置くと同時に外してベットへ投げ捨てている。流石に皺になるからか上着は掛けてから、彼は寮を飛び出す。

その日は草を踏みしめたいというふとした思い付きによって校舎を飛び出したサフィロスは、足が汚れることを見越して湖の近くで靴を脱いだ。軽く周囲を見渡すと、人影は見当たらない。彼を良く知る人が見れば上機嫌と分かる様子でサフィロスは地面を踏みしめ歩き始めた。鼻歌でも聞こえてきそうだ。

 

暫く歩みを進めていたのだが、人が木の影に隠れていたことに気が付いた。お相手もどうやらこちらに気が付いたようでバチリと視線がかち合う。人に見られてしまった。しまった、とサフィロスは思ったものの相手も一人でゆったりとした時間を過ごしている様だ。互いに変な干渉はしない方が良いだろう。と判断し、再び視線を戻してこの時間を楽しもうとした。

 

「君。」

 

まさか声を掛けられるとは。サフィロスが訝しげに首を傾げると、少し長い髪がさらりと音を鳴らし揺れた。

 

「どうして君は裸足で外を歩いているんだ?」

 

鳶色の髪に、透き通ったブルーの瞳をした少年だった。

 

「僕かい?」

 

何故見ず知らずの自分に関わってくるのか分からず、彼は聞き返した。

 

「あぁ。」

 

「…窮屈だったから。」

 

「窮屈?ホグワーツに来る前はどうしていたんだ。」

 

良くない行いだと窘められるのかと思ったが、少年は特にこちらの在り方に干渉することは無く質問だけを投げかけてくる。

 

つま先で水面をつつく。水紋が緩やかに広がるのを見ながら、ゆっくりと足を浸した。

素足を水にさらしながら、少年からの問い掛けに答えているとあっという間に時間が過ぎ去っていく。

日が随分と傾いてきた。そろそろ戻らなければ夕食の時間に間に合わなくなる。彼には服装を整える時間も必要だった。

別れを告げると、鳶色の少年は少し寂しそうな顔をして、

 

「また、な。」

 

とサフィロスに向かって言った。

 

サフィロスは少し驚いて目を見開く。この学校に来てそんなことを言われたのは初めてだった。

 

「あぁ…また」

 

自然とサフィロスの顔が綻ぶ。それは実に穏やかな笑顔だった。

 

。。。

 

 デボン州にあるフラメル夫妻のお宅にフクロウが舞い降りる。魔法使いお馴染みのフクロウ便だ。フラメル夫人はフクロウが渡す手紙を受け取り、穏やかな表情で封を開ける。

 

「まぁ、貴方。サーフにお友達が出来たみたいですよ。」

「それはめでたい。友達と分け合えるように何か送ってあげるべきかな?」

 

今まで学校についてのことしか記されていなかった手紙に初めて学生が登場した。そのことを2人は自分のことのように喜ぶ。むしろ当事者であるサフィロスよりも喜んでいるかもしれない。

 

 手紙には決して友達ができたとは書かれていなかったが、その関係性は確かに友人の駆け出しのようなものだった。

 

 

__友達という単語は知っていたけれど、それがどんなものか知らなかった。

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