君に会うまで。   作:ごはんやよ~

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第五話

 アナウンスの音に続いて新幹線がホームに到着する。二十を超えるホームの一つへとぞろぞろと乗客たちが降りてくる。その中で二人、駅から降りるとすぐにキョロキョロと誰かを探すようにして駅の中を歩き始めた。

 「二人とも、こっちこっちー」

 昔幾度と無く聞いて、そしてしばらく聞いていなかった声に呼ばれ二人は全く同じ動作でその方向を見る。この一年で髪の毛を伸ばしたのか肩にまでかかるほどに伸びきった黒髪を後ろで紐で編んでいる。ただ、それは高校生の時のように派手に結んではおらず、むしろ控えめといってもいいほどに彼女のアクセントとして機能していた。

 「三葉! 久しぶりやなぁ」

 「テッシー、さやちん。元気だった?」

 「当たり前やに。お前こそ一年半もの間、寂しくなかったんか?」

 「……慣れた、んやと思うよ」

 テッシーの問いに詰まるようにして答える。ふと、その顔に陰りをみて二人は少しかける言葉に迷った。

 「でも、三葉。これからは私達がおるでな」

 「そうやで、これからは一人じゃないからな」

 「うん、そうやね!」

 三人は無事に同じ大学に合格することが出来た。テッシーは建築学科で別。三葉とさやちんは同じ学科に進んだ。

 「あの時の夢がかなったなあ。三葉」

 「長い間の夢やったんもんね」

 糸守で交わしたいつかの約束は、故郷を失ったにしてもそれが叶ったのだ。

 「あれ? 三葉、涙のあとがあるよ」

 「ああ、これは」

 時々、朝起きたら何故だか泣いてるんやよ。と言おうとしたがそれだけの説明では二人にもっと心配をかけることになるだろうと思って欠伸やよ、とごまかす。

 二人は、疲れがたまりそうやもんなぁと言って笑いあう。何とかごまかせたと安心し、気を新たに口を開いた。

 「二人とも、受験のときは時間が無くて回れなかったけど今日は私がちゃんと東京案内するから」

 「頼むで。東京暮らしの先輩」

 「任せとき!」

 そう言って三人で笑いあう。その瞬間だけは深く抱え込んでいる寂しさを忘れられるような気がした。

 

 

 「今日は楽しかったな」

 ベッドに倒れて天井を眺めながらそう呟く。蛍光灯の光が三葉の顔をぼんやりと照らす。

 「そうだ、日記つけとかないと」

 三葉は自分のスマフォを起動させると日記を書き始めた。いつ頃からだろうか。こうして日記をつけ始めたのは。大学受験を意識し始めた頃から? いや、もっと前から。あれは確か彗星が落ちてくる数週間前からだ。どうしてつけ始めたんだろうと自問する。

 ふと、ページをスクロールして一番最初の日記に戻ってみる。一番最初は何が書いてあるだろう。そう思って一番最初のページを開いてみた。何故だか、数日置きに青くなっているそのページを開くと、

 「え、何これ?」

 文字化けした画面が目に飛び込んできた。そして、それらの痕跡をかき消すかのように全て消えていく。

 「え、え?」

 慌ててスマフォを落としてしまう。その間にも過去の日記は消え続け、きれいに青いものだけ十個ほど消える。

 「なんやったんやろ……」

 少しの不気味さを覚えて三葉は床につくことにした。

 

 大学に入学してから一ヶ月ほどたった頃、三葉が授業を受けていると肩をつんつんとつつかれる。その方を見るとよく授業が一緒の一人の女性が座っていた。初めて近くで見たが、思わず息を呑んでしまう。同性の三葉から見てもかなりの美人だ。まるで、モデルみたい。と考えてしまう。

 「ごめんなさい。この間の授業を休んじゃってノートが取れてないからこれが終わったら貸してくれない?」

 「いいですよ」

 「本当に? ありがとう!」

 彼女は嬉しそうににっこり笑う。どこかで見たことあるその美人の表情に三葉は赤面してしまった。

 

 「奥寺ミキ?」

 「そうよ、それが私の名前」

 「私は、三葉。宮水三葉」

 「へえ、三葉って言うの良い名前ね。今度からそう言っても良い?」

 「うん。奥寺さんは……奥寺先輩?」

 「何で先輩なのよ」

 と、彼女はそう言って笑う。だが、三葉はその口に出た言葉に驚いていた。とても、言い易かったからだ。まるで、幾度となく呼んだことのあるような名前のようにすっと、先輩という敬称をつけて彼女の口から出てきたのだ。

 「ううん、なんか口が勝手に。私もミキって呼んでもいい?」

 「うん! それにしても一回三葉とは話してみたかったんだ」

 「そうなの?」

 「だって、大学の中でも一、二を争う美人じゃないの」

 「……そんなことないよ」

 「ねえ、三葉は彼氏とかいるの?」

 「彼氏かぁ……」

 ミキの言葉に三葉少し遠くを眺める。今まで考えたことも無かった。誰々と付き合いたい、付き合いたくないというのを神職だからと諦めていたのかも知れない。でも、不思議と誰かと付き合いたいと考えたとき何も思いつかないのだ。

 自分が愛する人。自分を愛してくれる人。世界は広いからきっとどこかにそんな人はいるだろう。でも、本当にそんな人に出会えるのだろうか。自分が探している何かでさえも未だ見つからないというのに。

 「考えたみたことも無かったなあ」

 「そうなの? 三葉は美人だからもう誰かと付き合ってるんだと思ってた」

 「そういうミキはどうなの?」

 「私? 私は全然。むしろ三葉にいい人を紹介してもらいたいくらいよ」

 「私にはそんなこと無理やよ」

 そう言って三葉は少しだけ笑う。ミキと少しだけ話してみて気がついたが彼女はとても会話がしやすい。話の間の取り方や、聞き方。息の入れ方などが上手いのだ。きっと彼女はとてもモテるのだろう。さらに同性からも好かれるタイプだ。

 「そういえば三葉はどこ出身なの?」

 「私? 私は……」

 糸守、と言おうとしたがそうすれば彼女に気を使わせてしまうだろう。だから言葉を濁すことにした。

 「岐阜だよ」

 「岐阜かー。いいなあ、自然が溢れてたでしょ?」

 「あそこは田舎やよ。電車は二時間に一本しか来ないし、本屋も、歯医者もないし……」

 「あはは。東京じゃ考えられないね」

 「本当に。でも、東京に出てみたら故郷の良さが分かったんやよ」

 「うらやましいよ、三葉は。私は故郷が東京だからさ」

 そう言ってミキは少しだけ諦めたような遠い目をした。その顔は心底羨ましそうな顔で糸守だとは言い出すことが出来なかった。

 「あ、そうだ。三葉ってバイトしてる?」

 「バイト? したことないなー」

 「本当に? 生活費とかは全部親が出してくれてるの?」

 「うん、お父さんがお前は勉強だけしてろって」

 「へー。いいお父さんじゃん」

 「そんなんやよ。昔はあんまり仲良くなかったんだけどね……」

 

 

 

 

 

 

 目を覚ます。まだ辺りは暗く日は昇っていない。時間を確認しようとスマフォをつけるとまだ時間は午前二時を指していた。

 眠気が少し跳んでしまったので気晴らしにSNSの画面を開く。

 そこにはデートの約束の日時が書いてあった。朝の十時半に駅前に待ち合わせ。

 「……瀧君」

 初めてできた自分の恋人の名前を呟くと、明日がデートなのだと自分に言い聞かせているみたいで緊張してきた。

 何しろ初デートである。朝のことを考えるだけで心臓が高鳴り始めた。

 こんなことならもっと準備しておけばよかったなあ。

 昨日の夜は浮かれすぎて何時にベッドに入ったかも覚えていない。でも多分、二時間も寝てないんじゃないかと思う。こんな歳になって、ここまではしゃぐなんて……。

 と思ったがそれよりも明日への楽しみが勝ってしまう。だから、明日に備えて頼りになる友人にメッセージを送る。

 

 

 

 奥寺先輩! デートのコツ教えてください!




MVをさ、あんな感じで終わらせたら泣いちゃうだルルォ!?

やばいですね、あのMV。八回目見に行くことが決定しました。
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