君に会うまで。   作:ごはんやよ~

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すいません! 遅くなりました


第六話

 「そういえば三葉はバイトはしないの?」

 「バイト?」

 ミキの問いかけに三葉は疑問系で返す。そういえばバイトをするなんて考えたことも無かった。

 高校のときの俊樹の言葉が頭に残っていてバイトをする気になれなかったというのもあるのだろうか。

 「バイトしているところに高校生がいるっていってたじゃない」

 「ハリネズミみたいな髪がたしている子だっけ」

 三葉はミキから教えてもらったその子の特徴を思い出す。ミキはバイト先の人の名前を決して誰かに言わなかった。

 どうして、名前を言わないのかと聞いたら単純にどこで働いているか分かってしまうのが恥ずかしいとのことだった。

 「その子がね、とっても女子力高いのよ」

 「そうなの? 話だと喧嘩速いって」

 「そうだったんだけどね、昨日クレーム着たときに私のスカート切られちゃって」

 「ええ!? 大丈夫やったん?」

 「うん、大丈夫だったんだけどそのときにその子がね、切られたところにハリネズミの刺繍をしてくれたんだけどこれがすっごく可愛いの。これが写真なんだけど」

 そう言って、ミキは三葉にスマフォの画面を見せる。それは黒地の上に緑で草原が書かれその周りにハリネズミの刺繍がしてあった。あれ……、この刺繍どこかで……。

 奇妙な既視感に襲われる。だが、その疑念がはっきりすることなくミキが口を開いた。

 「三葉、大丈夫? 顔、真っ青だよ」

 「……気にしないで、大丈夫やよ」

 

 

 三葉は家に変える電車からふと外を眺めると街頭ディスプレイにあの事件からもう三年と文字が躍っていた。

 映像には二つに増えた糸守湖。二十一世紀最大の奇跡とまでうたわれたあの彗星被害から既に三年の月日がたとうとしていた。何故、あの時自分は助かったのか。今でも不思議で仕方がない。

 そして時々、助からなかった時の夢を見る。何も知らないまま浴衣を着てそこで彗星の被害にあう。近くにはテッシーとさやちんもいて、一緒に死んでしまう。そうして、何もない暗い世界を一人で漂い続ける。

 目が覚めたときに初めて自分が生きていると自覚し、そうして安堵のため息をつく。

 ぼーっと身体から意識を手放すと無意識の内に人ごみから誰かを探している自分に気がついた。また、これか。と思って少し笑う。東京に来てからふと気がつくと誰かを探して視線をさまよわせている。

 「しっかりしないと……」

 誰にも聞こえないような声でそう呟くと電車から降りるために三葉は席を立った。

 

 「あ、もしもしお婆ちゃん? そう私なんだけど、うん。今年も帰るよ。え、四葉に変わる? どうして急に」

 「おねーちゃん、元気にしとる!?」

 スマフォの奥から聞こえてきたのは中学生になった四葉の声。

 「元気やけど、それがどしたん?」

 「お姉ちゃん。東京で彼氏できた?」

 「出来てないけど、それがどしたん?」

 「早く作りなよー。お姉ちゃん、25歳超えたら結婚できる確率ぐっと下がるらしいで」

 「はいはい、分かってますよ」

 と、妹のお節介な言葉を受け流すと二言、三言かわして電話を切った。テレビを見ると災害ドキュメンタリーの番宣をやっていた。もちろん中身は糸守についてだ。上空から高校を写している映像がちょうどテレビに映っていた。この映像のどこかには気絶した三葉が映っているはずだ。後で病院を退院する前にそう四葉から聞かされた覚えがある。

 この映像を見るたびに思い出すのは気絶する前にはとても、大切なことをしていたような気がするというとてもアバウトなもの。三葉はいつものように右手を見る。そこには何も書いてないけど、何か大事なものが書いてあったような気がして……。

 堪らなくなった三葉はぎゅっと手を胸に抱えた。

 

 

 「それでね、今度その子でデートすることになったんだー」

 「へえ、その男の子の方から誘ってきたの? やり手やね」

 「そうなんだけど、とっても話やすいんだよ。異性っていうよりかは同性に近い感じがするの」

 「喧嘩速いのに同性みたいな感じがするって何だか不思議な子だね」

 「何だかあの子の知らない一面をどんどん見せられている気になるよ」

 ミキはそう言って少し笑った。その顔はずっと昔にどこかで見たことある表情で、

 「……っ」

 「どうしたの? 三葉」

 「ううん、なんでもない……」

 とても胸が締め付けられるような思いがした。

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