彼は死にかけていた。
彼は竜王国に迫るビーストマン達への防衛軍に志願し、必死に戦った。
しかし、敵はそもそも人間よりも、種族として遥かに強靭であり強大だった。そしてまだ彼は少年といって良い年齢。戦いに適した身体では無かった。
それでも猫の手も借りたい竜王国軍は戦える者なら戦わせる。
確かに人道的とは言えないだろう。だが、国が滅びてしまえばそんな事は言えない。
彼はそういう事を全て納得して志願したのだ。戦いを無くす為、自分と同じ親を失った子供を一人でも作らない為に。
しかし、ビーストマン達は彼がそんな高潔な理由で戦っていようと関係無く、強大だった。
彼は配属された砦の防衛中に乗り込んで来たビーストマンの一体に吹き飛ばされ幸か不幸か味方からも、敵からも見えない所に落下し、静かに息を引き取ろうとしていた。
彼は無力な少年だった。その時までは…
そんな彼を遥か上空から見つめている影が有った。
地球外変異性金属体。通称ELS。嘗て、刹那・F・セイエイと対話し、共に自らの母性へと帰り、ELSクアンタとして共に旅をしてきた1個体だった。
そしてその中で刹那から色々な人類の事を学び、いつしか自我に目覚め、他の遠い宇宙にいる人類を探しに来ていた所だった。このELSはとても人類に興味が有ったのだ。
刹那のような全てを捧げる自己犠牲が出来る人間が他にもいるのか?もしいたら、助けて上げたい。そういう目的の旅だった。そうして辿り着いたこの星で彼を見つけた。
彼等の出会いは運命だったのだろう。
何故なら…
(あれは…刹那なのか…?そっくりなんて物じゃない。遠い宇宙にいる、平行世界の同一人物?有り得るのだろうか?)
ELSは光学迷彩をその金属の体に張り、ゆっくり降下し近づいていく。
そして見た。彼はいつかティエリア・アーデに見せて貰った、ガンダムマイスターになったばかりの刹那にそっくりだった。
彼は俄然興味を持ち、脳量子波による対話を試みる事にした。
「…聞こえるかい?」
「…何だ?…俺は…死んだのか?」
「いや、君はまだ死んでいないよ。死にかけているけどね。大丈夫。今君は外から見られないように僕が隠しているからね。」
「…お前は何者だ?何の為にここに来た?」
そうして、お互い話し合った。お互いの事を。
そうしてELSは理解した。彼は紛れも無い刹那・F・セイエイだと。
自分の為では無く、死にゆく事も誰からも評価される事も無い事を理解し、戦いを無くす為に戦い死にかけている。
「君は…本当にどこの世界でも変わらないんだね。」
「俺は俺だ。他の世界の自分など関係無い。」
「そうだね…何か望む物は無いのかい?」
「…力だ。この世界を変える、力。…俺は何も出来かった…!このまま何も出来ず、何にもなれないまま死ぬ…それは良い。俺で無くても良い、この世界を変えてくれる力が有るのなら誰でも良い!」
「…力が欲しいのかい?」
「ああ…!」
「世界を変える力か…これならどうだい?」
そう言い、ELSは少年に映像を、刹那・F・セイエイの駆ったガンダム達の映像を脳量子波に乗せて見せる。
「…ガン…ダム…!」
「そうだ。ガンダム。当然僕1人では完全にガンダム一機を再現するのは不可能だし、流石に過剰過ぎるだろうから…そうだね、この世界ならパワードスーツ…いや、全身鎧の形ならピッタリじゃないか?」
「俺が…ガンダムに?」
「そうだね。でもさっき言った通り君は死にかけだ。そして色々な情報を共有する必要も有る。そうするためには僕と一つになる必要が有る。つまりELSと融合し、人間では無くなってしまう。どうする?」
「構わない!やってくれ!」
「即答か…君はやはり刹那なんだね。どこにいても、何をやっていても…では始めよう。」
そう言い、少年と融合を始めるELS。その中で少年は、異世界の男の事を知る。全てを擲ち、世界を変える為に戦った自分にそっくりな男を。
「気分はどうかな?」
「何も変わっていない。いや、傷は塞がっているが…あの男のように肌は銀色では無いのか?」
「…流石にあれは目立ちすぎるよ。大丈夫、さっきは人間を辞めると言ったけど本質は変わらない。あくまで人間のまま、ELSの…僕の力を使えるようにしただけだから。」
「そうか…。お前が頭の中から話しかけて来るのは少し違和感が有るがすぐ慣れるだろう。」
「そうだね。でも僕は飽くまでも君のサポートだ。戦い方、ガンダムの知識、GNドライブの性能、全て君の脳に直接書き込んだ。行けるかな?」
「ああ、この世界を変えるのは、この世界の人間がやらなければならない。…俺が、この世界のガンダムに!」
「ふふ、本当に刹那と話しているような気がしてくるよ。じゃあ始めようか!」
「ああ、…GNシステムリポーズ解除、GNドライブマッチングクリア。ガンダムエクシア……刹那・F・セイエイ出る!」
その言葉と共に少年、自らを刹那と名乗った男の体を金属が包み込んでいく。そうして顔までも包み込み、光を放つ。その光が収まった時、そこにいたのは人間サイズの、正に刹那の最初の搭乗機で有り、最も愛着を持っていたガンダム、ガンダムエクシアだった。武装もそれぞれ人間サイズに縮小されている。
「…刹那…で良いのかい?君には本当の名前が有るのに。」
「その男はここで死んだ。…このガンダムは刹那・F・セイエイの物だ。このガンダムで戦うのなら、そう名乗るべきだ。」
「有り難う…刹那。そうだね。今日から君は刹那だ。」
「何故礼を?」
「ふふ、僕は刹那・F・セイエイという男が大好きなんだ。その彼を尊重してくれたのが嬉しいんだ!」
「そうか…。では行こう。」
「ああ。…僕は君を見守っているよ。」
そして彼はガンダムとなり飛翔する。敵に向かい、だが敵を倒す為では無く、世界を変える為に。
「エクシア、敵目標、ビーストマンを確認。」
「…俺が…この世界のガンダムに!」
ビーストマン達もその光を放ち飛行する鎧を発見し、呆然としている。
「ガンダムエクシア!刹那・F・セイエイ!」
「…目標を!駆逐するっ!!」
平成になってからのガンダムの中でガンダム00は一番の名作だと思います。