「ジリリリリリリリ!ジリリリリリリリ!ジリリリリリリリ!」
目覚まし?枕元で携帯?が、けたたましいアラーム音と共にブルブルブルと振動している。
俺、こんなアラーム設定をした覚え無いんですけど…。
取りあえずはこのアラームを止めないと、おちおち二度寝もできやしない。
寝ぼけ眼のまま音と振動の発振源である携帯にもぞもぞと手を伸ばし、スマホの画面を
スライドしアラームを止める。
そして、時間を確認すると…
「まだ、6時じゃねえか!小町め、こんな手の込んだイタズラしやがって…」
え?ちょっと待て、これ俺の声じゃないぞ。キーが高くてまるで女のような声…?
という事は…戸塚の事が好き過ぎて、ついにボーイソプラノになってしまったのか!?
そこそこ整った顔立ちにくすんだ瞳、それに加えたボーイソプラノか…。似合わねえ…。
それにしても、いい匂いだな。うん、いい匂い、いい匂い。女の子特有の甘~い匂い。
って、ええっ?女の子のいい匂いぃ???
もうチョットこのいい匂いを味わうか、この状況を把握すべく身を起こすかで、
ベッドの中で数分逡巡した挙句、やっとの思いで決心し上半身を起こした。
まずは周りを見渡す。うん、俺の部屋じゃない。明らかに女の子の部屋だ。
小町以外の女の子の部屋になんて入った事は無いけど、これは女の子の部屋だ。
間違いない。
それにしても、部屋中いい匂いだなぁ。
女の子って、この匂いで自分の頭がおかしくなってしまわないんだろうか?不思議だ。
いい匂いに気を取られていて気が付かなかったが、何と言うか胸が重い。
物理的に重い。何だ?と思って視線を下に向けると、そこには胸の谷間がある。
胸の谷間ね、胸の谷間。むねのたにまあぁー!?驚きのあまりに声も出なかった。
おっぱいだ。
見た感じ、ちょうど掌に収まる程良い大きさ。
パジャマの上からでもいい形をしているってのが分かる。いわゆる美乳…。
とりあえず、揉んでみるか。揉んでみよう。素直にそう思う。
両手をその双丘にあてがって、揉んでみる。
もみ、もみ、もみ、……もみ、もみ、もみ、もみ…。
なにこれ!柔らかい!柔らかい!柔らかい!超やわらかい。
いい匂いだし、柔らかいし、あぁ、これは癖になりそうだ…。
柔らかい、いい匂い、柔らかい、いい匂い、柔らかい、いい匂い、柔らかい、
いい匂い、柔らかい……
いい匂いと柔らかさに感動して夢中になっていると、突然部屋のドアが開かれ、
大学生?くらいの綺麗なお姉さんに呆れたような口調で話し掛けられた。
「千佳、あんた何を嬉しそうに自分の胸揉んでんの?」
「す、すんません!いい匂いで、柔らかくて、感動して…つい出来心で……」
反射的に謝ってしまった。痴漢の現行犯で捕まったようなものだ。
通報される前にまずは土下座だ。
と、ベッドの上で土下座の姿勢を取ろうとしていると、さらに呆れた口調で
こう言われた。
「何言ってんの?…いくら揉んでも、おっぱいは大きくなんないからね…。
もう、朝ご飯できてるよ。お母さんも待ってるから早くおいでよね。」
それだけ告げられて、お姉さんは部屋のドアを閉じ階段を下りて行った。
まあ、そうだよな。俺からしたら女の子の胸を無断で揉むなんて、痴漢行為以外の
なにものでもないけど、他人から見たらただ自分の胸を揉んでいるだけだ。
いやぁ、でも柔らかかったなぁ…。
そう言えば、いい匂いと柔らかさに気を取られてたけど、これ女の子の体だよな。
って事は、俺は女の子になってる!?
恐る恐る下半身に手をやると、無い。俺の八幡が無い…。
女の子の体にそれがあったら、別の意味で大変な事だけど。
『うわぁぁぁぁーっ!』と叫び声をあげそうになったが、ここは我慢。
叫び声なんかあげたら、さっきのお姉さんが飛び込んできそうだし…。
ベッドから降りて、立ち上がる。
もう一度目線を下に向け、自分の?腕・足・太腿・腰・お尻を手で確認する。
こっちも柔らかい!特に、太腿とお尻!
再度、胸を確認しようか?いや、やめておこう。だって、止まらなくなりそうだし。
腕も足も柔らかくって、男と全然違うんだな。腰なんかキュッとくびれてて。
上半身から下半身にかけて綺麗で滑らかな曲線を描いているみたいだ。
手に残る感触がやけにリアル。これ、本当に夢かぁ?頬を抓ってみる。
「普通に痛えじゃねえか…」
匂いと手の感触があるんなら、痛みを感じてもおかしくは無いか。
って事は、これは現実に起こっている事なのか?いや、女体化とか誰かに
入れ替わるなんて現実に起き得ない。
と、いう事は?ほうほう、これはあれだ。明晰夢ってやつだ。眠ってるときに、
自分で夢だと自覚しながら見てる夢。
それにしても嗅覚・触覚・痛覚まである夢なんてリアルを通り越して、超リアルだ。
目線の高さ・胸とお尻の成長度合い・腰の括れから判断すると、中学生?いや、
高校生くらいだな。そうか、女子高生かぁ。
周りを見渡し、部屋の中を歩いて回る。家具や小物は全てが女の子の物。
本当によくできた夢だなあ。我ながら、自分の想像力に感心する。
夢とはいえ、俺はいったい誰になったんだ?俺の知ってる女子と言えば…。
小町は…違うな。まず、小町の部屋じゃないし、俺が兄だ。
小町にお姉さんはいらない、兄だけいればいい。
戸塚は…男だった。違う。
雪ノ下…、綺麗なお姉さんはいる。が、さっきのお姉さんは雪ノ下さんじゃなかった。
それに胸も…、よって雪ノ下ではない。
由比ヶ浜…、あいつは一人っ子だし、胸はメロンだし。よって由比ヶ浜でもない。
川…崎?、あいつがそもそもお姉さんだし、あいつもメロン装備だ。違う。
三浦…、あいつもメロン装備だったな。違う。う~ん、F組ってメロン多いんじゃない?
海老名さん…、お胸のサイズはこんな感じか?でも、部屋がなぁ…。
この部屋には、ぐ腐腐な本が無い。よって、海老名さんも違う。
一色…、こいつもお胸のサイズはこんな感じかな?可能性有り。
城廻先輩…、メロンほどではないにしても、この胸よりはありそう…。違うな。
相模…、も可能性は有るか…。
もしかして、雪ノ下さん?…無いな。あの人もメロンの持ち主だし、
あの人がお姉さんだ。
平塚先生…、高校生じゃない。違う。
あ、胸のサイズとお姉さんの有無だけで判断してた…。
ちょっと待て。さっきのお姉さんとの会話を思い出せ。
姉?の言葉から察するに、俺は「チカちゃん」という女の子で、それも妹に
なっているようだ。
妹=小町ポジション、最高じゃないか。家庭内カースト第2位、悪くない。
名前が「チカ」という事は、一色でも相模でもない訳だ。
「チカ」か…どっかで聞いたことのある名前だな…。
自分が誰になっているのかを思考しながら部屋を歩き回っていると、
ふと視界の隅に鏡台が目に止まる。鏡の前に立ってみる。
鏡に映るのは、黒髪のショートカット、顔は小さく、目は大きくて黒目がち、
鼻は小さめ、小さく愛らしい口元。 桜色のやわらかそうな唇。
俺はこの女の子を知っている。
楽しそうな笑顔、しらっとした目つき、敵意を向けられ困惑し硬直した顔、
そして最後に見せた悲しそうな表情・・・
あの日、ダブルデートで葉山の偽善の為だけに貶められた被害者の一人。
確か、「仲なんとか…チカ」、、、折本の友達だ…。
第3話はまだ手付かずなので、投稿は遅れると思います。
感想やアドバイスなど頂けると嬉しいです。
では、また次回で。