Harry Potter Ultimatemode 再会と因縁の章 作:純白の翼
「そうだ。みんなこれを。」
俺は、ゴーグルを渡した。
「先輩。これは?」
「対バジリスク用に開発した暗視ゴーグルだ。バジリスクの魔眼を防げる。早い話が、魔法の目を再現したものだ。直視しても石化や死ぬという事が起こらないアドバンテージはかなりデカいと思うけど。」
「よし、ボクこれを使う。ロイヤル・レインボー財団の魔法と科学の融合技術に感謝しなきゃね。」
皆これを使う気持ちになった様だ。首元に掛けておく。
先へ先へと進む。蛇が絡み合った彫刻を施した石柱がある。それも、最後の一対の柱の所まで部屋の天井に届く程高くそびえ立つ壁を背に立っている石像が、壁を背に立っている。年老いた猿顔、細長い顎鬚の顔が彫り出されていた。
「イドゥン、この石像の魔法使いって。」
「ええ。我がスリザリン寮の創設者、サラザール・スリザリンですわね。」
そして、大きな部屋に辿り着いた。石像の足の間に寝そべる、一人の影。燃えるような赤毛の、黒いローブの小さな姿が、うつぶせに横たわっていた。
「ジニーちゃん!」エリナが大声で叫んで、そばに駆け寄る。
「ジニー!頼むから、返事をしてくれ!死んじゃだめだ!」
エックスもジニーに声を掛ける。ゼロがゆっくりとジニーに近付いた。手を持って、何かしている。
「石になってないな。生きてはいる。だけど辛うじてだな、これは。」
「そう。以前僕がバジリスクをけしかけて殺した、穢れた血と同じ寮の彼の言う通りだ。」
物静かな声が聞こえた。制服は、スリザリンの物だ。グラントにそっくり。だが、あいつよりも背の高い少年がそこにいた。
「誰だテメーは!俺の偽物か!!」グラントが、少年に詰め寄ろうとする。
「グラント、ストップ!…………トム・マールヴォロ・リドルなの?」
「そうだよ、エリナ・ポッター。それにしても、さっき僕に喧嘩を売ろうとしていた彼は、僕に良く似てるね。」
「お、俺の親戚か何かか?こいつはよぉ。」訳が分からないグラント。
「知るか、そんな事。後でじっくりと考えれば良いのさ。グラント。そして、トム・リドル……いや、こちらの方が敬意を表せるのかな?ヴォルデモートよ。」
リドルの顔が邪悪なものに変化した。
「もうそこまで知ってるのかい?トンヌラ。いいや、あんなのは偽名だったっけか。ハリー・ポッター。僕としては、ヴォルデモート卿の名は親しい友人にしか明かしていなかったんだけど。」
リドルの言葉を聞いて、俺は思わず大笑いした。
「何がおかしい!?」リドルがイラッとした様に言った。
「お前が友人を持つだと?笑わせるじゃねえか。下僕の間違いだろ?」
もう笑ってなかった。真顔で、そして侮蔑を込めた目でそう言い放ってやった。
「ハリー。開始早々ヴォルデモートに毒を吐くなんて、ある意味あなたは勇者ですよ。」
「イドゥンの言う通りだな。去年と同じじゃないか。まあ、去年の死の飛翔も落ちぶれた残骸そのものだったわけだがな。」
「ゼロも人の事が言えないじゃん。」エリナがツッコむ。
「とりあえずはよぉ、今回の騒動の元凶である俺の偽物を、ギッタギタのメッタメタにぶちのめせばいいんだろ?」
「厳密には違う。ジニーが…………」
「プリンアラモード!良くもジニーを!!許さねえ!ぶっ殺してやる!!!」
「エックス。曲がりなりにも由緒あるブラック家の一員であるならば、もう少し言葉使いを丁寧なものになさい。」
「頭では分かってるさ。姉ちゃん。だけど、あんな厨二病の末期患者にコリンを石にされて、ジニーを連れ攫われて正気でいろって言う方が無理あるでしょ?どうなんだよ?」
「ふう。こういう時こそ冷静にです。でもまあ、友の仇を取りたいのは分かりますがね。」
頭に血が上っているエックスに対して、落ち着く様に諭すイドゥン。
「頭冷やしておきな、エックス。死の飛翔やその一味は、そう言った周りが見えていない感情を付いて攻撃してくるからな。」
ゼロが、エックスの肩にポンと手を置いて、そう言ったのだ。
なんだかんだ言って皆、リドル絶許状態になった。エックスに至っては、イドゥンやゼロから落ち付く様に言われたとはいえ、リドルに殺意を向けている。
「僕の見せ場を奪うな!関係の無い奴まで出しゃばりやがって!お前達、一体何者なんだ!?」
リドルが怒鳴っていた。
「よくぞ聞いたな。」
ゼロが前に出て来た。俺とエリナ、グラントに目合わせをする。アレをやるのか。本当に。
「聞いて名乗るのもおこがましいが、取り敢えず名乗ってやるぜ。『無敵の剛腕ガンナー』グラント!」
グラントは、デザートイーグルを持ちながら何とも言えない名乗りポーズをする。
「『秘宝を手に入れしテレジャーハンター』ハリー!」
グラントの言葉に合わせ、俺は左の親指を上に向けながら目に出る。いや、トレジャーの筈だったんだが。
「『風を従えし戦いの神』ゼロ!」
ジョジョ立ち(ジョナサンの)をしながら、前に進み出るゼロ。
「最後は、『奇跡のロリ巨乳』ミラクル・エリナ!」
困惑しながらも、前に進み出るエリナ。
「ちょっとグラント!ボクのだけ、何かノリがおかしくない!?」
「そうか?結構良いんじゃねえかと思ってんだがよぉ。」
「グラント。テレジャーハンターじゃない。トレジャーハンターだ。」
「あ、そこは間違えた。すまん、ハリー。」
「次からは、間違えない様に頼むぜ。」
「俺のは、何か厨二臭い気がするんだが。死の飛翔と同じ様な……」ゼロも言った。
「風そのものになれるんだし、戦闘能力も俺とグラントと互角だから良いんじゃないか?嘘は言ってないんだし。」
「それもそうだな。」ゼロは、結構あっさりと納得した。
「姉ちゃん、あのノリさ。結構気に入ったよ。」
「気は確かですか、エックス。」
「……お前達4人は、この僕を侮辱しているのか!?」怒り心頭のリドル。
「うるせーバカ。」ゼロが切り捨てた。
「黙れ、ロリコンストーカー野郎。去年は俺の妹のエリナ、今年は入って来たばかりの1年生のジニー。年下の女子をつけ狙うその性癖は相変わらずだな、ヴォルデモート。いいや、その年齢からあったっていったほうが正しいか?え?お前が喋ると虫唾が走るから、その減らず口を閉じていろ。」
ついでに、中指を立てておいた。リドルの奴は、プルプルと震えている。
「とりあえず、私も尊厳は奪われない様にしておきましょうかね。」
「姉ちゃんにまで手を出されたら、僕は正気を保っていられるかどうか分からないよ。」
「僕の話を聞けえええええ!!」リドルが怒り狂って叫んだ。
「さっさと用件を済ませてよ、この厨二病患者のロリコンストーカー。」
エリナが嫌悪感丸出しで、吐き捨てるように言った。
「後で覚えてろ、エリナ・ポッター。……さてと。バカなジニーのおチビちゃんは、日記にのめり込んでいった。チビガキのバカらしい心配事や悩みを書き続けたんだ。兄さん達がからかう、お下がりの本やローブで学校に行かなきゃいけない、いつもエリナお姉さまと居られるわけじゃない、それにハリー・ポッターが自分を好いてくれない事もね。話に合わせるのは苦痛だったよ。そして、屈辱的だった。」
「え?てっきり俺は、ジニーに嫌われてるかと思ったよ。」
だって、挨拶してもすぐに逃げられるしね。
「ハリー!あなたって人は……ハア。全く、呆れましたわ。」
「ハリーにも、そんな弱点があったなんて。」
「どんな弱点だよ!まあいいや。後で聞くわ。おい、変態ヘビ野郎。さっさと続きを話せ。」
「変態ヘビ……だと!?後で思い知らせてやる。」
リドルは、何とか精神を落ち着かせる。
「だけど、チビガキが何度も日記を使ってくれたお陰で僕は徐々に力を付けていったのさ。次第に僕の魂をチビガキに注ぎ込んだ。」
今、魂って言ったな。やはり、日記は分霊箱だったか。
「段々おかしい事に気付いたチビガキは、日記をトイレに投げ捨てたんだ。そこで君達が現れてくれたんだ。他でもない君達兄妹が。」
俺とエリナを指差すリドル。
「さっぱり分からんな。エリナならともかく俺もか?」
「そう。エリナはジニーから色々経歴を聞かされてね。ハリーは、時々見せる姿勢に興味が出て来た。まるで、ハッフルパフという劣等寮所属でありながら、散々僕をコケにしてくれたアラン・ローガーそのものだとね。」
「義祖父ちゃん。いや、アラン・ローガーは俺の命の恩人であって、育ての親でもあるんだ。ある程度似てくるのは当たり前だろう?」
「それはそれは……何という事実。運命というのは分からないものだね。さてエリナ。次は未来の僕を破った、君に質問だ。偉大な魔法使いであるヴォルデモート卿を、赤ん坊に過ぎなかった君が、どうやって打ち破ったんだ?傷跡1つで済んでいるのは何故だい?」
「どうしてあなたが力を失ったのかは誰にも分からない。だけど、ボクがあなたから逃れられた理由は、今にして思えば分かるよ。ママが、ボクを守ったから!ボクを庇ってくれたから!!」
リドルの顔が歪んだ。だが無理やり、ぞっとするような笑顔を取り繕った。
「そうかそうか。母親が君を守る為に死んだ。成る程な。それは、呪いに対する強力な反対呪文だ。分かったぞ――結局君自身には、特別なものは何もないわけだ。実は何かあるのかと思っていたんだ。だが、僕の手から逃れたのは、結局幸運だからに過ぎないからなのか。それだけ分かれば十分だ。」
リドルは、1対の高い柱の前に立ち止まると、ずっと上のほう、スリザリンの石像の顔のあたりを見上げた。口を横に広げ、シューシューという音を漏らそうとする。
「おい、リドル。1つ聞かせろ。」ゼロが止めた。
「冥土の土産位ならいくらでも聞かせようじゃないか。」
「アナグラムまで使って、死の飛翔を自称する理由を聞かせろよ。」
「何だ、そんな事か。どうして汚らわしいマグルの父親の姓と名前を、いつまでも僕が名乗らなきゃいけないんだい?母方の血筋にサラザール・スリザリンの血が流れているこの僕が。汚らしい、俗なマグルの名前を、この僕が生まれる前に、母が魔女と言うだけで捨てたクズの名前を、僕がそのまま使うとでも?ゼロと言ったかな?死んでもノーだね。だから僕は、自分の名前を自分で付けた。いつか必ず、英国魔法界、いいや。世界中全てが口にするのを恐れて、平伏すであろう名前をね。その日が来るのを僕は知っていた。僕が偉大な魔法使いになる!その日が!」
「とことん下らん野郎だ。軽率と過信が弱点なのは、相変わらずだな。それならどうして、校長や義祖父ちゃんのいるイギリスで、多くの罪の無い人間の命を平気で弄ぶ様に殺すという愚行を犯した?そんなの簡単だ。イギリス以外で、それをする力が無かったってわけだ。そんな奴が、世界征服なんて出来る筈もねえ。」
俺は、万感の憎悪を込めてリドルに言い放った。
「それに、偉大な魔法使いがだれかなんて価値観は人それぞれだよ。ボクにとっては、パパやママ、それにハリーだけど。」
「俺は、父様と母様、義祖父ちゃんだな。」
「俺はよぉ……俺自身だな。」
「グラント、あなたは本当にブレませんね。両親とゴッド・ファーザーですわね。私は。」
「僕にとっての偉大な魔法使いか。身近になるけど姉ちゃんかな?強いし。あ。でも、ハリー先輩も同じ位強いから…………どっちもかな。」
「父さんと兄さん。兄さんに関しては、母さんが違うがな。」とゼロ。
「お前なんて、下から数えた方が早いのさ。ぶっちぎりのビリだな。」
俺は、リドルにダメ出しを与えた。
「この僕がビリだと!?そんな事があってたまるか!!」
「リドル。親から最初に貰えるプレゼントって何だと思う?金か?違う。名誉か?違う。魔力か?それも違う。」
ゼロは、自分を落ち着かせてから次の言葉を言う。
「それはな、名前だ。それを否定するなんて、余程のキラキラネームでもない限り母親の意思に反した事になる。俺は、兄さんとは母親が違うし、兄さんは純血だが、俺はマグルの血が4分の1入ったクォーターだ。母さんは半純血だがスクイブだった。俺が母さんと一緒にいられたのはほんの6年間しかない。癌で死んだからな。でもな、ゼロという名前は父さんや母さんから貰った最初のプレゼントだ。死んだとしてもだ!せめて、両親がいたその証や絆だけでも残そうと俺は思った。」
「やかましい!!知った風な口を聞いて!お前ら、全員殺してやる!!純血も半純血も、穢れた血も関係ない!!まとめてあの世に送ってやる!」
その時だった。何処からとも無く音楽が聞こえた。歌っていたのは、白鳥ほどの大きさの真紅の鳥。
「不死鳥ですか。あの狸が、送って来たのですね。」
不死鳥は、エリナの目の前に止まる。俺の前に、組み分け帽子を落とした。
「あの老いぼれが送って来た物は、そんな役立たずか!歌い鳥に古帽子!お前らにとっては、さぞかし心強いだろうね。老いぼれを恨みながら、浄土にでも行け。【スリザリンよ。ホグワーツ4強の中で最強の者よ。我に話したまえ】。」
最後は、蛇語で何か話すリドル。俺は、ゴーグルを掛けろという合図を送る。それと同時に、俺もウイルスモードを発動した。全員掛け終わったと同時に、スリザリンの顔の口が動く。それは、ぽっかりとした穴になった。そこから何かが床の上に落ちて来る。巨大な蛇、毒蛇の王の異名を持つバジリスクだ。今はまだ、とぐろを巻いている。
【奴らを殺せ。】
リドルが低い声でシューと言うと、バジリスクはとぐろを解く。
「さあ、お前達がバジリスク相手にどう足掻くか見せて貰うとしようか。」
「おい、グラント。何か寝言が聞こえたぞ。」ゼロがグラントに語り掛ける。
「ハリーやエリナちゃんの言う通り、お辞儀ハゲは最初っから厨二病患者だったんだなぁ。俺でも引くぜ。それによぉ、お辞儀ハゲは寝てそうに無いんだがよぉ。」
「う~ん。って事はグラント。トム・リドルは、今は寝言を言ったわけじゃないんだよねえ……だとすると、今のは――」
「戯言……だな。」俺は、エリナにそう言った。
「どこまでも僕を……このヴォルデモート卿をコケにしやがって!!!すぐに血祭りにしてやるぞ!!!!!」
激昂するリドル。
「火に油注いじゃってるけど、大丈夫かな?」
「これが闇の帝王……の学生時代ですか。何か、思ってたのとは違い過ぎて――かなりショックですわ。」
「僕も……出てきた瞬間にBGMが来る系の帝王かと。こんな残念な小物だなんて思わなかったよ。」
ブラック姉弟の、そんな会話が聞こえてくる。まあ、何はともあれ、俺達6人とスリザリンの継承者との戦いの火蓋が、切って落とされたのだった…………多分。