二度目の人生は長生きしたいな   作:もけ

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前話『14歳、内政とガリア、それと甘いひと時』のボリュームを厚くしたいと思いまして、何話かに分けて書き直してみようと思ったうちの一話目です。

追記、9/11 13:00 会話文のみだった所に地の文を追加しました。



(改訂中)14歳、春

 3ヶ月ほど前、降臨祭が終わり年が明けると、ガリアから各国に凶報が届けられました。

 

 ガリア王ロムニ6世崩御。

 

 ついに来たか、と思いました。

 

 そして、事がここに至っては今更何かできる事はなく、例の園遊会の夜の説得が功をそうするのを祈りつつ、後は座して待つだけだったのですが、情勢が固まるまでの1ヶ月は正直気が気ではありませんでした。

 

 幸いにも私のそんな心配は杞憂に終わり、シャルル殿下の即位が特に大きな混乱もなく発表され、この春に戴冠式が行われる運びとなりました。

 

 大国ガリアの戴冠式ともなると国内の貴族だけでも参列者は相当数にのぼり、玉座の間のキャパシティから考えて他国からの来賓は王族と有力貴族の上位数名を招待するのが精一杯という事で、王都リュティスでのパレードや舞踏会とは別に、ラグドリアン湖にて他国の貴族へのお披露目を目的とした園遊会が開かれます。

 

 我が家もそちらに招待されているのですが、せっかくの機会ですからティファニアと2人、リュティスまで足を延ばしてパレード見物にくり出す事にしました。

 

 あ、もちろん2人と言っても護衛もいればメイドもいますから厳密には2人ではありませんので、残念ですが悪しからずという事で……。

 

 それでは、以下にその時の様子をいくつかピックアップしてご紹介します。

 

◇◇◇◇◇

 

 到着の予定が少し遅れ、日が落ちてからリュティスに着いた私たちは旅の疲れもあって予約していたホテルに直行し、明けて次の日……。

 

「うわぁ~~街も大きいし、人もいっぱいだし、凄い賑やかだし、何か、何か凄いねっ!!」

「あぁ、テファ。手を離してはいけません。迷子になってしまいますよ」

 

 朝日が昇って人々が動き出した街並みは、祭りの本番という事もあってまだ早い時間にも関わらず喧騒に包まれています。

 

 ホテルから大通りを人の流れに沿って小物なんかの露天を冷やかしながら足を進めて行くと、街にいつくかある大広場の一つにたどり着き、そこは多くの飲食店を中心にした屋台が建ち並び、さらに多くの人を集めていました。

 

 こういったお祭りが初体験のティファニアは、テンションが振り切れてしまっているようにハシャいでいます。

 

「カミル、あの屋台凄い美味しそうな香りがするけど、どんな料理かな」

「らっしゃい。さすが貴族のお嬢様は目の付け所、いやさ鼻の付け所が違う。この匂いはエルフの住む砂漠を越えた先の先、東方ならぬ南方から運ばれた、ここハルケギニアにはない新しい香辛料でさぁ」

 

 南方? 初めて聞く固有名詞ですが……。

 

「へぇ~~おじさん、どんな味なんですか」

「ちょっとピリッとしやすが、豚肉との相性はバツグン。この香ばしい匂いとも相まって、エールにもワインにも最高に合うツマミでさぁ」

「う~~ん、じゃあ2本ください」

「毎度ありっ!!」

「はい、カミル」

「え、あ、はい。ありがとうございます」

 

 前もってティファニアにはお小遣いを渡してあるのですか、ほとんど躊躇なく即買いしましたね。

 

「あ、本当に舌がピリッてする。ホースラディッシュ(西洋ワサビ)のツンとした辛さとは違う感じだけど、何て言うか後にひかない刺激的な味? ちょっとクセになりそう」

 

 この刺激は四川料理で食べた舌の痺れる山椒? 香りは全然違いますけど……。

 

 というか、南方てどこですか? アフリカですか?

 

「カミル? 口に合わなかった?」

「い、いえ、そんな事ないですよ。ちょっと舌の痺れる感じに驚いただけです。でもこれは確かにワインが欲しくなりますね」

「そうだね。あ、あっちにお酒の屋台があるよ」

「あ、待ってください、テファ。勝手に行っては駄目だと……」

 

◇◇◇◇◇

 

 広場で空腹を満たした私たちは違う大広場も見てみようと来た道とは違う大通りを歩いています。

 

「テファ。ちょっといいですか」

「どうしたの、カミル」

「これ可愛くないですか」

「うわぁ、可愛いウサギさん。ここ、ガラス屋さん?」

 

 のんびりと街並みを楽しみながら歩いていた私の目に留まったのは、可愛らしいガラス細工の並んだショーウインドウ。

 

「ちょっと入ってみましょうか」

「いいの?」

「私が見たいんですよ」

「クスッ。じゃあ、ちょっとだけだよ」

 

 珍しくお姉さんぶったティファニアの微笑みにドキっとしながら、店内にカランという来客を告げるドアベルの音を響かせます。

 

「おぉ、これは見事ですね。ガリアの王城ヴェルサルテイル宮殿ですか」

「凄いね。私こんなに大きなガラス細工初めて見た」

 

 店内に入るとまず目に付くのが、店の中心に据えられた台の上でその存在を最大限に主張しているガラスのお城です。

 

「そして値段もまた凄いと」

「8000エキューって、お小遣い何年分だろ」

「値段的にもサイズ的にもお土産には無理がありますし、あっちの小物を見ましょうか」

 

 凄いとは思いますけど、別に欲しいとは思いませんね。

 

 負け惜しみではなく、こういうのは机の上にちょこんと載っていて、気分で手に取って愛でれるサイズが良いと思うのです。

 

「うん。あ、こっちの子猫が丸まって寝てるのも可愛い」

「私はこの緑のカエルが好みですね」

「カミルはカエルが好きなの?」

「小さくて単色のやつ限定ですけどね。水メイジらしいでしょ」

「ふふ、そうだね」

 

 アマガエルって可愛いですよね。

 

 単色ではありませんが、モンモランシーが呼ぶであろうロビンくらいなら許容範囲です。

 

「テファはやっぱり可愛い系ですか」

「う~~ん、フクロウみたいに愛嬌があったり、ユニコーンみたいに凛々しいのも好きだよ」

「あぁ、フクロウは私も好きです。タカやワシの仲間なのに妙に可愛げがありますよね」

「首がグルッと回ったりね」

「そのまま一周回って元に戻っちゃいそうですよね」

「そうそう」

「そして勢い余って二回転、三回転」

「えっ」

「そのうち首から上だけが回りながら空に飛んで行ってしまって」

「えぇっ」

「後から羽ばたいて飛んできた胴体と空中でドッキング」

「凄いっ」

「なんて事になったら面白いですよね」

「え…………嘘なの?」

「え、」

「残念」

「えっと、」

 

◇◇◇◇◇

 

 

 フリーマーケットが行われていた2つ目の大広場を過ぎ、次の広場に向かう途中で大通りから一本裏に入ります。

 

「カミル、ここは……マジックアイテムのお店?」

「正解です、テファ。せっかくガリアまで来たのですから覗いて行こうと思って調べておいてもらいました」

「へぇ~~、トリスタニアのお店と全然違うね」

「お国柄ですね。規模が段違いというのもありますが、水の国と言われるトリステインの店では水の秘薬やその材料が主な商品ですけど、ガリアでは道具や人形といった土系統のものが多いんだそうです」

「そうなんだ。カミルは何かお目当ての物でもあるの」

「はい、一つはアルヴィーです」

「アルヴィーって、確か人形劇で見たあの小さな魔法人形だよね」

「そうです。踊ってるのも可愛かったですが、欲しいのは楽器を弾くタイプのアルヴィーで、できれば色んな楽器で楽団を組んでるのがあれば最高です。ドールハウスで持ち運びが出来るようにして、いつでもどこでも気軽に音楽が聞けるようになったら素敵だと思いませんか」

「うん、凄く良いと思う」

「婚約者から同意が得られた所で、店主。聞こえていたと思いますが、そういった楽器を弾くアルヴィーはありますか」

 

 私たちが入って来た事に気付いていながら会話の邪魔をしないように声のかけやすい距離で控えていた、気配りの出来る店主らしき人物に声をかけます。

 

「いらっしゃいませ、貴族様。管楽器はあいにくと取り扱いがございませんが、弦楽器と打楽器でよろしければ各種取り揃えてございます」

「うん? 人形に管楽器は無理だろうと思っていたのですが、『取扱いがない』という表現は曖昧ですね。それは違う店ならあるという事ですか」

「いいえ、貴族様。お察しの通り、呼吸のできない人形に管楽器を扱わせる事は通常不可能なのですが、王宮お抱えの工房では風石を組み込んだ管楽器を吹く事のできるアルヴィーがあるそうなのです。しかしこれが一般のルートで売られる事はありませんので、先程の様な説明をさせていただきました」

「あぁ、それは無理ですね。分かりました。それではヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、後あればピアノを見せてもらえますか」

「承りました。少々お待ちください」

 

 うやうやしく礼を取って下がる店主。

 

 貴族の扱いに慣れていますね。

 

 まぁ、マジックアイテムのお店なら当然と言えば当然ですが……。

 

「それにしても人形の演奏のために風石まで使うとは、さすがガリアと言いますか、なんとも豪気な話ですね」

 

 原作でも10mクラスの精巧なハルケギニアの模型を作っていましたし、財力と技術力という点で羨ましい限りです。

 

「ねぇ、カミル。風石ってやっぱり高いの」

「う~~ん、難しい質問ですね」

「え、えっと、じゃ、じゃあ説明してくれなく」

 

 怯んだティファニアにわざと言葉を重ねて長い説明に入ります。

 

「事は軍事に関わりますからね。軍の船を飛ばすにも風石は欠かせませんから。国内の風石産出量や予想される埋蔵量、現在の貯蔵量とこの先の需要の関係によって各国で相場は異なります。特に高いのはゲルマニアで、次点でガリア、トリステインと続いて、最安値はアルビオンですね。風石はどうやら大陸の西側の方が産出し易いらしく、そのためゲルマニアは国土と人口に対して産出量が圧倒的に少ない現状に加え、小国が寄せ集まって国体を作っている関係で小国単位で保有戦力を確保しようとする動きが強く、そのせいで価格が引き上げられてしまっています。ガリアも統治の内情はゲルマニアとそう変わらず、各領主が保有する戦力も馬鹿になりませんが、ゲルマニアよりも産出量が多いため価格はゲルマニアに比べて抑えられています。対して我がトリステイン王国は残念な事に風石鉱山が枯渇して久しく、100%輸入に頼っているという厳しい実情にありながら、小国ゆえに需要自体が少なく済み、加えてアルビオンと同盟関係にあるおかげで低価格で融通してもらっています。その輸出先であるアルビオンは豊富な産出量を背景に自国の輸出入に係わる商人に対して卸す風石価格を引き下げ、足代で国内の物価が上がらない様に調節しているため、国内の風石価格は破格となっています。分かってもらえましたか、テファ」

「もうっ、なんで説明しちゃうのっ」

 

 その怒ってふくれたほっぺが見たかったからとは言えませんね。

 

「テファはこの手の話が苦手ですよね」

「うぅ、お義母様にももう少し頑張りましょうって言われちゃってるけど、難しい話は頭がこんがらがっちゃうんだもん」

「応援してますよ、テファ」

「が、頑張ります……」

 

 さて、もう一つの目当ての商品は表だって売っている事はないでしょうから、アルヴィーを買って気を良くさせてから聞き出すとしましょう。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 3つめの広場では多くの大道芸人が今日まで鍛えてきた技を惜しみなく披露してチップを稼いでいましたが、さすがにここまで歩き通しだったために、ここらで一旦お茶にでもしようと喫茶店に入る事にしました。

 

「ご注文承ります」

「緑茶セットを2つ」

「かしこまりました。緑茶セットをお二つですね。少々お待ちください」

 

 喫茶店のチョイスは「東方から来た珍しい緑茶はいかがですか」という呼び込みに釣られて決めてしまいました。

 

「お祭りだと喫茶店に入るのも大変だね」

「そうですね。疲れていませんか」

「人混みにちょっと疲れちゃったけど、少し休めば大丈夫。本番のパレードもこれからだしね」

「楽しみですね」

 

 時間的にまだ余裕もありますし、急ぐ事もないでしょう。

 

「うん♪ あ、そうだ。場所取りしてくれてる人に何か買って行ってあげた方がいいかな」

「物よりもお金の方が喜ばれますよ。使い道を選べますからね」

「ちょっと味気ない気もするけど……うん、そうだね。じゃあいくらくらいがいいかな」

「そうですね、普段なら1エキューもあれば十分だと思いますけど、せっかくのお祭りですからね。奮発して5エキューほど出してしまいましょうか」

「ふふ、お祭りだとお財布のひもが緩くなっちゃうね」

「全くです」

 

 こういう時に気前良くしておかないと部下に嫌われてしまうという打算もあったりなかったり……。

 

「お待たせしました。緑茶セットになります」

 

 なんて話をしているうちに、記憶の底を刺激する様な懐かしい香りが運ばれてきました。

 

「緑茶って言うだけあって綺麗な緑をしてるんだね。香りは甘い感じがする」

「さっきの香辛料は南方と言っていましたが、こちらは東方のお茶。ガリアには珍しいものがありますね」

「遠い異国のお茶か……どんな味なのかな」

「百聞は一見にしかず、いただきましょうか」

「うん」

 

 ティファニアとは違った意味ですが、自分でもはっきりしない何かしらの期待をこめてグラスに口を付けますが、

 

「……(こんな味でしたっけ)」

「苦い……」

 

 2人揃って微妙な表情を浮かべる結果になりました。

 

「この苦さが緑茶の良さ……らしいですよ」

「カミルは平気なの」

「悪くはないですね。ほら、甘いもので口直しをどうぞ」

「う、うん、ありがと」

 

 さすがに餡子とはいかないようで、焼き菓子がセットで付いています。

 

「苦いお茶を飲んで甘いお菓子を食べると甘さがより強調されて、その甘さで満たされた口の中をまた苦いお茶でリフレッシュさせる。そうやって楽しむもの……みたいですね」

「甘いのがもっと美味しくなるのは嬉しいけど、私はいつものお茶の方がいいかな」

 

 まぁ、この苦さは慣れが必要かもしれませんね。

 

「じゃあ、その残りの緑茶は私がもらいますから、テファは別にもう1杯頼みましょうか。どれにします」

「いいの? それじゃあ、この『蜂蜜たっぷりジンジャーティ』にしようかな」

「甘い物も追加しましょうか」

「うん♪」

 

 

◇◇◇◇◇

 

 本日のお祭りのメインイベントであるパレードを最前列で見てからホテルに帰って来たわけですが、

 

「初めて見たけど、パレードって凄いんだね。演奏は歩きながらしてるとは思えないほど上手だったし、ボールや輪っかを何個も投げるピエロたちはワザと転んだり落としたりして思わず笑っちゃったし、空飛ぶゴーレムがまいてた花びらはクルクル回りながら降ってきて綺麗だったし、軍人さんの足並み揃えた行進も凄く素敵だった」

 

 ティファニアの興奮は未だ冷めていないようです。

 

「えぇ、竜騎士の曲技飛行も凄かったですよね」

「うん、ぶつかりそうになる度にドキドキしちゃった」

「さすが大国ガリアの国を挙げてのイベントです。熱の入れようが違いますね。わざわざリュティスまで足を運んだ甲斐がありました」

「うん、こんな賑やかなお祭りを見られるだなんて、何だか夢みたい……。きっと一生忘れないと思う」

「トリステインやアルビオンではこれだけの規模のものは出来ないでしょうから、次に見られるとしたらシャルロット姫のご成婚か、対抗意識バリバリのゲルマニアが何かした時でしょう。テファ、その時も一緒に見に来ましょうね」

「うん♪ 楽しみだね、カミル」

「はい」

 

 ティファニアの眩しい真っ直ぐな笑顔に胸を奥から温かい気持ちが全身に広がっていきます。

 

「カミル」

「なんですか」

「大好き」

「私も大好きです、テファ」

 

 ちゅ…………。

 

◇◇◇◇◇

 

 おっと、最後にお恥ずかしい所をお見せしてしまいましたが、概ねこのような感じにリュティスでのパレードを満喫した私たちは一泊した次の日、行きは時間的に余裕があったため実家からリュティスまで馬車でのんびり一週間かけて旅程を楽しんで来ましたが、園遊会の開かれるラグドリアン湖までの道行きは奮発して竜籠をレンタルしてガリアを空から眺めながらサクッと移動しました。

 

 私とティファニア、それと魔法の使えるメイドを加えた3人だけで。

 

 他の同行していた使用人たちはどうしたかというと、必要経費とは別に各自に10エキューずつ臨時ボーナスを渡し、行きと同じ行程で先に実家へと帰ってもらいました。

 

 人数分の竜籠を揃えるのは高くつきますし、会場には早く到着した貴族の受け入れ体制が整っているので、お母様たち一行が到着されるまでの着替えさえ用意しておけば、特に不自由をしないで過ごす事が出来ます。

 

 ちなみに私たちに同行している、ある意味貧乏くじを引く事になったメイドには他の使用人よりも多い30エキューを渡しておきました。

 

 懐も温まり、貴族のいない気楽な道中を楽しめるあちら側と、引き続き1人で貴族2人の世話をしなければならない彼女では、必然報いる額も変わってくるというものです。

 

 さて、思いのほか早く会場入りした私たちは、新ガリア王のお披露目会までの数日をガリア料理に舌鼓を打ちながら遠乗りや湖にボートで出たりとまったりのんびり羽を伸ばし、アルビオン一行が到着してからはモード大公やマチルダさん、姉様が身重のため1人で来ていた義兄さんと食事を共にして過ごしました。

 

 そうしてるうちに続々と集まってくる各国の貴族たちに紛れてお父様たちも無事到着され、いよいよ園遊会当日となりますが、我が家的には新しく立った他国の王様よりも重大事があります。

 

 それは『ティファニアの社交界デビュー』です。

 

 これには次期当主に婚約者ができた事で結婚の目途が立ち、将来的なアルテシウム家の安定を内外に示す効果があります。

 

 ただし、私たちの場合はティファニアの事情から気を付けなければいけない事があります。

 

 それはティファニアが、ウェールズ皇太子とアンリエッタ姫のイトコであるという点です。

 

 平民の妾腹という設定のため王位継承権はなく、モード大公が世継ぎには養子を取る事を公言してくれているのでそちらの存続にも関わりはありませんが、次世代の国を背負って立つ『自国の皇太子やお姫様が懇意にしている』という状況が出来てしまえば、どんな問題が大挙して押し寄せてくるか分かったものではありません。

 

 『あそこの商品がお気に入り』くらいの認識ならば話の種に手に取ってもらえる事も増え、贈答用の販売が伸びるかなぁというだけで済みますが、個人的に友誼を結んでいるというのは王室に取り入りたい輩から注目されてしまい、利用しようとする輩が必ず現れます。

 

 これについては出発前に事後報告という形で教えてもらったのですが、既にお母様とモード大公が対処に動かれていて、内密に王家と接触を図り、国王には兄弟からの、皇太子とお姫様には伯父からのお願いとして、公の席で言葉を交わす事のないように伝えてあるとの事でした。

 

 こういう事まで頭が回らなければ家を守っていく事はできないのだと痛感した出来事でした。

 

 反省して次に活かします。

 

 と、まぁそんなわけで、私とティファニアが注意しなければいけないのは、挨拶回りの最中にうっかり遭遇しない事と、話を振られた際は「王家に気安く近付ける身分ではありませんから」と牽制する事です。

 

 アイコンタクトや目礼くらいが許容範囲とお母様から申し付けられています。

 

 私としてはそもそも近付きたいとも思っていませんでしたから、好都合と言えば好都合です。

 

 あちらと無視する意図で合意が取れているなら願ったり叶ったりというものでしょう。

 

 可愛い奥さんと平和でのどかな日常、田舎貴族万歳です。

 

 ちなみに、ガリア側はモンモランシ伯を通じて商売をしているのでお父様がモンモランシ伯に同行する形で回り、アルビオン側は姉様のオックスフォード家、マチルダさんのサウスゴータ家と協定を結んでいる関係で営業努力はそちらにお任せし、お母様はトリステイン側を担当するそうです。

 

 最初私はお父様に、ティファニアはお母様に付いて挨拶回りをしますが、それが終われば後は同年代の輪で親交を深めつつ、ティファニアを紹介するのがお仕事になります。

 

 婚約者としてしっかりとティファニアをエスコートして、変な虫が寄りつかないように気を付けましょう。

 




地の文の追加、こんな感じでどうでしょう。
まだボリューム不足ですかね。

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