二度目の人生は長生きしたいな   作:もけ

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8歳、ラグドリアン湖に来ましたよ

「おぉ、なかなかの絶景。景勝地としての有名は伊達ではありませんね」

 

 アチラの世界で行った事のある日光の中禅寺湖や箱根の芦ノ湖より大きそうです。

 

「ボートもあるみたいですし、どうせですから釣りでもしましょうか。釣れたら夕食に出してもらえるかもしれませんし」

 

 そうと決まれば即行動ですね。

 

「お母様~~、小舟で釣りに出てもよろしいですか~~」

 

 なんだか無駄にテンション上がってきますね。

 

 身も心も童心に帰る感じがします。

 

 おっと失礼しました、カミル・ド・アルテシウム、8才です。

 

 コチラの世界に転生してから3年、新しいお酒に掛かり切りだったのに加え、姉のジュリアがトリステイン魔法学院を卒業して家に帰ってきた事から、景勝地として名高いラグドリアン湖に家族旅行に来ています。

 

 原作ではアンリエッタ姫とウェールズ王子がキャッキャウフフと逢い引きをしていたり、水の精霊様が傍迷惑にも水位を上げて近隣の村を水没させたりとパワースポットならぬイベントスポットだったりしますが、その辺は原作の2年前とか言っていたはずですから今の時点では特に問題ないですね。

 

 ゆっくりと羽を伸ばさせてもらいましょう。

 

 そういえば初めて自領から出ましたけど、やっぱり馬車の移動は時間がかかりますね。

 

 スピードとしては徒歩の倍くらいでしょうか。

 

 空を移動する龍籠なら10倍くらい早いんでしょうけど、家族旅行とは言ってもそこは貴族。

 

 メイドや使用人、護衛も同行する事から龍籠では定員オーバーですし、何機も借りたらお金がかかり過ぎてしまいます。

 

 馬車で移動して途中で宿をとった方が安上がりなんですよね。

 

 まぁ急ぐわけではないですし、姉様の学院での話やこれからの研究の話をしていたら時間を持て余す事無く過ごす事ができました。

 

 その中で特に気になった話は我らがツンデレヒロインたるルイズ嬢の怖い方の姉、ヴァリエール家長女エレオノール様のお話。

 

 年齢的に一緒だからと予想はしていましたが、まさか成績でも土のメイジとしても主席を争うライバルだったとは……。

 

 一瞬「敵対フラグか」と焦りましたが、同じレベルで話せる相手というシンパシーで仲が悪かったわけではないと聞いて一安心。

 

 エレオノール様は原作通り優秀ですが、反面そのキツい性格のせいでお近付きになりたい男性陣を軒並みぶった斬っていたそうです。

 

 対照的に美形で要領のいい姉様は随分とおモテになったとか。

 

 あいにくと結婚を考えるようなお相手とは巡り合えなかったらしいのですが、姉様にその辺の心配は無用でしょう。

 

 まぁまだ8才の私にはそもそも縁のない話なので、ここはスルーさせてもらいましょう

 

 さて、お父様は別荘にて長旅の疲れを癒し、お母様と姉様は湖畔でティータイムと洒落込んでいます。

 

 私ですか? 私は釣り竿片手に一人で湖へGOですっ!!

 

 あまり離れてしまっては心配をかけてしまうので、転覆しても気付いてもらえるくらいの距離で釣り糸を垂らします。

 

 そして一時間経過。

 

「ふふ~~ふ、まずまずですね♪」

 

 今の所、収穫は虹鱒みたいな魚が3匹です。

 

 家族だけならもう1匹ですね。

 

 もっと釣れたらメイド達の食事に回してもらいましょう。

 

 さっ、続き続きっと――――――――――

 

「痛っ!?」

 

 餌を付けようとした針が指先に……。

 

 こんなうっかり属性みたいな展開はノーサンキューなんですが。

 

 痛いのは嫌いです。

 

 とりあえず、このままでは雑菌がはいってしまうかもしれませんから湖の水……では本末転倒ですから魔法で水を出して「コンデンセイション」傷口を洗って「ヒーリング」よし、これでいいですね。

 

 と思った所で、異変に気が付きました。

 

 不自然に湖面が盛り上がり、人の形になっていきます。

 

 これって――――――――――

 

「み、水の精霊……」

 

 えっ? なんで? なんで急に出てきてるんですか? さっき湖の水で傷口を洗おうとして止めた時に垂れた血が原因ですか? そういえばモンモランシー嬢も使い魔のカエルに血を持って行かせて呼び出してましたけど、でも私は呼んでいませんし、そもそも契約とかしていないのにおかしいでしょう。

 

 えぇ、正直パニック状態です。

 

 しかしそんなこちらの心情はお構いなしに会話が始められてしまいます。

 

「単なる者とは異質なる者よ」

「えっと、よく分からないのですが、それって私の事ですか」

「そうだ」

「そうですか、そうですよね……。はぁ、何かご用ですか」

「いや」

「はい?」

「数え切れぬほどの年月を過ごしてきた我だが、そなたの様な存在は初めてだ」

「はぁ、そうなんですか」

「ゆえに出てきた」

「えっと、つまり興味本位って事でよろしいですか」

「そうだ」

 

 そうだって言われましても……。

 

 透明だから分かりにくいですけど、なんとなくドヤ顔してそうな感じですね。

 

 そこはかとなく腹ただしい。

 

 ちなみに、原作では血を垂らした者の外見を模していたと思いますが、コチラの精霊様は私の外見ではなく女性型をしています。

 

 どちらの成人女性か知りませんが、なかなかのスタイルです。

 

 まぁ透けていますが。

 

 さておき、

 

「水の精霊様」

「なんだ」

「私の事を異質と呼ばれましたが、分かるのですか」

「そうだ。単なる者とは異質なる者よ」

「そうですか」

 

 一旦落ち着きましょう。

 

 これはチャンスかもしれません。

 

 「転生する前の世界ではコチラの世界の事は小説になっていて」などと荒唐無稽な話をわざわざしなくても、精霊様は私がどういう意味かはさておき普通ではない事を理解しています。

 

 これは上手く誘導してアンドバリの指輪をどうにかすれば原作崩壊ですけど最大の懸念材料であった戦争が回避できるかもしれません。

 

 長生きするためにも試してみる価値があるでしょう。

 

 よしっ!!

 

「水の精霊様。水の精霊様のおっしゃる通り、私は普通とは異なる存在です。それゆえに私はこれから起こるであろういくつかの未来を知っています」

「ほう」

「今から7年後、湖の底から秘宝のアンドバリの指輪が盗まれる事になります」

「なんとっ!?」

 

 おぉ、精霊様の体を構成している水が波打っています。

 

「そしてその後の精霊様の対応も知っています。湖の水を溢れさせ大陸ごと水没させ、アンドバリの指輪に辿り着こうとするはずです」

 

 精霊様は少し考える素振りをしてから、

 

「確かにそうするかもしれん」

 

 と同意してくれました。

 

「しかし、それは失敗する」

「なぜだ」

「アンドバリの指輪はアルビオン大陸、つまり浮遊大陸に持ち去られるからです」

「それは……」

 

 言葉を途切れさせ、さっきよりも長く考え込んでしまいました。

 

 そして、

 

「単なる者とは異質なる者よ、我はどうしたらいい」

 

 おぉっ、こっちから提案しようと思っていたのに向こうから助けを求めくれるなんて飛んで火に入る夏の虫とはこの事です。

 

 さて、受け入れてもらえるか分かりませんし次善の策もありますが、まずは提示してみましょう。

 

「私にアンドバリの指輪を預けてください」

「いいだろう」

「即答っ!?」

 

 あまりの驚きに精霊様に思わずツッコんでしまいました。

 

「うむ、単なる者とは異質なる者を信用しようと思う」

「あぁ、えっと、ありがとうございます」

「ただし、護衛として我の一部を同行させよ」

「構いませんが、どうやってですか」

「これを持て」

 

 そう言うと精霊様の体を形作っている水が輝き、それが収束すると直径5cmくらいの透明な水色の石が現れました。

 

「我は全なる一の存在。水のある場所ならばどこでも存在しているが、それ以外の場所でもこの水石があれば問題ない」

「便利ですね」

 

 後でブレスレットにでもして持ち歩きましょう。

 

「単なる者とは異質なる者よ。それでは我が秘宝を頼む」

 

 そう言うと湖面から精霊様の体を通り、手に載ったアンドバリの指輪が差し出されます。

 

「私の命に換えてもお守りします」

 

 こういうのは雰囲気が大切です。

 

 指輪を受け取り、左手の人差し指にはめます。

 

「うむ」

 

 用は済んだとばかりに水の盛り上がりが小さくなっていく――――――――――

 

「あぁ、それと」

 

 のを呼び止めます。

 

「なんだ」

「もし良かったら名前で呼び合いませんか? 『水の精霊様』と『単なる者とは異質なる者』では長ったらしくて大変ですし」

 

 そう言うと、いきなり周りの水面から水しぶきが上がり出します。

 

 お、怒ってます?

 

「ご、ごめんなさい。嫌なら別に無理にとは」

 

 見た目から感情が読み取れないので焦って謝りますが、

 

「いや、違うぞ。大丈夫だ。いいだろう。まずは単なる者とは異質なる者の名前を教えよ」

 

 とりあえず大丈夫らしいです。

 

 焦りました。

 

 水の精霊様は直接触れる事で相手の精神を乗っ取れるそうなので、意外と凶悪なのです。

 

「私の名前はカミル・ド・アルテシウムと言います。気軽にカミルと呼んでください」

「カミルか、分かった」

 

 水しぶきは続いています。

 

 本当に大丈夫なんですよね?

 

「では、我に名前を付けよ。我に名前はないからな」

「そうなのですか? それでは」

 

 ここはベタにウンディーネとかアクアとかでもいいですけど、せっかくですから日本の神様の名前から取らせてもらいましょう。

 

「ミツハなんてどうでしょう。別の世界の古い神様の名前の一部で水を表す言葉なんですけど」

「ミツハ……」

 

 水の精霊様が確認する様に呟くと水しぶきがどんどん激しくなっていき、最後には船をグルッと囲むように10メイル(m)くらい吹き上がりましたっ!!!!

 

「うわっ!? ミ、ミツハさん?」

 

 正直完全に腰が引けていますが、水の精霊様の様子を窺うと、

 

「気に入った」

 

 ボソッと一言。

 

「……へ?」

「我の事は今後ミツハと呼ぶがいい。カミルよ」

「あ、あぁ、はい、よろしくお願いします。ミツハさん」

 

 挨拶が終わった所で、今度こそ盛り上がりが小さくなっていき、静かな湖面に戻りました。

 

 それを確認して溜め息を一つついた所で、

 

「心臓に悪いです」

 

 緊張から解放された事で力が抜けてしまい、だらしなく船に横たわります。

 

 楽観的すぎるかもしれませんが、でもこれで戦争が回避できるかもしれません。

 

 少なくとも規模は小さくなるのではないでしょうか。

 

 願わくばアルビオン内だけで片が付くよう祈っています。

 

 王党派、ファイト。

 

 別件ですが、増水イベントがなくなるという事は、惚れ薬の解毒薬の材料である『精霊の涙』をもらいに来た際の主人公組vsタバサ嬢&キュルケ嬢ペアが発生しませんから、代わりにミツハさんを説得しなければならなくかもしれません。

 

 数多のSS作品の様に、間違っても惚れ薬を自分が飲まない様に注意しておきましょう。

 

 フラグではありませんので、あしからず……。

 

 『そもそも作らせない』と言う選択肢は、女子寮でこっそり作られているため、やはり難しいでしょうね。

 

 それにデレ100%のルイズ嬢は貴重です。

 

 欲望に負けないサイト少年は、まさに鉄の男と言っていいでしょう。

 

 別に尊敬はしませんが。

 

 もう一つの別件、モンモランシ家の交渉役破棄と干拓事業の失敗については、まぁ自業自得という事で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カミル、大丈夫?」

「わっ!?」

 

 小舟に寝転びながら今後の展開に思いを馳せていると、いつの間にか姉様の顔が目の前にありました。

 

「こら、人の顔見て驚くなんて失礼だぞ」

「ど、どうして姉様が」

「どうしたもこうしたもないわよ。お母様とお茶をしてたらいきなりもの凄い水しぶきが上がったのが見えたから心配になって見に来てあげたのよ」

 

 言われてみれば納得です。

 

 あれだけ派手な水しぶきが上がれば気になって当然ですよね。

 

「ご心配おかけしました。ありがとうございます、姉様」

「素直でよろしい」

 

 ニコッと笑顔の姉様は弟から見ても綺麗だと思います。

 

「見たところ特に怪我はないようね」

「はい、大丈夫です」

「それで何があったの?」

「えっと~~」

 

 どこまで話すべきか悩みますね。

 

 話が広がって現段階で色んな勢力に目を付けられるのは正直勘弁願いたいです。

 

 特にガリアには。

 

 神の頭脳ミョズニトニルンことシェフィールドさんとエンカウントなんかしたら生き残れる気が全くしません。

 

 所詮はドットメイジの子供でしかありませんからね。

 

 という事で、ここは誤魔化させてもらいましょう。

 

「私にもよく分かりませんが、多分水の精霊様にイタズラされたんじゃないでしょうか」

「(我はそんな事してないぞ)」

「(今は大人しく隠れていてくださいね)」

「(仕方ないの)」

 

 とっさに対応できましたけど、どうやらミツハさんとは声に出さなくてもテレパシーみたいにして会話が出来るようです。

 

 さすが精霊様、規格外ですね。

 

「へぇ~~、凄いじゃない。そういう話はたまに聞くけど、実際に見たのは初めてだわ」

「そうなんですか」

「えぇ、水の精霊は他の精霊と違って私たち人間に好意的でいてくれていて、その裏返しでたまにちょっかいをかけてくるって学院の本にも書いてあったわ」

「じゃあラッキーだったんですね」

 

 名前を呼び合う仲なのですから友達という事でいいのでしょうか。

 

 そうならば、ミツハさんと友達になれたのは正しくラッキーだと思います。

 

「そうね。じゃあ、私は戻るけどカミルはどうする」

「そうですね、もう少し釣りをしていこうと思います。夕食のおかずは任せてください」

「ふふ、楽しみにしてるわ」

 

 そう言って姉様はふわふわと岸に戻っていきました。

 

 フライの魔法って本当に便利ですよね。

 

「さて、釣りを再開しましょうか」

 

 今度はうっかり指を刺すなんて事はせずに餌を付け、釣り糸を垂らします。

 

「カミルよ。何をしておるのだ」

 

 湖面からニョロっと顔だけ出したミツハさん。

 

 なかなかシュールな絵図らですね。

 

「釣りですよ。魚を捕るんです」

「魚が欲しいのか」

「はい、夕食のおかずにしようと思いまして」

「ならば協力しよう」

「へ?」

 

 その瞬間、いきなり全方位から魚が小舟にダイブしてきましたっ!!!!

 

「ちょ、まっ、ストップ、ストップです。ミツハさん」

 

 慌てて静止の声を上げます。

 

「足りたか?」

 

 足りたも何も足の置き場もないほどの魚がビチビチしてますよ。

 

 と言うか、突撃されてぶつかった所が痛いです。

 

 痣にならないように後でヒーリングをかけなくては。

 

「あ、ありがとうございます、ミツハさん。でも少し多いですからリリースさせてもらいますね」

 

 人数を考えながら魚を湖に戻します。

 

 水の精霊様ってこんな事もできるんですね。

 

 釣り自体はもう一時間ほど楽しんだので、量が取れた事を喜びましょう。

 

「我は役に立つであろう?」

 

 いつの間にか全身モードになっていたミツハさんが、多分胸を張ってドヤ顔をしていらっしゃるご様子。

 

「そうですね、ミツハさんは凄いです。助かりました」

 

 と素直に褒めて、沈まない程度に頭に軽く手を乗せると嬉しいのか体が波打ちます。

 

 何か可愛いですね。

 

「そうだ、ミツハさん。私以外の人間がいる所では姿を隠していてくださいね」

「なぜじゃ」

「私の身に危険な火の粉が降りかかりまくります」

「我は護衛をすると約束した。指輪と一緒に守ってやるぞ」

「それは感謝感激雨あられですけど、私はミツハさんを友達だと思っているので、できれば友達にも危険な事はなるべくならさせたくないんですよ」

 

 私の言葉にまた体を波打たせるミツハさんですが、それが段々大きくなっていき、弾けましたっ!!!!

 

「なっ!?」

 

 しかし次の瞬間には何事もなかったようにまた湖面から現れ、

 

「カミルがそう言うなら仕方ないの」

 

 プルプルしながら納得してくれた様です。

 

 さっきのは喜びの絶頂の表現なのでしょうか?

 

 過激です。

 

 とりあえず全員分の魚もゲットできた事ですし、一旦岸に戻ろうと思います。

 

「あれ、カミル釣りはどうしたの」

 

 すぐに戻ってきた私を不思議に思ったのか、お菓子をパクついている姉様から疑問を投げかけられます。

 

「はい、なんか水の精霊様が魚をくれたみたいで」

「は?」

 

 まぁ普通そういうリアクションになりますよね。

 

 とりあえずそれは置いておくとして、お母様と姉様の後ろに控えている執事のローランに小舟指差し魚を頼みます。

 

「ローラン、僕たちとみんなの夕食に使ってもらえるかな」

「畏まりました。お心遣いありがとうございます。皆も喜ぶでしょう」

 

 最初、年上の人にこういう態度を取られる事にかなり抵抗があったのですが、時間をかけて何とか慣れました。

 

「それでは一旦失礼させていただきます。ポーラ、後は任せましたよ」

「はい、ローランさん」

 

 ローランは給仕をしていたメイドのポーラに一声かけ別荘に向かっていきます。

 

 ナイスミドルというか、絵に描いた様な執事で感心します。

 

 その後ろ姿を見送っていると、

 

「カミル、あなたも座りませんか」

 

 とお母様からお誘いがかかったのでテーブルに付きます。

 

「あなた、水の精霊様に気に入られでもしたの」

「は、はははは、そ、そうみたいですね。光栄な事です」

 

 いきなり直球きましたよ。

 

 ビビりました。

 

「お母様に聞いたけど、あなた系統は水だけなんだって? そのせいかもね」

「姉様は火以外3系統も使えて凄いですよね」

 

 土のラインに風と水がドットなんだそうです。

 

 このまま成長していけばお父様とお母様の良いとこ取りの様な形になる姉様。

 

 くっ、羨ましくなんてないんだからね。

 

 いえ、嘘です。

 

 凄く羨ましいです。

 

「あなたはまだ8才なんだからこれからよ」

「そうよ。私だって風と水がドットになるの大変だったんだからね」

「善処します」

 

 他の系統も魅力的ですが、でも今は得意なものを伸ばす方向で頑張っています。

 

 防御と回復に特化すれば生存率が上がりますし、そして危ない時は躊躇なく逃げます。

 

 プライド? なんですかそれ? 美味しいんですか? あぁ、あぁ、思い出しました。この前コンビニで売ってましたよ、それ。298円で。まぁ、買いませんでしたけどね。

 

 さておき、

 

「ところで姉様は帰ったらどうされるのですか? 研究ですか? それともパーティー巡りですか?」

「そうね、新商品のアピールを兼ねてパーティー巡りかしらね」

 

 口には出さないですが、当然旦那様探しも目的に入っている事でしょう。

 

 王宮にワインを卸してる関係で、変なやっかみを避けるためにウチの家は中央の権力に自分から近付かない方針をしています。

 

 なので結婚相手は自分で選んでいいらしいです。

 

「せっかく学院から帰って来たんですから少しはゆっくりしてくださいね」

 

 私はこの歳の離れた姉様が大好きなのですが、コチラの世界を自覚した時には既に全寮制の魔法学院に行ってしまっていて、長期休暇の時くらいしか会えませんでした。

 

 なので、卒業されてウチに返って来られて大変嬉しく思っています。

 

 ですが、それを表には出しません。

 

 なぜなら――――――――――

 

「なになに、もしかしてカミルはお姉ちゃんがいなくて寂しかったのかな~~?」

「内緒です」

「くぅ~~可愛いじゃないか、こいつめ」

「わっ!? や、やめてください、姉様」

 

 椅子の後ろに回り込まれて抱き締められてしまいました。

 

 その体勢だと姉様の適度に育って柔らかいものが私の後頭部に……。

 

「あ、当たってます。当たってますからっ」

「なにがかな~~このおマセさんめ」

 

 姉様は年の離れた弟がたいそう可愛いいらしいのです。

 

 その事は大変嬉しいのですが、羞恥プレイはやはり耐えられません。

 

「ほら、ポーラも見てますから。お母様も止めてください」

「ほほほ、いいじゃないですか、カミル。久しぶりなのですから甘えていなさい」

「良かったですね、カミル様」

「敵しかいないっ!?」

 

 その後も、姉様にいいようにオモチャにされ続けました。

 

 負けた気がしますが、嬉しかったので、まぁ良しです。




このご都合主義な展開は、プロローグでボカされた転生特典ゆえにです。
詳細はまだ内緒ですが、組んであるプロットでいくと12歳辺りで明かされる予定です。
水の精霊様ことミツハはこの作品のマスコット第1号的な扱いです。
もちろん1号がいれば2号もいますが、3号がいるかは不明。
登場をお待ちください。

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