SPECIALな冒険記   作:冴龍

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目指せ秘湯

「ぶっ飛ばせ」

 

 眼を鋭く細めたアキラが低い声で伝えると同時に、カイリューは大振りで対峙していたゴーリキーの顔面に”メガトンパンチ”を叩き込む。

 拳が顔にめり込む程の一撃を受けたゴーリキーは、瞬く間に意識だけでなく体さえも吹き飛び、そのまま深い森の奥へと消えて行った。

 これで最後に戦っていた相手はいなくなったが、それでもアキラはカイリュー以外に出ているポケモン達と共に周囲に気を配る。

 

「そんなに気を遣わなくても良いよアキラ」

「そういう訳にはいかないよ。今のレッドは半分病人みたいなものなんだから、大人しく俺達に任せて。――よし、何もなさそうだから進もうか」

 

 周囲の確認を終えたアキラがそう伝えると、レッドの後ろにまで下がっていたバンギラスとダグトリオが前に出る。

 事前に手持ちポケモンを経由して伝えていたことだが、今回アキラの手持ちのヨーギラスの親であるバンギラスと協力関係にあるダグトリオの二匹が、アキラ達のシロガネ山を進んでいく中での案内役を引き受けてくれている。

 二匹はシロガネ山の猛者達を相手に十分通用するだけの力はあるが、基本的には案内役なので襲って来る野生ポケモンはアキラ達が相手をしていた。

 

 本当は空を飛んでいきたいが、事前に調べた資料によると一定高度以上は有毒なのか良くわからないが変な空気の層と雲が存在しているので、まともな飛行が出来ないことは判明している。

 実際に訪れると低空飛行することは出来なくも無いが、あんまり長々と飛ぶと他のポケモン達から狙い撃ちにされる問題がある。

 結局、シロガネ山を移動するには山中を堂々と戦いながら進むしか無い。

 

 他にもシロガネ山に棲んでいるポケモンは屈強で手強いポケモンが山の様にいるとは聞いていたが、あまりにも血の気が荒い個体が多くて対処しているアキラは面倒さを感じていた。

 勿論、中には冷静なのもいる。だけど、そういう個体でも隙を見せたら、すぐさま仕留めるのを意識しているのがわかるくらい殺気立っているので気が抜けない。

 

「にしても、何でシロガネ山はこんなにポケモン達が血の気が多いんだ?」

「興味が惹かれるけど、()()()()のに時間が掛かりそうだから、そういうのを考えるのは後回しにしよう」

 

 他の手持ちと一緒に歩いているゲンガーとヤドキングにアキラは目を向ける。

 彼らの文字の理解が更に進めば、バンギラス達から理由を聞けるかもしれないが、まだ時間が掛かるのや一部のひらがなと単語レベルと完全では無い。

 それに今は悠長に足を止めている場合でも無いので、落ち着ける場所に辿り着けるまで時間が掛かる事は後回しだ。

 

「だけど、お前の手持ちみたいに頭が良いのも多いから仲間にしたら心強いだろうな」

「まあ、普通に即戦力と言えるくらい強くて賢そうなのは多いとは思う」

 

 レッドが周囲を見渡すと、森の中にある木々の影や茂みの中に隠れて様子を窺っていたポケモン達は息を潜め、その気配を隠そうとする。

 確かに彼の言う通り、シロガネ山に棲み付いているポケモン達は喧嘩っ早いが全体的に頭は良い方だ。

 山に足を踏み入れてからは、さっきみたいにアキラ達は何度も襲撃を受けて来たが、その全てを返り討ちにしたことで無暗に仕掛けずに視線を向けるだけで留まるのが増えて来た。

 

 この気性が荒いとはいえ、ただ挑んでもやられるだけと判断出来るだけの知能も備えているのがアキラとしては少し厄介だと感じていた。

 まだ手持ちのブーバーが野生だった頃に嫌なタイミングで襲撃してきたことを思い出せば、隙を見せたらすぐさま襲うと言っている様なものだ。

 

「でも、頭が良いなら今俺達を案内してくれているバンギラスやダグトリオみたいに協力し合えば良いのに、何でしないんだろ」

「言われてみれば、複数で襲ってくることはあっても全然連携してこないな」

 

 一匹ずつだけでなく複数の野生ポケモンが挑んでくるのは何回かあったが、どれも我先に獲物を倒そうと躍起になっており、連携もクソも無かった。

 今一緒にいるバンギラスとダグトリオが種が異なるにも関わらず協力し合っているのは、シロガネ山の生存競争に勝ち抜く為だとアキラは聞いている。

 なのでシロガネ山では連携して挑んでくる野生ポケモンが出て来ることを最も警戒していたのだが、その様子が全く見られなくて少し拍子抜けでもあった。

 

 そんな疑問を零したら、ヨーギラスと一緒に歩いていたバンギラスは声を発しながら手を使ってアキラに何かを伝えようとする。

 それを見たゲンガーとヤドキングが我先にと意味を簡単に訳そうとメモ帳を取り出そうと動くが、レッドの方が先に理解した。

 

「そういう奴はもっと上の方にいるんだって」

「――何でわかるの?」

「何となく?」

「いやわかるのに何で疑問形?」

 

 レッドも何故自分がバンギラスが伝えたい意図がわかったのか理解してない様子だったが、バンギラスが頷いているのを見ると彼の言う通りなのだろう。

 それなりに付き合いが長いのでアキラはわかるが、本当に彼を始めとした図鑑所有者は単にバトルや育成上手なだけでなく、ポケモンのそういう気持ちと意図を読み取る能力がずば抜けている。

 グリーンみたいな身内の場合はあれど、渡しているオーキド博士はポケモンとの良好な関係を築く以外にもそういう素質を見抜いていた上でポケモン図鑑を託しているのが窺える。

 

 だけどバンギラスが伝えていることが事実なら、増々この山は一体どんな環境になっているのか気になる。登れば登る程強いポケモン達がいるだけでなく、バンギラス達みたいに生き残る為に強いポケモン同士でチームを組んでいるというのだ。

 それは一体どんな感じなのか、何か参考に出来るものはあるのか。

 そんな個人的な好奇心と興味を抱きながら歩いていたら、アキラは鼻を頻りに動かし始めた。

 森の中にある草木や土の匂いに交じって、ちょっとした刺激臭を感じたのだ。

 それに気付いたのは彼だけでなく、案内をしていたバンギラスが腕を持ち上げてある一点を指差した。

 その先に彼らが目を向けると、空へ向かって流れる白い湯気みたいなのが見えた。

 

「どうやら目的地の秘湯は近いみたい」

「だな。皆、後一息だ」

 

 目的地が近いとわかったが、焦ることなく彼らは森の中を歩いて行く。まだ自分達の隙を窺っている様な視線をそこら中から感じるのだ。変な素振りを見せたら面倒なことになる可能性は十分に考えられる。

 周囲への警戒も忘れずに進んでいくと、そう時間も経たない内にアキラ達は森から拓けた場所に出たが、今度は少し見上げるくらいの土や岩が剥き出しの断崖絶壁が目の前に立ち塞がっていた。

 どうやら最後の関門であるここを登っていかないと、秘湯に辿り着けないらしい。

 カイリューとリザードンなら軽く飛べばすぐに乗り越えられる高さではあるが、レッドは準備運動をするかの様に腕を回し始めた。

 

「レッド…もしかして自力で登るつもり?」

「そうだけど?」

「――ちょっと待って。リュット、サンット、軽くで良いから崖を登ったり飛んでみて」

 

 周囲に気を配り、アキラはドラゴンポケモンとねずみポケモンにお願いをする。

 サンドパンはすぐに了承するが、カイリューは露骨に文句を言いたげな目線を彼に向ける。どうやら彼もわかっているみたいだが、実際に見せないとレッドは納得しないだろうから登る前に一仕事だ。

 

 先にサンドパンは爪を絶壁に突き立てながらよじ登っていき、それを見たカイリューも渋々と言った感じで翼を羽ばたかせて絶壁をスレスレ且つゆっくり慎重に飛んでいく。

 その時だった。

 森の中から二匹に対して、様々な方向からあらゆる攻撃が飛んで来たのだ。

 カイリューは振り返ると同時に全身を包み込む様に現れた光り輝く正多面体の壁――”しんぴのまもり”でそれらの攻撃を防ぎ、サンドパンは絶壁から離れる様に跳ね上がり、落ちる前にカイリューがその体を抱え込む。

 

「ほらねレッド。どうやら簡単に秘湯へは行かせてくれないみたい」

 

 アキラのその言葉を合図に、サンドパンと一緒に降りたカイリューと出ていたアキラのポケモン達は、さっきまで自分達がいた森の方へと構える。

 自分達がこの先へ進む資格を持っていることを、この山に棲んでいる野生のポケモン達に力で示す為にだ。

 それから暫くの間、派手な爆音や破壊音、雄叫びがシロガネ山の山中に響き渡るのだった。

 

 

 

 

 

「やっと着いた。ここがシロガネ山の秘湯か」

 

 目の前に広がる幾つかの大岩が囲んでいることで湯が満たされた天然の温泉を前にして、リザードンを含めた手持ちの何匹かを連れたレッドは一息つく。

 この場所に辿り着く直前、森の中に潜んでいた野生のポケモン達が一斉に襲い掛かり、彼とアキラは正面から相手をした。数は多かったが、連携などの警戒に値する行動もせずバラバラに挑んできたので、殆ど彼らの脅威にはならなかった。

 中でもアキラがちょっと手持ちの練習も兼ねて派手な大技や息を合わせることを意識させた規模の大きい合体技を駆使することで一網打尽にして、こちらが格上であると同時にその先に進む資格があることを見せ付けた。

 レッドに遅れてそのアキラも自身の手持ちと案内役のポケモンを引き連れて秘湯が見える場所に姿を現すが、その時点で既にレッドは早速履いていた靴を脱いで手足を秘湯に浸し始めていた。

 

「待てよ。手足だけじゃなくて全身に浸かった方がいいかも」

「あっ、ちょっと待ってレッド」

 

 アキラが止める間もなく、レッドはあっという間に下着を含めた服を全て捨てる様に脱ぎ捨ててしまい、そのまま彼は全身を秘湯に浸からせるのだった。

 

「はぁ~極楽極楽」

「極楽って、服を脱ぐならちゃんと近くに纏めておいてよ。服を盗まれたらどうする」

「お前は俺の親か」

「親じゃなくても言いたくなるから」

 

 のんびりとしているレッドに文句を言いながらも、アキラとサンドパンは脱ぎ捨てられた彼の服を下着も含めて回収して丁寧に纏めていく。

 すぐにレッドが脱ぎ捨てた服を彼は回収し終えるが、気が付けばレッドだけでなく手持ちのポケモン達も秘湯に浸かっていた。

 カイリューとヤドキング、ドーブル、バルキーは表情に変化は無いが湯船に浸らせた体から力は抜いており、エレブーは気の抜けた幸せそうな表情で大の字に体を広げてプカプカと浮かせ、ゲンガーに至ってはどこから持ち出したのかタオルらしいものを頭に乗せて満喫している始末だ。

 この秘湯に着くまでの戦いで軽いダメージや生傷を負うことはあったのだが、彼らの様子を見ると湯で傷口が沁みていることは無さそうだ。

 

 だが、中には秘湯に浸りたくても浸れないのもいた。

 レッドが連れて来たリザードンやブーバーなどのタイプ相性的に水が苦手なポケモン達だ。

 

 軽くなら浸れるかもしれないが、それでも全身となると水が苦手な彼らにとっては極楽とは真逆の地獄だ。

 ヨーギラスも出来ることなら入りたいのか興味津々ではあったが、指先を湯に触れさせただけで体を跳ね上がらせているので無理だろう。

 そんな彼らの姿にアキラは、水が苦手なポケモンはどうやってシロガネ山の秘湯の恩恵を得るのか気になるのだった。

 

 目的地に着いたからなのか皆気が抜けており、湯に浸かっている面々が羨ましいのか秘湯に興味を示していたリザードンの燃えている尻尾が意図せず温泉の湯気に触れた瞬間だった。

 突然、まるで爆発でもしたかの様に激しく炎が燃え上がったのだ。

 

「うわわわわ!!! 何だぁ!?」

「消火消火!! 山火事を起こしたら洒落にならない!!」

 

 大急ぎでアキラとレッドのポケモン達は、みずタイプの技を使って近くの木に燃え移った火を鎮火させようとする。

 レッドだけでなくエレブー、ゲンガーなどの水技が使えない面々も浸かっていた温泉の湯を浴びせて鎮火させようとするが、心無しか火の勢いは弱まるどころか微妙だが逆に強まっている様に見えなくも無かった。

 最終的には案内役を頼んでいたバンギラスやダグトリオが”すなあらし”や”すなかけ”で大量の砂を被せてくれたお陰でようやく火を消すことは出来たが、予想していなかったトラブルに遭遇したことでレッドとアキラは一気に疲労の色を露わにする。

 

「…何だったんだろ今の」

「さぁ…とにかく疲れた…」

「――何時も騒がしいわね。貴方達は」

「っ!? 誰だ!」

 

 何とか火が消えて落ち着いたタイミングで自分達以外の人の声が耳に入り、思わず二人とポケモン達は湯気に隠れた先を警戒する。

 シロガネ山は、その危険性故に基本的に立ち入り禁止だ。こんな奥地にいるとすれば実力が認められたトレーナー、または昔アキラが遭遇した密猟者などの法を破ったり悪事を企んでいるトレーナーのどちらかだ。

 過去の経験からアキラと彼の手持ちは後者の事態を想定し、何時でも仕掛けられる様に構える。

 

「そう身構えるな。さっきのトラブルを見れば理解出来ると思うけど、この秘湯は常に発火性の高いガスが充満している。下手に火花を散らせば今度はこの一帯が吹き飛ぶぞ」

「! お前ら構えるだけで攻撃はしない様に!」

 

 謎の声が伝えてくる警告にアキラは先程の出来事を思い出し、急いで攻撃禁止を伝える。

 彼の手持ちに限らず、多くのポケモンは攻撃する際にエネルギーを使う関係で火花を散らしたりする。

 さっきのリザードンの尻尾の炎であれだけ燃え上がったのだから、下手をすれば本当にこの秘湯事吹き飛んでしまう恐れもある。

 そして湯気が少しだけ晴れた先にいた人物の姿を目にした瞬間、レッドは声を上げた。

 

「ナツメ!? 何でお前がここに!」

 

 レッドが声を上げたのと同じタイミングで、アキラも含めた多くの面々も声の主が何者なのかをハッキリ目にして警戒を強める。

 かつてジムリーダーでありながらロケット団の幹部を務め、レッド達と激戦を繰り広げたナツメがシロガネ山の秘湯に身を浸していたのだ。

 何故彼女がこの場にいるのかわからなかったが、ミュウツーとの総力戦を終えたばかりの満身創痍だった頃に突然襲撃された嫌な記憶がアキラにはあるので、最大限に警戒する。

 そして、そんな彼よりもロケット団に対して嫌な記憶どころでは済まないカイリューは、敵意を体中から滲ませて今にも殴り掛かりそうな程に体に力を入れていた。

 一触即発とも言える状況ではあったが、それでもナツメの態度は余裕そのものだった。

 

「折角久し振りに会えたのに、貴様の連れは随分と血の気が多いな」

「…何を企んでいる」

「何も、お前と同じ理由さ」

 

 レッドの問い掛けにナツメは左手首を見せ付けながら答える。

 それを見て、二人は彼女もまたレッドの未だに治らない手足の痺れの原因である四天王のカンナから同じ攻撃を受けて療養中であることを悟る。

 ところがアキラのカイリューは、引き下がるどころか好機と捉えたのか、本格的に先制攻撃を仕掛けるべく構える。

 

 過去に酷い目に遭わされた経験故に、ドラゴンポケモンはロケット団などの悪の組織をかなり毛嫌いしている。

 この前のタイプが変化した巨大ピジョットとの戦いで壊れてしまったロケットランチャーの修理を依頼する為にカツラの元へアキラが赴いた際も、まだカイリュー自身が治療中などの理由はあれど、直接会わせない様に気を付けている程だ。

 四天王との戦いの際は、力不足故に自分達に有益な”戦力”としての利を重視して仕方なく憤る感情を抑えたが、今はそんな必要も利は無い。それに過去に加担した犯罪に関しても、自分達が知っていても世間的には証拠不十分で不処分の扱いだったりと不満が溜まっていたのだから尚更だ。

 

「相変わらずの敵意だな。折角私がお前達に()()を始めとした有益なものを授けてやろうと思っていたのに」

「俺達に有益?」

「そうだ。例えばレッド、お前の手首の治療を更に早める方法に、今年も起こるであろう出来事――戦いや事件に関することと言えばわかるだろ?」

 

 思いもよらない内容を告げられ、レッドとアキラの表情はまるで衝撃を受けたかの様に目に見えて変わる。

 アキラとしては、更に治癒効果が望める秘湯があることと近々起こるであろう出来事に関しては知っている。しかし、どちらも流石に時間が経ち過ぎて詳細は憶えていないのが実情だ。

 何か切っ掛けがあれば思い出せるかもしれないし、思い出せなくても他の記憶と擦り合わせて推測することも出来る。

 そしてナツメが話している内容は、どちらの条件も満たしている可能性は高い。もしかしたら自分の知らなかったり忘れている出来事についても知ることが出来るかもしれない。

 

「――その有益な情報の具体的内容は?」

「そうだな。この先により治癒効果が強い源泉があること、そして…今年もお前達が関わるであろうジョウト地方各地で起こる事件についてだ」

「……リュット、悪いけど今回も下がって」

 

 少し迷った後、アキラはカイリューに静かに伝える。

 ドラゴンポケモンは不服そうな目付きで彼を睨むが、アキラもまた有無を言わせない圧を込めた目線で返す。

 やがてカイリューは苛立ちを隠す気も無い息を荒々しく吐くと、忌々しそうな目付きのまま秘湯から出るとナツメから姿が見えない岩陰に移動するのだった。

 

 どれくらい時間が掛かるかわからないレッドの治療がより早く進む機会を得られることもあるが、今回も起こるであろう戦いに関する内容も重要度は高い。

 知っていて尚且つ十分な力が有れば、大事になる前に先手を打つことが出来る。それはアキラだけでなく、カイリューを始めとした彼のポケモン達も良く理解していた。

 上手い具合に誤魔化された感はあるが、有益な情報抜きでもここで揉め事を起こしても得らしい得は無い。

 

 だけど、アキラとしてはカイリューの気持ちは()()()()()の様に理解してもいたので、今回も抑えてくれたことには嬉しく思うと同時に少々歯痒い複雑な気持ちだった。

 幾ら憎悪や荒っぽい一面が少し和らいだとはいえ、本当はロケット団関係者は気が済むまで徹底的に叩きのめしたい筈だ。

 今思えば何回、今回の様に自分が止めたのや周りの状況を無視して感情のままに叩きのめせる機会を堪えてくれたことか。それらを考えると本当に良く抑えてくれている。

 ちょっとした足掻きとして、下がってくれたドラゴンポケモンと同じ様に忌々しい視線をナツメに向けたアキラだが、ここである大事なことに気付いて真顔になった。

 

「あっ」

「? どうしたアキラ?」

 

 突然声を発したと思いきや何故か岩陰に体を隠すアキラの姿にレッドは首を傾げる。

 だが、すぐに彼はその理由を知ることとなった。

 

「レッド、今お前ナツメと一緒に湯に浸かっているぞ」

「…え?」

 

 アキラの指摘にレッドはナツメがいる方に改めて向き直る。

 最初は彼女がここにいるという衝撃と漂う湯気で気付いていなかったが、良く見たらナツメも手首だけでなくレッド同様に全身が湯に浸かっている。

 そして徐々に湯気も晴れることで、ナツメの姿がハッキリと見えて来て――

 

「わわわわわわわわわ!!!」

 

 全てを悟り、顔を赤めたレッドは慌てて秘湯から飛び出すのだった。




アキラとレッド、一日足らずで無事に秘湯に辿り着くもナツメとあまり嬉しく無い再会をする。

シロガネ山の環境がどうなっているかは、秘湯が存在していることや戦いに飢えている個体が多いこと、一部のポケモンが他種のポケモンと協力し合っているなど以外では詳しくは描かれていないので、色々独自設定を組み込んでいます。
今回もロケット団関係者と戦う事を止められたカイリューですが、今章は原作的にロケット団がジョウト各地でやらかしていますので……
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