ポケモンリーグの開催時刻が迫っていた頃、チョウジタウンに近い空の上をカイリューとリザードンにそれぞれ乗ったアキラとレッドの二人は、警察が集結しつつある場所へと向かっていた。
人目を避ける為に建物から出てすぐに町から少し離れた場所へ軽く”テレポート”で移動はしたが、流石に警察との合流予定地まで直接”テレポート”するのは手持ちが疲れてしまうことを考慮して、こうして彼らは負担の少ない手段で移動していた。
「アキラ、合流地点はこのまま真っ直ぐ飛んだ先で良いんだよな?」
「その筈、今回の戦いの為に結構多くの人員を動員しているって聞いているから、近付けばある程度わかるとは思うよ」
集結している警察との合流予定地である山の麓は、近くにある”こおりのぬけみち”の影響で一年中気温が低くて季節外れの雪が積もる時もある環境だ。
そして事前情報では、当日の天気は曇りで付近は雪に覆われていることも聞いている。
当初アキラとしては雪が積もった山の中で戦うのは、中々面倒なことになりそうな予感がしてしょうがなかったが、さっき宿舎でレッドに言われた通り、やるからには全力を尽くすだけと気持ちを切り替えていた。
警察は多くの人員を動員することでロケット団との一大決戦に備えているが、ポケモン協会の方も加勢するアキラ達の為に様々なアイテムを提供するなど出来る限りの要望に応えてくれた。
その為、手持ち達の何匹かは何かしらのアイテムを持ち物として所持しており、少しでも自らの強化を図っている。
そして士気などの気持ちの面も、レッドのお陰で大分肩から力が抜けたことで、戦いに備えた準備としては過去最高であった。
「現場に着いたら警察の人達に合流するんだろうけど、アキラはどうする?」
「俺は警察の人達に先陣を切らせて貰う様にお願いするつもりだよ。色々考えたけど、よっぽどの相手でも無い限り、力任せに突撃した方が良い」
手持ち以外の被害は度外視してでも全力でロケット団を叩き潰すことにはしたが、それでも可能な限り周囲への影響は最小限にしたい。
そうして考えたアキラが思い付いたのは、自分と手持ち達が先陣を切って突撃し、目の前に立ち塞がるロケット団を勢いのままに片っ端から薙ぎ倒していくというものだ。
相手が数の暴力で押してくることは”スズの塔”で既に経験済みなので、戦力があれと同じか少し上だと考えれば、容易に倒すことが出来る。
手加減や後を考えての温存はしない。今日一日で全てが終わる筈なのだから、持てる力は全て出し尽くすつもりだ。
「成程、それは良いやり方だな」
「多分、敵の数が多かったりして加減するのは難しいかもしれないから、不用意に俺達に近付かない方が良いかもしれない」
「大丈夫大丈夫、そうした方がアキラが全力を出せるなら、俺達は出来る限りサポートをするさ」
「ありがとう。それと、さっきレッドと話してから考えたことだけど、決めたよ」
そこで言葉を区切り、アキラは真っ直ぐ前を見据えながら少し間を開けて次の言葉を紡いだ。
「ロケット団の奴らが――もう二度と悪いことを考えたり企まず、真っ当に生きようって気になるくらい暴れるつもりだ」
「おっ、何時になく強気で頼もしい言葉だな」
「何時になくって…」
真剣な表情で口にするアキラと彼の言葉に同意する様に息を荒くして応えるカイリューの姿に、レッドは横から見ながらちょっとだけ感心する。
彼は目標の為ならあらゆる努力を厭わないので、周りからは相応の評価をされているがそれを彼はあまり自覚していない――と言うより過大評価と受け止めている節がある。
傲慢とまでいかなくても、我の強い彼の手持ち達みたいに「俺達が一番強い」と言わんばかりな強気で感情的な姿勢をもっと前面に打ち出しても良いくらいだ。
そこまで考えた時、レッドはあることを思い付いた。
「そうだ。この戦いが終わったら久し振りに俺と…いやゴールドとか色んな奴とバトルしようぜ」
「……え? バトル?」
「そう、勝っても負けてもどっちでも構わない全力の勝負をな」
シロガネ山から下山してから、ジョウト地方でアキラが何をやって来たのかをレッドは本人以外の色んな人からも聞いていた。
修行の合間を縫って――と言うより何かしらの兆候を察知するや手持ちと共に現場に向かい、そこで悪事を働くロケット団を見つけては片っ端から打ち負かして警察に突き出している。
彼のポケモン達はカイリューを筆頭にロケット団への敵対心がとても強く、何匹かは元々の我の強さも相俟って自分から探しに行く可能性すらある程だ。
アキラはそんな手持ち達の手綱をしっかり握って暴走するのを止めるのと同時に、彼自身もロケット団が許せないからこそ積極的に自分から戦いを挑んでいる。
昔よりも強くなれたからこそ可能なことではあるが、それでも彼らの戦いは基本的に”決して負けは許されない”ものだ。
負けず嫌いな手持ちが多いことも関係しているが、その意識もあるからこそアキラは手持ち含めて規格外の力を発揮するまでになっているが、幾ら実力差があったとしても失敗や負けが許されないというのは精神的な負担はかなり大きい。
本来ならポケモンバトルは、そんな生死を賭けた様なものではない。
フェアに正々堂々と磨き上げた力で戦い、勝っても負けても互いに楽しく、そして互いの健闘を称え合うものだ。
今のアキラは自分や手持ちが望んでいるからと言ってはいるが、短期間で色々あり過ぎて荒んでいるまではいかなくてもちょっと気負い気味なのを、さっきまで交わしていた会話からレッドは何となく感じた。
どこかで肩の力を抜かせるなどリフレッシュさせた方が良い。
「…俺も久し振りにレッドと戦いたいけど、多分この戦いを終えて少し休んでからにはなると思うよ」
「別にすぐじゃなくても良いよ。何ならシロガネ山の秘湯にのんびり浸かって休むとかも良いと思うぞ。あそこは疲れを癒すにはもってこいだ」
「シロガネ山の秘湯か…入ってみたいなぁ」
シロガネ山へ行ったものの結局は入ることは無かったどんな傷も癒せるという秘湯。
一体どんなものなのかアキラは想像を膨らませるが、徐々に空気が冷えたり積もった雪が見えるなど目的地に近付いて来たこともあったので、改めて頭と気持ちを戦いへ意識する様に切り替える。
「…合流地点はもうすぐだけど、情報漏洩を防ぐ為に援軍を送る程度しか伝えていないんだっけ?」
「そうだと俺は聞いている。まあ手早く自己紹介や事情を伝えれば警察の人達も察してくれるとは思うけど――」
この後の動きについて、二人で確認を始めた直後だった。
遠く離れた場所から何かが爆発する様な大きな音が聞こえ、連鎖する様に黒煙らしきものが幾つも昇るのが見えた。
何が起きたのか二人は考えるまでも無かった。
先手を打ったのか、ロケット団は籠城せずに攻勢に出たらしい。
この作戦に関しては、警察官であるキキョウジム・ジムリーダーのハヤトも含めたジムリーダーには伝えられていないということだが、タイミングが良いのか情報が筒抜けなのか。
持っていたアタッシュケースの様な形状の箱型に三桁の番号をダイヤルで入力してロックを解除するや、アキラは瞬く間にそれを見覚えのあるライフル状のロケットランチャーへと組み上げる。
悠長にやっている場合では無い。戦いが始まったのなら、悪化する前に手を打とう。
「いこうアキラ!」
「あぁ、さっさと終わらせてポケモンリーグに向かおう!」
二人の声を合図に、彼らがそれぞれ乗るカイリューとリザードンも速度を速めて、現場へと急行する。
アキラとレッドが急ぎ始めた頃、彼らの目的地にして合流地点である現場はパニックに陥っていた。
至る所で警察のポケモンとロケット団が連れるポケモン達が激しい戦いを繰り広げていたが、状況的に警察側の方が押されていた。
チョウジタウンの外れに集結するロケット団との戦いに備えて、動員出来るだけの警察がジョウト地方各地から今回は集められていた。
対するロケット団は、本拠地と思われる山奥にある建物や周辺の森の中で土嚢を積み上げたり、塹壕を掘った簡易陣地みたいなのを複数作るなど、明らかに籠城する構えを見せていた。
その為、現場では本格的な作戦開始はポケモン協会からの依頼を受けたトレーナーとの合流次第にするつもりであったが、その前に何の前触れも無くロケット団は仕掛けて来たのだ。
当然警察達も抵抗するが、あれだけ籠城する様な備えをしていたのに守るのでは無くて攻めて来るのは予想外だった為、次から次へと攻めて来るロケット団相手に混戦状態だった。
「っ! 誰か手を貸してくれ!」
「ダメだ! 自分の事で手一杯だ!」
「数が多過ぎる!」
このままでは数で押し切られる恐れが現実味を帯びて来た時、上空から轟音と共に荒々しい光が地面を薙ぎ払う様に飛んで来て、爆発によって森から出て来るロケット団の後続を断ち切った。
突然の出来事に周囲の動きが少しだけ止まるが、その僅かな間にドラゴンの姿をしたポケモンは勢いのままにロケット団が密集する付近に着地、爆音と強烈な衝撃で土を舞い上げながら範囲内のあらゆる存在を吹き飛ばした。
誰も予期していなかった事態に、敵味方問わず全く付いていくことは出来なかった。
それどころか、舞い上がった土煙や至る所で燃えていることによる黒煙の影響もあって、誰も状況を正確に把握出来ていなかった。
だが比較的被害は少なかった警察達は、少しだけ晴れ始めた視界の先で目を疑う様な光景を目の当たりにした。
払う様に振るった豪腕でいとも簡単にスリーパーを薙ぎ倒し、怖気付いたリングマの顔面にめり込む勢いで拳を叩き込む、ドラゴンらしきポケモン。
炎を溢れさせながら手にした骨の棍棒らしき得物で、無慈悲にロケット団のポケモン達を殴り飛ばす、燃える炎が擬人化した様なポケモン。
瞬く間に数匹のロケット団のポケモンを鋭い爪で切り裂いていく、背から無数の突起を生やした小柄なポケモン。
その手に形成したエネルギーの球体を、集団目掛けて放り込んで多くのポケモンを纏めて巻き込む、影そのものを彷彿させるポケモン。
様々な攻撃を受けても物ともせず、稲妻を迸らせながら交差させた手刀らしき技で立ち塞がったゴローンを打ち砕く、雷の様な屈強な体格をした人型のポケモン。
目の前に立つラッタに張り手を打ち込むと同時に水流混ざりの衝撃波を放つことで、直線上にいる存在を吹き飛ばす、巻貝を被った頭部をしたポケモン。
吠えながらアーボックと思われるポケモンを円を描く様に力任せに振り回して周囲を一掃していく、怪獣みたいなポケモン。
目にも止まらない速さで体を回転させながら繰り出す足技で、次々とロケット団のポケモンを打ち上げていく様に蹴り飛ばしていく、傘の様な頭をしたポケモン。
高々とかざした小さな棒らしきものから無数の雷や光線を一挙に放つことで、他が倒し切れなかったのや弱っている敵を確実に仕留めていく、最も小柄なポケモン。
不意を突かれたこともあったが、さっきまで警察を圧倒していたロケット団が、たった九匹のポケモン達に成す術も無くやられていたのだ。
しかも彼らの攻撃は人を直接狙ってこそはいないが、余波などで巻き込んでも全く気にしないという一片の容赦も無い苛烈さで、ロケット団の方が哀れに見える程に一方的だった。
そして突如として現れた彼らは、あっという間に周囲のロケット団を粗方蹴散らすと、その勢いのまま荒々しく吠えたり雄叫びを上げながら雪が積もる森の中へと走っていく。
あまりにも衝撃的過ぎる急展開に、警察や辛うじて被害を免れた一部のロケット団は目の前の敵との戦いを止めはしなかったが、何が起こったのかわからなかった。
理解しようにも時間が掛かりそうな時、森の中へと攻め込んで行った九匹のポケモン達と代わる様に、少し遅れて一人の少年が空から駆け付けた。
「行くんだ皆!!」
彼が繰り出したポケモン達は先に現れてロケット団を蹂躙した面々とは異なり、まだ残っていたロケット団のポケモン達を警察に加勢する形で倒しつつ、団員も含めてその動きを適切に取り押さえていく。
そのお陰もあったのか、辺りはまだ慌ただしくはあったものの少しずつ落ち着いた状況へと向かっていき、駆け付けた少年は尻餅を付いている警察の一人に駆け寄る。
「大丈夫ですか?」
「き、君は…」
「ポケモン協会から頼まれて加勢に来たポケモントレーナーのレッドです。ロケット団のポケモンは俺達が倒しますので、その後の団員の拘束などをお願いします」
警察がロケット団などの犯罪組織に対して、ポケモンバトルやポケモンの扱いで後れを取っているのは事実だ。
だけどそれ以外の分野であれば、警察の方が勝っている。レッド達がロケット団が連れているポケモンを蹴散らせば、警察は本来の力を十分に発揮することが出来るし、それから先は彼らの仕事だ。
「…早く追い掛けないとな」
レッドが視線を向けた先にある森から、大きな爆発と爆音が何回も轟き、上がる黒煙の数も増えつつあった。
それだけで先に突撃した彼らが、ロケット団の軍勢を相手に大暴れしているのが手に取る様にわかった。
「あ…あの…」
「どうしました?」
「さっきロケット団と戦っていたポケモン達は…味方…なのか?」
「味方ですよ。すっげぇ頼りになる心強い味方です」
警察官は明らかに困惑していたが、レッドは彼らが味方であるのを力強く断言する。
土埃や黒煙の影響で良く見えなかったが、レッドも空の上から遠目で彼らの戦いは少しだけ見ていた。
直接トレーナーを狙っていた訳では無いが、ロケット団を次々と血祭りに上げていく荒々しさを初対面の人達が見たら、どっちが敵なのかわからないという印象を受けるのも仕方ないだろう。
だけど、それが彼らが持てる力を最大限に発揮しつつ、可能な限り消耗を減らして最短でこの場での戦いを終わらせる方法なのだ。
思っていたよりも早く、ここでの戦いは終わるかもしれないとレッドは感じていた。
多種多様な攻撃が飛び交い、大小様々な爆発が森の中に積もった雪や土を巻き上げていたが、その中を怯まず駆け抜ける集団がいた。
左右の腕に盾と砲をそれぞれ手にしたアキラが、両目にゴーグルの様なものを身に付けたサンドパンを伴う形で走り、その後を他の彼の手持ち達がバラバラではあるがロケット団と戦いながら続いて行く。
森の中に陣取っていたロケット団も、攻め込むアキラ達の進撃を止めようと正面のみならず、あらゆる方角から攻撃を仕掛けていく。
それらの攻撃はアキラのすぐ近くの地面に当たって爆発したり、時には彼の顔を掠ったりする程の猛攻であったが、彼らの足が止まることは無かった。
アキラと共に走るサンドパンは、”めざめるパワー”を始めとした飛び技を駆使して迫るロケット団のポケモン――特に上から自分達に近付いて来る鳥ポケモンをガンマンの様に正確に撃ち落としていく。
それでも対応し切れなかった鳥ポケモンの一部がアキラに襲い掛かろうとするが、彼は走りながら盾の向きを変える可変機能を巧みに活かして嘴や鉤爪の攻撃を防いでいく。
そうして時間を稼いでいる間に、飛行していたドーブルが”へんしん”するヨルノズクがそれらを排除する。
これで一旦身に迫る脅威は遠ざけた――と思った直後にはゴーリキーが横から拳を振り上げながらアキラ目掛けて跳び掛かって来たが、割り込む形で飛び込んだブーバーが”ふといホネ”を力任せに振り下ろして、地面に叩き付ける。
かいりきポケモンを脳天から叩きのめしたブーバーはそれだけに留まらず、一足先に土嚢を積み上げて作った陣地に立て籠もっているロケット団の集団へと大ジャンプで飛び込み、修行で身に付けた格闘術でロケット団のポケモン達を次々と蹴散らしていく。
周囲360度全てが敵なのも相俟ってブーバーは思う存分暴れまくり、挑むロケット団のポケモン達は倒されていくだけでなく、団員達も気絶したり殴り飛ばされたポケモン達に巻き込まれる。
ひふきポケモンを止めようとグランブルが背後から不意打ちを仕掛けようとするも、撃ち出す様な爆音と共に凄まじい速さで飛び込んだカポエラーのドロップキックを食らった挙句加勢されるなど、まるで打つ手は無かった。
陣地内にいる敵を一通り片付け終えた師弟は、辛うじて攻撃に巻き込まれずに済んだ数名の団員には目もくれず、すぐさま他の障害になりそうな敵の集団へと突撃していく。
戦意を失った団員達はただ茫然と走っていく二匹を見送るしか無かったが、遅れて走って来たアキラ達の姿を見るや逃げる様に急いでその場から離れる。
そうして戦いながら走っていた時、突如としてアキラの足元の地面が盛り上がり、彼の体を宙へ打ち上げられる。
地面からアキラを打ち上げたダグトリオは、すぐにゲンガーにモグラ叩きみたいに一撃で伸されるも、自由の利かない空中を舞うアキラをロケット団達が狙う。
が、そんな彼をヨルノズク同様に木々を搔い潜る様に低空飛行していたカイリューが狙い撃ちにされる前に片手で抱える形で確保することで事なきを得る。
彼らを狙った様々な攻撃が襲うが、強靭な肉体を有するドラゴンポケモンは鬱陶しそうに表情を歪めるだけだった。
それからカイリューは、小回りの利かない巨体でありながらもアキラを抱えながら巧みに木々の合間を蛇行して飛び、低空飛行なのも利用してすれ違い際に体や尾をぶつけて通り魔みたいにロケット団のポケモンを団員も巻き込む形で次々と倒していく。
そんなドラゴンポケモンを止めようとヘラクロスとカイロスが挑むが、カイリューは抱えていたアキラを後ろへ放り投げると、二匹のツノやハサミをそれぞれ鷲掴みにして飛行したまま雪の積もった地面に押し付けて引き摺り回していく。
雑に放り投げられたアキラの方は、腕に付けた盾を利用して受け身を取ったことでほぼ無傷で着地していたが、足元が積もった雪なのもあって立ち上がるのには少し手間取ってはいた。
そんなまだ動きが鈍いアキラ目掛けて、今度は地面からイワークが姿を現し、その巨体で彼を押し潰さんとばかりに迫る。
ところがいわへびポケモンの突進は、回り込んだヨルノズクとアキラの背後から姿を見せたヤドキングが放った”サイコキネシス”の衝撃波でその勢いを相殺される。
巨体が意図せず反発した影響で動きが硬直した刹那、アキラを追い越したバンギラスの”ばくれつパンチ”が炸裂。強烈な爆発と共に体の一部を砕かれたイワークは一撃で吹き飛ぶ。
イワークがやられても入れ替わる様に何匹かのロケット団のポケモンがアキラを強襲しようとするも、今度は何時の間にか”がまん”が解放されたエレブーが、その豪腕をデタラメに振るいながら暴れてそれらを次々と薙ぎ倒していく。
圧倒的な力を背景にした止まる気配の無い破壊の進撃。
挑む者、邪魔する者、立ち塞がる者は皆例外無く、彼らは容赦なく打ち負かしていく。
まるで突き進む矛先の様に、彼らは立ち塞がるロケット団の集団と防御用に構築された陣地を次々と突破していくが、対するロケット団の方も多少の怯みこそはしても数の差を活かして更に仕掛けていく。
流石に攻撃が激しくなってきたことを感じたのか、少し先行していたカイリューやブーバーらも遅れていた手持ち達と合流する様にアキラの周りに集まっていき、歩調を合わせて対抗することでその勢いを保つ。
そうして手持ち九匹とそれを率いるアキラが、ある程度固まったタイミングだった。
何匹ものビリリダマやマルマイン、イシツブテにゴローン、クヌギダマが彼らの元へ投げ込まれたり、自らその身を投げ出して一斉に身に秘めたエネルギーを解放した。
”じばく”と”だいばくはつ”
先程から森の至るところで起こっているのを遥かに凌ぐ規模の爆発が連鎖的に起こり、アキラ達を呑み込む。
その威力と規模は、まともに受ければポケモンなら瀕死、人なら無事では済まない程であった。
正しく”ルール無用”の一手ではあったが、そこまでしなければ最早アキラ達を止めることは出来ないとロケット団は判断したのだ。
しかし次の瞬間、団員達は信じられないものを目にすることになった。
爆発によって立ち込める黒煙と舞い上がった土の中から、ほぼ無傷のアキラとその手持ち達が、各々構えた体勢で飛び出したのだ。
どうやったのかは知らないが、あれだけやっても倒すどころか、目立った手傷さえも負わなかったのだ。
信じ難いと言う感情と共に、捨て身の攻撃も通じない集団を相手にどうすれば良いのかという戸惑いと困惑が瞬く間に伝搬していく。
そして今のアキラ達は、ロケット団が見せた隙を見逃さなかった。
各々が飛び出した勢いのままに目の前を遮る邪魔者を踏み倒していくと、カイリューを始めとした何匹かは一気に加速したり足を早めたりして再び先行する。
こうして攻め込まれることを想定していたのか、土嚢を積み上げたり溝を掘ったりして作った陣地らしきものはまだ幾つもあったが、地面スレスレで低空飛行をしていたカイリューは”はかいこうせん”でそれらを狙い撃つ。
突き抜けていく光線によって、射線上にあったそれらの陣地は爆発を起こして土や雪を舞い上げながら吹き飛ぶ。
そしてカイリューは”はかいこうせん”の破壊痕に沿って一気に加速、高度を上げることで森から飛び出し、山の火口みたいな場所に建てられている建物へと突撃する。
このタイミングに仲間達と足並みを揃えずに突っ込んだのは、ここまでの戦いで相手の力量がどれくらいなのかをドラゴンポケモンは肌で感じ取っていたからだ。
迫る自身を撃ち落とそうと様々なタイプの技が飛んでくるが、真っ直ぐ飛びながらも回避していく。避け切れなくて当たったとしても、強靭な体は全く物ともしない。
事前に確認した情報では、目指す先にある建物がロケット団が拠点にしているとカイリューは記憶していた。
倒しても倒しても懲りること無く害虫の様に湧いて出て来る憎き存在。
この場にやって来る前にアキラが言っていた様に、もう二度と悪事を働こうという発想が出来ない、或いはその道を選んだことを心底後悔させる為にも叩きのめす。
そう意気込んで今正に建物に飛び込もうとした瞬間、まるで頑丈なガラスにぶつかる様な重々しい音を立ててカイリューは弾かれた。
アキラ、手持ちを総動員した総力戦で立ち塞がるロケット団を片っ端から倒していく。
大激戦で且つ急いでいる状況なのと決意を固めたばかりなのもあって、アキラも彼の手持ち達も一線は越えないけど普段よりも容赦無いです。
彼らに攻め込まれたロケット団は、ハリウッド映画で良く見る軍隊が強大な敵に蹂躙される様な立場なので、多分どこかでロケット団の誰かが「ウィルヘルムの叫び」を上げていそう。
次回、攻めるアキラ達と守るロケット団との激戦が増します。