SPECIALな冒険記   作:冴龍

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続きを待っている読者の方がいましたら、本当に長らくお待たせしてすみません。
まだ本章終盤の調整やその他の確認が残っているので、もしかしたら途中で一旦止まるかもしれませんが、更新頻度から考えて問題は無いと判断して本日から更新を再開します。

長いこと更新が止まっていましたが、その間でも感想や評価を送ってくれる読者の方がいて本当に嬉しかったです。

本章、原作での第三章の終わりまで更新をしていきます。
今回の更新でも読んでくれる読者の方々が楽しんで頂けたらなによりです。


苛烈な攻撃

 ルギアとホウオウ。

 ジョウト地方を代表する伝説のポケモンーーそれが二匹も相手であるにも関わらず、全く臆さないどころか意気揚々と突撃し始めたアキラと彼のポケモン達の姿に、カーツは怒りで目に力を入れながら見開いていた。

 伝説のポケモンを手に入れてその力を思う存分振るっていたが、最も嫌っているトレーナーに野生の時の方が強いと言われたのだ。

 それはつまり、自分達がトレーナーとして伝説のポケモンを扱える力量では無いと告げられたようなものだ。

 

 アキラが”強い”ということは認める。

 だけど強さの大部分を占めているのは、手持ちにしているポケモン達が揃って強力なだけ。

 トレーナーがいてもいなくても戦い方が変わらないのならトレーナーなど不要だ。

 そんなポケモントレーナーの基本すらなっていない存在に苦言を呈されるなど、屈辱以外の何物でも無かった。

 

 見たことが無い手段で各々が武器と呼べる物を作り出して手にしているのには確かに驚いたが、何時の時代だと言いたくなるまでに考え無しに突撃してくる姿には舐められているとすら感じた。

 当然彼らの動きに対してルギアとホウオウが反撃に動くが、走りながらサンドパンは両手の爪に纏った黄緑色に輝く大きな鉤爪を持ち上げて威力が増した”めざめるパワー”を、エレブーは手を長く伸ばして”10まんボルト”を放った。

 

「何度も同じのを受けるか!」

 

 飛来する光弾と電撃をルギアとホウオウは片翼を盾代わりにして防ぐ。

 さっきみたいに顔を集中攻撃されなかったので、今度こそ”エアロブラスト”や”せいなるほのお”などの伝説のポケモンが誇る特大の一撃を放とうとする。

 

 が、その前に一緒に走っていたアキラは隣にいたカイリューを突然モンスターボールに戻した。

 何を考えているのかとカーツは訝しむが、アキラはカイリューが入ったボールを片手に持っていたライフルみたいな形状をしたロケットランチャーに装填。

 走りながらカーツが肩に乗るルギアに狙いを定めたのだ。

 

「なっ!?」

 

 まさかと思った直後、一瞬だけ足を止めると同時にスコープ越しに狙いを定めたアキラが肩と両手で支えながら引き金を引く。

 直後に爆音と共にカイリューが撃ち出され、ドラゴンポケモンは盾にしていた翼を退かして今にも”エアロブラスト”を放とうとするルギアにあっという間に肉薄、加速した勢いを乗せた”かみなりパンチ”でその顔を殴り飛ばす。

 

 叩き込まれた拳の威力は、”エアロブラスト”を狙った方向へ放つ為に長い首を固定していたルギアの顔を意図しない向きへ無理矢理曲げる程で、”エアロブラスト”の空気弾は誰もいないフィールドへと飛ぶ。

 そして無防備な姿を晒すルギアにサンドパンとゲンガーは飛び掛かり、手にした紫色に輝く刀や黄緑色の大きな鉤爪でルギアの体を支える足を切り付けていく。

 

 カーツが従えるルギアの攻撃が阻止されたのを見て、シャムはホウオウ目掛けて突撃するアキラのポケモン達に対する警戒を強める。

 エレブーの電撃以外に他にも追撃が来るのでは無いかと思っていたが、来る様子は無かったので満を持してホウオウは”せいなるほのお”を放つ。

 相手を焼き尽くす神秘的な炎が突撃する彼らに迫るが、エレブーとバンギラスの二匹が他よりも前へ突出する。

 一歩前に出る形で足を止めた彼らは、互いに両手を前に伸ばして自分達の正面に”まもる”による輝くエネルギーの壁を広く展開することで”せいなるほのお”を受け止める。

 正面から”せいなるほのお”の業火を防ぐことで他の仲間達に被害が及ばないようにしている間にブーバーとカポエラー、桃色に光る軸が捻じれた巨大なスプーンを手にしたミルタンクはそれぞれ左右に分かれる。

 

「一掃すること叶わなかったけど、伝説のポケモンの力は甘くないわ」

 

 彼らの動きを見た上でこの後受けるであろうブーバー達の攻撃は甘んじて受けるが、他は確実に仕留めていくことにシャムは考えを切り替えていた。

 

 最初は”せいなるほのお”を防いでいたエレブーとバンギラスの”まもる”だったが、徐々にエネルギーの壁にヒビが入り始めて炎が漏れ始めたのには目を瞠った。

 こうして戦う前から、アキラは伝説のポケモンと戦う上で気を付けるべき点などを手持ちに伝えており、特に二匹は覚えの悪さも相俟ってしつこいくらい念入りに教えられていた。

 なのでただ一斉に発動するのではなくて、ちゃんと壁を二重にすることで性質の異なる連続攻撃や桁違いの威力を持つ技にも耐えられる様に彼らなりに備えていた。

 ところが、こうも簡単に破られそうになる予兆を見たのは初めてだった。

 

 基本的にはあらゆる攻撃も一度だけなら防げる”まもる”だが、ホウオウが放つ”せいなるほのお”は威力が高いだけでなく特殊な性質も有していた。

 それこそアキラが伝説と戦う際、最も警戒している理屈ではわからない概念的なもの――見方によっては意思が宿っている様なものであった。

 

 今にも破られそうな”まもる”に、二匹は踏ん張りながらも詰まる様な声を漏らしていた。

 だけど仲間を守るという自分達の役割は一応果たせたので、痛いのは嫌ではあるが”せいなるほのお”を受けても何とか耐える方向に考えを切り替えた時、後ろから二匹の背中に何かが触れた。

 

 そして”せいなるほのお”を防いでいた”まもる”が破られ、ホウオウが放った炎はその先にあったもの全てを焼き尽くし、その余波は観客席の一部さえも巻き込んだ。

 ようやく攻撃が成功したとシャムが確信した直後、ホウオウの足に先程のブーバーらが各々手にした得物で思いっ切り殴り付けたり、切り付けていく。

 しかも彼らが攻撃したのは片足では無くて両足であった為、堪らずホウオウは前のめりにその巨体を崩す。

 

 地響きを鳴らしてホウオウは倒れ込んでしまったが、肩に乗っていたシャムは何とか肩から落ちずに持ち堪えた。

 元々受けるつもりであったことや最低二匹は始末、或いは大きなダメージを与えたと考えていたのであまり気にしていなかった。

 ところが、その見通しは上手く行かなかったことを早々に彼女は知ることとなった。

 何故ならばホウオウの”せいなるほのお”が通った進路の真上に、炎に吞み込まれた筈のエレブーとバンギラスが浮いていたからだ。

 

「な、なんで?」

 

 あの状況でどうやって逃れたのかと驚くが、二匹の背後に氷で作った薙刀の柄を口に咥えながら二匹の背中を伸ばした両手でそれぞれ触れているヤドキングの姿があった。

 ヤドキングは他の面々よりも若干足が遅くはあったが、それが逆に功を奏してエレブーとバンギラスの守りが破られそうになるのを見るや、すぐに引き返して手にした武器を口に咥えることで空いた両手で二匹の背中に触れると同時に”テレポート”を使うことで”せいなるほのお”から逃れたのだった。

 

 宙に浮いていた三匹は難なく着地すると、エレブーは口に咥えていた氷の薙刀を持ち直したヤドキングを持ち上げてバンギラスに渡す。

 受け取ったバンギラスはおうじゃポケモンを抱え上げながら体を大きく捻らせると、遠心力と両腕から出せる限りの力を込めてヤドキングをホウオウ目掛けて投げ飛ばす。

 予想外の行動にシャムは驚愕するが、投げ飛ばされたヤドキングは気にすることなく手にしていた氷の薙刀を両手で握り締めると空中で大きく体を前転させて勢いを付ける。

 そしてそのまま、倒れていたホウオウの頭部目掛けて見た目だけでも重さを感じる氷の刃を歯を食い縛りながら精一杯の力で振り下ろし、起き上がろうと頭を持ち上げていたホウオウを脳天からかち割ってもおかしくない勢いでフィールドに叩き付けるのだった。

 

 

 

 

 

「す、凄い…」

 

 すぐ近くでそれぞれ繰り広げられる戦いの様子に、クリスはグッタリしているオーキド博士の容態を見ながらではあったが茫然と呟く。

 味方として戦っている彼らが実力者であることは知っていたし、実際に戦うところもクリスは何回か見てきた。

 だけど、本当の意味で彼らが本気で戦うのを間近で見るのは、これが初めてだった。

 

 デリバードとは思えない強さのプレゼントポケモンが放つ”ふぶき”をエンテイが放つ大火力の”かえんほうしゃ”とライコウの”10まんボルト”が相殺し、ヘルガーなどのデリバード以外のポケモン達を相手にして足を止めることなく動き続けながらも的確に攻撃していくスイクン。

 

 あれだけ自分達が苦戦を強いられるなど苦労をしたルギアとホウオウにいとも簡単に手痛いダメージを与えていくだけでなく、未だ手持ちの誰も目立ったダメージを受けていないカイリューを筆頭とした九匹のポケモン達。

 

 敵の力が強大であることはわかっていたが、それだけに彼らの実力と存在がどれだけ心強いものなのかクリスは改めて実感していた。

 彼女のすぐ傍に居たゴールドも心強い加勢と彼らの活躍に胸を躍らせていたが、同時にある心配事が内心で浮かんでいた。

 

 それはアキラのポケモン達の戦い方だ。

 

 サンドパンやゲンガーらが身に纏ったり生み出した得物や武装。

 あれらはレッドから教わった”みがわり”という技の応用だ。

 

 今は手持ちにいないが、レッドが連れているピカチュウは”みがわり”を発揮した際に体力を消費する形でエネルギーを生み出し、そのエネルギーを利用して分身を作るだけでなくサーフ板状に固めるなどの応用が出来るとゴールドは聞いていた。

 最後に彼らが使っているところをゴールドが見たのはルギアと初めて戦うことになる前に訪れたタンバジムで過ごした時だが、その時点では技術に優れたサンドパンと器用なゲンガーしか上手く扱えていなかった。

 そんな時に訪れたレッドの更なる助言や手伝いもあって、何匹かはこの技術へのアプローチや応用方法を変えた。

 

 ヤドキングは”いかりのみずうみ”での戦いで仮面の男から奪ったままになっていた”とけないこおり”を持たせることで、氷技の威力向上と細かい制御を可能にしたので氷で得物を作ることにし、ドーブルも”まがったスプーン”を起点にすることで制御しやくすると同時に念のエネルギーと”みがわり”のエネルギーをミックスさせ、それを纏わせることで得物としての利用を実現させた。

 カポエラーもドーブルみたいに”スピードスター”をベースに手裏剣状にすることで一応は形にしていたが、結局不安定で練習段階でも危なっかしいままだった記憶があった。

 

 今こうして皆が使えているというところを見ると、何とか実戦で使える状態に間に合わせたことはわかった。

 だけどゴールドが懸念していたのは、ヤドキング以外は得物を生み出すために”みがわり”を大なり小なり利用する関係上、必ず体力を消耗してしまう問題があることだ。

 

 しかも”みがわり”はある程度のダメージを受けると消滅してしまう性質があるので、”みがわり”を利用して生み出した得物も一定以上のダメージを受けると消滅してしまう。

 その為、見た目は派手で強力そうに見えるが上手く使わないとあっさり脆い一面が露呈するだけでなく、体力を消費するので連続で使うことは難しいのに加えて長期戦にはあまり向いていないなど問題も多い。

 

 ”みがわり”の応用がまるで使えない訳では無いのにヤドキングが”とけないこおり”を利用して氷の得物を作ることにしたのも、これらのデメリットを嫌がったからだ。

 実際、今の勢いを見る限りではデメリットが露呈する長期戦にならない様に、短期決戦でルギアとホウオウをアキラ達は倒すつもりなのではと思えた。

 

「てか…何でアキラは頭ばっかり狙うんだ?」

「端的に言えば、そこに急所が集中しているからだ」

 

 ゴールドの疑問にシルバーが代わりに答えた。

 頭部は脳などの重要な臓器や目などの感覚器官が集中している部位だ。

 相手は伝説のポケモンだが、ポケモンとしての枠組みで考えれば巨大な鳥ポケモン。そして生き物なら、そんな重要な部位を集中的に攻撃されたら堪ったものでは無い。人間でも執拗に顔を攻撃されれば、碌に抵抗するのは難しい。

 更に足を良く狙うのも、あれだけ巨大なルギアとホウオウの体を支えていることから、まともに自重を支えられない様にする意図があるとシルバーは見ていた。

 

 現にルギアは小回りが利くサンドパンとゲンガーが、足元をちょこまかと動きながらその大きな足を中心に手にしている武器で切り付けていき、思う様に動けないところを首の高さまで飛べるカイリューが顔を中心に殴り付けたり尾を鞭の様に叩き付けている。

 ホウオウの方に至っては前のめりに倒れ込んでしまったこともあるが、ヤドキングが振り下ろした薙刀を叩き付けてからは、ブーバーを中心とした面々が交互に絶え間なく倒れているホウオウの頭に攻撃を仕掛けていくという中々にえげつないことをしていた。

 

 的が大きいので狙いやすいこともあるが普通のバトル――それこそ公式ルールや一般的なポケモンバトルで同じことを実行すれば、あまりの荒さと容赦の無さで批判されてもおかしくないくらい彼らの戦い方は徹底していた。

 

 だけどシルバーとしては、伝説のポケモンを相手に互角なだけでなく臆さず戦えているアキラ達がある意味羨ましかった。

 本当なら自分が今仮面の男やその支配下に置かれている伝説のポケモンを相手にして、自身の運命に決着を付けたかった。

 

 ならば一体どうすれば良かったのか。

 自身の実力不足が答えなのはわかり切っている。

 だけどワタルから借りたバンギラスをまともに従わせることが出来なかったのでは、今仮面の男と戦っているジムリーダー達みたいに伝説のポケモンの力を借りるのは無理だろう。

 

 もっとワタルから様々なことを教わったり、任務を達成して地力を更に付けていくべきだったのか。

 それとも今のアキラみたいに、数で押しながら過激であっても躊躇せずに相手の弱点や嫌がることを徹底的に突いていく戦い方をするべきだったのか。

 様々な考えが彼の頭の中に浮かんでは消えていく。

 

「ぅっ……」

 

 三人がそれぞれの場所で繰り広げられている規格外の戦いに目を奪われていた時、体を叩き付けてから意識が朦朧としていたオーキド博士の目の焦点が定まり始めた。

 

「オーキド博士、大丈夫ですか?」

 

 博士の意識が安定し始めたのに看護していたクリスが気付くと、彼女の呼び掛けに博士は視線で応えた。

 

「ジジイ、アンタも良い年なんだから無茶すんな」

「ゴールド、それは幾ら何でも失礼よ」

「いや…ゴールドの言うことも尤もじゃ…」

 

 オーキド博士としては、こうなってしまったのは単なる加齢による肉体の衰えでは無いことはわかっていた。

 研究者として生涯を捧げてきたが、ポケモントレーナーとして鍛錬をする時間は全盛期と比べれば比較にもならないくらい減った。

 そんな自分とは異なり、何十年も血の滲む様な鍛錬や戦いの経験を積み重ねてきた()を止めるなど、良く考えなくても無理なのは当然だった。

 

「…状況は?」

「スイクン達がジムリーダーの方達と協力して仮面の男と戦い、ルギアとホウオウはアキラさんが相手をしています」

 

 クリスが状況を説明した直後、強烈な暴風が屋内のフィールドに吹き荒れ始めた。

 舞い上がる瓦礫の粉塵から顔を守りながら目を向けると、アキラ達が相手にしていたルギアとホウオウが大きな翼を広げて羽ばたかせていた。

 起こされた風によって、攻撃していたアキラのポケモン達は揃って吹き飛んだり転がされたりしていた。だけど強風を物ともしない巨体と体重を持つハガネールが”たいあたり”でルギアの動きを止め、更にてつへびポケモンの巨体を風除けにしていたシバの格闘ポケモン達が追撃を仕掛け、ホウオウの方も背後に回ったキョウの毒ポケモン達が毒技などの攻撃を集中させてそれ以上の攻勢を止めていた。

 

 すぐにも戦いの主導権を取り戻したかの様に見えたが、ダメージを受けたルギアとホウオウの体を淡い光が包み込み始めた。

 

「あいつら、また”じこさいせい”していやがる」

 

 あの技の所為で苦しめられただけでなく、何回も戦いを振り戻しにされたこともあって、ゴールドは苦々しそうな顔を浮かべる。

 アキラ達なら自分達とは違って何とかするかもしれないが、最初から消耗の激しい技を使っているのだ。長期戦に持ち込まれたら如何に彼らでも苦戦は免れられないだろう。

 現に氷や骨と言う実体を持っているヤドキングの薙刀やブーバーが手にしている”ふといホネ”以外は、もう耐久が限界を迎えたのか既にゲンガー達の手元から得物や武装は消えている。

 それを見たゴールドは、急に手持ちの状態を確認したりと支度を始めた。

 

「何をしているのゴールド?」

「決まってるだろ。アキラ達の加勢に行くんだよ」

「馬鹿か、どう考えても消耗している今の俺達が行っても足手まといになるだけだ」

「なんだ? さっきあのシバって筋肉大将に言われたことを気にしているのか?」

「なにっ!」

 

 煽り気味で返すゴールドにシルバーは彼の胸倉を掴んだ。

 本音を言えば今すぐにでも仮面の男達に挑みたいが、シバに言われた様に手持ちが弱っている状態では返り討ちどころか仮面の男の悪事を止めようとしている彼らの邪魔になるだけだ。

 自らの手で長年の因縁に終止符を打ちたいが、この戦いでの一番大きな目的は仮面の男の野望の阻止だ。

 そこだけは間違えてはならない。にも関わらず、状況や自身の力量を碌にわからず下手な正義感で加勢しようとするゴールドにかなり苛立っていた。

 

「ちょっと二人共、こんな時に喧嘩している場合じゃないでしょ」

「よさんか…二人共…」

「でもジジイ! アキラは最初から全力で挑んでいるんだ。このままじゃさっきの俺達みたいにジリ貧に…」

「彼が伝説を始めとした強敵を相手に無策で戦うと思うか?」

「……いや思わねえ」

 

 オーキド博士の問い掛けにゴールドは割と素直に答える。

 カイリュー達が強過ぎるのと戦い方が荒い関係で、ただ力任せに適当に暴れている様に見えるが、実際のアキラとその手持ち達はちゃんと相手の弱点を突くなどの作戦や対策を考えた上で戦っている。

 言われてみれば、”うずまき島”で初めて戦う筈であるルギアを相手に予め様々な対策を用意していたし、仮面の男が割り込むまで優勢だったのだ。

 ルギアだけでなくホウオウがいることに動揺している様子も無かったので、恐らく今回も”どうやってその状況を想定した”と言いたくなるような、何かしらの対策や作戦を用意して戦っているのだろう。

 

「今力になれなくて…歯痒いかもしれんが、君達は彼らが駆け付けるまで立派に時間を稼いでくれた。それだけでも…十分じゃ」

「…けどよ」

「納得いかない気持ちもわかる。じゃが今はアキラの言う通り、体を休めて備えておくべきじゃ」

「備えるって」

「そうならない方が望ましいが、事態は彼らの考えている通りに進むとは限らん」

 

 なら尚更加勢すべきでは無いかと思ったが、それぞれで繰り広げられている戦いを冷静に眺めていく内に、ゴールドは自分がどこまで力になれるか自信が無くなって来た。

 単に味方してくれる伝説のポケモン達が加勢するだけでなく、伝説のポケモンが相手でも善戦、或いは倒せる程の力を持つ者達が仮面の男とロケット団の野望を阻止する為に戦っているのだ。

 それこそ”いかりのみずうみ”の時の様な大規模な戦いに発展すれば、ゴールドやシルバーのポケモン達では何も出来ずに枯葉の様に吹き飛ぶのが目に見えた。

 

「俺達に…もっと…レッド先輩みたいな力があれば」

「いや…お主がどれだけ頑張ってもレッドと同じになるのは無理じゃろう。酷ではあるが」

 

 悔しそうにするゴールドにオーキド博士は思い掛けないことを告げ、彼は思わず振り返る。

 それだけを聞けば、ゴールドにはレッドみたいに強くなったり戦う才能が無いように聞こえたが、オーキド博士は話を続ける。

 

「正確には、トレーナーとして向いている分野や能力が異なっているということじゃ」

「? どういうこった?」

「例えばクリス君、実力とかは置いておいて、君にアキラ君と同じ戦い方は出来るかね?」

「で、出来ないです」

 

 クリスは困惑しながらもオーキド博士からの問い掛けに断言した。

 彼女が目を向けた先では、激しい攻防を掻い潜ったアキラが走りながらロケットランチャーから一度モンスターボールに戻したカイリューとブーバーを連続で撃ち出し、それぞれがルギアやホウオウに勢いを乗せた攻撃を仕掛けていた。

 

 足技と言う形で捕獲の技術を磨いてきたので、クリスもアキラと似た様なことをやろうと思えば出来るかもしれない。だけど彼女としては、如何なる場合でも彼と同じ戦い方が出来ると思えなかった。

 端的に言えば、アキラ達の戦い方はあまりにも乱暴で荒々しく、そこまでやるのは彼女の性格や常識的に抵抗があるからだ。

 

「そうじゃろう。ポケモン事に得意分野や秀でた能力がある様に、トレーナーにも個々に異なる長けた能力がある」

「つまり、俺達はアキラやレッドと同じことは出来ないけど、彼らでも出来ないことや彼らよりも長けている能力があるということですか」

「そうじゃシルバー」

 

 シルバーの解釈にオーキド博士は肯定する様に頷く。

 そこで彼は、持ち上げた体が少しでも楽な姿勢にする為に壁に寄りかからせると一息つく。

 

「こんな状況じゃが良い機会じゃ。君達にはこれまで儂が”ポケモンとトレーナーの関わり”を研究する者として見てきたことや考えたことを伝えよう」

 

 告げられたその言葉に、三人は静かに互いに顔を見合わせる。

 後ろで繰り広げられる戦いの行方も気になる。だけどゴールドを始めとした彼らは、何か切っ掛けを掴めるのでは無いかと考えて、オーキド博士の話を聞くことにするのだった。




アキラと手持ち達、伝説が相手でも全く引くことなく猛攻を仕掛けていき、ゴールド達は一足早くオーキド博士から自分達のトレーナーとして長けている能力について伝えられる。

能力だけでなく体格面でもルギアとホウオウの方が完全に上なのを理解しているので、アキラ達は数と連携をメインで戦うのは勿論、乱暴な手段や攻撃でも有効ならとにかく使っていくのが基本になります。

ですが、ルギアやホウオウは通常のポケモンよりも巨大で高い能力を有する以外にも伝説特有の固有能力――理屈がわからない超常的な力を有していますので、全く油断出来ないです。

明日も更新をします。
次回、あらゆる場所で激闘が繰り広げられています。
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