「”けたぐり”!」
「真似るんだリュット!」
吠えるシバと同じタイミングにアキラが声を上げる。
ルギアの足元へ飛び込んだカイリキーとカイリューの二匹は、互いに攻撃の邪魔にならない様にカイリューは右足、カイリキーは左足を振り、ルギアの片足を払い除ける勢いの蹴りを同時に叩き込んだ。
相性ではエスパー・ひこうの複合であるルギアが相手では大した効き目は期待出来ないが、彼らの狙いはポケモンの技としてのダメージよりもルギアをまともに立っていられなくする肉体的なダメージを優先していた。
”じこさいせい”したばかりなのに再び体重を支える足を攻撃されて、ルギアは痛みで思わず片足を持ち上げるが、そのバランスが不安定になったところをサワムラーの”メガトンキック”、エビワラーの”メガトンパンチ”が胴に突き刺さる。
加えて何時の間にかハガネールの頭部によじ登っていたゲンガーの”シャドーボール”と両目に掛けている”ピントレンズ”でより正確さが増したサンドパンの”めざめるパワー”を正面の角度からまたしても顔に当てられて、爆煙を流しながら技の炸裂時の衝撃によって再びルギアは地響きと共に倒れ込む。
「じ…”じこさいせい”」
器用に翼を羽ばたかせて起き上がりながら、ルギアはカーツの指示通りにその身に受けたあらゆるダメージの回復を図る。
だが、回復途中でも攻撃の手が緩むことは無く、ゲンガーとサンドパンが頭から飛び降りたのに合わせてハガネールとシバの手持ちの方であるカポエラーが”ずつき”をかまし、ルギアの巨体は観客席を押し潰しながらまた倒される。
「シバさんのハガネール凄いですね。イワークの時もそうでしたけど、進化したことであの巨体と体重から繰り出される一撃の破壊力が更にパワーアップしている」
「お前も単に力を付けるだけでなく、サンドパンのみならず他の手持ちでも的確にタイプ相性以外の相手の弱点を突く様になったな。体を鍛えただけでなく知識も身に付けてきたことが良くわかる」
反撃を受ける時はあるが、それでも形勢は一目でわかるくらい有利なのもあってアキラとシバは戦いながらも互いに称え合っていた。
ルギアという強大な存在を相手に共闘を重ねるにつれて、再戦を考えている相手がどこまで強くなったのかが目の前でわかっていくので、二人は再び相まみえる時が楽しみだった。
が、そんな余裕ムードでも彼らは空気が変わるのを敏感に察知するや目付きを変えた。
ハガネールに押し潰されていたルギアが、逆にてつへびポケモンを押し返して薙ぎ倒したのだ。
カポエラーはすぐに距離を取ったので巻き込まれずに済んだが、大きな翼を羽ばたかせて起こした暴風により粉塵だけでなく砕けた建物の一部やコンクリート片を周囲に吹き飛ばす。
「何度やっても無駄だ! 貴様らがどれ程の攻撃を決めても、ルギア達は回復出来る!」
「そんなことはわかり切っているよ」
強気なカーツにアキラは淡々と言い返すと、サンドパンを入れたモンスターボールをロケットランチャーに装填、ルギアに狙いを定めて撃ち出した。
撃ち出されたサンドパンは、両手の鋭い爪を前へ突き出す様に重ね合わせながら自身の体そのものも激しく回転させており、まるで巨大な一つの弾丸であった。
その勢いでルギアの首の根元に深々と突き刺さる様に激突し、ルギアは悲鳴を上げた。
更にサンドパンはルギアの巨体を足場代わりに体に突き立てていた両手の爪を引き抜くと、追い打ちに”めざめるパワー”の光弾を傷口へ何発も撃ち込む。
傷口に塩を塗り付ける様な追撃にルギアは立て続けに苦しそうな声を上げ、激痛から逃れようとまだ体にしがみ付いているねずみポケモンを振り払おうと暴れる。
「”はかいこうせん”!!!」
そんな隙だらけの姿をアキラとカイリューは見逃さず、放たれた”はかいこうせん”をまたしても頭部に受けたルギアはよろめき、その隙にサンドパンは素早くせんすいポケモンとの距離を取る。
「”じこさいせい”をするってことは攻撃自体は効いているんだろ? だったら回復が追い付かない勢いで攻撃していけば良いだけだ」
現在進行形で”じこさいせい”をするルギアを示しながら、シンプルな脳筋理論を堂々と口にするアキラにカーツは歯を噛み締める。
これがさっきまで戦っていたゴールドなら鼻で笑うところだが、相手が桁違いの力を持つアキラや四天王として名を馳せたシバが相手では幾分か現実味を帯びる。
別で戦っているシャムの方に目を向ければ、彼女もホウオウが”せいなるほのお”を放とうとしてもどれ程脅威なのかを身をもって学習されたからなのか、事前に阻止されるかまともに当てられない様にされていた。
具体的にはルギア同様に顔面を集中攻撃されたり、巨体を支える足を攻撃されてバランスを崩す。更にはキョウが連れているマタドガスが吐き出す”えんまく”で視界を遮られるなど、妨害が徹底されていた。
それでもホウオウは巨大な翼で吹き飛ばしたり、ブーバーを中心とした面々からの手痛い攻撃によるダメージを”じこさいせい”で何とか凌いでいた。
キョウが代わりに指示しているのかと思ったが、そんな様子は無かった。
寧ろ、キョウのポケモン達の方が勝手に動くアキラのポケモン達に沿った動きをしている様に見えなくもなかった。
しかもアキラからの指示は殆ど無い状態でブーバー達は動き、数の利を活かして戦いを自分達に有利な形で進めていた。
伝説のポケモンの力を借りているのに、これで負けてしまうなど恥の上塗りだ。
自らのプライド、そして敬愛する師である仮面の男の為にも、この場で奴らを倒す。
しかしカーツの決意を余所に、シバは取り出したヌンチャクを携えてカイリキーを伴って突っ込み、アキラも敵を見据えながらロケットランチャーを両手で携えながらカイリューと共にルギア目掛けて再び駆け出すのだった。
アキラ達が優勢で伝説のポケモン達と戦っていた頃、仮面の男とカスミ達の戦いも激しさを増していた。
仮面の男の主力であるデリバードだけでもスイクンら伝説のポケモンを相手にしても互角に渡り合えていたのに、他の手持ちまで繰り出し、更にはその手持ちが進化したことで力を増しているのだ。
元々一瞬の隙も見せられない戦いが、更に厳しいものになっていた。
だけど、負ける訳にはいかなかった。
カスミの手持ちであるスターミーを介して、スイクンから仮面の男の悪事やこの数年の間に一体何があったのかを彼女達は知った。
相手は伝説のポケモンであるスイクン達が仕えるホウオウや同格であるルギアを従える程の存在だが、ロケット団が暗躍し始めるずっと前から素質があると見た子ども達の誘拐を始めとした多くの悪事を働いていたことを知ったら尚更負ける訳にはいかなかった。
「”プレゼント”だ!!」
デリバードが抱えている袋からばら撒く”プレゼント”からの爆発にカスミ達を乗せたスイクン達三匹は躱すが、躱した先ではヘルガーやゴースト、アリアドスが待ち構えていた。
けれどもアリアドスが放った糸や毒針をスイクンは”かぜおこし”の突風を身に纏うことで弾き、ヘルガーの”かえんほうしゃ”をエンテイは更に威力が上の”かえんほうしゃ”で相殺した。
「いい加減にしやがれ!!!」
そしてマチスが乗るライコウは、ゴーストが仕掛ける前に彼の激高と共に前面へ発した強烈な”スパーク”を叩き込む。
ライコウが放った激しい放電攻撃は、進化直後で力が通常時よりも増しているゴースト相手でも大きなダメージを与えて、更には”まひ”状態にまで追い詰める。
だがマチスに油断は無かった。エキシビジョンマッチでゴーストタイプの使い手であるジムリーダーのマツバと戦ったばかりなのもあって、ゴーストタイプの厄介さは身に染みている。
パワーでこちらが勝っていても、目に見えない小細工でじわじわと弱らせて来るのがゴーストタイプの真骨頂。油断出来ない。
最終的に”みちづれ”で試合を引き分けに持ち込まれたことも記憶に新しく、同じ技を使われて今この場で戦っている三匹を戦闘不能にされるのはマチスとしても避けたかった。
今なら変な技を仕掛ける前に倒せると考えてライコウは”かみくだく”で止めを刺そうとするが、そこに仮面の男を伴ったデリバードが立ち塞がるかの様に割り込んだ。
「失せろ!」
”ふぶき”では無く、威力こそ低いが手早さを重視した”こごえるかぜ”が吹く。
警戒していたのとは異なる技をまともに受けてしまったことでライコウは凍える様な冷たさで動きを鈍らせてしまうが、その直後に彼らは信じられない出来事に見舞われた。
デリバードの技が止んだタイミングで、仮面の男がライコウをマチスごと強く蹴り飛ばしたのだ。
「なっ、何だと!?」
衝撃的な瞬間を目にしただけでなく、思ってもいなかった威力にマチスは驚愕した。
トレーナーがポケモンを蹴り飛ばす。
あまりにも非常識な出来事にマチスだけでなく、カスミやカツラも驚くが、彼らが驚いていたのは他にもあった。
そもそも人間の力では、大人のマチスを背中に乗せられるくらい体が大きいライコウ程の体格のポケモンを蹴り飛ばすなど不可能だ。
仮面の男がただの人間では無い可能性も考えていなくはなかったが、いざそのことがわかると仮面の男に秘められた秘密まで突き止めなければ対処は難しい。
予想外の事態に三人と三匹の動きが止まっている隙に、一旦ライコウを引き離すことが出来た仮面の男は、”まひ”状態になって地面スレスレに浮遊しているゴーストと向き合う様に体を屈める。
何かをしようとしていることをカツラとカスミは悟り、それを止めるべくエンテイとスイクンは炎や水流を放つが、激しく渦巻く竜巻の様なデリバードの”ふぶき”で攻撃を遮られる。
しかもデリバードが起こした”ふぶき”はプレゼントポケモンだけでなく、仮面の男の姿も包み込む様に隠してしまう。
そこにライコウも電撃を放つことで加勢しようとした時、渦巻く”ふぶき”が止むと同時に黒い影が飛び出す。
影の大きさからデリバードかとマチスとライコウは警戒したが、飛び出した影の正体は全く想定していない存在だった。
「ゲンガーだと!?」
驚愕のあまり隙を晒したことで、マチスが乗るライコウはゲンガーが投げ付けた”シャドーボール”をまともに受けてしまい、後退を余儀なくされた。
状況から見て、ゴーストの姿が見られないことからゲンガーに進化したものと推測出来たが、それが真実ならマチス含めた三人の驚きはさっきよりも大きかった。
何故なら本来ゴーストなどの一部のポケモンは、通信交換も含めた他人と交換した際の何かしらの環境変化による刺激を受けることでのみ進化するとされているからだ。
今の状況下では、レベルが上がったことで戦っている最中でも進化が可能な条件のポケモンでは無い筈だ。
そんな三人の困惑を余所に、もう一段階進化したことで更に調子が良くなったのか、ゲンガーはその高い能力を存分に活かし始める。
再び投げ付けられた”シャドーボール”こそライコウは避けるが、ゴースト以上に素早くなったのですぐさま対応されて、様々な攻撃を仕掛けられていく。
「くそっ! どうなっていやがる!」
ゲンガーから仕掛けられる攻撃の回避をライコウに任せて、マチスは頭を働かせた。
デリバードの”ふぶき”でよく見えなかったが、体を屈めた仮面の男がゴーストに何かをしていたのは見えた。
一体どうやって、この状況でゴーストをこの場でゲンガーに進化させたのか。
そうして考えていく内に、覚えのある出来事を思い出したことでマチスの中にある可能性が浮かんだ。
「まさか、”いかりのみずうみ”での怪電波か!?」
「ほう、湖を調査していただけあって良い推理だ。ゴーストなどの一部のポケモンは、通信交換や他人に預けた際の環境変化や刺激が引き金になって進化すると言われている。今私はその刺激を疑似的に再現して与えたまでよ」
マチスに答えるかの様に、仮面の男はこの場でゴーストをゲンガーに進化させた方法について示唆する。
もしそれが本当であるなら、全身の大半はマントに包まれているが、どこかに小型ながら怪電波を発する機器を所持していると推測出来た。
しかし、それ以上にそのことが何を意味することなのか、ポケモンの生態に詳しいカツラはすぐに悟った。
「強制進化の類か…」
「ポケモンを無理矢理進化させるなんて、貴方はポケモンを何だと思っているのよ!!」
仮面の男がゲンガーに進化させる際に行ったであろう行為に、スイクンに乗っているカスミが怒りの声を上げる。
ポケモンの強制進化は本来進化に適した自然な形で行われない為、進化するポケモンの肉体や意思に反したものが大半で負担は大きい。
今のところゲンガーは苦しむ様子は無く調子は良さそうではあるが、通常では考えられない手段で進化したのなら何かしらの副作用や反動が後で生じてもおかしくない。
声を荒げながらカスミは仮面の男を糾弾するが、唐突に仮面の男は静かになった。
その姿は、ただでさえ不気味で冷たい印象を受ける仮面の男の影を更に濃くしていた。
「………道具だ」
かなり間を置いたが、仮面の男は静かながら良く通る声で答えた。
黙り込んだ姿からカスミの言葉に何か刺さるものがあったのかと三人は意外そうな目を向けていたが、返ってきた答えはまともには程遠いものだった。
カスミ自身、今更まともな返事が返って来るとは期待していなかったが、それでもハッキリと口にされると許せない感情の方が勝った。
彼女の感情を伝わったのか、スイクンはヘルガーを力任せに退けると、そのまま上空に浮いている仮面の男とデリバードへ飛び掛かろうと四肢に力を入れた。
ところがその直後、スイクンの背に乗るカスミの首に何重にも重なった糸が突如として絡み付いた。
咄嗟に彼女は糸が伸ばされた先へ目をやると、アリアドスが尻の部分から糸を吐き出しているのが見えた。
すぐにでも彼女は首に巻き付いた糸を如何にかしたかったが、既にカスミを乗せたスイクンは今まさに跳び上がろうとしていたので、彼女はこのまま糸に引っ張られてすいしょうポケモンの背から落ちることを覚悟した時だった。
轟音と共にどこからか飛んで来た何かが、カスミの首に巻き付いていた糸を断ち切ったのだ。
そして轟く音は更に二回続き、マチスが相手していたゲンガーの体も風を切る音と共に突如として横に吹き飛んでいった。
何事かとカスミを始めとした三人が視線を向けた先では、今吹き飛んだ仮面の男とは別のゲンガーにドーブル、そして氷で作った薙刀を手にしたヤドキングが着地していた。
唐突なカスミ達には有利で仮面の男には不利な事態を起こしたのは、ルギアとホウオウを相手にしている筈のアキラの手持ち達だった。
そして三匹が飛んできた先では、目の前にいる伝説のポケモンを余所に片手持ちで狙いを定めた体勢のアキラがロケットランチャーをこちらに向けているのがカスミには見えた。
カスミ達の元にやって来た彼ら三匹は、すぐに各々合流するや横一列に並んで遮る様に仮面の男の手持ちであるゲンガーやヘルガー、アリアドスなどと対峙した。
「ありがとう!!」
三匹の姿を見たカスミは、彼らが奴らの相手を引き受けてくれることを悟った。
アキラからの指示なのか、それとも何時もの様に彼らの自己判断なのかは定かではないが、戦力を削るのが難しい伝説のポケモンを相手にしているのに、三匹は自分達の手助けに来たのだ。
彼女はお礼を口にしながら、スイクンと共に再び仮面の男とデリバードに戦いを挑んでいくのだった。
そしてアキラが有しているロケットランチャーから撃ち込まれる形で送り込まれたゲンガーとヤドキング、ドーブルの三匹はカスミ達が仮面の男との戦いに専念し始めたのを見届けると、改めて自分達が戦うべき敵を見据えた。
彼らがこうしてカスミ達の加勢に来たのは、彼女達には仮面の男との戦いに専念して欲しいからだ。
彼女達の実力を信じていない訳では無かったし、ルギアやホウオウを相手に戦う戦力を削るつもりで無かったが、シバを始めとした予想外の味方の存在のお陰なのや
そもそも自分達が手を貸さなくても、伝説を打倒出来るだけの力を付けたカイリュー、優れた技術と対応力のサンドパン、切り込み隊長であるブーバーとその弟子である蹴りの達人カポエラー、最強の盾であるだけでなくその盾でぶん殴れるエレブーと精神は幼いままではあるが彼から気持ちの持ち方を教わった攻防一体の鎧の様に屈強なバンギラスが出向いているのだ。
例え伝説が相手であってもそう簡単にはやられないし、それどころか逆に倒してもおかしくない面々が揃っていると言う自信と信頼があった。
でも、念には念を入れたいので
ゲンガーは再び、その手に自らの体力と引き換えに体から発した”みがわり”のエネルギーを凝固させて紫色に輝く刀を生み出し、ドーブルの方も”まがったスプーン”をベースに桃色に光る軸が捻じれた巨大スプーンを生成してミルタンクの姿で手にする。
既に氷の薙刀を手にして引き締めた表情を浮かべているヤドキングと共に得物を手にいざ戦おうとした時、そんな三匹に後ろから並ぶ姿があった。
ウインディ、スターミー、ライチュウ
いずれの三匹共、今仮面の男と戦っている三人のジムリーダー達の手持ちであった。
本当ならカスミ達も仮面の男が他の手持ちを繰り出して来た際に同じく他の手持ちを出したかったが、スイクン達のスピードやサポートを考えると複数のポケモンを繰り出すのは難しかった。
しかも相手が進化した直後でスイクン達でも手間取る相手なのだから、一対一では倒すのは厳しいものがあった。
だけど、他からの加勢があれば話は別だ。
二対一で挑めば、勝機はかなり見込める。
それにアキラの手持ちは単に強いだけでなく、トレーナーであるアキラの指導方針なのか味方や周りとの連携にも秀でている特徴がある。
個体によっては勝手な行動や自己主張が激しいなどの欠点はあるが、それでも可能な限り手持ちを複数繰り出して戦うよりも安定して戦うことが出来る。
ミルタンクに”へんしん”したドーブルが視線を向けるとウインディは軽くだが頷き、ゲンガーとスターミーは互いに顔馴染みなのもあって少し気楽そうであった。
対照的にライチュウだけは不機嫌そうに頬から電流を弾けさせて何かを主張していたが、組むことになるヤドキングは目線を少し向けるだけでそれ以上は意に介さなかった。
各々組む相手は様々であったのや自然と決まって行ったが、彼らがやることは変わらない。
目の前の敵を倒す、それだけだ。
仮面の男の手持ち達も、”うずまき島”での戦いで彼らに好き勝手にやられた経験もあってかリベンジに燃えていた。
数では不利ではあるが、それでもヘルガーやゲンガーは進化したことで体中から力が漲っていた。
伝説のポケモンが相手の時は進化の勢いがあっても少し力不足なのを感じたが、奴らなら勝てる自信があった。
そして間もなく、睨み合っていた両陣営は各々の相手と戦い始めるのだった。
「アキラ、良いのか?」
手持ちの三匹をロケットランチャーで撃ち出したアキラにシバが問い掛ける。
幾ら余裕があるとはいえ、今自分達が戦っている相手は伝説のポケモン。万が一を考えれば、あまり戦力を削るべきでは無い相手だ。
「…あいつらは今回のルギアとホウオウとの戦いでやって欲しい
アキラの目的は、この場での仮面の男の撃破だ。
カスミ達三人の力を信じていない訳では無いが、思っていた以上に仮面の男が準備をしていたので彼女達が仮面の男との戦いに専念出来る様にしたかったのだ。
それに送り込んだ三匹の現在の戦闘方法や種族的な能力に特徴なども考えると、幾ら対策をしていてもダメージが大きい一撃を受けることは何よりも避けたいので、体格的に同サイズである一般ポケモンとの戦いの方が良かった。
「それにこちらにはシバさんがいますし、当初考えていた状況よりも格段にやりやすいです」
「そうか」
そしてこれが一番の理由だ。
シバやキョウが味方として加勢してくれているお陰で、アキラが想定していた以上に戦力的な余裕が生まれていた。
そもそも彼に懸念を示したシバではあったが、アキラがルギア達を相手に三匹に何をやらせていたのかは
「このまま一気にルギアとホウオウを叩いて、仮面の男も倒しましょう!」
「おう!」
アキラの言葉にシバも同意した。
この戦いでアキラ達がどれだけ強くなったのかは大まかに把握出来た。
早くこの戦いを終わらせて、互いに体を休めて一戦交えたかった。
そうして二人はルギアと戦う手持ち達に目を向けるが、ルギアと従えるカーツは目に見えて苦戦していた。
大火力の技や巨体に物を言わせた戦い方では、アキラやシバのポケモンを簡単に一蹴することが出来無いのもそうだが、巧みに顔や関節を攻撃したり胴や翼にも無視出来ない攻撃を仕掛けてくるのが、カイリューに限らず何匹もいるのが拍車を掛けていた。
「リュット、”たたきつける”!」
「カイリキー、”メガトンパンチ”!」
動き回るサンドパンやエビワラー、サワムラー、カポエラーからの攻撃に翻弄されているルギア目掛けて、両トレーナーが最も信頼する相棒達が重い打撃攻撃を鈍い音共に正面から叩き込むのだった。
アキラ、カスミ達が仮面の男との戦いに専念出来る様に頭脳派の三匹を送り込む。
アキラにとっては、シバやキョウの加勢は本当に嬉し過ぎる誤算なので本当に当初の想定よりも余裕があります。
連携や数を駆使したゴリ押し戦術を押し出した脳筋発言をしていますが、対ルギア・ホウオウを想定した様々な対策や戦術を彼は用意しています。
仮面の男もアキラを含めた対策や用意が無い訳では無いけど、色々想定外だらけで上手く活かせていない感じ。
次回、優勢ながらも油断出来ない戦いは続きます。