SPECIALな冒険記   作:冴龍

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仕組んだ策

「それが、儂がこれまで感じてきた君達が持つと考えるトレーナーとして長けている能力じゃ」

 

 アキラ達やジムリーダー達と伝説のポケモンとの戦いが激しさを増していた頃、オーキド博士が語る話を一通り聞き終えて、ゴールドとクリス、シルバーの三人は互いに顔を見合わせる。

 オーキド博士がポケモン図鑑を託して旅に出た少年少女達が有しているであろうポケモントレーナーとして長けた能力。

 クリスはポケモン捕獲に優れた”捕える者”、シルバーはポケモン交換に長けた”換える者”、そしてゴールドはポケモンの孵化に関わる”孵す者”。

 そして、この場にはいないレッドはポケモンバトルに秀でた”戦う者”、グリーンはポケモンを育てるのが上手い”育てる者”、ブルーはシルバーと合わせてポケモンの進化に詳しい”化える者”、イエローはポケモンを癒す”癒す者”。

 

 クリスやシルバーはこれまで自身が辿ってきた様々な経験から、自分にオーキド博士が語ったそれらの能力が備わっていることを何となく自覚出来たが、ゴールドだけはどうも実感が湧いていなかった。

 だけど方向性は違えど、自分にも先輩として尊敬しているレッドみたいにトレーナーとして秀でた才能と言える能力があると言って貰えたことは嬉しくはあった。

 これでレッドの”戦う者”みたいな、今すぐにでも戦いに役立てる能力だったら良かったのにと思った時、ある疑問が彼の頭に浮かんだ。

 

「ジジイ、レッド先輩は戦うことに長けた”戦う者”って言ってたよな。それじゃアキラってどういう能力が長けているんだ?」

「ゴールド、オーキド博士の話を聞いていなかったのか。ポケモン図鑑を持っている者で博士が常に目を掛けていた奴が対象だぞ。目に掛けていたかもしれないが、そもそも奴は図鑑を持っていない」

 

 ゴールドの質問にシルバーは苦言を呈する。

 あれだけの暴れっぷりを見ると、恐らくレッド以上に戦いに特化しているであろう彼はどういう能力が長けているのか気になってしまう気持ちはわからなくもなかったが、そもそも彼はポケモン図鑑を持っていないので対象外だ。

 

「…まあ、確かに伝説のポケモンが相手でも一歩も退かないアキラ君もレッドに負けず劣らず戦いには秀でているじゃろう。じゃが、二人は似ているようで似ておらん」

「どういうことですか?」

 

 クリスは疑問を零すが、レッドとアキラの二人を近くで見て来たゴールドはすぐに気付く。

 アキラとレッド、どちらも彼から見ればポケモントレーナーとして頂点に限りなく近い強さと言っても良いが、その戦い方は大きく異なっている。

 レッドはそのポケモンが持つ力を最大限に引き出して巧みに導く正統派な戦い方をしていくが、アキラは手持ち達の好みや得意分野を押し出しつつも圧倒的な力や相手の弱点を突いて倒す戦い方を好む。

 

 だけど、彼とは異なる部分で違いに気付く者もいた。

 

「戦い方は勿論、二人がポケモンバトルで重視している点も異なっていることもですか?」

「そうじゃ」

 

 シルバーの答えにオーキド博士は肯定した。

 アキラの戦い方を彼は何度か直接目にしている。レッドに関しても直接見たり関わった回数は少ないが、義理の姉であるブルーを通じてどういう人物なのかや戦い方などを聞いていたので、両者の違いはわかった。

 本人達は意識しているかどうかは定かでは無いが、ポケモントレーナーとしての戦い方だけでなく、ポケモンバトルで重視している点も二人は異なっているとシルバーは感じた。

 

 レッドは”相手に勝利する”こと

 アキラは”敵を倒す”こと

 

 それは今繰り広げられている様なロケット団などの悪の組織や無法者が相手での絶対に負けられない戦いであればある程、顕著だ。

 

 レッドの場合、絶対に負けられない戦いであったり許し難い敵と戦うことになったとしても、正々堂々と互いに全力を出し合った末に勝つことに重きを置いたある種の慈悲があるもの。

 

 一方のアキラは、倒すべき敵と認識した相手に対しては桁違いな力だけでなく可能な限り事前に対策を練るなど、あらゆる手段を駆使して効率良く叩きのめすことを重視した無慈悲なもの。

 

 どちらが良いとか悪いでは無いが、オーキド博士の言う通り二人は”強い”という点は同じだが、ポケモンバトルで重視している点は当人が意識しているしていない問わずに異なっている。

 そもそも二人共、駆け出しの頃から交流があるとはいえ手持ちの傾向や今の強さに至るまでの経緯は、全く異なっているのだから違いがあるのは当然ではあったが。

 

「本来なら君達みたいにハッキリとわかりやすくどういう才能を持ち、どういう能力が長けているかはわからんものじゃ。そしてトレーナーとポケモンとの関係が十人十色である様に、似ていても異なる才能がある。例え、今この場で繰り広げられている戦いに直接力になれるなれない関係無く」

 

 ゴールドがアキラについて聞いてきたのも、何かしらの戦いに関する才能が無くても強くなったり戦えるのかと言う不安があったのだろうとオーキド博士は察していた。

 レッドとアキラの二人がポケモン達と共に敵と戦うのは、それが最も自分の力を発揮出来るのと皆の力になれる方法だからだ。戦うという目に見えてわかりやすいもので無くても、直接戦う様な才能があろうとなかろうとイエローみたいに自分なりのやり方や自分にしか出来ない方法で力になる者もいた。

 大切なのは、今の自分に出来ることで力になることだと博士は考えていた。

 

「何よりゴールド、仮にこの場でクリスやシルバー、レッドみたいに秀でたトレーナーとしての能力は無いと告げられたら、お主はどう思う。身の程を弁えて引き下がるか?」

「いや、しねぇな」

 

 以前アキラにも聞かれたことと似たことを問い掛けられて、ゴールドは即答した。

 身の程を弁えて引き下がるということは、つまり”諦める”ということだ。

 ”いかりのみずうみ”での戦いの様に引き際を見極めることは重要だが、退いてはならない時はあるし、逃げてばかりでは何も生まないし勝利することも無い。

 アキラやレッドなら、大して気にしないか”NO”で返しているのが彼には目に見えた。

 彼らが強くなれたのは、そこに至れるまでに積み重ねたものや何かしらの才能があったのもそうだが、諦めなかったことが何よりも大きい。

 ゴールド自身、諦めなかったからこそ多くの経験を得られたという実感があったので、仮にクリスやシルバーと違って何も無いと言われても最後まで足掻くつもりだった。

 

「…そうか」

 

 そんなゴールドの様子にオーキド博士はどこか満足そうな顔を浮かべて、納得した様に呟くのだった。

 

 

 

 

 

「いざ戦ってみたらみたで、伝説のポケモンだけあって厄介な相手だな」

 

 ホウオウとそれを従えるシャムと戦っていたキョウだったが、ある程度余裕をもってルギアを相手にしているアキラとシバと比べて少しやり辛さを感じていた。

 ロケット団幹部として動いていたジムリーダー時代よりもずっと鍛錬を重ねてきたとはいえ、シバみたいに伝説のポケモンを相手に真正面から戦えるだけのパワーはどくタイプには無かった。

 そもそもどくタイプの真骨頂は、直接攻撃よりも毒を食らわせることで焦る相手を惑わせ、徐々に弱らせていくテクニック型だ。

 ところが、その最大の武器が()()()()()()()()()()()為、対応に手を焼いていた。

 

「”せいなるほのお”!!」

 

 特大の規模で放たれる特殊な炎を戦っていたブーバーとカポエラーは”みきり”で避け、エレブーやバンギラスも”でんこうせっか”とその”ものまね”を利用することで防ぐのでは無くて回避を選択して逃れた。

 ホウオウが放つ炎に特別な性質があることは、エレブー達の”まもる”を打ち破ったことからもキョウは察していたが、その性質がどういうものなのか当初は把握し切れていなかった。

 だけど戦っている内に幾つかがわかってきた。

 

「クロバット、”あやしいひかり”。他は”ヘドロばくだん”」

 

 キョウが小さいながらも良く通る声で伝えると、クロバットは機敏な動きでブーバー達の動向に気を取られているホウオウに接近、その顔に”あやしいひかり”を浴びせる。

 目が眩むだけでなく正気を一瞬だけ失う光にホウオウの動きは鈍る。強力なポケモンは”こんらん”状態に追い込むこと自体難しいが、それでも一瞬でも視界を奪ったり動きを鈍らせて隙を作ることは出来る。

 実際、動きが鈍ったのを見計らい、正面や背後を含めたあらゆる角度からキョウのポケモン達が大量の”ヘドロばくだん”を放ち、ホウオウの体は絶え間なく生じる爆発の嵐に包まれる。

 そしてブーバーとカポエラーの二匹が爆発に巻き込まれる恐れがあることを厭わず飛び込み、ホウオウの片足の関節に強烈な蹴りを同時に叩き込む。

 

 またしても踏ん張ることが出来なくてホウオウが前のめりに崩れていく中、肩に乗るシャムはまたかと内心で愚痴った。

 キョウのポケモン達も厄介で面倒だが、アキラのポケモン達は動きだけでなく戦い方も鬱陶しかった。

 手持ちを何匹も投入していることからもわかるが、トレーナーであるアキラ自身はルギアとの戦いに力を入れており、ホウオウの相手はブーバー達に任せっ切りだ。

 それだけでも舐められていることに腹が立つが、今仕掛けて来た二匹の攻撃は決まって足やその関節、頭や首に集中しており、相手の弱いところを徹底して突いて行くと言う嫌がらせ染みた性格が悪そうな戦い方だった。

 

 しかもホウオウが倒れたタイミングに、エレブーとバンギラスが放った”かみなり”と”いわなだれ”が降り注いできた。

 いずれもホウオウにとって相性の悪い攻撃であり、技の選択だけでなく攻撃のタイミングもトレーナー不在にも関わらずしっかりとしていた。

 完全な野生のポケモンでもこうも適切に動く方が珍しいのだから、彼らがトレーナーであるアキラの元で必要な技術や知識を含めた戦い方を教え込まれて育成されていることをハッキリと示していた。

 だが、それでこのやられっぷりに納得出来るかと言われるとシャムは納得出来なかった。

 

「”じこさいせい”!」

 

 特大の落雷と岩の雪崩が止んだタイミングで、耐え切ったホウオウは体を持ち上げながら全身を仄かに燃え上がらせながら先程まで受けたダメージから体力を回復していく。

 

「毒使いなだけあって、頻繁に”どく”状態にしているみたいだけどホウオウには無駄よ。”せいなるほのお”だけでなく、ホウオウが”じこさいせい”する時に自ら発する炎は自身にとって不利な状態を無力化する力があるわ」

 

 シャムの強気な言葉に、キョウは顎に指を乗せる様に添えて考え始める。

 これがホウオウの厄介な点だ。一般的なポケモンを遥かに凌ぐ体格と能力を有するにも関わらず、状態異常などの悪条件さえ自力で無力化してしまう。

 戦いながら相手を状態異常に陥れて弱らせていくキョウの戦い方とは相性が悪い。

 一見するとアキラのポケモン達が実行している単純な力技でしか倒せない様に見えるが、案外そうでも無さそうだとキョウは見ている。

 

 回復されてしまうが”どく”状態に追い込むことは出来る。そして状態異常などの不利な状態を無力化するのは、”じこさいせい”などをする時みたいに自ら炎を発すること、つまりホウオウ自身の認識が関わっていると考えられる。

 それならば密かに毒を仕込むなどをして気付かない内にジワジワ弱らせることも可能だが、アキラのポケモン達が早い段階から大ダメージを与えてしまって回復されるので、その手段は取れないでいた。

 

 だけどキョウとしては、アキラはホウオウにこの様な能力がある可能性を考慮していたのではないかと見ていた。

 今は別の戦いに向かったヤドキングやドーブル、ゲンガーの三匹がルギアとホウオウに何をやっていたのかは、見ていたキョウはある程度察していた。

 仮にそれが通じなかったとしても、ホウオウには軒並み攻撃力が高いのやタイプ相性で有利に相手取れる面々を向かわせていることからも、最終的にはタイプ相性と力で捻じ伏せる彼の意図が窺えた。

 

「伝説との力の差を埋める為に複数のポケモンで攻める発想はどこも同じね。だけど、それでも埋め切れない程の強大な力や普通のポケモンなら持たない特別な力を持つからこそ、伝説のポケモンは伝説と呼ばれているのよ」

「確かにお前の言う通りだ。だが、ポケモンの研究やバトルの技術は常に発展し続けている。何時までも伝説のポケモンが、昔話で言い伝えられている様な圧倒的な存在では無い」

 

 単純な能力の高さが、強さの全てでは無い。

 ロケット団の幹部として暗躍していた頃、キョウは伝説の鳥ポケモンの一体であるフリーザーを捕獲した経験があった。

 当時でも捕獲は困難ではあったが、集めた情報から事前に捕獲計画を立て、対峙させるポケモン達にも相応の育成を施すなど、一昔前なら不可能に思えたことも時代の移り変わりと共に可能になった。

 現にホウオウは人の手に捕獲されて、更には自らの意思も奪われているのも時代の変化と共に可能になったことであると同時に伝説のポケモンが圧倒的な存在では無くなってきた何よりの証明だ。

 なのにそのことにホウオウを従えているシャム、そしてルギアを連れるカーツは口で言っている割には意識している様には見えなかった。

 恐らく、自力で捕獲した訳では無い貰い物であるのと一般ポケモンを大きく凌ぐ圧倒的な能力を目の当たりにしたこと、何より過度なくらいアキラとそのポケモン達に対して敵意を剥き出しにしている影響もあって、そういった認識が薄いのだろうとキョウは見ていた。

 

「その強気、何時まで続くかしら」

 

 シャムの挑発にキョウは鼻で笑いながら軽く流した。

 昔ならその台詞をそのまま返すところだったが、そうする気も湧かなかった。相手がどれだけ慢心していようと、今の自分は目の前の相手に全力を出すだけだからだ。

 

「何時までもお前達に構ってなどいられない。いい加減勝負を決めさせて貰おう」

 

 ”じこさいせい”で体力含めて限りなく万全に近い状態にまで回復したホウオウは、”せいなるほのお”を放つべく口を開く。

 それにキョウは自身の手持ち達と共に身構えるが、ホウオウの口からは炎どころか、まるでガス欠でもしたのかすぐに消えてしまう程に弱弱しい火しか吐き出されなかった。

 

「なにっ!?」

「おっ」

 

 想定外の事態にシャムは動揺し、キョウも意外そうな反応を見せた。

 その直後、好機とばかりにエレブーとバンギラスにそれぞれ投げ飛ばされたブーバーとカポエラーは、技が出なくて固まっているホウオウの顔を手にしている”ふといホネ”と”スピードスター”をベースにした手裏剣状の得物で殴り飛ばした。

 

 

 

 

 

「潰されるぞカイリキー!!!」

 

 シバが声を荒げた直後、戦っていたカイリキーはルギアの足の下敷きになる。

 持ち前の怪力で何とか踏み止まっていたが、そのまま体格やパワーの差で力負けして踏み潰されてしまうのは時間の問題と思われた時、すぐさまサンドパンがルギアの足に鋭い爪を突き立てると目にも止まらない速さで滅多切りにする。

 痛みで力が緩んだところをカイリューやサワムラー、カポエラーらが横から体当たりみたいに激しくぶつかる形で押すことで、ルギアの足を強引に押し退ける。

 

「っ! ”エアロブラスト”だ!!」

 

 口を開いて足元目掛けて”エアロブラスト”を放とうとしたが、懐に飛び込んだエビワラーのロケットジャンプからのアッパーを顎の下からかち上げられる様にまともに受けてしまい、空気の塊はまたしても見当違いな方へと飛んでしまった。

 天井に当たったことで破壊された建物の瓦礫が落下していくが、それらはハガネールが傘代わりになることでアキラとシバを守るので特に支障は無かった。

 

 戦っている相手とのタイプ相性は良い筈なのに、全く状況が良くならないことにカーツは歯軋りをする。

 ルギアの”エアロブラスト”は命中さえすれば、防御力が高くて相性が悪いハガネール以外なら大ダメージか戦闘不能に出来る威力はあるのだが、先程のエビワラーみたいに度々妨害されて中々決まらない。

 そうしている内にサワムラーとカポエラーを背に乗せて飛んでいたカイリューが、ルギア目掛けて二匹を交互に投げ付け、二匹はそれぞれ得意の蹴りをルギアの脳天に叩き込む。

 

 すかさずルギアは何度目かの”じこさいせい”を実行するが、ここに来てカーツは違和感を抱き始めていた。

 アキラとシバのポケモン達の攻撃力は高い。それは確かなのだが、心なしか戦い始めた時よりも早くルギアは消耗している気がするのだ。

 ”じこさいせい”がポケモンセンターや休息での回復とは異なるのは知っているが、それでも明らかにおかしかった。

 目の前の敵との戦いに理解し切れない違和感の両方を意識し過ぎたことで対処も疎かになってしまっていることはカーツも自覚していたが、彼らの攻撃は考える余裕を与えなかった。

 

 立ち直ったカイリキーが腕を前に伸ばしながらカイリューに飛び掛かると、ドラゴンポケモンは伸ばされた上側の両腕を掴むやかいりきポケモンを振り回す様に自らの体を軸に回転を始める。

 そして回転の勢いが最高潮に達したタイミングで、カイリューはカイリキーをルギア目掛けて放り投げる。

 投げ飛ばされたカイリキーは四本ある腕も含めた体を真っ直ぐ伸ばした状態でブーメランの様に高速回転しながら飛んでいき、そのままルギアの顔を弾き飛ばす。

 

 ”かみなりパンチ”でも纏っていたのか激しく火花が顔に飛び散り、衝撃でルギアは体をフラつかせる。

 それに持ち堪えながらカーツは違和感を確信へと強める。確かに手痛いダメージだが、戦い始めたばかりの頃のルギアならすぐに持ち直していた筈だ。

 なのに一体何故なのか考えていた時、高速回転しながら飛んでいたカイリキーが弧を描いて戻ってきて、今度はルギアの頭を後頭部から弾き飛ばす。

 

 先程とは違い、完全な意識の外からの攻撃でルギアはまたしても火花を散らしながら、今度は完全に前に倒れ伏してしまう。

 

 ブーメランみたいに回転しながら飛んでいたカイリキーは上手く体を捻らせて空中で体勢を整えることで巧みに着地すると、すぐに立ち上がってカイリューと共に並んで拳を前に突き出したファイティングポーズを取った。

 二匹のその姿はある意味で挑発している様なものであったが、倒れたルギアはそんなことを気にしている余裕は全くなかった。

 それもその筈だ。今ルギアにはある異変が起きていたからだ。

 

「”じこさいせい”! どうしたルギア!? ”じこさいせい”だ!!」

 

 カーツは必死に命じるが、どれだけ命じてもルギアが”じこさいせい”をしないのだ。

 意識こそ飛んではいなかったが苦しそうに息を荒げるだけで、何時までも回復する気配は無かった。

 それどころか時間が経つにつれて息が荒くなっていた。

 

「やっと”じこさいせい”のPPが底を尽いたか。思ったよりも保ったな」

 

 ルギアとカーツの様子を遠目で見て、アキラはホッとした様に呟く。

 戦況はこちらが優勢ではあったが、どれだけダメージを与えても回復される”じこさいせい”にはかなり苛立った。

 それだけでなく、ハガネール以外は当たれば大ダメージ間違い無しの”エアロブラスト”を毎回避けたり攻撃を妨害していくのは、相手の出方を良く観察してタイミングなどを見計らうのに神経を使うので結構アキラは疲れていた。

 単に力任せに暴れるだけでこれだけ消耗するのだから、やはり伝説は手強い。その力を十分に発揮されたら、分散などしないで手持ちの戦力全てをぶつけなければ対抗することは難しかっただろう。

 

「しかし、まさかお前がキョウみたいなことも出来るとはな」

「あっ、やっぱり気付いていました?」

「最初にゲンガー達三匹が奇妙な動きをしている時から何か仕掛けていると思って観察していたが、何をしていたのかを確信したのはさっきだ」

 

 単なる力押しだけでは、幾らカイリュー達が強くなったとしてもルギアとホウオウを同時に相手取るのはかなり困難だ。

 ”うずまき島”での戦いで伝説のポケモンの力を経験したアキラは、今回の様に戦うことを想定して自分達の消耗を減らすと同時に確実な勝利を手にする為に、ルギアとホウオウに対して小細工とも言える仕込みを手持ち達にさせていた。

 それは一対一での戦いならすぐに気付けたが、今回みたいに多くのポケモンが入り乱れるだけでなく目まぐるしく状況が変わっていく戦いでは良く観察しなければわからないくらい巧妙に隠されており、位置的に伝説のポケモンの肩に乗っていたロケット団の二人では気付きにくいもの。

 伝説が相手でもある程度は正面から対抗出来る力を得たにも関わらず、そういう手段も選択肢に入れるだけでなく巧みに仕掛けられる点からも、シバはアキラの成長を感じ取っていた。

 

 ポケモンと共に肉体を鍛えたことで得た力だけでなく、ポケモンのことを良く知る為に学んできたことで身に付けた知識。

 そして我が強いだけでなく頭の良い手持ち達をトレーナーとして手綱を握るべく、目を光らせるだけでなく知らず知らずの内に影響されたのか、必要とあれば真面目そうな振る舞いや見た目から想像しにくいが相手の目を盗む狡猾な手段も取れる。

 

 シバから見れば、今のアキラ達は自身の手持ちである格闘ポケモン並みのパワーにキョウの毒ポケモン達が有するテクニックの両方を兼ね備えていると言っても過言では無かった。

 伝説との戦いがもうじき終わる事を確信していた彼は、増々アキラとの再戦の時が来るのが楽しみであった。




ゴールド達がオーキド博士から話を聞いていた時、アキラ達と戦っていたルギアとホウオウに異変が起こる。

作中で語られている戦いにおいてレッドとアキラが重視している点や考えが異なるのは、これまでの経験や連れている手持ちが大きく影響していますが、他にも違いがあったりします。

後、平時でのアキラはクリス程に規律正しい優等生とまではいかなくても良識があって真面目なので、傍から見ると狡猾さや荒事には無縁そうなのですが、初期よりも戦い方や悪の組織には容赦しない姿勢が強くなっているのは経験だけでなく、これも手持ちの影響が大きいです。

次回、ゲンガー達側の戦いの状況について
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