「ホウオウ、”じこさいせい”!……っ! これもダメか!」
ホウオウの肩に乗っているシャムは必死になって回復技を命じていたが、あまり芳しくない様子であった。
ブーバーとカポエラーが顔に叩き込んだ打撃攻撃によるダメージが大きかったので急いで回復させようと試みていたが、先程不発で終わった”せいなるほのお”同様に傷が癒される気配は全く無かった。
そんな技が不発時の隙をブーバーを筆頭としたアキラのポケモン達やキョウ率いる毒ポケモン達は見逃さなかった。
「クロバット、”ちょうおんぱ”。アーボックとマタドガスは”どくどく”、ベトベトンとドククラゲは”ヘドロばくだん”」
機敏な動きが取れない巨体を逆手に取って急所を重点的に狙った嫌がらせの様な攻撃をするブーバーとカポエラー、弱点であるタイプの技を力押し且つド派手に仕掛けるエレブーとバンギラスの猛攻に晒されて翻弄されているホウオウに対してキョウのポケモン達が動く。
クロバットの口から不快で気がおかしくなりそうな音波が発せられて、ホウオウのみならず肩に乗っていたシャムも巻き込まれる。
そうして動きが鈍っている間にホウオウの足にアーボックが噛み付き、マタドガスが毒液を吐き出してにじいろポケモンを毒に侵すと放たれた毒の爆弾が更なる追撃を仕掛ける。
ちなみにアキラのポケモン達はクロバットが攻撃を仕掛けた段階で既に離脱しており、全く巻き込まれていなかったどころか離れた場所で次の攻撃の準備をしていた。
思ってもいなかった追い詰められた状況にシャムは焦る。
今までは”じこさいせい”をすることで何とか戦況を保ってていたが、攻撃手段である”せいなるほのお”共々使えなければ、瞬く間に相手のペースに押されてしまう。
「”かぜおこし”!」
苦し紛れにホウオウは巨体に見合った巨大な翼を羽ばたかせた。
それは小さな鳥ポケモンが起こす様な風では無く、巻き起こされた強風は重いコンクリートの瓦礫さえも吹き飛ばす程であったのでキョウのポケモン達は吹き飛ばされていき、アキラのポケモン達も攻撃準備を中止して体が大きいバンギラスの後ろに隠れると同時に吹き飛ばされない様に支えた。
否、吹き飛ばされない様に支えるのは正しかったがそれは口内を光らせているバンギラスのエネルギーチャージと狙いを安定させる為でもあり、単に耐え忍ぶだけでは無くて反撃の為の時間稼ぎだった。
強風が吹き荒れる中、バンギラスは溜めに溜めたエネルギーを”はかいこうせん”として開放。
まだそこまで精密に狙えないこともあったが、胴に命中した破壊的な光線は激しい爆発と火花を散らしてホウオウの動きを止めた。
ただでさえ有利だった戦況が、ホウオウが一部の技を使えなくなったことでほぼ決定的なものになった。そうキョウは感じていた。
シャムは何故こんなことになったのか気付いていないが、歴戦の忍びは何が起こったのか全て察していた。
今は離れたところにいるが、アキラの手持ちの中でゲンガーとヤドキング、ドーブルの三匹が離れるまで伝説のポケモン達に仕掛けていた小細工。
あれは最初の”やどりぎのタネ”だけでは無かったのとそれ自体、本命に気付かせない目眩ましだった。
彼らの本命は、ルギアとホウオウが”じこさいせい”などの技を使う度に技のPPを減らす”うらみ”だ。
さっきまでホウオウと戦っていたヤドキングやドーブルは覚えない技だが、彼らは”ものまね”と”スケッチ”が使えるので扱うだけなら問題無い。何なら今この場で戦っている何匹かも”ものまね”で”うらみ”をコピーしている節すらあった。
そうして”うらみ”によって少しずつ二匹がメインに使っている技のPPを減らしていったことで、今の様に彼らを追い詰めるに至った。
ルギアの方は技のPP減らしだけでなく、”どくどく”による”どく”状態にする仕込みもしていたが、遠目でしか見ていないものの毒使いのキョウも感心する程に彼らの使い方は巧みだった。
全てを見た訳では無いが、”どくどく”を使ったのはゲンガーでは無くてサンドパンの方だろう。
彼らがやったのは表面から”どくどく”を浴びせる一般的な方法では無くて、傷口などから追加で”どくどく”を注入したことだ。それも可能であれば傷が深い個所や静脈などの血流によって毒の巡りが速くなる個所を狙った上でだ。
普通のトレーナーなら、相手を”どく”状態にしたらそれで満足してしまう。一般的な教科書にも、一度状態異常にしたら上書きや更なる追加効果を与えることは出来ないとされている。
普通ならその認識は正しいが、知識と技術を有した上で詳しく追及をすれば更なる効果が望める。それをアキラとサンドパンは実行したのだ。
実際、彼のねずみポケモンは度々ルギアの巨体を鋭い爪で切り裂いたり突き立てたりしていた。体格の関係上、足の関節を狙うことが多かったものの、可能であるなら首筋なども切り付けていた。
だが追加で毒のダメージを増やすには、戦うポケモンの体の構造や仕組みなどをトレーナーだけでなく実行するポケモン自身もある程度知っているか理解していなければ、実現させることが出来ない芸当だ。
ルギアの体についての詳細な情報は全くと言って良い程に不明なので、恐らくアキラ達は一般的な鳥ポケモンの知識を応用していると思われるが、それでも中々出来ることでは無かった。
ルギアが何回”じこさいせい”しても時間が経つにつれて早く消耗したのも、”どくどく”の性質である時間経過でダメージが大きくなるのに加えて追加で毒を体内に直接注入された影響だ。
ホウオウに対して、この戦法を使っていないのは今戦っている手持ちが使いこなせないのが一番の理由だと思われるが、毒使いであるキョウがいることやさっきまでホウオウが見せていた自身にとって不利な状態を無力化する力を持っているから意味が無いと判断したからと推測出来た。
「恐ろしい少年だ…」
思わずキョウは身震いをした。
普通のポケモンと違って、研究が進んでいなく情報不足であるのが常である伝説のポケモンを相手に効果的な対抗策をアキラが用意していたことにだ。
流石に全てを調べ上げた訳では無いだろうけど、彼は通常のポケモンバトルでも通用する戦い方を取り入れつつも、伝説のポケモンが持つ最大の武器や能力を調べ上げ、それらを如何にして封じたり対処するか備えていた。
加えて今ホウオウと戦っている彼のポケモン達も一見すると勝手に動いている様に見えるが、状況に応じた適切な判断や仲間の動きを意識しており、アキラが彼らのトレーナーとして連携などの目的意識を持ってしっかり指導していなければ実現することは不可能なことだ。
実際スタンドプレーに見えても、他を考えた動きを見せる場面が良く見られた。
単体でも十分過ぎるくらい強い手持ち達を伝説のポケモンに対抗出来るまでに連携を整えるだけでなく、如何にして敵の本領発揮を封じ、一方的に自分達の全力をぶつけて敵を倒すかの準備が彼らはしっかりしている。
三年前の時点では、ロケット団が研究していたミュウツーと交戦したという情報以外は見向きもしなかった少年が、ここまで成長したことが恐ろしくはあった。
彼がここまで強くなった原動力――その秘訣は一体何なのか。
興味はあったが、戦いの充足感を求める様になった今では、それ程までの熱を抱いて戦う彼がキョウには羨ましくもあった。
ホウオウとシャムが追い詰められていた頃、ルギアを従えるカーツも追い詰められていた。
”じこさいせい”による体力回復だけでなく、”エアロブラスト”さえも使うことが出来なくなっていたからだ。
アキラが口にした”PP切れ”発言は耳にしていたが、それにしては消耗が早過ぎるとカーツは感じていた。
あれだけゴリゴリに力で押していたのに何か小細工をしていたのだろうか。
ゲンガーがいるならわかるが、今戦っているポケモン達にそんなことが出来るようには見えなかった。
またしても屈辱を感じている相手に負けるのではという焦燥も相俟って、カーツはアキラが攻撃以外で何をしたのか全くわからなかった。
「奴は、”なにをされたのかわからない”って顔だな」
「わからない様にコソコソやっていましたからね。ただ、途中で気付かれる可能性も考慮してはいたのですが」
「伝説のポケモンが倒されるとは思っていなかったのだろう。誰かに負かされたから今己の配下として従えられているという自覚が薄い」
普通に考えれば、伝説のポケモンが一般ポケモンに負けることは無い。それだけ基礎ステータスや有する固有の特殊能力は隔絶しているからだ。
今は優位に戦えているアキラのポケモン達でもタイマンで戦えば、スイクンみたいな一般ポケモンと変わらないサイズでも最大戦力であるカイリューなら上手く行けば勝てるが、流石にルギアみたいな見上げるくらい大きい上にスイクン以上に強いとお手上げだ。
だからこそアキラはルール無用の野良バトルの利点を最大限に活かし、数と連携で攻めるのは当然として対伝説戦を想定した対策を考えて、手持ちにもその考えや方法を浸透させるなどの準備をしてからこうして戦っていた。
伝説と呼ばれるポケモン達が強大な存在であることは変わりないが、それでも一昔前と比べれば対抗策が皆無な絶対的な存在では無くなってきている。
それはポケモン達を理解したい、詳しく知りたいという人達やポケモンが持つ力をより引き出したいと願って育成技術やバトルを発達させてきた先人達の研究と努力のお陰だ。
時代は、常に変わって来ている。
「けど、追い詰めたとはいえ相手は伝説です。最後の最後まで気は抜きません」
遅かれ早かれルギアは倒れるが、他の技を使えばまだ戦うことは出来る。
カーツは何をしたのか喚くだろうが教える義理は無い。今ここで情報を明かしたら、後で何があるのかわかったものじゃない。
何もわからないなら、何もわからないまま葬る。それだけだ。
強い風がアキラの頬を撫でるが、それは攻撃目的の為の風では無かった。
倒れていたルギアが息絶え絶えに大きな翼を羽ばたかせて、体を宙に浮かせようとしていたのだ。
しかし体は浮き上がりはしたが、何故か両足で立つのを躊躇っている様に見えた。
「あれだけ足を集中的に攻撃したんだから、”じこさいせい”が使えない今は、まともに立つことも難しいか」
ルギアの様子を見ながらアキラは状況を冷静に分析するが、視線は浮き上がったルギアの頭上を飛んでいるカイリューに向けられていた。
全てが思惑通りとまではいかないが、それでも今回の戦いで対伝説を想定した対策の殆どは機能した。
それだけでなく、同時に幾つかの幸運にも恵まれた。
憧れであり、尊敬している人物であるシバと彼と行動を共にしていたキョウの加勢。
自分達が駆け付けるまでの間、ルギアとホウオウを相手に戦い、しっかり時間を稼ぐと同時に技を使わせて消耗させてくれたゴールドとクリスの奮闘。
彼らのお陰で、ホウオウや目の前のルギアをここまで弱らせられたのと回復の手段を潰せたのだ。後は悪足掻きをされる前に気を抜かず、しっかりと止めを刺すだけだ。
アキラの視線に気付いたカイリューはすぐさま彼の元に戻ると、彼は流れる様にカイリューをモンスターボールに戻すやロケットランチャーに装填して狙いを定める。
シバもカイリキーをヌンチャクの先に付けているモンスターボールの中に入れると、勢いを付ける様に巧みにヌンチャクを振り回し始めた。
「ルギア! ハイドロ――」
「遅い!」
腰を始めとした全身に力を入れて、アキラは肩で抑え込んだロケットランチャーの引き金を引く。
それとほぼ同時にシバは目にも止まらない速さで振り回していたヌンチャクを前へ投げ飛ばす様に突き出す。
それぞれのボールから飛び出したカイリューとカイリキーの二匹は、加速した勢いのままに巨体を浮き上がらせていたルギアの顔を同時に殴り飛ばす。
「ホウオウ! 何でもいいから奴らを近付けさせるな!」
「最後まで足掻くか…」
ヤケになったシャムにキョウは呆れとも取れる何とも言えない顔を浮かべる。
回復が出来ないだけでなく”どく”状態にまでなってしまい、何時倒れてもおかしくないので最後の悪足掻きなのだろう。
ホウオウの能力と巨体なら適当に暴れただけでも並みの腕利きトレーナーや強豪ポケモンでも敵わないが、今戦っている相手はそれが通用する様な相手ではない。
見る影もないくらいに体がボロボロになっても尚、命じられた通り悪足掻きをするホウオウの姿にブーバーは言葉にし切れない顔を浮かべた。
それは伝説と呼ばれるポケモンの見るも無残な姿に憐れんでいるのを感じさせるものであった。
だがそれも一瞬だけで、表情を普段から浮かべている鋭いものに引き締めたひふきポケモンは、すぐにその場にいた他の面々に声を掛け始めた。
人であるキョウでは全てを理解することは出来なかったが、それでも何かを伝えていることや聞いているエレブー達が真剣な面持ちで頷いたことまではわかった。
そしてブーバーがまるでクラウチングスタートみたいな体勢で構えた時、起き上がったホウオウは口からまだ出せる技の中で最大火力である”だいもんじ”を彼ら目掛けて放った。
迫る巨大な大の字状の炎に対して、すぐにブーバー以外のアキラのポケモン達は動いた。
カポエラーは”だいもんじ”目掛けて、首に巻いた”シルクのスカーフ”で威力を高めながら細かい制御を可能にしたことで手に出来た”スピードスター”をベースに”みがわり”のエネルギーを混ぜ込んだ身の丈程の大きさの巨大手裏剣を投げ付け、バンギラスもさっきよりもチャージする時間は短いが”はかいこうせん”を放つ。
二つの攻撃は”だいもんじ”に激突した瞬間、内包されていたエネルギーが爆発と言う形で解放されたことで”だいもんじ”を相殺する。
そして爆発によって起きた衝撃波や飛び散る火の粉は、エレブーが”ひかりのかべ”を展開することで完全にシャットアウトする。
「大人しくやられなさい!」
相手がそうなるように動いていることはわかってはいたが、思う様に動けないまま追い詰められたことでシャムは苛立ちを露にした。
”じこさいせい”が使えない今、”どく”状態になったホウオウが倒れるのは時間の問題。
ならば倒れるまでに一匹でも多く道連れにしてやると意気込んだ時だった。
急にカポエラーとバンギラス、エレブーがまるで道を開ける様に分かれたのだ。
三匹の後ろにいたブーバーはまだクラウチングスタートの姿勢だったが、その体には微弱な電流が流れたり小さな火花を散らしていた。
奇妙な異変が起きているブーバーだったが、次の瞬間にはシャムとホウオウの視界から消え、直後に大きな音と共にホウオウの顔が唐突に横に大きく弾かれた。
またキョウのポケモンが音も無く仕掛けたのかと思ったが、すぐに違うことに気付いた。
何故なら今こうしている間も、ホウオウが全身の至る所を攻撃されているからだ。
何とかその原因を探ろうとシャムは目を凝らすが、赤い雷の様なのが目で追うのが困難な速さで縦横無尽にホウオウを強襲していることしかわからなかった。
だけど彼女は、直感的にその正体がブーバーなのに気付いた。
万全の状態のホウオウならすぐにでも翼で打ち払えたであろうが、今弱っている状態では目にも止まらない速さで動くブーバーと思われる赤い残像にされるがままだった。
やがて、赤い残像はホウオウから離れて一旦止まった。
正体はシャムの推測通りブーバーであったが、その見た目は若干変わっていた。
パッと見は何時もの姿と変わらないが、度々体の至る箇所から電流が迸り、散らした火花や鋭い音を立てていた。
一部の手持ち達が変わった得物を手にしていた様に、アキラのポケモン達が使える何かしらの変わった技術なのだろうか。
何故アキラ達はこうも多様な技や技術を持ち合わせているのか。
シャムも仮面の男から直々に様々な技術や技を教わってきたが、こんな技術は聞いたことが無かった。
「また負けるのか…こんな奴らに」
普段のふざけた振る舞いやトレーナーとしてまともに手持ちを統率し切れていない姿も相俟って、”スズの塔”での敗北は今の自分達ではあんな奴の相手にすらならないことに理不尽なものを感じるだけでなく、自分達のプライドを激しく傷付けるものだった。
だからこそ、奴を倒す為に伝説のポケモンの力を手にした。
しかし、その伝説のポケモンの力があってもアキラに負ける。
全く考えていなかった――否、一番考えたくなかった可能性が現実のものに成りつつあった。
動揺のあまり、シャムは目の前の状況を視界に収める以外、最も重視していた
気が付けば、突如としてシャムの体は浮き上がっていた。
慌てて背後に目を向けると、何時の間にかキョウのクロバットが彼女の背中を掴んでいたのだ。
「貴様! 何をする! 離せ!!」
「何って、危ないからだ」
暴れるシャムを無視してクロバットに指示したキョウは淡々と理由を告げた。
幾ら自己責任とはいえ、
そして彼はクロバットがシャムを連れてある程度離れたのを見計らって合図を出すと、クロバットを除いた彼の毒ポケモン達は一斉に攻撃や何かしらの行動を開始。
シャムという指示を出す存在がいなくなったことで、行動に空白が生まれて隙だらけの姿を晒していたホウオウは彼らの攻撃や撒き散らされた毒によって後退する。
そのタイミングに、アキラのポケモン達も動く。
カポエラーは両手を掲げて、瞬く間に先程爆発させた巨大手裏剣を手を伸ばした先で回転させながら生成するや投げ飛ばし、エレブーとバンギラスも何時も以上に体の奥底から引き出すかの様に力を入れて”10まんボルト”を放つ。
それらを真正面から同時に受け、込められていたエネルギーによって起きた爆発で弱っていたホウオウはよろめく。
”どく”状態に加えて回復出来ないが故の猛攻で何時意識が飛んでもおかしくなかったが、それでもにじいろポケモンは一瞬だけ白目を剥けながらも耐えた。
しかし、次にホウオウの意識が戻った時、目に入ったのは全身を駆け巡る雷を纏ったブーバーが飛び蹴りの構えで自身の目の前にいる瞬間だった。
赤い稲妻の様な軌跡を描きながら駆け抜けたブーバーは、跳び上がった宙で必殺技を放つ体勢のままホウオウを見据えていた。
不俱戴天の敵であるワタルが連れているカイリューと同じであろう技術を使うのは癪ではあったが、その不満を抑えれば今発揮している力はかなり有用なものであった。
当然、身に付けるのに時間は掛かったのとデメリットも大きいが、瞬間的でも大きな力を引き出せればブーバーにはそれで良かった。
”こうそくいどう”を凌ぎ、ひょっとしたら”でんこうせっか”すら凌ぐかもしれない雷速から繰り出される”メガトンキック”がにじいろポケモンに突き刺さる。
今のブーバーが自力で整えられる最高の条件下で放つ最強の”メガトンキック”が炸裂し、ホウオウの体はあっという間に背中から観客席を砕きながら大きな音と共に叩き付けられて姿が見えなくなる程の粉塵が舞い上がる。
そしてほぼ同時刻にアキラとシバも動いていた。
終わらせるつもりで仕掛けたカイリューとカイリキーの一斉攻撃ではあったが、それを受けても尚ルギアにはまだ意識があったからだ。
だけど、それは今の彼らにとっては誤差の範囲内でもあった。
ルギアの肩に辛うじてしがみ付いているカーツが、何やら凄い目で恨みがましく睨み付けていたがアキラは気にしなかった。
今度こそ止めを刺すべく、カイリューは頭部に強烈なダメージを受けたことで意識が朦朧としているであろうルギアの頭上へとすぐさま移動し、アキラもそれを確認する。
「シバさん、ルギア打倒の手柄は貰いますね」
シバにそう伝えると、アキラは指で自身の頭頂部を示しながら大声でカイリューに叫んだ。
「リュット! ”アイアンテール”!!!」
前々から練習はしていたが自力で習得するには時間が足りなかった為、ポケモン協会が提供してくれたわざマシンを利用したことで完全に身に付けた新たな技をアキラは伝えた。
そしてカイリューは彼に言われるまでも無くそのつもりだったので、太くて巨大な尾を瞬時に鉛色に硬化。それから空中で前転させることで勢いを付けると、まるで金棒を振り下ろす様に昔から使い慣れた技である”たたきつける”を更にパワーアップさせた鋼の一撃をルギアの脳天に叩き込んだ。
殴られた瞬間、ルギアは白目を剥き、受けた頭部に痣を浮かび上がらせながら浮遊していた体は崩れていく様に落ちて行った。
同じ頃、ブーバーの一撃を受けたホウオウは完全に崩壊した観客席を下敷きに蹴られた胸部に焦げた足跡を残し、伝説のポケモンとは思えないまでに力無く口を半開きに仰向けに倒れている姿を晒していた。
砂埃と地響きを立てながら力尽きるルギアを見届けながら着地したカイリュー。
瓦礫の山の上で倒れるホウオウを踏み付けるブーバー。
二匹は相手がもう動かないと見るや天へと顔を向けて勝利の雄叫びを上げるのだった。
アキラ達、シバやキョウとの共闘の末にルギアとホウオウを撃破する。
原作でも善側や悪側問わずに一般ポケモンでも伝説と互角に渡り合ったり、時には倒したりする展開や描写があったりしましたが、ポケモンとトレーナーとの関係が昔と比べて大きく変化してきたのと同じように、相手の情報を瞬時に把握出来るポケモン図鑑みたいな機器の発達、ポケモンへの理解や育成技術の進歩などの様々な点で進化したり発展して来たこともあるかなと思っています。
度々描いている本来の時間軸での彼らが使っていた技や戦い方、技術はこの頃から身に付けたものが多いです。
ただ強力ではあるものの、実用性や汎用性などに問題を抱えているのも多いです。
次回、遂に仮面の男を追い詰める?