SPECIALな冒険記   作:冴龍

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築き上げた総攻撃

 自分の体でありながら、自分では無い体の感覚と視界、そして考えが脳内に浮かぶのをアキラはハッキリと感じ取っていた。

 

 自身とカイリュー、双方の視界や体の感覚、思考を共有する状態。

 

 それはカイリューが持つ伝説のポケモンが相手でも通用する高い戦闘力に、アキラの常人離れした反射神経に相手の動きを正確に見抜く動体視力。

 極限状態でも思考の分担や第三者視点での客観的な周囲の状況把握などの恩恵を与える為、現状考えられる限りでアキラ達が引き出せる最強の戦闘手段の一つだ。

 

 様々な資料や文献を調べても思い当たる情報は殆ど無かった為、今の状態についてどういう名称があるのかはアキラは知らないが、仮ではあるものの”一心同体”や”シンクロ”などと言った形で表現していた。

 師であるシジマでも至る過程はわかっても、何故その状態になるかまでの詳しい理屈はわかっていない。そもそも自分みたいにスムーズにはいかないのと、その過程も本当に正しかったり、それしか手段が無いのかも良くわかっていなかった。

 もう少し解明されれば、この感覚に至れる時間を短縮出来るかもしれないが、今は目の前の敵を倒すことだけをアキラとカイリューは考えた。

 

「行くぞ。リュット」

 

 アキラが踏み込むとカイリューも先手必勝とばかりに”こうそくいどう”で踏み込み、一気にルギアとの距離を詰める。そしてアキラが握り締めた拳を鋭く前へ突き出すと、カイリューも同じ動きでルギアの片方の膝にパンチを叩き込む。

 それを機にドラゴンポケモンは、距離こそあるもののアキラと同じ動きでルギアの足にあらゆる打撃攻撃を仕掛けていく。

 

 当然ルギアは嫌がると同時に追い払おうとするが、猛攻であったにも関わらずカイリューはすぐさま離れて距離を取った、かと思いきやロケットスタートみたいに一直線に飛び立ち、ルギアの顔を殴り飛ばした。

 戦いは彼らの優勢で進んでいるかのように見えたが、当のアキラ自身はカイリューを介した攻撃時に感じる手応えや目から入るあらゆる情報、ルギアの反応から顔をしかめていた。

 

 今までは体格が同じ相手との戦いでしか発揮出来ていなかったので、自分達よりも何倍も巨大な存在との戦いで今の一心同体の感覚を使うのはこれが初めてだ。

 そして性質上、カイリュー自身の種族的な能力値や力が高まるなどの効果は一切無い。

 なのでこの感覚を使って戦うのは、平時でのカイリューが放つ通常攻撃が相手に効いていることが大前提だ。

 

 一応攻撃は効いているのだから、このまま戦えばいずれルギアは倒せる。

 しかし、それでも望んでいる短期での決着は難しそうなのが正直なところだ。

 

 そもそも今のカイリューとのシンクロ状態は、様々な事情で長時間の維持は未だに困難だ。

 ルギアの戦いにくい巨体と打たれ強さは、今の彼らにとってある意味では天敵まではいかなくても相性は悪かった。

 だけど相性が悪いことを理解しても尚、アキラ達は攻撃を続けながら考えることを止めずに有効な手段を模索し続けた。

 

 こちらの攻撃は効いているのに短期決着が望めないのは、ルギアがタフだからだ。

 真正面からの猛攻でこれなのだから、短期でルギアを叩きのめすには単に自分達の最強をぶつける以外にも効率の良い攻撃を追及して決めていく必要があった。

 具体的には顎の下や頭部の側面などを攻撃して意識を刈り取る形で戦闘不能にするなどの危険な攻撃も選択肢に入るくらいだ。

 

 寧ろやるべきだろ。

 

 強気と苛立ちが混じった自分とは異なる思考が浮かぶが、アキラは同意の考えを浮かべたタイミングで動く。

 アキラが蹴り上げる様な動きをすると、空中を浮遊しているカイリューも同じ動きをしてルギアを顎の下から蹴り上げる。

 勢いでカイリューの方は空中で後方宙返り、アキラの方は手を地面に付けながら後方に一回転するが、すぐに裏拳で殴り付ける様な動きで腕を振るうとカイリューも腕を振るって無防備を晒すルギアの顔を殴り付ける。

 

 大抵の相手は脳震盪によって無防備な姿を晒す程の攻撃だが、相手は伝説のポケモンだ。

 やり過ぎなレベルでも完全に沈黙するまで、彼らは徹底的に攻めるつもりだった。

 そうして今度は側頭部に狙いを定めて追撃を仕掛けようとした時、何の前触れもなくカイリューは目に見えない衝撃波でも受けたのか弾かれる様に後方に飛ばされた。

 

 鋭敏化したアキラの目で上手く見抜けなかったことを考えれば、エスパータイプの”サイコキネシス”なのは容易に想像出来た。

 かくとうタイプがエスパータイプに弱い理由が何故なのかわかる気がしたが、カイリューは上手く体勢を安定させて後ろに滑りながらも最小限のダメージで無事に着地した。

 

 意図的に脳震盪を起こす様な苛烈な攻撃をしていたが、意識が朦朧としていて狙いが定まらない状態でも容易に範囲攻撃が出来るルギアの厄介さにカイリューとアキラは舌打ちをする。

 万全状態である上位伝説の手強さ。改めて思い知らされ、アキラは自身の想定や準備がまだ甘かったことを悔いりながらも引き続き、この状況を打開する方法を考え続ける。

 

 そんな時だった。

 彼の目の前で、ルギアの顔面に影の塊みたいな球状のエネルギーがぶつけられた。

 飛んできた方角へ目を向けると、ゲンガー達が”シャドーボール”などの飛び技で攻撃しながら突撃していた。

 不意を突かれたルギアがそれらに意識を向けた直後、今度は別の方角からブーバーとカポエラーの師弟コンビが、それぞれ得物を手に隙だらけのルギアを後頭部から殴り掛かった。

 

 唐突に始まった他のアキラの手持ち達による攻撃。

 実は彼らはルギアの意識が猛攻を仕掛けるアキラとカイリューに向けられている間に、体を休めながら繰り広げられる攻防を観察して、彼らなりに次の作戦を練っていた。

 そして隙あらば何時でも仕掛けられる様に各メンバーがあらゆる方向に移動して、今が好機と見て一斉に動いたのだ。

 

 頭に血が上ったかの様にルギアに罵声みたいな荒げた声を浴びせながらも、闇雲に力任せな攻撃はせずに的確に体の各部の急所を狙うゲンガーやブーバーにカポエラー。

 中距離から援護することで今接近戦を挑んでいる面々にばかりルギアの意識が向かわないようにしつつ、次に取るべき行動や攻撃を伝えながら移動をするサンドパンにヤドキングとドーブル。

 そして接近戦を挑んでいる面々程では無いが、すぐ近くから電撃で攻撃したり時には防御技を駆使するなど体を張って仲間達を守っていくエレブーに、足は遅いが何時でも守れる様に移動している面々と行動を共にしながらも置いて行かれないように頑張って付いて行くバンギラス。

 

 様々攻撃や技を駆使して、ルギアの体の各部――体の構造的に関節などの弱点に成り得る箇所への集中的な攻撃。野良バトルならでは数の利を活かして巧みに伝説のポケモンを翻弄していった。

 そんな彼らの動きにアキラの表情は、嬉しそうなものに変わった。

 

 元からアキラは、手持ちが自分で判断して動くことを許容している。

 それは彼らの多くが素直にこちらの言うことを嫌がるからというのや自分がトレーナーとしてダメダメだった頃の名残りなのもあるが、ある程度成長出来た今でも彼ら視点でしか見えない何かや考えがあるからと考えているからだ。

 我が強かったり、素直だったりと皆個性がバラバラで考え方も様々だが、そんな彼らにアキラは集団で戦う時のやり方などを教えたり、戦う時だけでも連携が出来るなどチームとして纏まる様にしてきた。

 今までも周囲とコミュニケーションを取りながら上手く連携出来ていることはわかっていたが、心なしかカイリューを介して手持ち達のやり取り――声が聞き取れる様な気がするので、こうも厳しい状況でも改めて実感出来ると何だか嬉しくて、アキラは少しだけ口元を緩めていた。

 

 そもそも、自分達がルール無用の野良バトルに適した戦い方を身に付けたのは何故なのか。

 効率を優先したや彼らの好みなど理由は色々あるが、一番の目的はルギアと言った一対一では勝てないであろう敵にも勝つ為だ。

 

 そこにはかつてミュウツーという伝説のポケモンに匹敵する強大な敵を相手に総力戦を挑み、ようやく相打ちに持ち込めた経験が根底にあるのは言うまでも無かった。

 カイリューやブーバーの様な好戦的なのは独力での撃破を望んでいるが、彼らも様々な経験をしていく過程で今の様な生死が懸かった戦いや状況での”敗北”は何よりも避けるべき出来事なのを学んできた。

 だからこそ、単独でも強力な彼らは力を合わせる様になり、その結果がルギアやホウオウを倒せる程の大きな力になれた。

 

 そうだ。まだ自分達だけで戦っている訳じゃなかった。

 

 ここに来て、アキラは自分が彼らに何時も言い聞かせていたこういう戦いの場で意識する大切なことを忘れていたのに気付かされた。

 強力な力であることもあるが、今まで一心同体の感覚を発揮したのは誰の手も借りられない状況ばかりであったことや維持出来る時間の少なさもあって、焦りも相俟って自然と自分とカイリューで如何にかしなければならないと思い込んでしまっていた。

 冷静に考えれば、まだカイリュー以外の手持ち達は健在なのにだ。

 自分もまだまだ未熟だったり経験不足だらけ、と認識したことで冷静になったアキラであったが、皆の連携と意思疎通がこうもスムーズなら取れる作戦があった。

 

「リュット! 協力を頼む!」

 

 声を出しているが、声にしなくてもドラゴンポケモンには彼の意図がわかっていた。

 戦っている手持ち達は、ルギアの狙いを絞らせない目的で同時攻撃では無くて交互に攻撃を仕掛けているので、攻撃に専念する時間と移動に専念する時間が生まれる。

 その移動に専念しているタイミングで、アキラは手持ち達に浮かんだ作戦を伝えるべく、カイリューと共に動く。

 

 最初に彼が伝えたのは、移動中であったサンドパンにヤドキングとドーブルの三匹だ。特に作戦の要になるドーブルは、彼に念を押されなくても責任重大とばかりに受け止めた。

 

 次はエレブーとバンギラスの師弟、攻撃よりも仲間をルギアの攻撃から守ることの方が忙しくなっていた二匹だったが、運良く一緒になったタイミングでアキラは彼らに考えている作戦について伝えた。

 当初二匹は切羽詰まった状況なのも相俟って微妙に理解出来ていない顔を浮かべたが、アキラが去った後にカイリューに補足を告げられたことでようやく彼の狙いと自分達の新たな役割を把握した。

 

 そして現在進行形でルギアを相手に直接戦っているゲンガーやブーバー、カポエラーは、先に伝えた面々の準備が完了するまでの時間稼ぎも兼ねて共にルギアと戦いながら合間に伝えていった。

 状況的に余裕が少ないことも相俟って少し端的な内容にはなってしまっていたが、アキラの考えを全て理解しているカイリューの補足や頭が良い面々であったお陰で、上手く全員にこちらの狙いや意図は伝わってくれた。

 

 一方、彼らと戦っているルギアはアキラ達の動きが連携以上に秩序があることに全く気付いていなかったが、アキラには好都合であった。

 今彼が巻き込まれる危険を顧みず、戦いの最中の手持ち達に接触したりしているのは、ルギアを倒す為の下準備。

 かつて一時的ではあったが、ミュウツーに大きなダメージを与えて動きを封じた時以上のことを成し遂げる為のだ。

 

 そして度重なる猛攻――カイリューとブーバーの二強が同時に繰り出した顎を下から打ち抜くキツイ一撃を受けて、ルギアの動きが鈍ったタイミングにアキラは声を張り上げた。

 

「スット! ヤドット! ブルット! ルギアの動きを鈍らせるんだ!!!」

 

 彼の声に距離を取っていたヤドキングが手にした氷の薙刀を捨て、身軽になるや後ろにいたバンギラスに投げ飛ばされた。

 ゲンガーもタイミングを合わせてエレブーの肩を足場に跳び上がり、二匹は”あやしいひかり”と”フラッシュ”をルギアの顔面に食らわせ、そこにドーブルが”へんしん”したミルタンクが”どろかけ”の泥の塊をルギアの顔目掛けて豪速球で投げ付けて追撃を加えた。

 

 強烈な光だけでなく物理的にも泥も当てられ、再び視界を潰されたことで伝説のポケモンは周囲の状況がわからなくなった。

 ”しんぴのまもり”の効果で”こんらん”状態にはならないが、彼らの狙いはルギアの視界を一時的に封じること。

 目が見えないのか頻りに顔を振ったり瞬きを繰り返すルギアの動きに警戒しながら、アキラや彼のポケモン達は手早く次の準備を整えていった。

 

「”でんこうせっか”よりも断然速いけど、出来るか!?」

 

 まるでカイリューみたいな好戦的な笑みを浮かべながら、アキラは手持ち全員に聞こえる様に大きな声で改めて問い掛ける。

 アキラの手持ち全員が準備をすることと言えば、最近では対仮面の男を想定した大火力の”かえんほうしゃ”みたいな全員協力前提の大技がある。だが、準備に時間が掛かるのや一部しか使えないのとは異なり、これからやろうとしていることは実戦で披露する機会が中々無かったのや条件付きとはいえ昔からある程度練習をしていたこともあって全員出来る。

 そして、彼からの問い掛けに一心同体の感覚故に既にわかっているカイリュー以外でブーバーが代表して”何時でも来い”と言わんばかりに声を張り上げ、アキラは合図を出す。

 

「――”ふくろだたき”!!!」

 

 次の瞬間、アキラのポケモン達の姿は一瞬にして消えた。

 

 消えた彼らはどこへ行ったのか。

 

 そう考える間もなく、直後にあらゆる角度や高さから目にも止まらない速さで動く無数の軌跡と残像から多種多様な攻撃が仕掛けられて、ルギアを――伝説のポケモンを滅多打ちにした。

 

 あまりの猛攻に、ルギアは何が起こったのか理解出来なかった。

 その激しさは単にダメージを受けるだけでなく、苦し紛れでの全方位攻撃を放つ意識をすることすら出来ない程で伝説のポケモンは完全に翻弄された。

 ”じこさいせい”を使うことに意識を集中させることが出来ず、目に見えてルギアの銀色の巨体は汚れ、傷付いていった。

 

 今アキラのポケモン達は”うずまき島”での戦いの後、クリスに頼んで彼女のウインディが覚えている”しんそく”を”スケッチ”で我が物にしたドーブルを起点に”ものまね”で同じ技を繰り出していた。

 その速さは、鎧の様な巨体を持つが故に相応の重量であるバンギラスさえも個々の体の色をした残像か軌跡しか認識出来ない程のスピードを発揮していた。

 

 ”しんそく”のスピードで今回動くのが初めてなのも何匹かいるが、アキラのポケモン達は集団で戦うことを想定して敵に限らず味方でも有効な技を使ったら”ものまね”をすることで、自分の力にする術を基本戦法に取り入れている。

 その有効活用例なのがさっきまでゲンガーとドーブルが仕掛け、サンドパンなどの一部がコピーした”うらみ”などの技だが、本来彼らが想定していたのは今発揮している”しんそく”の類似技である”こうそくいどう”や”でんこうせっか”による素早さの向上や高速戦闘だ。

 本来覚えない手持ち含めて、全員それらの技を使った際の高速化での動き方や戦い方を身に付けている。

 

 そして”ふくろだたき”は、手持ち全員を一時期的に繰り出すことで一斉攻撃を仕掛ける技だが、今回のはポケモンが使う技としてでは無く彼らへの作戦実行の合図であった。

 

 しかし、こうも強力な技をコピーしている形とはいえ連発していれば、PPが枯渇するという問題も生じてくるが、そんなことは彼らもわかっていた。

 今の彼らは気持ち的にも高ぶっているのとルギアに何もさせないことを意識していた。

 神速の速さで素手での打撃は勿論、得物を持つのはすれ違い際に斬り付けたり、殴り付けるなど、目にも止まらない速さでルギアに猛攻を仕掛けていく。

 

 中でもアキラと視界や感覚、思考を共有しているカイリューは目まぐるしい勢いで駆けながら彼の能力を活かして的確にルギアの肉体的な弱点を突くだけでなく、時には他の手持ち達の動きを彼に代わって調整していた。

 そしてアキラもまた、カイリューの視界や感覚から得られる手持ち達の動きやルギアの様子を見ており、最後の一手へと動いた。

 

「トドメだ!」

 

 再び声を上げたアキラの声を機に、彼の手持ち達は各々の形で決定打を仕掛ける。

 最後の攻撃をどうするかについては、彼は具体的なことは伝えていない。時間が無かったこともあって、どういう形で攻撃するかは全て彼ら任せだ。

 しかし、彼らは見事やってのけた。

 

 バンギラスとエレブーの肩をそれぞれ踏み台にブーバーとカポエラーが跳び上がると、”ものまね”で得た”しんそく”の勢いを乗せた”メガトンキック”と”ずつき”をルギアに叩き込む。

 攻撃が決まったのは胴体ではあったが、ダメージを重ねた影響で足元がおぼつかないルギアはフラつく。そこにカイリューとさっき二匹の踏み台になったバンギラスとエレブーも同じく真似た”しんそく”での弾丸ジャンプで後に続き、勢いを乗せた”げきりん”、”かみなりパンチ”、”ばくれつパンチ”を同時にルギアへ打ち込む。

 

 それらの攻撃を受けて、遂にルギアの体は倒壊気味の観客席へと崩れるが、直後にルギアの淡い光に包まれた。

 攻撃の合間に出来る隙間時間に、”じこさいせい”でさっきまで受けたダメージを回復する形で無効化しようとしていた。

 

 当然、アキラの手持ち達はそんなことはわかっていた。

 故に離れた場所ではあったが、先程の攻撃に参加していなかった面々による回復を上回る攻撃の準備が整いつつあった。

 

 サンドパンは右腕に”めざめるパワー”のエネルギーを溢れさせると、左腕で支えながら巨大な鉤爪状に固形化していた”みがわり”のエネルギーを少しだけレールガン状に変形させて、まるでアキラがロケットランチャーで狙いを定めるかのように構えた。

 

 そしてヤドキング、ゲンガー、ドーブルの三匹は何時の間にか”せいちょう”などの技で自らの能力を引き上げたドーブルの能力を”じこあんじ”でコピーをして、自分達の能力を最大限に高めた証であるオーラを身に纏っていた。

 普通なら、その最大限に高めた能力から繰り出す大技でも十分であったが、三匹は更に踏み込んでいた。

 

 三匹は互いの肩や体が当たりそうなくらい距離を詰めて並んでおり、それぞれ力を入れて両手を前に伸ばしていた。

 彼らが伸ばした両手の先でヤドキングは”でんじほう”、ゲンガーは”シャドーボール”、ドーブルは”めざめるパワー”をベースに、自らのタイプエネルギーや体力を削って”みがわり”を発揮する際のあらゆるエネルギーを凝縮させた光球をそれぞれ形成し、巧みにエネルギーを注ぎ込んで徐々に光球を大きくさせていった。

 

 エネルギーが高まっていくにつれて、サンドパンが向ける砲口からは黄緑色の光、ヤドキング達三匹が生み出した青・紫・桃の三色の光球の輝きが強まっていく。

 そして打撃攻撃を決めたカイリュー達が、ルギアから離れたのを見計らって彼らは意を決して撃ち出した。

 

 サンドパンが放った鏃の様な鋭い黄緑色の光弾は”めざめるパワー”がベースになっている筈にも関わらず、撃ち出すと同時に着弾するという凄まじい速さでルギアの顔面に命中し、顔を隠す程の大きな爆発を起こす。

 

 少し遅れてヤドキング達は大きくした三つの光球をまるで磁石で付ける様に合わせた瞬間、最大級の念の力を発揮して押し出す。

 強烈な反動に支えている三匹の足は後方へ少し擦るが、押し出された青・紫・桃の三色のエネルギー弾は”トライアタック”の様に螺旋回転しながら飛んで行く。

 そして三匹が力を合わせて放った合体攻撃は、顔の爆煙が流れない内にルギアの胴体に着弾して、今度は全身を覆う程の眩い光を放ちながら炸裂する。

 

 普通のポケモンなら何回も戦闘不能になっている様な猛攻と規格外な攻撃が連続で決まり、爆煙が晴れない内にルギアの巨体が倒れる大きな音と地響きが起こった。

 

「…マジかよ」

 

 離れた場所で見ていたゴールド達も、たった今目の前で起きたことに言葉を失っていた。

 何回も戦っているので相手がどういう戦い方をするのかを把握していたり、数で押していることもあるだろうが、それでも彼らは”力”と言う点で伝説と渡り合うどころ押しているのだ。

 連戦であったにも関わらず、万全状態に戻ったルギアを彼らはまたしても倒した。

 そして攻撃を決めたアキラのポケモン達、見届けたアキラ自身も自分達の勝利を確信した。

 

 しかし、事はそう都合良くはいかなかった。

 

 爆煙が自然に晴れない内に、巨大な翼で扇がれることで起きた風に吹き飛ばされる。

 同時に一度は倒れていた筈の銀色の巨体が、この世のものとは思えない恐ろしい声で吠えながら再び立ち上がる。

 

 ルギアは、まだ健在だった。

 

「プライドか知らないが、執念深いな」

 

 アキラのポケモン達が仕掛けた攻撃は確かに効いていた。

 それこそ彼らは、ルギアの打たれ強さと”じこさいせい”による回復を考慮した上で、その時点で放てる最大火力をぶつけた。

 だが、それでも伝説のポケモンは倒れなかった。

 見積もりが甘かったのかと思ったが、ルギアがまだ立ち上がれる理由にアキラ達は気付いていた。

 何故なら自分達にも憶えがあるからだ。

 

 数値では決して測ることが出来ない精神力。

 

 ルギアだって感情のある生き物だ。

 自身が強大な存在であることを自覚しているからこそ、周囲に余計な影響を与えない様に深海や人があまり訪れない”うずまき島”を住処にしていた。

 

 だけど、同時に強大な力を裏付けられるだけのプライドも持ち合わせている。だからこそ、ルギアは自身を好き勝手に操った仮面の男含めた敵対する存在全てを排除しようとしている。

 アキラとしては、怒りを抱く感情は理解出来る。けど、その矛先を仮面の男にだけ向けてくれるなら良いが、戦ったとはいえ自分達も狙われるのなら当然抵抗する。

 

 今のルギアは間違いなく怒りの感情だけで突き動かされている。

 

 降り注いでいる雨も、さっきルギアが倒れた際は止みかけたが、また勢いを取り戻して土砂降りに近くなってきていた。

 服が水を吸って重くなるだけでなく、仮面の男――ヤナギが放っている冷気が影響しているのか、雨粒は冷たいものになっており体を冷やしていた。

 これもアキラが長期戦を避けたかった理由でもあった。

 

 あれだけやってもルギアを倒せない。

 普通なら絶望や諦念を抱いても仕方ないが、アキラ達にもう打つ手が無い訳では無い。

 もう一度同じく一斉攻撃を仕掛ければ倒せるかもしれないが、確実に仕留めると見込んでいたのに耐えられたのだ。

 ルギアの精神力がどれ程のものなのか、操られていたこともあって正確に推測することが出来なかったのはこちらの落ち度であったが、カイリューが強く促して来る思考や荒ぶる感情が流れ来るのと仮面の男と戦っているカスミ達の状況が良くないのを見て、アキラは決意した。

 

「リュット、やるぞ。()()()を」

 

 元々想定はしていたものの、出来ることならまだまだ温存していたかった。

 だけど、この状況で今すぐルギアを沈黙させるにはこれしか無いと、アキラとカイリューは共に右手を固く握り締めた。




アキラ、総力戦でルギアを追い詰めるも倒すには至れず。

連戦しているのにアキラの手持ち達がやられていないのは、ルギアが追い払う程度の攻撃しかやっていないのや狙いを絞り切れていないので大打撃を与えられる攻撃を命中させていないのが大きいです。
流石に”エアロブラスト”と言った大技の直撃で受けますと、ゲンガーみたいに打たれ弱いのは一撃でダウンします。
なので死に物狂いで避けたり、エレブーとバンギラスは”まもる”を駆使して仲間を守ります。

次回、彼らが修行で得たもう一つの集大成を披露します。

前話更新後も本作への感想や評価を送っていただき、ありがとうございます。
本作を読んで下さっている読者の方々から送っていただけた本作についての感想や評価を見る度に、新しく刺激を受けたり活力を得られるので本当に嬉しいです。
改めて心より御礼申し上げますのと、引き続き本作をよろしくお願いします。
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