互いのトレーナーとエース格が壮絶な戦いを繰り広げる中、少し離れた場所で激突していたブーバーとデリバードの戦いも激しさを増していた。
二匹は雄叫びを上げ、目にも止まらない速さで激しく得物をぶつけ合っていた。
敵は伝説のポケモンと変わらない強大な存在。周囲で戦っているブーバー以外のアキラのポケモン達も加勢や敵の妨害をしたかったが、氷人形も同じことをしようとしていたので、その行動阻止に加えて壊しても再生する氷人形の対処に手を焼いていたので余裕は無かった。
シルバーのポケモン達はブーバーとの共闘の構えで挑んでいたが、力の差が大きいのかデリバードの動きを多少は妨害する程度止まりであった。
殆ど攻撃が決まらないことは勿論、二匹の激戦に手出しするタイミングの見極めを誤ってしまうと、デリバードの相手の大部分を担っているブーバーの邪魔になることがわかっていたので歯痒い状況が続いていた。
ブーバーとデリバード。
互いに真っ先に前線に立って戦う。所謂切り込み隊長と言うべき役割を担っている者同士。
カイリューとラプラスの一騎打ちと同様に、お互い負けるつもりは微塵も無かった。
双方とも強い決意を漲らせた鬼気迫る目で正面に立つ敵を見据え、手にした骨の得物や氷の刃をぶつけ合いながら目まぐるしい勢いで動き回っていく。
そうして戦い続けていく内に、ブーバーはデリバードが今まで戦ったロケット団とは異なることや感情を前面に出しているが故に以前はわからなかったあることに気付きつつあった。
単にトレーナーに忠誠を誓っている訳でも、欲望のままに好き勝手にやりたい訳でも無い。
明確に成し遂げたい目的を抱き、その目的に共感し共に力を尽くす。
不俱戴天の敵であるワタルの手持ちに似ている様に見えたが、奴ら以上にどこか自分達やレッドの手持ち達にも似たものも感じ取ってしまうのは癪だった。
だけど、デリバードは覚悟を決めていることは確信出来た。それも誰かの為に何が何でもやり遂げるという悪らしからぬ考えだ。
ある意味では戦いたいから戦う、ムカつく奴を叩きのめす為に戦う自分よりも真っ当な。
そんなことを思わず考えてしまった瞬間、ブーバーは大きく踏み込んだ一撃を振り下ろす。
対するデリバードは両手の氷柱を交差させて”ふといホネ”を防ぐが、あまりの威力に衝突時にエネルギーが拡散するだけでなく、足元が小規模ながら凹む。
しかし、デリバードは単に耐えるどころか逆に押し返そうと気迫を前面に押し出す。
このままでは勝てない。
その考えが脳裏を過ぎった直後、ひふきポケモンは再び意識を集中させて全身に雷を迸らせた。
使える手段全てを駆使して目の前の敵を倒すべく、ブーバーは”めざめるパワー”による潜在パワーの引き出しと”かみなりパンチ”の電気を同時に起こす技の応用によって身体能力を高めるや自身の腕を残像どころか軌跡でしか見えないまでに動きを速めたが、何とデリバードは”でんこうせっか”を彷彿させる俊敏さを発揮して、そのスピードに対応すると同時に対抗した。
「これは…」
シルバーと隙を伺っていた彼のポケモン達も思わず手を出すことを躊躇う。
何故なら両者はその場に踏み止まったまま目に留まらない速さ――秒間で斬撃を数度もぶつけ合う程の壮絶な剣戟を演じ始めたからだ。
最早両者の腕の動きが速過ぎて、腕が消えている様に見えるだけでなく、無数の軌跡を描いた斬撃や打撃が両者を包み込み、一定の範囲内に入り込んだ氷人形は攻撃の余波に巻き込まれて瞬く間に粉砕された。
目で追う事が出来ないどころか、近付くことすら許されない攻防。
もう二匹は、この後のことを一切考えていなかった。
互いに血走った目で鬼気迫る雄叫びを上げながら、ただ目の前の敵を打ち負かすべく持てる力の限りを尽くすのだった。
「おおおぉぉぉぉっ!!!」
その頃、アキラとカイリューも雄叫びを上げながら並んで突っ込み、再び仮面の男とラプラスに肉薄しようとする。
残像で拳が無数に見えてしまう速さと連打で殴り付けようと距離を詰めたカイリューに対して、ラプラスは氷の盾を生み出すなど様々な手段で攻撃を防ぐ。
その隙に仮面の男は自分からカイリューに仕掛けようとするが、それをアキラは構えた盾を前面に出して防ぐと同時に返り討ちにする。
ポケモンだけでなく、すぐ傍にいるトレーナーもあらゆる手段でサポートするだけに留まらず、援護さえもする総力戦。
ラプラスが”れいとうビーム”をカイリュー目掛けて放つが、アキラが持つ動体視力と反射神経が反映されている今のカイリューは機敏に最小限の動きで回避するやラプラスとの距離を詰める。
そこをアキラを押し退けて再び両者の間に仮面の男が割り込み、両腕を交差させてカイリューの正拳突きを押されながらも真正面から防ぐ。
カイリューの一撃を受けた氷の腕はその威力でボロボロに崩れていくが、仮面の男とラプラスは即座に後方へと身を退かせる。
既に彼らは距離を取ることを意識し続けたが故に、仮面の男が残した氷人形達と戦い続けるカスミ達がいる瓦礫の山と化したポケモンリーグの会場内にあるバトルフィールドに戻っていたが、彼らは全く気付いていなかった。
どうやら目論見通りに事が上手く行っていることや何とかして仮面の男を――ヤナギをこれ以上戦えないまでに追い詰めたいとアキラが思考の片隅で思った時だった。
「――マサラタウンの住民にまつわる、ある話について知っているか?」
戦いの最中、唐突に仮面の男が語り始める。
カイリューとアキラは全く意に介さず、鬼の様な形相で荒々しい声を上げながら次の動きに移ったが、仮面の男は気にすることなく彼らの攻撃をラプラスと共に躱しながら語り続ける。
「このカントー・ジョウト地方でポケモンリーグが開催されて以来、歴代優勝者は全員マサラタウン出身だ。何故マサラタウン出身のトレーナーが、それ程までにポケモントレーナーとして優れているのか。その理由は町で生まれ育った住民は、ポケモンと心を通わせる素養を持ち合わせているからだと言われている」
再び腕を鉛色に染めて硬質化させたカイリューはラプラス、アキラは仮面に対して刃の様に鋭い向きに切り替えた盾からそれぞれ手刀を振り下ろすが、仮面の男とラプラスは滑る様に下がりながら回避する。
「その素養とは一体何なのか? 曖昧な表現なのや眉唾物であるが故に未だにハッキリとはしていないが、一説ではある地方で”波動”と呼ばれている力が潜在的に強いという考えがある」
その瞬間、遮る様にカイリューの拳が振り下ろされるが、頑丈なフィールドを砕くだけで終わり、標的である仮面の男達は既に動いた後だった。
粉塵や土埃が舞い上がる中、普段の年相応な少年らしさから想像出来ないまでに凶悪な目をアキラは仮面の男に向ける。
「さっきから何を言っている。俺にもマサラタウン出身者並みに心を通わせられる素養があるってことか? それなら嬉しいな」
「……いいや。お前には無いだろうな。あったら…それこそ今以上に手強かっただろう」
「
アキラであって彼ではない声で答えると、改めて彼らは仮面の男達を視界に収めながら構えた。
唐突に語り始めたにも関わらず、アキラには全く関係の無さそうな話であったので彼は今度こそ全て流すつもりだった。
自分にはレッド達みたいに、すぐにポケモンと仲良くなれる様な素質が無いことはわかり切ったことだ。
なのに何故、仮面の男はマサラタウン出身者について語り始めたのか理解出来なかった。
「”波動”には強さ以外にも波長と言えるものが存在している。出会って間もないにも関わらず連携や息がピッタリ合うトレーナーとポケモンの話は聞いたことは無いか? どちらかが放つ波動が強くない限り、あれは互いが持つ波動の波長が似通っているからこそ実現出来ていると言える。お前とカイリューの今の姿を見る限りでは、お前達の波動の波長はかなり近いと見える」
仮面の男は語ることを止めなかったが、その内容にアキラは聞く気は無いと決めてはいたものの少しだけ耳を意識してしまう。
アキラ自身、この世界――元の世界で言う原作を隅々まで把握したり全てを知っていたり憶えている訳では無いが、仮面の男が語る内容は断片的ながら聞き覚えのある用語があったり、どこか説得力があった。
「お前がシジマの元で修業を積んでいると知った時から、今使っているその力を引っ提げて私に挑んでくる可能性は想定していた。奴以上の実力を持つのなら尚更だ」
やはり仮面の男は今のアキラ達の状態を知っていた。
同時にそれが意味することを悟り、アキラとカイリューは一歩前へ力強く踏み出した。
数十年もの長い時間を掛けて伝説のポケモンを求めると同時にジムリーダーを務めて来たのだ。知っていてもおかしくなかった。
もっと言えば――自分達の様に使ってきてもおかしくなかった。
そして、知っているのなら尚更早く勝負を終わらせなければいけないからだ。
「奴の持論…”トレーナーもポケモンと共にその身を鍛え、共に戦う”。一見すると時代錯誤で馬鹿らしく、好意的に考えてもポケモンとの連帯感を高めたり息を合わせる以外に意味が無い様に思える。だが、その本質はトレーナーとポケモン、異なる種族故の身体能力差を埋めつつお互いが持つ波動の波長を調節し、合わせる為のものと言っても良い」
師であるシジマの持論を尤もらしい理屈で仮面の男は語る。
”波動”という単語も、アキラはポケモン世界ではどういうもので何を意味するのかある程度は知っていたので、どことなく説得力があった。
こうして戦い始めてからの動きや戦い方を考えると、確実にヤナギは今の自分達が使っている力を知っている。それも思っていた以上にだ。
だからこそ、彼の中で焦りは増すばかりであった。
しかし、仮面の男とラプラスは焦るアキラ達とは対照的に一方的に攻められながらも手痛いダメージを受けることを巧みに避けていく。
「長年鍛錬を重ねたお前の師でも容易に至れない境地にお前がこうも容易く至れるのは、波動の波長が合う以外にもその高い身体能力でカイリューと変わらない動きが出来ることも要因だろう。だが――」
拳を振り被りながら、荒々しく跳び掛かろうとするアキラとカイリューを見据え、仮面の男は静かに告げる。
「どれだけ心身を鍛えようとお前は人間――カイリューにはなれない」
その直後、アキラの表情が苦しそうに強張り、その動きが目に見えて鈍った。
そんな彼の変化に連動して、カイリューの動きも露骨に異常をきたした。
動きが鈍った隙に仮面の男とラプラスは更に後退するが、アキラは苦しそうに歯を食い縛りながら何かを堪えており、追撃どころでは無かった。
猛烈な疲労と強烈な頭痛、その他にも様々な異常によって体が急速に蝕まれていくのを彼は感じていた。
以前ならこの状態になった途端に力尽きていたが、体を鍛えてきたことが功を奏したのやここで倒れる訳がいかないと自身を奮起させることで踏み止まり、仮面の男とラプラスを睨み付ける様な眼差しで見据えた。
それから両者は先程までの激しい戦いが嘘みたいに距離を置いて静かに睨み合う。
荒くも絶えず呼吸をするアキラに対し、仮面の男は静かに呼吸を整えて次の行動に備える。
静かに時間ばかり過ぎていき、両者に様子見の空気が漂い始めた刹那、早撃ちを彷彿させる素早い動きでカイリューとラプラスの口から”げきりん”と”れいとうビーム”が同時に放たれ、両者の間で光線が激しい閃光と轟音を響かせて激突した。
当初は青白い光線と黄緑色の光線が眩い光で周囲を照らしながら拮抗していたが、時間が経つにつれてカイリューの放つ光線の方がジリジリと踏み止まっている体と共に後ろへと押されていく。
「シジマが気付かないのも無理は無い。格闘ポケモンなら体格が人に近いのが多く負担も小さいのだろう。だが、カイリューは一目でわかる程に体は大きく異なっている。負担はお前の師が考える以上に大きい筈だ。どういう形であれ、今のお前達が発揮している力は間違いなくポケモンとトレーナーが至れる境地の一つだ。しかし先程告げた様に、成熟し切っていないお前の体はその負荷にどこまで耐えられる? 今は何とか堪えている様だが、それまでに私達を倒せるか!?」
互いのポケモンの攻撃を見守っていた仮面の男であったが、改めて語りながらも最後は感情が高ぶったかの様な声で吠えながらアキラに厳しい状況を突き付けた。
対するアキラの方は、一向に良くならず悪くなる一方で崩れそうな体を歯を噛み締めながら必死で堪えていたが、懸命に光線を放ち続けながら抗うカイリューの様に睨み返すしか出来なかった。
今の状態で万全に戦える時間を完全に過ぎてしまった。
自身の体が苦しい状況に陥ってからアキラはそのことを認識していたが、今のアキラの不調はカイリューにも間接的に影響を及ぼしてしまうことから、ドラゴンポケモンも本領を上手く発揮し切れないが故に徐々に押されていく一方だ。
そんな苦しい状況ではあったが、アキラの脳裏にある言葉が強く印象に残っていた。
どれだけ鍛えてもカイリューにはなれない。
その言葉の意味が、アキラには良く分かった。
こうも短い期間の内に連続で経験すれば、一心同体の感覚は短期決戦なら良いが長期戦には向いていないことには、今までの経験や感覚的にもわかってはいた。
何故なら時間が経つにつれて、体が感覚を共有しているカイリューの状態に合わせようとしているのか、体内がおかしなことになっているからだ。
今にも爆発するのでは無いかと錯覚してしまう程の心臓の強い拍動。
それに伴って体が熱を出したかの様に熱くなり、更には猛烈な頭痛に吐きそうな気持ち悪さ。
呼吸さえも追い付いていない様に息苦しくなってきた。
だけど、ここが踏ん張りどころとアキラはカイリューと意思疎通を交わし、タイミングを見計らってカイリューが強引に光線を中断する僅かな時間に彼はドラゴンポケモンを押し退ける様に横から強く体当たりをした。
遮るのが無くなった”れいとうビーム”が彼らを襲うが、盾を構えていたこともあり、ごく僅かな時間だけ直撃を防ぎながら彼らはラプラスの攻撃から大したダメージを受けることなく逃れた。
一秒ちょっとしか触れていないのに、受け止めた盾どころか腕さえも凍り付きそうであったことに冷や汗を掻きながらもアキラとカイリューは仮面の男とラプラスから視界を離さずに見据える。
大きく息を吸って呼吸を整え、少しでも頭痛や体内での異常による痛みを抑えながらも感情的なものに変換、カイリューの力を意識することで”げきりん”を更に引き出す。
「苦しくても維持を選ぶか。ある程度鍛錬を重ねたとはいえ、マサラタウンの住民と違って簡単に出来るものでも無いからそれも当然か」
仮面の男が分析するかの様に呟くが、構わずアキラを介して伝わる痛みや苦しみを誤魔化す様に激情に身を任せて、カイリューは力が増しているのか荒々しいオーラとなった”げきりん”を纏ってラプラスに振るう。
カイリューが荒ぶる感情に身を任せて暴れても、アキラが冷静に状況を把握し続ければ、怒りに身を委ねているのに何故か冷静という相反する状態が生まれる。
だけど攻撃が決まらなければ話にはならない。
視界を通じてそれがハッキリとわかるが、凍り付くような冷気で直視出来る時間を減らしたり、度々視界を遮ったりとするので限界を迎えてしまったこともあって鋭敏化した視覚を中心とした五感、更には周囲がゆっくりと感じられる感覚でも中々捉え切れない。
加えて仮面の男もラプラスも、さっきまでと同様に積極的に攻めることなく、こちらを妨害しながらも可能な限り直接戦闘を避けようとする。
体を鍛えてきたお陰で今もアキラはカイリューとの一心同体と言える感覚を維持出来るが、もう残された時間は少ない。
そのことはわかっていたが、どうしても仮面の男――ヤナギが語った内容が頭の片隅では気になっていた。
随分と抽象的な表現ばかりではあったが、戦いながら今までの経験からアキラは自分なりに解釈と理解を進めており、今まで抱いていた疑問や問題の幾つかが一気に氷解していた。
マサラタウン出身の人間が持つポケモンと心を通わせる素養。
ハッキリしてはいないが、その素養は”波動”と呼ばれるものが有力であり、マサラタウン出身のトレーナーは生まれながら”波動”が強いこともあってポケモンとの意思疎通が他のトレーナーよりも優れている。
そして、その極致が今の自分やカイリューの様な一心同体とも言える感覚、若しくは互いの考えていることがわかると言っても過言では無い程のスムーズな意思疎通。
心当たりは、あると言えばあった。
一番思い当たるのは、レッドとバトルを繰り広げて彼が追い詰められた際、レッドのポケモン達の動きが変わる時があることだ。
彼が機転やアドリブを利かせてこちらの予想外の行動を取るのが、何回対策を重ねたり、単純な攻撃力や能力なら上回る様になったにも関わらず、最近までレッドに勝てなかった一番の原因だった。
だが、幾ら信頼関係や経験を積み重ねてきたとはいえ、そんなレッドの頭に唐突に浮かんだであろう動きをぶっつけ本番で毎回まではいかなくても彼の手持ち達が頻繁に成功させたり、少ない言葉だけで彼の意に沿った最適な行動を起こせるのが不思議でしょうがなかった。
当のレッド本人もポケモン達のお陰と言っていたので、今までアキラは阿吽の呼吸や息が合ったという具合でしか言語化出来なかったが、ヤナギが語っていたことが本当であれば説明が付いた。
「……こんな状況で…レッド達の強さの理由。その詳細を知る事になるなんて…思わなかった」
レッドとその手持ちが今の自分達みたいになっている場面を一度も見たことは無いが、仮面の男の言葉を考えれば、ある可能性が考えられる。
自分達は強く意識したりずっと維持し続けなければならないが、レッドは必要な時――それこそ自由なタイミングでテレパシーみたいに互いに考えていることがわかると言った意思疎通が出来るということなのだろう。
恐らく、自分やカイリューみたいにずっと維持する必要が無いからレッドも手持ちもそんな高度なことをやっているという自覚は無く、本当に無自覚なのだろう。
ただし、思い当たる場面が追い詰められた時とかピンチの状況なので、本当の意味でオンオフ自由という訳では無いとは思われる。
無線通信みたいに無自覚に疎通が出来てオンオフ自由なレッド。
有線回線みたいに意識してずっと繋げ続けなければならない自分。
どちらにも利点はあるが、総合的にはレッドの方が良いだろう。そもそもアキラは今の状態を目指して意識的に鍛錬をした末に至れたのだから、レッドも意識して練習すれば確実に身に付ける。
極限の戦いでは、一秒の遅さが勝敗を分けることになる。
一瞬だけでの感覚共有やテレパシーの様な意思疎通でも伝えたいことがイメージそのままに伝えることが出来るのだから、出来ない方は圧倒的に不利だ。
元々レッドはポケモンが持つ純粋な力と潜在能力を爆発的に引き出すことに長けているのだから、鬼に金棒だ。
恐らく同じマサラタウン出身であるグリーンやブルーも程度や自覚の有無、方向性は異なるかもしれないが使えるのかもしれない。
こうも説明出来る理屈で彼らの才能や強さの秘訣、その一端がわかると思い当たることが幾つもあるので納得が出来る。
数十年という長い月日を掛けたであろう仮面の男――ヤナギの研鑽と研究、そして経験は凄い。
苦しい状況であるにも関わらず、思わず素直にそう考えてしまったアキラではあったが、これ以上考えることを止めて感じる負荷を堪えながら、カイリューと共に徹底的に時間稼ぎに徹する仮面の男とラプラスを追撃する。
詳しく考えるのは後回しだ。
知りたい欲求はあるが、今優先すべきことは目の前の戦いだ。
猛烈な”ふぶき”には”しんぴのまもり”での防御と”つのドリル”の同時併用という通常なら出来ないことも、アキラとカイリューが技を意識する際の思考を分担することで強引に実現させて距離を詰めた時だった。
「強さの理由か……レッドはそう説明出来るが、お前は…わからないことだらけだ」
「……は?」
唐突に気になることを仮面の男は口にした為、思わずアキラは反応してしまった。
アキラとカイリュー、仮面の男とラプラスを激しく追い立てるも限界も近付く。
本作では、マサラタウン出身者は波動の力が無自覚に強くてポケモンとの意思疎通がしやすかったり気持ちが通じやすいと扱っています。
マサラタウンの人達は生来ポケモンと気持ちの通じる素養があると言うオーキド博士の発言。そしてポケモンリーグ歴代優勝者が全員マサラタウン出身という実績。
ポケモンとの意思疎通がしやすいのは大きなメリットと思いながらも、その素養って何なのかなって思っていましたけど、後の作品に出て来るルカリオやアーロンなどの波動使いや波動の解説を聞いて「ひょっとしてこれのことなのかな?」と感じました。
次回、限界が近いアキラ達は残された力を振り絞っていきます。