SPECIALな冒険記   作:冴龍

161 / 172
魂の叫び

 ”わからないことだらけ”とは、どういうことか。

 

 何故このタイミングで、奴がそんなことを言うのかアキラには全くわからなかった。

 揺さぶりの可能性が高くはあったが、それでも気になった。

 頭の片隅に浮かんだ疑問に、まるで答えるように仮面の男は話を続けた。

 

「私は今まで多くのポケモントレーナーと彼らが持つ才能を見てきた。だが、貴様からは目立った”ポケモントレーナー”としての才能…先程のお前の言葉を借りれば”強さの理由”がわからない。お前はどんな特別なものを持っているんだ。お前は一体、何者なんだ」

 

 アキラと明確に敵対することになってから今回の計画を実行する直前まで、仮面の男は彼の経歴を可能な限りもう一度、それこそ徹底的に調べ上げて来た。

 

 強力だが一癖も二癖もあるトラブルメーカー気質な手持ち達に振り回されながらも上手く一線を越えない様に彼らを纏めていること。

 

 クチバシティでタマムシ大学で研究と教鞭を執っている教授の元で居候しながら護衛という形で研究に協力していること。

 

 頻繁にタマムシ大学を始めとした図書館などから書籍や資料を借りて情報収集や勉学に励んでいること。

 

 タンバジムのシジマの元で修業に取り組む前から、タマムシジムのエリカを始めとした各地のジムリーダーが主催したり中心になって行われているバトル教室や自警団向けの特訓に参加するなどして鍛錬を積み重ねて来たこと。

 

 度々レッドやジムリーダーなどの実力者と手合わせをして、その実力を磨いて来たこと。

 

 そして、普通なら一生掛けても経験しない様な厳しく、死にも直結する様な過酷な戦いや事件に遭遇しても生き抜いてきたこと。

 

 そうした情報から、アキラは積み重ねて来た日々の努力の末に秘めていたトレーナーとしての才能を開花させ、幾多の死線を潜り抜けた経験や素質溢れる強力なポケモン達を連れているなどの様々な要因が奇跡的に噛み合った結果、あそこまで規格外に強くなった。

 当初はそう認識していた。

 

 しかし、こうして戦えば戦う程、アキラが率いるポケモン達が強いことはわかるのだが、彼らの強さを引き出したであろう彼のポケモントレーナーとしての才能が一体何なのかわからなくなる一方だった。

 

 今攻め込んでいる様にアキラがカイリューとシンクロしていると言っても過言では無い程に息と動きを合わせられる様子を見ると、彼もマサラタウン出身のトレーナーみたいに心を通わせる素養が強いと見えるが、手持ちと築いている関係が絶妙なバランスを保った上で成立しているあまりにも危ういものであるのが、その可能性を否定していた。

 もし心を通わせる素養が強いなら、そんな危うい関係にはならない以前にもっとスムーズなコミュニケーションや信頼関係の構築が出来る筈で、癖があるとしても手持ちの制御と統率にそこまで苦労しない筈だからだ。

 

 ならばカイリューとシンクロ出来ているのは、互いの”波動”の波長や性質が奇跡的に似通っているということになるが、その説を採用しようにも”波動”の波長や性質を決定付ける要素と思われる性格と気質があまりにも違い過ぎていた。

 こうして戦う時にアキラが普段以上――正確に言えば、まるで連れているカイリューを彷彿させるかの様に言動含めて攻撃的になるなど、人格面に強く影響が出ていることからも明らかだ。

 

 違い過ぎると言ってもカイリューと感覚を同調させることが不可能という訳では無いが、それでも合わせる為には長期間の鍛錬が必要な筈だ。

 あそこまで異なる性格と気質なら、幾ら濃密な数年を共に過ごしたり鍛錬を重ねたとしても、()()()()()()()()()()()()()()()。それだけは仮面の男は()()()()()

 

 調べた限り、アキラの手持ちの中で今のドラゴンポケモン並みに同調出来る可能性が最も高いのは、彼と性格や気質が似通っているサンドパンだけだ。

 だけど最初にサンドパンとシンクロをしてコツを掴むなりの段階を経たと考えても、カイリューと今の状態に至れたのはあまりにも短期間過ぎた。そもそも、様子を見る限りでは最初に実現出来たのはカイリューなのが、更に謎を深めていた。

 

 しかも他の点でも、アキラの強さを支えているであろう要素には謎が多かった。

 ここまで彼が暴れられる要因にしてカイリューとの同調に一役買っている超人的な身体能力。

 最近そうなったらしいが、何があってそれだけの身体能力を発揮出来る様になったのかの詳しい経緯は全く不明。

 瞬間的ならわかるが、常時発揮している状態なのは聞いたことが無かった。

 

 だが最も大きな謎は、彼の情報収集能力と知識、導き出す結論だ。

 

 先程のルギアとホウオウとの戦いも正確に相手の能力を把握した上で可能な限りの対処や対策を講じているが、幾ら何でも正確過ぎるのだ。

 

 端的に言えば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ。

 

 彼がタマムシ大学の図書館を始めとした場所で様々な書籍を読んで多くの知識を身に付けたり、ロケット団などの戦いに備えて情報収集に動いたりしていることはわかっていた。

 しかし、深掘りすると明らかに労力が少ないことやどこで関連資料を見つけたのか、そしてどういう過程を経てその結論や判断に至ったのかが謎なのが幾つか見られた。

 些細なヒントから答えを導き出せるかなりの知恵者、或いは野性的な勘がずば抜けて優れているのかと思えば、普段のアキラを見る限りではそんなことは全くないのだから増々謎は深まるばかりだ。

 

 地道に努力を積み重ねてきたことや手持ちを上手く育てたという、彼が強いと言える理由はあるのだがそれは表面上なもので、今の様な力を発揮するまでに至れた理由に才能などの強さの根源と言えるものを探り始めると、途端に明確に説明が出来ないや浮かんだとしても別の要因がその可能性を否定するなど噛み合わない点が多くあった。

 そうしたこれまでの経験や知識に該当しないことだらけなのもあって、アキラが持つポケモントレーナーとしての才能――”強さの理由”が仮面の男にはわからなかった。

 

 寧ろ、わからないからこそ誰が見ても一番わかりやすい”強い手持ちの能力任せのトレーナー”と言う扱いに帰結しているのでは無いかと思えるくらいにだ。

 何か自分が知らないもの――それこそマサラタウンのトレーナーみたいな知られていない特別な出生が関わっている可能性はあるが、その詳しい出生や居候前の経歴もまるで情報無しとここまで背景が見えない謎だらけなのは初めてのことであった。

 

 盾と氷の拳をぶつけ合い、仮面の男から距離を取ったアキラは相手の動向から目を離さない様にしながら、仮面の男が語った内容について静かに考える。

 実際はそんな時間は無いのだが、今のアキラには視界に映る世界や感覚がゆっくり感じられるので、思いの他考える時間があった。

 

 敵ではあるが、そこまで自分の事を調べて来られるのは初めての経験だった。

 そして長年に渡って多くの才能を見てきたであろうヤナギから見ても、自分の強さは謎が多くてわからないと言うのだ。

 どれだけ調べてわからないものがあるのは当然だと思いつつも、同時にアキラは自分という存在を徹底的に追及したらどういう風に見えるのかが改めてわかった気がした。

 

 自分には明らかに他とは異なる特殊な背景があることをアキラは理解していたが、自分が特別な存在だったり、何か凄い才能があるとか思ったことは今まで殆ど無かった。

 

 理由は簡単だ。

 

 もし特別な存在や何かしらの才能があるなら、もうちょっと早い段階から上手く手持ちと信頼関係を築いたり、駆け出しの頃はあんなに苦労したりすることは無いと思っているからだ。

 現に先程、面と向かってレッドみたいにポケモンと心を通わせる才能は無いと言われたことに納得していたくらいにだ。

 

 他にも知っているが故に良く見れば気付きやすいということもあったが、レッド達みたいに本当にポケモントレーナーとしての才能を持つ者達を間近で見てきたことも要因だった。

 

 レッドは、どんなポケモンでも秘めている能力全てを爆発的に引き出せる。

 イエローは、会ったばかりのポケモンでも心を通わせたりしてすぐに仲良くなれる。

 グリーンは、どんなタイプや系統のポケモンであっても目に見えて短期間で強く育て上げることが出来る。

 

 彼らが持つであろう才能を感じさせる場面や片鱗を見る度に今でも”流石だ”と思うが、アキラだって彼らのそういう点を羨ましく思ったことは何回もあった。

 特に一年前、ワタルを筆頭とした四天王との戦いに備えてハナダジムで身を隠しながら戦いに備えていた際、三人の様子や彼らのポケモン達との関わりを間近で見ていたから尚更だった。

 

 だけど、それは自分から見た場合の話であることもアキラはわかっていた。

 ちょっと前――丁度一年くらい前ならそう思っても良かったかもしれなかったが、今の自分も他の人から見れば、ポケモントレーナーで重要視されるポケモンバトルなどの戦いで条件付きとはいえ、伝説のポケモンを倒せる程に常軌を逸した力を持ったポケモン達を率いるトレーナーだ。

 手持ちが強いお陰であると思っていても、何か才能があると言われたら、よくわからなくても強く否定は出来ない。アキラだって今の自分と同じことを他人がやっているのを見たら、様々な角度から分析はしても何かしらの才能の可能性は考えるだろう。

 けど本音を言えば――

 

「そんなの…俺が知りたいくらいだ」

 

 自分が気付いていないだけで本当に何か才能があるかもしれないが、ポケモントレーナーにとって最も重要であると考えている手持ちと信頼関係を築くのに時間が掛かっていた点を考えると、どうしても思い当たらなかった。

 元の世界で身に付けたポケモンに関する知識やこの世界で何が起こるかや詳細を知っているという反則みたいな形で得た知識が、自分の原動力になっているのは間違いないとは思っている。けど、知っていることを活かせるだけ物理的に強くならなければ話にはならないので、知っているだけで伝説のポケモンを倒したり仮面の男と渡り合うまでに強くなることはちょっと考えにくかった。

 

 ただ最近、手持ちを強く鍛えるのに手応えを感じたりスムーズに進んでいると思う時があるので、自分にポケモントレーナーとして一番才能があるとしたらグリーンみたいに目立ちにくいポケモンの育成関係なのかもしれない。

 と言った具合にアキラ自身も良くわかっていないのだから、他人から見たら謎だらけなのは当然のことであった。

 

 だけど”才能があれば”と思うことはあっても、別に才能があろうとなかろうとアキラは、自分のやる事は規模が変わるくらいでそれ以外は変わらないという確信もあった。

 確かにポケモンバトル――特に野良バトルで強くなったのは、ミュウツーとの戦いでの経験も大きいが、自身の一番の目的を叶えるのにこれが最適になるであろうという考えが無い訳では無かった。

 それら抜きでも、仮面の男や伝説のポケモンを相手に正面から戦えるまでに強くなることが出来なかったとしても、形を変えてレッド達の力になるべく、或いは彼らと共に迫る脅威を退ける為に行動をしていただろう。

 

 元の世界に戻りたい意思があるのは変わりないが、彼らと過ごす日々は楽しいし、出来ることなら彼らと日々を楽しく穏やかに過ごしながら戻る手段を探したいものだ。

 生死が懸かった激しい戦いを経験すれば経験する程、自分も手持ちも強くなっていくが穏やかに過ごせる平和が如何に大切なものなのか、アキラは身に染みて実感していた。

 

 だけど、近年この世界は毎年の様に地方を揺るがす様な戦いや事件が起きている。

 原作通りと言えば原作通りだが、自分にも火の粉が来るだけでなく放置すれば後々大きく響いたり、他の地方にも被害が出るなど余所の出来事と片付ける訳にはいかないことばかり。

 そして、どうも自分がこの世界に来た原因もどうやら放置する訳にはいかない戦いの火種になりそうなのをアキラは直感していたので、その脅威に対抗出来る力が欲しかった。

 だからこそ、可能な限りアキラは力を付けようとして来た。そして力を手にすることが出来たなら、害を成す存在や起こり得る事件は可能な限り早く片付けてしまった方が、最終的な被害は少なく済ませられるのが期待出来ると思っていた。

 

 今回の戦いだってそうだ。

 上手くやれたら、ヤナギの事情を完全に無視することになるがここまでになる前に終わらせることは出来たかもしれなかったのだ。

 過程で色々変えては来たものの、結果は少し変わったもののこのジョウト地方における戦いの最終決戦の状況になってしまったので後の祭りだが、この場で全てを終わらせるべく全力を尽くすというアキラの考えは変わらなかった。

 

「仮面の男…()()()()()()()()()()()()()()()

 

 アキラであって彼では無い声が仮面の男――ヤナギに唐突に尋ねた。

 既にわかり切っていることではあったが、それでもだった。

 しばらく仮面の男は黙り込んだが、無視することはなく静かに答えた。

 

「……取り戻したいものがあるからだ。誰が何と言おうと必ず、何が何でも」

「……()()()()

 

 仮面の男から返事を聞いたアキラは、表面化していた別の意識が引っ込んだのを機に気持ちと思考の整理をして改めて冷静に息を整えた。

 これ以上長引かせれば、ワタル戦の時の様に自滅を待つだけなのは既にわかっていた。

 自分にポケモントレーナーとしての才能があるなら、この状況を打開出来るものであって欲しいなど、何でもいいから使える手を使おうという決意と()()()()を浮かべた直後、カイリューがアキラの体を掴み、何と仮面の男目掛けて勢い良く放り投げた。

 

 何か物を投げてくるならともかく、トレーナーを投げるというあまりに予想外過ぎる行動に仮面の男は目を瞠ったが、すぐさま殴り込むように飛び込んでくる彼を容赦なくフィールドに叩き付けた。

 勿論投げられたアキラも、殴り倒してくる腕に盾を力任せにぶつけてある程度は防いではいたが、それでも完全に勢いを相殺し切れなくて彼は体を強く打ち付けた。

 

 この極限状況でトレーナーを雑に扱っている様にしか見えない行動に仮面の男は意図が読めなかったが、既にカイリューは行動を起こしていた。

 すぐにラプラスと共に距離を取ろうとするが、カイリューの動きが妙に不自然で少しだけ様子見の為に動きを止めてしまった。

 

 そして、それが命取りだった。

 

 一瞬だけカイリューの上半身の動きが止まったかの様に見えたと思ったら不自然に揺れて、更には視線が思ってもいない方へと向いた。

 それに合わせてラプラスも動きを止め、動きを見抜こうと目を凝らそうとした瞬間、何時の間にかカイリューはラプラスの懐にまで距離を詰めていたのだ。

 

「なにっ!?」

 

 突然のことに仮面の男は驚いた。

 一瞬の内での接近、”こうそくいどう”などの技での加速では無かった。カイリューの動きは特別速いものでは無かった筈だ。

 先程の不自然な動きはシジマの元で修業して得た何らかの武術によるものなのか、仮面の男は考えを張り巡らせたがすぐに答えを導き出せなかった。

 

 それもその筈だ。

 何故なら、カイリューが見せたのはアキラが元の世界でやっていたスポーツーーサッカーで身に付けた人間的な体や足の動かし方からのフェイントや緩急を駆使した動きだったからだ。

 それで不規則な体に動きに惑わされ、相手の動きが止まったタイミングを見計らったのだ。

 もう何年も彼は意識して使っていなかったのやベースとなった動き自体お粗末なものではあったが、彼と奥深くまで意識や記憶を共有出来ているお陰でアキラの記憶の奥底から使える技術とカイリューが判断したのだ。

 

 そして、これまで避けられ続けた攻撃――鉛色に染まり”げきりん”を纏った拳をカイリューは、遂にラプラスへ突き刺す様に殴り付けた。

 

 生々しい鈍い音、強靭な肉体でも目に見えて拳がめり込む程の凄まじい力で殴り付けられたラプラスは口から息を漏らし、ポケモンリーグ会場内へと壁を砕きながら戻された。

 すかさずカイリューは次とばかりに”げきりん”のエネルギーを竜の鉤爪状に固めるや、切り裂くよりも殴り付けるのと殆ど変わらず叩き付けていき、殴るカイリューも殴られるラプラスも攻撃を仕掛けたり受ける度に体が左右に大きく揺れた。

 

 たった一度見せた隙の代償は大きく、あまりに容赦ない苛烈な攻撃にラプラスは殴られる度に悲鳴にも似た声を上げるが、カイリューは攻撃を止めなかった。

 カイリューとの繋がりを維持し続ける負担だけでなく、限界を超えた動きと度重なるダメージ、そして今日一日戦い続けたことによる疲労などでアキラの体は悲鳴を上げていたからだ。

 

 自身を相手目掛けて投げさせることで、不意を突くと同時に隙を作る。

 状況も相俟って――否、ここまで息を合わせられるのに、ここに来て一見するとトレーナーを雑に扱っている様に見えることをするとは思えないだろう。

 

 アキラが捨て身で作ったチャンスを無駄にするつもりは無い。

 今ここでラプラスを倒す。

 

 それだけが、カイリューの考えを占めていた。

 

「ヒョウ――ッ!」

 

 思わず何かを口にしようとした仮面の男は、成す術も無くカイリューの猛攻を受けるラプラスを助けようとするが、先程フィールドに叩き付けたアキラが足払いを仕掛けてきたことでバランスを崩し掛けてしまう。

 下手すれば骨が折れてもおかしくない。それで無くても激痛が走っている筈なのに行動を起こせる精神力の強さに苛立ちながらも仮面の男は殴り掛かるが、すぐに彼は体を転がしながら距離を取る。

 多少動きは鈍ってはいたが、追撃を仕掛けられても巧みに盾を使って攻撃をいなして、逆に反撃とばかりに仕掛ける。

 

「このっ!」

 

 ラプラスの元へ向かおうとする仮面の男に、アキラは堪える様に噛み締めた歯の隙間から荒く息をしながらも不敵な笑みを浮かべながら立ち塞がる。

 既に余裕は無いのだが、焦る仮面の男の前では不器用ながらも余裕がある様に見せ付けていた。

 

 目の前の敵と戦いながら、頭の中に浮かぶ別視点で戦っているカイリューとの一心同体の感覚を保つ。

 

 初めてのことであるのと普段の感覚なら絶対に処理し切れていなかったが、今の彼には視界に映る光景――世界がゆっくりに感じられる感覚があるので思考も捌き切れていた。

 

「退け…退け貴様ァァ!!!」

「だったら…退かして見せろォッ!!」

 

 二人の攻防は互角であったが、カイリューとラプラスの戦いは距離を詰めたドラゴンポケモンが完全に優勢であり、先程からずっとラプラスは一方的にボコボコにされていた。

 元々ラプラスは体格的に接近戦は不得手だ。距離を取る必要があっても一撃一撃が意識が飛びそうになる程に重く、軽めでも技を放つことを意識すら出来なかった。

 対するカイリューはシジマの格闘ポケモンから格闘技などの近接戦闘技術を身に付け、その上アキラと同等の動体視力と反応速度、世界がゆっくりと感じられる感覚を発揮出来ている。

 今のカイリューは、接近戦に限定すれば間違いなくこの場にいる誰よりも強いと言っても過言では無かった。

 

「退けェエエッ!!!」

 

 仮面の男はアキラを片付けるよりもラプラスの元へ向かおうとするが、アキラは体格で大きく劣るだけでなく膂力さえも上回れているにも関わらず盾を前面に出しながらも仮面の男を真正面から受けて、後ろに押されながら仮面の男の行く手を阻む。

 

「退けッ! 退けぇ!! 何故貴様はそこまでして私達の邪魔をする! 何が目的だ!」

「自分が今まで何やって来たのか心に問い掛けろ!」

「そんなことはわかり切っている! だが貴様は私に一体何の恨みがある! 殆ど無関係だろうが!!」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()() ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「えぇい! どちらの意識かハッキリさせろ!」

 

 恨みなど既に山の様に買っている。

 シルバーなら復讐を望むのもわかる。レッドやゴールドが力を持った子ども特有の正義感で悪事を止めようとすることもわかるが、ここまでではない。

 だけど、アキラには二つの感情が混ざっている。悪事を止めたいと言う正義感と激しい怒り。彼個人なら正義感だが、自覚しているかはわからないがここでもカイリューの影響を強く受けていた。

 そう言った部外者なのに訳の分からない理由で首を突っ込んできたことも仮面の男にとっては、更に苛立つ理由でもあった。

 

 一方のアキラ自身、ヤナギの言う通り自分が完全な部外者でただ首を突っ込んで勝手に挑んできただけなのは自覚していた。

 放置していても恐らく知っている通りの形で終わるかもしれないが、自分が長く関わっている時点でそうならない保証はない。

 

 何より昔と違って力を身に付けた。

 

 自分が加わることで余計に酷くなる可能性はあったが、ここまでレッド達やジムリーダー達と言ったこの世界の色んな人達と深く関わり、様々な関係を築いた今では知っているのに彼らが苦しむことになるのを見て見ぬふりなど出来なかった。

 

 そうしている間にカイリューに一方的に殴られ続けていたラプラスが、ドラゴンポケモンの鉤爪が砕ける形で消えるのとほぼ同時にその体を崩した。

 

 傷だらけで伏せるラプラス、息を荒げながらも見下ろすカイリュー。

 

 勝敗は付いたように見えて、まだ付いていない。

 

 なりふり構っていられなかった仮面の男は、立ち塞がるアキラを力任せに押し退けてカイリュー目掛けて走る。

 ラプラスを見下ろすカイリュー目掛けて拳を振り上げるが、カイリューは想定外とも言える動き――飛び回し蹴りの様な蹴りを仮面の男の脇腹に叩き込み、仮面の男の体は滑る様に転がっていく。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そこまで必死なのも大事にしていたからこそ、別れたり失ってしまったことが認められないからなんだろうけど――」

 

 蹴り飛ばされてから立ち上がるのに仮面の男が手間取っている間に、振り絞る様に立ち上がったアキラは右腕に付けていた盾を放り投げるや握り締めながら右腕を振り上げる。

 

「別れってのは望む望まない関係無く――」

 

 そしてカイリューも、彼の動きに合わせて”げきりん”を纏わせた黄緑色に光る右拳を握り締めながら振り上げ、ラプラスを見据える。

 

「――()()()()()()()()()()()()()()()()()!!!」

 

 アキラとカイリューが雄叫びを上げるかの様に叫んだ瞬間、ラプラスは足掻く様に吠えながら残された力を振り絞って、カイリューに向けて首を持ち上げた。

 大きく開かれた口からは一際強い青白い光で溢れていたが、放たれる刹那に”げきりん”を纏ったカイリューの腕がラプラスの頭部目掛けて振り下ろされ、目が眩む程の黄緑色の閃光と轟音が辺りを包み込んだ。




アキラとカイリュー、極限状態に追い込まれるも渾身の一撃を叩き込む。

仮面の男が謎に感じているアキラの強さの理由については、幾つかは原作知識や本人の気質と言ったものなのでアキラが知れば納得したりや答えられるものもありますが、才能と言えるのか微妙なのや具体的に何故なのか彼自身も良くわかっていないものの方が多いです。

例を挙げますと、今彼が大暴れ出来ている超人染みた身体能力。
リミッターが解除されていると言う風に認識していますが、何故そうなっているのかは彼自身も良くわかっていないので理由を聞かれても答えられません。

ちなみに彼がポケモントレーナーとしての才能があると判断する基準は、度々描いていますがレッドやイエロー、ゴールドみたいなポケモンとすぐに仲良くなれたり信頼を寄せられると言った点です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。