少し離れた場所で倒れているアキラに視線を向けながら、仮面の男は静かに佇んでいた。
先程まで彼らと繰り広げた戦い。相手の消耗前提での逃げの姿勢を消極的、卑怯だと言う者はいるかもしれない。
だけど自身のトレーナーとしてのプライドや勝敗の結果などよりも遥かに重要なものを考えれば、そんなものは紙屑以下だ。
今最優先すべきは、長年に渡って計画してきた目的の達成。それが何物にも代えがたい。
そして仮面の男の予想通り、
射貫く様に飛来する鋭い針と光弾を仮面の男は、自身の背中を盾代わりにしてでも立っているのもやっとであるラプラスへと届くのを防いだ。
どこからともなく仕掛けられた狙撃含めた集中砲火とほぼ同時に、何匹かの得物を手にしたアキラのポケモン達が相手にしていた氷人形を無視、或いは遠くへ吹き飛ばした上であらゆる方向から殺到した。
彼らの目は文字通り殺意と怒りを漲らせており、狙いこそラプラスではあったが、何匹かはその過程でトレーナーである仮面の男を巻き込むのには一切躊躇が無かった。
当然彼らの放つ殺気を感じ取れない仮面の男では無く、彼は自ら体を張って仕掛けられる攻撃を防いでラプラスを守り、ラプラス自身も今にも倒れそうな意識を保ちながら追加の氷人形や氷の盾を瞬く間に作り出すと防いだり、代わりに相手をさせるなど抵抗した。
だが、それらの防御を突破するのがいた。
立ち塞がる氷人形と遮る氷の盾を粉砕し、気付いた仮面の男が伸ばした腕さえも撥ね退けたひふきポケモンのブーバーが、手にした”ふといホネ”を両手で握り締めて、ラプラスの顔目掛けてフルスイングで殴り付けた。
自らが発揮した特殊技能の反動で倒れ込んでいたブーバーだったが、時間が経過すれば動けなくなるデメリットは回復するので彼もまた全てを終わらせるつもりで突っ込んだ。
彼らは知らないが、ラプラスがカイリューの最後の一撃を耐えれることが出来たのは”こらえる”と呼ばれる技の効力によるものだ。
瀕死に追い詰められる程の攻撃を受けても、必ずギリギリで意識を保った上で耐えることが出来る技。
故に既にラプラスの体力は、ちょっとした技を受けるだけで倒れてもおかしくない綱渡り状態。
それでもブーバーは油断なく確実に仕留めるつもりでカイリュー同様に本気の一撃を仕掛けたのだが、全く想像していなかった光景を目の当たりにして思わず驚愕した。
ラプラスが鬼気迫る目で、
これ以上、ダメージを受ける訳にはいかないという決死の判断と行動だった。
これにはブーバーは瞠ってしまい一瞬だけ動きが硬直してしまったが、すぐさま切り替えて噛み付かれたことで固定された”ふといホネ”を起点に蹴りを叩き込もうとする。
ところが直後にラプラスに物凄い速さで飛来する何かが当たり、爆発にも似た眩い光がラプラスを包み込んだ。
それによってまたしてもブーバーの攻撃は中断させられるが、閃光に包まれたラプラスが咥えた”ふといホネ”に対してまるで万力の様な力が加えられた。
軋みと何かが欠ける音。
直感的に悪寒を感じた直後だった。
何とラプラスは、噛み付く形で受け止めていた”ふといホネ”を噛み砕いたのだ。
普段からブーバーが握っていることで熱が溜まりやすくなっている”ふといホネ”をラプラスが口から漏らした冷気で急速に冷やし、温度差で脆くしたことが一番の要因であったが、そんなことをブーバーが知る由も無かった。
手にしてから何かと荒っぽく使って来たが、今まで目立った損傷を経験したことが無かっただけに得物を破壊されてしまったことに、今度こそブーバーは驚愕と動揺を露にする。
起点にしていた”ふといホネ”を噛み砕かれたことで、バランスを崩したひふきポケモンはやむを得ず手にしているのとは逆の砕かれる形で折られた片方のホネを掴むと予期せぬ攻撃を警戒してすぐさま離れる。
そして再びラプラスを見据えたブーバーが目にしたのは、収まった光の中からまだ息は荒いものの傷跡が先程よりも減り、まるで体力が回復した姿を見せるなみのりポケモンがいた。
どう考えても先程の光が何か影響していることを察して次の行動に出ようとしたその時、横腹に思い掛けない衝撃を受けた。
ラプラスばかりに意識と神経を集中させていたが故に気付かなかった虚を突かれた衝撃にブーバーは混乱した。
抗う様に衝撃を受けた横腹へ視線をそちらに向けると、ついさっき倒したと思ったデリバードが”ずつき”と思われる技で突撃していたのだ。
何故――とブーバーは混乱したが、まさかデリバードもラプラスと同様に最後にブーバーの攻撃を受ける直前に”耐える”選択をしたことをひふきポケモンは知る由も無かった。
理由はどうあれ、完全な意味で仕留め損ねたことを悟ったブーバーであったが、持ち堪えることも出来ずにその体は吹き飛んでいった。
「!? ブーバー!?」
ひふきポケモンが吹き飛んだ先にはエンテイに乗るカツラがいたが、彼らは避けることはせずに飛んでくるブーバーを体を張って受け止めた。
だが無事かどうかを確認したり降ろす間も無く、仲間を助けたが故に隙だらけの彼らに対してラプラスは”れいとうビーム”の青白い光線を放ってきた。
それは”れいとうビーム”ではあったが、先程までの青白い稲妻を何本も束ねた様なものではなく、青白い極太い光線に青い稲妻を纏った様な規模が違い過ぎる光線だった。
「迎撃するんだエンテイ!!」
必殺の意思を乗せた本気の技に対して、エンテイもブーバーを受け止めた姿勢のまま最大パワーでの炎を放って迎え撃つ。
勢いのままに噴射された炎と極太の青白い冷凍光線が激しく衝突するが、ラプラスが放つ本気の氷技は、相性や性質で圧倒的に有利な筈のエンテイの炎技を純粋な力で少しずつ押していく。
「ッ!」
単純な能力や相性では推し量れない鬼気迫るものをカツラは感じ取っていたがエンテイは力の限りを尽くす。
しかしカツラは既に仮面の男が、
目の前の技のぶつかり合いに集中していた時、突如としてカツラの頭上で幾つもの爆発が起こり、激戦を重ねて脆くなっていた建物の天井の一部が崩落し始めた。
突然のことにカツラは驚愕するが、落ちて来る瓦礫から逃れようにも目の前に迫る脅威の対処で精一杯でエンテイ共々動けなかった。
「カツラさん!」
カスミが叫び声を上げるが、カツラとエンテイ、そしてブーバーは次々と落ちて来る天井の瓦礫に巻き込まれていき、舞い上がった粉塵と瓦礫の山に埋もれてしまった。
「そんな……」
「くそっ…」
共に戦って仲間の姿が瞬く間に消えてしまったことにカスミは言葉を失った。
一方のマチスは、状況が決定的に最悪になったことを察した。
カツラと共に戦っていたエンテイは、何故か知らないが幾ら砕いても再生する仮面の男が生み出した氷人形を無力化出来る唯一の存在だった。
しかし、たった今カツラと共に瓦礫の山の下敷きになってしまった。
それが意味することは、自分達は不死身の氷人形達に対する対抗手段を失ったと言うことだ。
投げ付けた”プレゼント”によって天井の崩壊を起こしたデリバードは、狙い通り事が進んだことを見届けると再び袋から”プレゼント”を取り出し、それをラプラスと仮面の男――正確には胸目掛けて勢い良く投げ付けた。
味方を攻撃している様にしか見えない行動であったが、ラプラスと仮面の男はそのままデリバードが投げた”プレゼント”を避ける素振りを見せることなく受けた。
すると”プレゼント”は爆発するどころか眩い光を放ち、ラプラスが負っていた傷を癒した。
これにはカスミとマチスも驚くが、デリバードが使う”プレゼント”は威力がランダムで決まるだけでなく、攻撃のつもりが意図せず相手を回復させる要素もある変わった技だ。
普通ならそんな不確定要素が強い技は使われないが、仮面の男が連れているデリバードは常に最大威力を引き出せるだけでなく、好きなように回復効果としての”プレゼント”も使えるので、実質的に自身だけでなく味方も回復させる回復技としても使うことが出来た。
回復の質は他の技と比べると良い訳では無いが、それでも弱った味方に再び力を与えることには変わりなかった。
ある程度の戦力の回復が出来た仮面の男であったが、彼はこれ以上この場に残って戦うつもりは無かった。
最高戦力と言える二匹とリーダーであるトレーナーであるアキラが戦闘不能に陥り、士気の低下や戦意喪失をしてもおかしくなかったが、残されたアキラのポケモン達は勢いを衰えさせることなく氷人形と戦い続け、何とか仮面の男に仕掛けるだけの余力を確保をしようとしていたからだ。
「行くぞ。もうここには用はない」
残党であっても念入りに倒した方が良かったが、残された時間が少ないことも考慮すれば片手間に片付けられる程、この場にいる敵は弱くは無かった。
自動的に動いてくれる氷人形達に任せて、この場から去ろうとしたタイミングだった。
「待てよおい!!!」
周囲の戦いに巻き込まれない距離ではあったが、それでも可能な限り近付いたゴールドが仮面の男に対して声を荒げた。
「仮面の男! お前にとってポケモンは何なんだ!?」
ついさっき、カスミ達に問われたのと同じことをゴールドは再び問い掛けた。
先程の彼らのやり取りが聞こえていなかったのかと一瞬思ったが、そもそもかなり離れていたので聞こえていないのも無理は無かった。
しかし、仮面の男は彼の様子に嫌な予感を感じ取っていた。それが一体何なのかはハッキリしなかったがこのまま黙っているのも何故か許せなかった。
「……道具だ」
「嘘だッ!!!」
仮面の男の答えをゴールドは即座に否定した。
傍から聞くと仮面の男の答えは如何にも悪党らしいものだが、ゴールドはそれが”嘘”であると断言するだけの確信があった。
「ホントにポケモンのことを”道具”だと思っているなら、”おんがえし”であれだけの力を引き出せる筈がねえ!」
ロケット団の首領として各地で事件を起こす大悪党。
その認識に変わりないが、仮面の男のトレーナーとしての態度や振る舞いが思っていたのと違うことをゴールドは感じていた。
傷だらけで瀕死状態のラプラスに向けるその姿、何が何でも守ろうとする姿、不気味な仮面をしているのに深く慈しんでいるものだ。
そして、アキラのカイリューに対して仕掛けた技である”おんがえし”。
あれはポケモンがトレーナーに懐いていなければ、その力を発揮することは出来ない。
”やつあたり”だったら何一つ思わなかった。寧ろ、悪党らしいと感じて更に許せない気持ちになっていた。
だが、実際に使われたのは真逆の性質の技。それも弱っていたとはいえ、伝説のポケモンを正面から打ち負かせるアキラのカイリューを倒す程の威力。
単に忠誠を誓うや従うとかでは決して引き出せない。本当の意味でトレーナーを、誰かを信頼し、心から想っていなければ到底不可能な力。
「手持ち以外の全員を敵に回して、そこまでして取り戻したものって何なんだよ!!!」
仮面の男がやっていることが悪であることには変わりない。
けれど手持ちにだけ向けている優しさ、アキラを倒した直後に語った内容でゴールドは仮面の男が増々わからなくなった。
全て聞こえた訳では無いが、語った内容を聞く限りでは別れてしまった存在を取り戻す為に必死になっていることは聞こえていた。
これ程までの悪事の限りを尽くしてでも取り戻したい別れてしまった存在、わかりそうで当事者でも無ければわからないキーワードばかりであったが、そこに鍵があるとゴールドは考えながら、何とか仮面の男をこの場に留めようとしていた。
それが仮面の男にとって、最も触れられたくないことであるとは知らずにだ。
「――無謀なことに首を突っ込むな。愚か者」
怒気を露わにした声を発するや傍に控えていたデリバードがゴールドの排除に動こうとする。
すぐさまゴールドが退こうとした刹那、両者の間を遮る様に大きなコンクリートの塊が投げ付けられた。
「下がるんじゃゴールド!」
ガルーラを連れたオーキド博士が追い越す様に彼の前に立ち、仮面の男とそのポケモン達を見据えた。
「ジジイ!」
「オーキド!」
思ってもいなかった人物が飛び込んできたことに驚く間もなく、ガルーラは遮っているコンクリートの塊を殴り付けることで砕いた無数の岩を疑似的ないわタイプ技の様に飛ばす。
デリバードは身軽な動きで岩を弾いたり砕いていくが、そこまで機敏には動けないラプラスは氷の盾を生み出して防いでいく。
「ガルっち! ”かいりき”!」
畳み掛けるつもりであったオーキド博士の指示を耳にするやガルーラは足元のフィールドを殴り付けると、まるでちゃぶ台返しの様にフィールドのコンクリートを引き剝がし、足場が不安定になった仮面の男とその手持ち達も引っ繰り返った。
強引且つ派手ではあったが、そのままガルーラとオーキド博士は次の行動へ移った。
年故に先程の様に戦いを長引かせるつもりはオーキド博士には無かった。
決着はすぐに着く。
「”いわなだれ”!」
引っ繰り返したフィールドのコンクリートの一部をガルーラが怒涛の勢いで砕いていき、それを雪崩の如く仮面の男達へと降り注がせる。
先程のカツラとエンテイ、ブーバーみたいに相手を生き埋めにする勢いであったが、このくらいで終わる訳が無いことをオーキド博士は知っていた。
何故ならば――
かつて、この流れで勝利したことがオーキド博士にはあったからだ。
だけど、今の彼らが過去に負けた経験のある流れ通りにやられる筈が無いことも察していた。この手で来ることも予想済みと確信していた。
現に”いわなだれ”をまともに受けているにも関わらず、仮面の男とラプラスの目に動揺の色は無かった。
良く鍛えられている。
オーキド博士だけでなく、ガルーラも同じことを考えていた。
こうして対峙すればする程、遠い昔、共に切磋琢磨をした好敵手の面影が目の前のラプラスから感じられた。
だからこそ、尚更退く訳にはいかなかった。彼らもすぐに反撃などの対応をする筈だが、その先はアドリブで対応出来る。
自分の力だけでは止めるどころか敵わなく、ここまで消耗させたアキラの手柄を横取りするみたいであったが、それでもオーキド博士は泥を被ろうが不名誉であろうと
「ガルっち! ”ピヨピヨパンチ”!!!」
オーキド博士とガルーラ、互いに考えることが重なり、先程のアキラとカイリューの様に渾身の力を込め、気を抜けば意識が錯乱しかねない特殊なパンチをガルーラは繰り出した。
窮地と極限状況が重なり、全盛期を彷彿させるタイミングでの合図、そしてガルーラの”ピヨピヨパンチ”。
全てが全盛期の時であっても最高と言っても過言では無く、今正に彼らの拳がラプラスに届こうとした瞬間だった。
「――終わりだ」
冷たく仮面の男が告げた直後、ラプラスから強烈な青白い光と共に凄まじい冷気が全身から放たれた。
あまりの眩しさにオーキド博士だけでなく、ゴールドも直視することが出来なくて思わず目を逸らした。
放たれた光は一瞬ではあったが、急激に冷やされた影響なのか辺りには冷えた空気が一気に広がった。
吐息が白くなる程の冷気が広がる中、オーキド博士のガルーラと思われる姿が見えたが、次第に今どんな状態になっているのかが明らかになった。
ラプラスの目の前で、ガルーラは今にも殴り付ける寸前の体勢のまま、その体は白い雪像の様に固まっていたのだ。
氷の中に閉じ込められてしまうでも、凍り付いた体に良く見られる氷柱などの余分な氷は一切無かった。
まるで薄い氷の膜が、そのままガルーラの全身を覆った様な恐ろしくも洗練された完璧な氷漬けだった。
「”ぜったいれいど”…か…」
ガルーラの状態を見て、オーキド博士は全てを悟ったかの様に呟いた。
”ぜったいれいど”
遠い地方で一部のこおりタイプのポケモンが使うことが確認されて、近々正式な発表が予定されていた技だ。
カントー地方やジョウト地方のポケモンで同じ技が使える種や個体は未確認だったが、その使える個体が目の前にいた。
全盛期でも最高と言える一撃を繰り出しても尚、止めることが出来なかったことはオーキド博士の中では重くのしかかり、彼は力が抜けるかの様に両膝から崩れた。
「私の勝ちだ……オーキド」
"げきりん"というエネルギーを纏っているカイリューと違い、ガルーラはそういうのは無かったので決まりやすかった。
仮面の男は完敗したことを悟ったオーキド博士にそれだけを告げると、ラプラスをモンスターボールに戻してデリバードと共に浮き上がった。
「っ! 待て!!」
ゴールドの制止を無視して、今度こそ仮面の男はデリバードに伴われる形でポケモンリーグの会場がある建物から再び飛び立った。
とうとう止めることが出来なかった様に見えたが、ゴールドから見ると単にこの場から去ったにしては焦っている様に見えた。
ラプラスを出してから目に見えてわかる程に大切にしている素振りを見せた仮面の男に只ならぬ目的があることをゴールドは確信していたが、それでも止めるつもりだった。
飛び立った仮面の男を追うべくシルバーは一足早く駆け出しており、ゴールドも彼の後に続こうとした。
「ゴールド…」
「ジジイ! アンタが仮面の男と知り合いなのはわかった。だけどだからと言って止まる気は無いからな!」
「……あぁ…情けないが今の儂にはもう彼を止める力は無い。だから…頼む」
もう今の自分には、昔の様に動いていく力は無い。オーキド博士は悟っていた。
それに全盛期の力で挑めたとしても、友を止めることはもう出来ないこともわかってしまった。
遠のいていくゴールドとシルバーの背中を見届けるオーキド博士には、彼らに友の運命とこの戦いの命運を託すしか無かった。
全力で走っている内にゴールドは先に動いていたシルバーに追い付く。
彼もゴールドが追い付いたことに気付くが、すぐに顔を前に向けてそのまま仮面の男を追う。
「…ゴールド、”いかりのみずうみ”でお前に伝えた忠告を憶えているか?」
「あん? 急になんだよ」
「あの時俺が追い掛けていた敵…あの仮面の男は見てわかる通り伝説のポケモンを手中に収め、その伝説さえも倒すアキラ達も返り討ちにする程の相手だ。お前のトレーナーとしての実力が飛躍的に高まったことは認めるが、それでもお前では如何にもならない相手だ。なのに何故お前はまだ敵わない相手に挑む」
「シルバー、お前は敵わないからって挑む前から諦めるか? そりゃ俺は”戦う者”ってジジイが言っていたレッド先輩や化け物みてぇなアキラと比べると実力は無いのや向いている方向性が違うのはわかってんよ。だけど、だからと言って諦める理由にも悪事を見過ごす理由にもならねぇよ。それはお前だってそうだろ」
「……そうだな」
幾ら忠告してもゴールドが折れないことをシルバーはこの数か月と先程の戦いから確信していた。
自分もポケモンバトルなどの戦いに備えたことをして力を付けたが、それでもまだ力は足りないし、向いている人達と比べればより時間と経験が必要だろうことも察していた。
だけどそれを理由に諦めるなど、彼の言う通りとんでもなかった。
それに今の仮面の男と手持ちポケモンはアキラとの激戦の影響で満身創痍だ。
勝機は十分にあった。
「足を引っ張るなよ」
「こっちの台詞だ!」
それだけを交わすと二人はどこかを目指して飛んで行く仮面の男の後を手持ち達と共に追い掛け続けるのだった。
アキラ戦闘不能後、仮面の男は去ってしまい、氷人形への対抗手段を失うなど一気に状況が悪くなる。
原作でゴールドはデリバードを倒すのにニョロトノの”ほろびのうた”で相打ちに持ち込んでいましたが、他に手が無かったり格上を倒せることを除いても”こらえる”などの技の存在を考えると意外と最適解だったのでは無いかと思います。
”ぜったいれいど”は、仮面の男なら使ってきてもおかしくない技だと思いましたので、先取りする形で出しました。
次回、絶望的な状況を覆す変化が起きます。