SPECIALな冒険記   作:冴龍

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本作の独自設定と独自解釈を元にした独自展開があります。


復活の炎

 ゴールドとシルバーの二人が仮面の男を追うと言う行動を起こしていた時、クリスも遅れてだが行動を起こしていた。

 周囲で仮面の男が残した氷人形軍団との激しい戦いが繰り広げられる中、倒れてからピクリとも動く様子が無いアキラの元へ彼女は急いで向かった。

 当然、氷人形が邪魔しに来たり倒れているアキラを狙ったりするが、そこは”せいなるはい”で回復したクリスの手持ちやアキラの手持ち達が先回りすることで阻止した。

 

「おっも…」

 

 少しでも安全を確保するためにアキラを戦いから離れた壁際――カイリューが力尽きている場所までクリスは運ぼうとしたが、彼の体が予想以上に重くて悪戦苦闘した。

 ロケットランチャーや盾などの重装備を置いているにも関わらず、まるで全身に重りを付けているかの様に彼の体は重かった。

 辛うじて上半身だけを持ち上げて少しずつ引き摺ることは出来たが、それでも力の抜けたアキラの体を運ぶのは彼女だけでは厳しかった。

 

 手持ちの手を借りようと考えた時、氷人形達がアキラの手持ち達が相手に出来る以上の数で押し寄せ、クリスの手持ち達さえも蹴散らして彼女に迫る。

 あまりにも敵の動きが速過ぎて最悪の考えが彼女の脳裏を過ぎったが、迫る氷人形を凄まじい速さで転がる何かが纏めて跳ね飛ばし、彼女を危機から救った。

 

「大丈夫か、クリス」

 

 この戦いが始まってから居た面々とは異なる突然窮地を救ってくれた存在にクリスは少々混乱するが、すぐに氷人形達を跳ねたのがマルマインと呼ばれるポケモンなのと掛けられた声に聞き覚えがあったこと、そして自分に差し伸べられた手から相手が誰なのか悟った。

 

「ミナキさん!」

 

 伸ばされた手の持ち主は、以前クリスが紆余曲折あってスイクンの捕獲やスイクンを狙うロケット団を相手に共闘をしたスイクンハンターを自称する青年ミナキのだった。

 何故彼がこの場に駆け付けたのかは知らなかったが、それでも数少ない手を貸してくれる存在に状況も相俟ってクリスは感謝してもし切れなかった。

 

「よく…来てくれました」

「愛しのスイクンが戦っているんだ。そこに私が加勢しない訳にはいかない」

 

 口ではそう言っていたが、ミナキ自身がこの場に来たのは本当に偶然のことだった。

 

 ある時期からスイクンの手掛かりがプツリと途絶えてしまったので、気晴らしや相談、そして応援も兼ねて心の友と呼べる程の友人であるエンジュジムのジムリーダーを務めているマツバの元を彼は訪れることにした。

 ところがやって来たポケモンリーグの会場は、建物が半壊する程の被害を受けるだけでなく、映画の世界に迷い込んでしまったのかと思いたくなる程の壮絶な怪獣決戦が繰り広げられていて大混乱に陥っていた。

 

 あまりの事態と規模の大きさに、当初ミナキは驚きのあまり様子見をしていたが、長年追い掛けていたスイクンや同じスイクンを追い掛けるライバルと認めたクリスが戦っていることを知るや事態の重さと今倒れているアキラが怪獣決戦に敗れてしまったのを切っ掛けに、急いで加勢することを決意した。

 

 彼もアキラの体の重さに苦労しながらもクリスと協力して、纏めて診て貰うことも兼ねて壁に叩き付けられてからうなだれる様に意識を失っているカイリューのすぐ傍まで運んだ。

 すぐさま手持ちに氷人形の相手を任せたキョウが駆け寄ると、簡易的ではあるもののアキラの容態を確認し始めた。

 

「あの…アキラさんの容態は…」

「正直言ってわからん。だが、仮に意識を取り戻してもこれ以上戦うのは無理だ」

 

 度重なる連戦による疲労や負傷による負荷に体が限界を迎えたのだろう。

 脈が明らかにおかしいことも気になったが、仮にカイリューが復活出来たとしても彼が今すぐに意識を取り戻すことも、これ以上戦うことは無理と言わざるを得ない。

 そのままキョウは着ていた忍び装束から様々な道具を取り出して、傷や打ち付けた箇所に持ち合わせた塗り薬を塗ったり頭を中心に止血目的で布を巻いていく。

 

 手際良く応急処置を施していくキョウを見ながら、クリスは必死に考える。

 

 今自分に出来ることは何か。

 

 迫る氷人形を破壊することは勿論だが、それをやっても時間を稼ぐだけで終わりだ。

 そこから先はどうしたら良いのかが浮かばなかった。

 

「どうしたら…良いの…」

 

 屈してはいけない。弱気になってはいけない。

 そうだとわかっていても、この危機的状況を打破するにはどうしたら良いのかクリスにはわからなかった。ゴールドとシルバーは仮面の男の後を追ったが、残ったスイクン達が苦戦している目の前の現状も如何にかしたい。

 

 レッドは、まだなのか。

 

 アキラが倒されてしまった今では、彼と同等の実力者とされる彼の加勢が望まれるが、未だに来る気配は無い。

 加えてクリスの懸念通り、押し寄せる氷人形を破壊することは出来ても、時間が経てば再生してしまう問題はどうしても解決しなかった。

 先程まで唯一氷人形を無力化出来ていたエンテイが、今は瓦礫の下に生き埋めにされているのだから、それも当然だった。

 スイクンやライコウなどの伝説のポケモン達だけでなく、高い戦闘力を誇るアキラのポケモン達でも、際限無く再生と復活を繰り返す氷人形には手を焼いていた。

 

 サンドパンは原形を留めていない観客席の高い位置に陣取って、自らの体を固定砲台の様に固定して片方の手の爪から”めざめるパワー”の光弾、空いている方の爪ではガトリングの様な弾幕で”どくばり”の連射、そして背中の突起から”みがわり”の応用でHPを削って生み出したエネルギーで威力を高めた”スピードスター”をミサイルを彷彿させる勢いで次々と撃ち出し、絶え間ない猛攻を氷人形達に浴びせて弾幕で砕いたり、幾つもの激しい爆発で吹き飛ばしていく。

 

 ドーブルもねずみポケモンの援護として”まがったスプーン”を魔法の杖の様に振って多種多様なタイプの飛び技で、忙しなく押し寄せる氷人形達に仕掛けるも多勢に無勢だ。

 

 最前線で戦っているエレブーやバンギラス、カポエラーも鍛えられた屈強な体を活かして、次々と群がって来る氷人形を引き受けて剛腕を振るったり蹴り砕くなど抵抗を続けていたが、勢いに負けて呑み込まれるのも時間の問題。

 

 氷人形達はダメージを一切気にしない単純な捨て身の攻撃ばかりなので、ゲンガーとヤドキングは集中という形で隙が生じやすい特殊攻撃では無く各々の得物を手に戦うも何時まで保てるか。

 

 どうすればこの状況を覆せるのか。

 逆転する希望が見えないくらい絶望的であった。

 

 

 

 

 

「ッ…ここは…」

 

 砂状の粉末が時折落ちる薄暗い狭い空間の中で、カツラは意識を取り戻した。

 記憶が一時的に混濁していたこともあって一体何があったのか困惑していた彼だったが、デリバードの攻撃によって崩落した天井の瓦礫に生き埋めにされたことを思い出した。

 あの時、彼は瓦礫に潰される形での死さえも覚悟したが、気が付けば何故か自身の周りは潰れない程度の隙間が出来ていて無事だった。

 

「エンテイ…」

 

 すぐにカツラは、目の前で自身を庇う様にエンテイが体を張って瓦礫から身を守るだけでなく僅かな隙間を保つ支えになっているお陰なのを知った。

 だが屈強な肉体で持ち堪えてはいたものの、身動きが出来ないのも重なり長くは持ちそうには無かった。

 

 九死に一生を得たが、危機的な状況であることには変わりないことを察したカツラは、どうしたら良いかと考えた時、薄暗い狭い空間の中で自分達以外に動く何かに気付いた。

 それは先程、デリバードに蹴散らされて受け止めたまま一緒に巻き込まれたブーバーだった。

 彼もまた、カツラ同様にエンテイが今居る空間を保つ支えになってくれているお陰で瓦礫に潰されずに済んでいたが、満身創痍な体に力を入れて立ち上がろうとしていた。

 

 そんなひふきポケモンの姿に、カツラはやはり彼もアキラのポケモンであると感じていた。

 サンドパンなどの面々とは異なり性格などは似ていないが、トレーナーであるアキラと同様に諦めが悪い点など何かしらの共通点があった。

 戦える状態で無くてもまだまだ戦うつもりである彼の姿を見たことで気力を取り戻したカツラも、どうやってこの状況から脱出する方法を考え始め、過去の記憶から一緒に居るブーバーに希望を見出した。

 

 アキラのブーバーは通常の個体とは異なり、”テレポート”を覚えている変わった個体だ。

 何故そんな技を覚えているのかは不明だが、野生の時から覚えていたことや今は廃盤になったわざマシンに”テレポート”が存在していたので野生の頃にどこかで拾って覚えたとトレーナーであるアキラは考えていた。

 ”テレポート”の性質を考えれば、ブーバーを何かしらの手段で回復、或いは力を取り戻させることで、エンテイが動けないこの状況を打破出来るとカツラは考えた。

 そして、どうすれば良いのかの手段も彼は知っていた。

 

「エンテイ…彼に…力を与えることは出来るか?」

 

 カツラからの問い掛けに、エンテイは応える様に額の角の様な突起を光らせるとそこから眩い光を放つ炎を放出した。

 対象を暖める以外にもエネルギーを与えたり、悪しき存在のみを焼くなど、エンテイの放つ炎もホウオウみたいに使い手の意志を強く反映したりする概念的なものに近かった。

 この場合、かつてカツラの体を蝕んでいた病とも言えるものを焼き払った様に、ブーバーには力を与える意思を込めた炎を浴びせていた。

 

 一気に与えたいが、どんな形であっても炎を浴びせていることには変わりない。

 強過ぎると回復しながらダメージを与えると言う奇妙なことになるか、勢いで吹き飛ばしてしまうのでエンテイは微妙な加減をこなしながら、ひふきポケモンに力を与えていく。

 

 しばらくするとカツラ達の狙い通り、ブーバーは徐々に力を取り戻していったのか、体を起こそうとする腕に力が入り、狭い空間の中で徐々に上半身を起き上がらせ始めた。

 

 ”テレポート”が使えるひふきポケモンの協力があれば、この埋もれた瓦礫から脱出することが出来る。

 

 そうカツラは考えていたが、ある程度上半身を起き上がらせたブーバーは、自身の体よりも別の物をエンテイが放つ炎に当てようと両手に掴んでいるものを前に掲げた。

 

 それはラプラスに噛み砕かれて真っ二つに折れた”ふといホネ”だった。

 

 怪訝に思うカツラを余所に、ブーバーは”ふといホネ”の折れた部位を上手く嚙み合わせた状態で砕けた個所を中心にエンテイの炎を浴びせ続け、”ふといホネ”はまるで溶接される鉄の様に少しずつ熱を帯び始めた。

 ひふきポケモンの行動を不思議そうに見つめていたカツラであったが、フと”ふといホネ”――ガラガラが持つホネの性質を思い出した。

 

 カラカラやガラガラが持つホネは、亡き母親や仲間達の墓場から持ってくると言われているが、進化時にホネも一緒に成長するなどホネでありながら使い手の戦い方や外的刺激による影響を受けて形状や性質を変化させる特徴を持っている。

 中には、死した母親の魂が宿った特別なホネを持つガラガラがいると言う話も、何時かの論文でカツラは目にしたことがある。

 だが、それでもホネの変化度合いは、カラカラやガラガラという種族の常識的な範疇内に収まっている。

 

 アキラのブーバーが持つ”ふといホネ”は、貰い物故に当初は標準的なガラガラが持つのと同じであったが、ブーバーが長く戦いに使ってきたことで通常とは異なる刺激を受けた影響か、本来の”ふといホネ”とは長さなどが少し変化していた。

 破損した場合でも何時の間にか”ふといホネ”は再生しているが、それはガラガラが所持していた場合の時であって、厳密な直し方や詳細な理由は未だ不明だ。

 

 なので、今ブーバーがやっているのは”正しい直し方”を知らない彼なりの”ふといホネ”の直し方に見えるが、ブーバーの様子を見ると単に強烈な熱で無理矢理溶接する様に直す以外の意図がある様に見えた。

 そうしてこれまでの知識を整理しながら観察していく内に、ブーバーの狙いをカツラは悟った。

 

「構わんエンテイ。やるんだ!」

 

 エンテイもブーバーの意図を察したのか、カツラに意見を求める様に視線を向けたがカツラは語気を強めて促し、応える様にかざんポケモンは額から放つ炎の勢いを一気に強めた。

 

 それは以前、カツラが自身の身を蝕む病魔を取り除いた荒療治と言える程に手荒な勢いで放たれる炎だった。

 当然ブーバーもその勢いに押されて一瞬だけ苦しそうな息を漏らすが、すぐに歯を食い縛って折れた”ふといホネ”をしっかりと嚙み合わせたまま両手で持ち、ホネと共に余波ではあったがその身にもエンテイが放つ炎を受け続けた。

 表情は辛そうではあったが、同時にまるで何かを楽しみにしている様な顔だった。

 

 今彼らがいる瓦礫の中に出来た僅かな空間を猛烈な熱が充満し始めていたが、それでもカツラは耐えた。

 ブーバーの狙いを完全に把握している訳では無かったが、ここから抜け出せたとしても仮面の男がいなければ、エンテイをここに残す訳にはいかないことはわかっていた。

 

 奴を追い、戦うべき場所へ向かわせなければならない。

 しかし、そうなったらこの場に残された者達は、再生する氷人形に対する打つ手を失う。

 だが可能性は低いものの、もしかしたらその問題を解決出来るかもしれない。

 

 かつてホウオウが”焼けた塔”でエンテイ達を蘇らせた様に、生命エネルギーが溢れる炎を浴びせることで活力を与えることが出来る。

 そのエネルギーを受け続けることでブーバー自身に戦う力が戻るだけでなく、”ふといホネ”にも何かしらの変化が起こるかもしれない。

 普通ならそんなことは有り得ないが、エンテイが放つ炎の神秘的な力、ガラガラが持つ”ふといホネ”が持ち得ると考えられる性質、そしてブーバーの直感とも言える発想をカツラは信じる。

 

 回復でありながら与えられるエネルギーの勢いにブーバーは耐え続け、手にしている”ふといホネ”も噛み合わせている箇所から徐々にホネ全体が熱せられた鉄の様に赤くなっていく。

 

 すると、真正面から炎を浴び続けていた”ふといホネ”の色が徐々に、熱せられている様な色から別の色へと変化していった。

 上手く行っていることをカツラを察したが、エンテイから放たれる炎を浴び続けているブーバーも、全身から滾らせている炎が変わりつつあることには気付いていなかった。

 

 

 

 

 

「クソッタレがぁぁぁーー!!」

 

 マチスの怒りの声が会場内に響き渡った。

 その理由は言うまでも無く押し寄せる仮面の男が残した氷人形達で、彼とライコウは今まさに生み出された氷人形の軍勢に押されていた。

 

 砕いたりと言った破壊することは出来るが、時間が経てば再生して戻ってくるのだ。

 エンテイがいない現状では根本的な解決法は無く、時間稼ぎしか出来ないでいた。

 そして時間が経てば経つほど、彼らは消耗して不利な状況に追い込まれていた。

 

 少し離れたところにいたクリスも戦況の悪さを把握しており、意識の無いアキラとカイリューをどうすれば良いのか困っていた。

 意識を失っているカイリューと一緒に安全な場所に運びたいが、戦いが激し過ぎるのと彼の手持ちの一部や他のトレーナー達と共に加勢したミナキと率いるポケモン達が守る様に陣取っているので移動は全く出来なかった。

 かと言ってこのまま留まれば、何時か氷人形達が雪崩れ込んでくるのは目に見えていた。

 

 彼女が判断に迷っている間、押し寄せる氷人形を最前線で体を張って抑えていたバンギラスとエレブーであったが、幾ら薙ぎ払っても次から次へと体当たりしてくる氷人形の勢いに遂に力負けして背中から倒れ込んでしまった。

 カポエラーは倒れた二匹を助けようとしたが、ハッキリ言って焼け石に水であった。

 

 そして守りの中心を担っていた二匹が倒れたのを機に、押し潰さんとばかりに氷人形達が殺到して山の様に覆い被さって行ったり、二匹を乗り越えて倒れているアキラとカイリューを診ていた面々に氷人形達は迫った。

 ミナキは緊張で顔を強張らせながらキョウやその手持ち共々身構えるが、相手は実質不死身と言える相手、そう長くは持たないことは察していた。

 

 ライコウやスイクンを始めとした伝説のポケモン達、そしてあれだけの強さを誇ったアキラの手持ち達さえも、倒れることの無い氷人形に押され始めている。

 

 このままでは仮面の男の思う壺。

 

 そんな考えがクリスの脳裏に過った時だった。

 

 空気が震える程の衝撃と轟く様な爆音と共に、一際多く積み重なっていた瓦礫の山を空高く真っ直ぐ吹き上がる炎の柱が吹き飛ばして半壊した会場のある建物内を照らした。

 

 まるで噴火を起こした様な光景に多くは一瞬だけでも目を奪われるが、次の瞬間、激しく噴き上げる炎の中から何かが飛び出す。

 噴き上げる炎によって打ち上げられたかの様に見えたが、炎に包まれたそれは乱戦状態だった会場内のフィールドの中心に落ちるや縦横無尽に駆け出し、次々と氷人形が打ち砕かれて行く。

 そして姿を隠す程の激しい炎を振り払う様な大きな一振りによって、倒れていたエレブーとバンギラスに覆い被さる様に圧し掛かっていた大量の氷人形が一掃されてすぐに、炎に包まれたその正体が明らかになった。

 

「…ブーバー?」

 

 姿を隠す程の炎を払ってから現れたのは、先程仮面の男のデリバードにやられてカツラとエンテイと共に瓦礫の生き埋めにされていたブーバーだった。

 だが、その姿はさっきとは少し異なっていた。

 

 ひふきポケモンの名の通り、感情が高ぶった時などに全身から熱を発したり炎を吹き出す時はあるが、今のブーバーが体から発している炎は赤いだけでなく薄くはあったが金色にも見える炎もオーラの様に交えて放っていた。

 だが、何よりも目を引いたのは手にしているものだった。

 

 本来ならガラガラが持っているアイテムである”ふといホネ”がその手に握られていたが、ラプラスに折られる前の状態に戻っているだけでなく、ホネそのものが熱された鉄でも見られない様な深紅の輝きを放っていたのだ。

 

 全く予想していなかった形、それも何かしらの力を手にしたと思われるブーバーが復活したことに周りは驚きのあまり唖然とするが、弟子であるカポエラーは倒れていたバンギラスの体を起こすのを手伝いながらも驚きを露にしており、ゲンガーに至っては嬉しそうに握り締めた拳を振り上げ、笑いながら歓喜の声を上げていた。

 

 それは、単に味方が復活したことに喜んでいるだけでは無かった。

 何故ならさっき飛び出したブーバーが砕いたり蹴散らした氷人形は、どういう訳か再生することなく、一定サイズ以下にまで砕かれた氷は動くことすら無かったからだ。

 まるでエンテイが放つ炎を受けた様にだ。

 しかも今目の前で、エンテイ以外の自分達の味方が氷人形を完全に無力化したのだ。

 

 ようやく勝ち目が――希望が見えたのだ。

 

 ブーバーは少し離れた場所で倒れているアキラとカイリューを一瞥するが、すぐに深紅に染まった”ふといホネ”を両手で握り締めて走り出した。

 その動きに合わせて、氷人形達はそれぞれ目の前の相手を放置してなだれ込む様にブーバーへ襲い掛かった。

 

 だがひふきポケモンは動じることなく、荒々しく雄叫びを上げながら力強く足を踏み締めて、大きく振りかぶった深紅に染まった”ふといホネ”でフィールドを殴り付け、地震の様な衝撃や重々しい轟音と共に放たれた爆炎で押し寄せた氷人形達を跡形も無く焼き尽くした。




ブーバー、エンテイが放つ炎を受け、その力を取り込む形で再生した”ふといホネ”と共にパワーアップして戦線復帰。

ブーバーの身に起こった変化については、原作でゴールドのピチューがライコウから電気エネルギーをたくさん貰ったお陰で大技を出せた流れのエンテイ版みたいなイメージです。

アローラガラガラの様に”ふといホネ”に炎を纏わせたいと考えていたので、アローラガラガラの図鑑解説にあったホネに母親の魂が炎として宿っているという内容を元に、エンテイの特殊な炎によって通常では起こり得ない変化を遂げたという感じになります。

姿についても、カイリューが”げきりん”を纏うのに近いけどより強い一時的な強化形態みたいなものです。

次回、最後の戦いの地へと集まり始めます。
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