SPECIALな冒険記   作:冴龍

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力を合わせて

 土埃を吹き飛ばす様に放たれた”りゅうのいかり”。

 青緑色の光線を彷彿させる竜の炎に対して、今のヤナギは正面からの猛攻を防ぐのに意識と力を注いでいたこともあり、真横は完全に無防備だった。

 だが、今膝の上に乗せているウリムー以外のポケモンであるラプラスが彼を守る様にモンスターボールから飛び出し、その口から”れいとうビーム”を放つ。

 青白い冷気の光線と青緑色に輝く光線状の炎が激しく激突するが、威力はラプラスの方が勝っているのか目に見えて押していく。

 

 しかし”りゅうのいかり”を放っていたカイリューは、技の押し合いに負けていることをすんなり受け入れ、咄嗟に中止すると同時に体を屈めて冷気の光線を回避した。

 その直後、ドラゴンポケモンの姿が軽い音と共に唐突消えたが、少し遅れて砂埃の中から機械的な起動音が唸った。

 収まり始めた土埃の中から色濃く現れた影が、手にしたもので狙いを定めるかの様に構えた瞬間、轟く様な爆音と共にカイリューが砲弾の様に撃ち出された。

 

 目で捉えるどころか、反応することさえ困難な速さで撃ち出されたカイリューが勢いを乗せた鉄拳は、ラプラスの体にしっかりと叩き込まれた。

 拳を体に捻じ込まれたなみのりポケモンは撃ち出された勢いも重なり、振り抜かれたことでヤナギの車椅子を固定している氷人形を巻き込んで木々を薙ぎ倒しながら遥か遠くへと吹き飛んでいった。

 

「攻撃中止!!!」

 

 レッドは声を張り上げるが、彼がするまでも無く全員一斉に攻撃を止める。

 ウリムーによる補強を失ったことで氷の盾も砕け散り、ラプラスを殴り飛ばしたカイリューは後ろ向きに大きく弧を描いて飛ぶ形で自身のトレーナー――狙撃するかの様にロケットランチャーを構えたアキラの元へと戻る。

 

「アキラ!」

 

 レッドが呼び掛けたタイミングでアキラはロケットランチャーの構えを解くと、盾と同様に背中に背負い直しながらカイリューを伴って彼らの元へ早歩きで歩き始めた。

 

 今のアキラは、頭に普段被っている青いキャップ帽が無いだけでなく、着ている服は火傷の痕が残る腹部の大部分が完全に露わになるまでに焼けていた。

 更にそれだけでなく至る箇所が裂けたり焼け焦げているなど、一目でわかるくらいボロボロで、その姿は正に満身創痍と言っても過言では無かった。

 にも関わらず、不思議なくらい彼の歩みはしっかりとしていた。

 

「ちょっと…ボロボロじゃない。ホントに大丈夫なの?」

「問題は無い…一応だけど」

 

 立っているのも不思議な外見であるにも関わらず、執念だけで動いている様な目付きであったことも相俟って、ドン引き気味のブルーにアキラは答えた。

 そんな彼の様子にグリーンは頭が痛いとばかりに自身の頭に手を当てるが、アキラが死闘の末に力尽きた姿を見ていたクリスはどう考えてもすぐに回復出来る状態では無かった彼が復活して、この場に駆け付けたのが信じられないのか口をパクパクさせていた。

 

「ど、どうやって、いえ…意識を取り戻してもあんな状態じゃ…」

「裏技みたいなのを使った」

 

 驚きを隠し切れていないクリスの疑問に端的にそう答えると、レッドとは色違いの青いジャケットの下に着ている黒いシャツから見える火傷の跡らしいのを残した腹部を彼は示した。

 

 クリスがスイクン達とポケモンリーグ会場を飛び出した後、ブーバーがカイリューを復活させたエンテイが放てる生命エネルギー溢れる炎をその身に叩き込んだことで、アキラは意識を取り戻した。

 完全では無いものの、多少は負っていた傷や体に蓄積されていた疲労などのダメージも回復したことで、彼は再び立ち上がるだけでなく戦えるだけの力を取り戻せた。

 その後は、チョウジタウンの外れからポケモンリーグ会場へと急行した時の様に、猛スピードで飛行した際に発生する衝撃や風圧を構えた盾で防ぎながらカイリューと共に”ウバメの森”へ駆け付けた。

 本当はその辺りの経緯を詳しく伝えたかったが、時間が無かったので省いた。

 

 詳細を知らないレッドは、アキラのお腹に昔ブーバーに殴られた時に出来た火傷の痕があることは知っていたが、今見えているのは昔のなのか裏技に繋がる火傷なのかわからなかった。

 だけど、これだけは確実に言えた。

 

「心強いけど…無理するなよ」

「ここが正念場だよレッド。見た目は酷いけど、意外と気力はある。戦えるなら戦うさ」

 

 ここでようやくアキラは表情を緩めると、見渡す様にこの場にいる面々を見ていく。

 

「スイクン達どころか、フリーザーにファイヤー、サンダーまでいるのね。そしてレッドにグリーン、ブルーにイエロー……戦力的には心強いけど、一人足りないな」

 

 アキラの言葉に、シルバーとクリスは反応する。

 それは彼らも感じていたことだからだ。

 しかし、彼がどうしてもこの場には来れない理由もわかっていた。

 

「ゴールドは…ヤナギを追って不思議な空間へ飛び込んだ。だが、それ以降奴がどうなったのかはわからない」

「不思議な空間ね…」

 

 シルバーの脳裏にヤナギが完成させたと言う”時間(とき)をとらえるモンスターボール”、それが生み出したかの様な不思議な空間へと浮かび上がっていくヤナギと生まれたばかりのピカチュウの幼体らしき個体と共に後を追う様に飛び込んだゴールドの姿が過ぎった。

 シルバーからゴールドの行方について聞いたアキラは少し考える素振りを見せると、その視線は祠に向けられた。

 

 祠は内側に何か光るものでもあるのか僅かながら光が零れており、それを見たアキラは一切の迷いなく真っ直ぐ祠へと向かい、すぐさま祠を開けた。

 本来なら祠の中には御神体とされるものがあるが、彼が開いた祠の中には神とされるものが置かれてはいなく、言葉で表現するのは難しい奇妙な空間が広がっていた。

 

「なんだ…これは?」

「こんなのがあるんじゃ、そりゃ下手に開いたら罰が当たるどころか神隠し扱いで行方不明になるわな」

 

 本当はこの時期限定だろうとアキラは内心で付け加えるが、驚くシルバーを余所に不思議空間の中を漂う一枚の板の様なものを彼は見つけた。

 そしてその板には、閉じ込められているのか身動きが取れないゴールドの姿があった。

 

「ゴールド!? 何で貴方がそこにいるの!?」

「おっ!? クリスにシルバー、レッド先輩含めたその他大勢か! 色々あってこの”時間(とき)のはざま”って空間までヤナギの奴を追い掛けたんだけどよ…」

 

 驚くクリスの声で自分のことを見ている面々がいるのに気付いたゴールドは悔しそうに自分がこの空間を漂っている訳を伝える。

 不思議な空間の中を動けない状態で漂うゴールドを助けようと、すぐさまシルバーは祠の中に広がる空間へ腕を突っ込もうとするが、唐突にアキラが手首を掴む形で止める。

 

「何故止める!?」

「こんな変な空間に、何の考えも策も無しに腕を入れたらヤバイからだよ」

「そうだぜシルバー! こん中は捻じ曲がった異空間! 今アキラに止められなかったらお前ヤバイことになっていたからな!」

「じゃあ何でお前は動けないが無事なんだ」

「いやその…勢いでヤナギを追い掛けてこの異空間に飛び込んだら、あの爺さんに氷の板で挟まれてこんなことになって…俺もよくわかんねえ…」

 

 自身が返り討ちに遭ったことをハッキリ伝えたくないのか、ゴールドは自分がどうやられたのかを少し曖昧に話しながらも、何故無事なのか良くわかっていなかった。

 そんな彼にアキラはちょっとだけ溜息を吐くと、唐突に腕を異空間へ突っ込んだ。

 

 さっき偉そうなことを言ってシルバーを止めたのに、突然矛盾する行動を起こした彼に周りは目を疑った。

 が、何かしらの反応をする前に祠の中の空間を漂っていたゴールドを挟んでいた氷の板が突然割れて、祠から彼の体が転がり出てきた。

 

「うおっ!? 何か知らねえけど出られた!」

 

 転がり出てきたゴールドはすぐに体に違和感は無いか軽く確かめるが、一通り確かめ終えたら、出られる切っ掛けになったであろうアキラに顔を向ける。

 

「何をやったんッスか!?」

「いや、手を伸ばしただけなんだけど、まさかいきなり割れるとは思って――」

「違う違う! さっきまで俺がいた異空間は何の用意も無く入ったらあっという間にお陀仏になるのに何でアンタは無事なんッスか!」

「あぁそれね。半信半疑だったけど、どうやら当たっていたみたいで良かったよ」

 

 種明かしと言わんばかりに、アキラは腰に付けたウェストバッグから鮮やかに輝く金色の羽と銀色の羽を取り出す。

 それを見た瞬間、ゴールドだけでなくブルーも驚きで目を見開いた。

 

「ちょっと、何で”ぎんいろのはね”と”にじいろのはね”を持っているのよ。しかも何枚も」

「ポケモンリーグ会場でルギアとホウオウと戦ったからね。その過程で翼から羽が散ったりしていたから、それを搔き集めて来た」

 

 ブルーの指摘にアキラのそうことも無さげに答える。

 元々アキラは、元の世界で今祠の中に広がっている異空間である”時間(とき)のはざま”に入るのとヤナギが求めている存在を強引に捕獲するには二枚の羽が必須であることを知っていた。

 なので自分達と激しい戦いを繰り広げたことで、二匹の羽が至る所に散らばっていたのをアキラは搔き集めた。一部の手持ちは、好都合とばかりに意識を失って倒れているルギアとホウオウの翼から毟り取っていたが、とにかく彼は二匹の羽をたくさん持っていた。

 

「奴が羽を持っているのを戦っている最中に間近で見たから、重要なアイテムらしいと思って持ってきたけど、”時間(とき)のはざま”の存在を見た瞬間にピン!と来た」

「相変わらず察しは良いな」

 

 グリーンが呆れた様な反応を見せるが、アキラはちょっとだけ困った様な乾いた笑いをする。

 実際はどれだけ調べても二匹の羽には、”時間(とき)のはざま”について重要な効果や役目があることが書かれた書物や文献を見つけることは出来なかった。

 ヤナギが求める幻のポケモンの存在や姿を見せるであろう時期を示唆する情報は得られたが、そもそもガンテツ秘伝の書物くらいにしか祠の中に広がる異空間を安全に飛び込めたり確実に捕獲する為の情報は記されていないのだろう。

 秘伝の書物を作った人は、材料含めて一体どこで知ったのだろうか、とアキラは不思議に思っていた。

 

「てか、ヤナギを相手に戦って倒れるまでの流れを見ていたッスけど、そんだけボロボロなのに良く立ち上がれたッスね」

「裏技を使ったからね」

 

 ゴールドからもクリスと同じことを聞かれるが、アキラはさっさと軽く流した。

 それから彼はこの場にいる面々と状況を確認する様に見渡し始めたが、そんな中でイエローはゴールドが連れているあるポケモンに気付いた。

 

「あの…初めて見るポケモンを連れていますけど、その見覚えのある姿はもしかしてピカとチュチュが持っていたタマゴから生まれたポケモンですか?」

「ん? あぁ、こいつは確かにそこの二匹が抱えていたタマゴから孵った俺のちっちゃな相棒だ。まだ名前はねぇけど」

 

 何時の間にか肩に乗っているピカチュウの幼体らしきポケモンに目を向けながら、ゴールドは自慢げにイエローに語った。

 結果的にやられてしまったが、ヤナギを再び追い掛けた際は、その小さな体からは想像出来ないくらいのエネルギーを発揮したものだ。

 なのでこれから戦いでも活躍してくれることを彼は期待していた。

 

「まだ名前が無いのでしたら、ピカとチュチュの子どもですから――”ピチュー”って名前はどうでしょうか?」

「”ピチュー”か…」

 

 イエローの提案にゴールドは肩に乗る小っちゃい相棒に目を向けるが、彼は頬に電気を弾けさせながら頷いた。

 

「どうやら気に入ったみてぇだ。あんがと麦わらギャル!」

「麦わらギャル…」

 

 確かに麦わら帽子を被っているが、そんな風に呼ばれるとはイエローは全く思っていなかったのか表情が固まった。

 彼がタマゴを守ってくれたことや孵してくれたことのお礼も言いたかったが、ゴールドからの珍妙な呼び方のインパクトが強過ぎて、それらの考えも頭から吹き飛んでしまった。

 

「…あ~、取り込み中悪いけど、良いかな?」

「おっと、いけね」

 

 少し気まずそうにしながらもアキラが話し掛けると、二人も今の状況を思い出したのか意識を切り替えた。

 二人の様子を確認したアキラは、これから自分達がやらなければならないことをこの場にいる皆に伝え始めた。

 

「取り敢えず祠を守る。ヤナギを打ち負かすことは出来なくても時間を稼ぎまくれば、祠の中に広がる異空間は消えるだろう。そうなれば時間切れでヤナギはアウト。俺達の勝ちだ」

「そうは…させない…」

 

 聞き覚えのある声を耳にした瞬間、アキラのカイリューを始めとした面々が一斉に声がした方へ特殊技による攻撃を仕掛ける。

 放たれた大火力によって、技が飛んだ先にある森の一帯が轟音と共に吹き飛ぶが、土埃が舞っている更地から砕ける様な音と共に氷人形に車椅子を嵌め込んだヤナギと彼が連れているラプラスが疲弊した様子ながら姿を見せる。

 

「今の攻撃も氷で作った盾で防いだのか。本当に何でもありだな」

「その声は…やはりアキラか。負けたというのにどこまでもしぶとい」

「? 声?」

 

 ヤナギの発言にアキラは疑問を抱いたが、そういえば駆け付けてからもヤナギの視線はどこか見当違いな方に向いていた。

 何か不調があるのかもしれないと彼は考えたが、実はゴールドがヤナギを追い掛ける際にピチューが強力な”フラッシュ”を浴びせて視力を一時期的に麻痺させていることまでは気付かなかった。

 

 それからヤナギは、先程の同時攻撃を防ぐ際に残っていた氷の盾の一部を元に氷人形を何体か作り出して、一斉に突撃させた。

 だがそれらをカイリューは”アイアンテール”の一振りで一蹴し、纏めて吹き飛ばしたのはエンテイの炎を筆頭とした伝説のポケモン達の攻撃で跡形も無く消滅させたり、完全に無力化した。

 それでも上半身だけ這い蹲る様に迫った氷人形もいたが、アキラが地面に縫い付ける様に先端が剣の様に鋭利な方の向きの盾で突き刺して止めると、それをエンテイの炎を”ものまね”したカイリューが焼き払った。

 

「ヤナギ! お前との戦いは俺個人なら負けだけど、まだ戦いそのものは終わっていない。個人的な戦いでは負けてもそれは局地戦! 大局的に見れば、お前の目的さえ止めれば俺達の勝ちだ! 止めたければ息の根を止めるんだな!!!」

「ッ!」

 

 腕に付けた盾を剣の様に鋭利な先端を剣先の様に向けて堂々とアキラが返すと、ヤナギは忌々しさからか表情を歪ませた。

 アキラがジョウト地方に現れてから、ヤナギが長い時間を掛けて進めて来た計画が尽く狂ってきた。そしてその狂いは、最後の最後まで変わらなかった。

 伝説のポケモンをも倒す程の力を持つ彼は、ヤナギにとっては正に”歩く災害”にして”疫病神”であった。

 

「アキラだけじゃねえぞ。レッド先輩達や伝説のポケモン達だって駆け付けて来たんだ! てめえのロクでもねぇ野望もこれまでだ! ヤナギィ!!!」

「――ロクでも無い…野望…か」

 

 強気で告げるゴールドの言葉にヤナギは顔を俯かせるが、途端に周囲の空気が変わった。

 

 冷たい空気。

 

 アキラだけでなく、レッド達やスイクンも含めた伝説のポケモン達も身構えて、ヤナギ達が何時仕掛けて来ても良い様に備えた。

 だけど予想していた猛吹雪などの凄まじい冷気は襲ってこなかった。しかし、寧ろそれの方がマシだったかもしれない事態に彼らは直面することとなった。

 

 カイリューとの攻防や先程の攻撃で満身創痍だったラプラスとヤナギの膝の上に乗るウリムーが、目を青く光らせたり冷気を放って周囲に再び氷人形を生成し始めた。

 

 しかし、その勢いは尋常なものでは無かった。

 

 見ている内に何十体もの氷人形が作られていき、更には目の前だけでなく彼らの背後に広がっているウバメの森からも続々と氷人形が現れ始めた。

 視界の範囲内だけでなくまだ見えない森の奥から現れた大軍勢と言える程の数と規模の氷人形に、アキラだけでなくレッド達も思わず唖然とした。

 さっきはたった数体程度なら簡単に倒せたが、この数はあまりにも予想外。ゴールドの強気の煽りが何か癪に障ったのか、ヤナギはここに来て更なる力を見せ付けてきたのだった。

 

「……煽んない方が良かったな」

 

 あんまり過ぎる光景を目にしたからか、レッドは疲れた様な表情を浮かべてゴールドに告げたが、それは意図せず今この場にいる面々の気持ちを代弁したものだった。

 実際アキラも、ゴールドの調子に乗った強気発言がヤナギの逆鱗に触れてしまったことに呆れて何も言えなかった。

 

「お前達がここまでの戦力と力を残して、最後まで私の前に立ち塞がるのは予想外だった。そこは素直に認めよう。だが、それでも私はお前達の全てを片付ける自信がある。私の――いや、私達の全てを懸けて」

 

 未だ見えない目であるにも関わらず、ヤナギと隣に並ぶラプラスが放つ圧は氷人形の大軍勢を従えていることもあって重かった。

 

 消耗こそしているが、ヤナギはまだ力の底を見せていないとアキラは想定していたが、まさかここまでとは思っていなかった。

 単純にラプラスやウリムーなどの手持ちのパワーでは無くて、特殊な炎で無ければ無力化は難しい氷人形の大軍勢によるゴリ押し。

 同じゴリ押しでも後者の方が厄介度は高いだけでなく、ラプラス達もあまり余計な消耗をしないと良いこと尽くめだ。

 

 本当に力の底が見えない。

 

「あれだけやっても、まだあんな数の氷人形を出せる力があるのかよ…」

「アキラ、知っているのか?」

「そりゃもう嫌になるくらい知っているよ。エンテイが放つ特別な炎で無ければ際限なく再生する不死身に近い氷人形だからな」

 

 これまでの戦いを振り返れば、今の自分達が如何に苦しい状況なのかがよくわかる。

 あの氷人形達は、ヤナギが手抜きでもしてない限り、幾ら砕いても再生する。

 一応こちらには氷人形の再生を無力化する炎を有しているエンテイがいるのとカイリューも”ものまね”である程度は対抗出来るが、如何せん数が多い。

 量だけでなく質も一定以上保証されては、どれだけ力に自信があっても押し切られるのは目に見えている。

 

「再生する氷人形か…」

 

 レッドは考え込むが、何か名案が浮かぶとは彼には悪いがアキラには思えなかった。

 なのでこの状況をどうやって乗り越えようかと彼も考え始めた時だった。

 

「――アキラ、今日一日祠に奴を近付けさせなければ良いんだよな?」

「? まあ…それが今の俺達の勝利条件かな」

 

 唐突にレッドに尋ねられて、アキラは改めて自分達の勝利条件と言えるものを伝える。

 ヤナギの目的は、この祠にやって来る幻のポケモンだ。

 そのポケモンが、この時期の祠にどれだけ留まるかの正確な時間はわからない。

 少なくとも日が沈むくらい時間が経たないといけない筈。

 一体レッドは何を考えているのだろうかと思ったが、最後に納得した様に何回も彼は頷く。

 

「なら、皆で力を合わせて――今日一日この祠を守り切れば良いだけの話だ!!!」

 

 決意を固めた様にレッドは皆を見渡した後、ヤナギ達を見据えて堂々と言い放った。

 

「……簡単に言う」

 

 口では不満を漏らすが、グリーンの表情は少し笑みすら浮かんでいた。

 確かに難しいがレッドの言う通り、これ以上無く自分達のやるべきことは単純明快。

 アキラも反応に困ったが、言っていることは何一つ間違っていないからか、グリーン同様に少しだけ笑みを浮かべる様に表情を緩めた。

 

「…そうだな」

 

 レッドの言葉で覚悟を決めたのか、カイリューを筆頭に各トレーナーが連れているポケモン達や伝説のポケモン達も気合を入れる様に意気込んだ。

 この場にいる面々の何人かはアキラ含めて一度はヤナギに負けた者もいたが、それらは彼の言う様に個人戦だったりと局所的な戦いで負けただけ、大局的にはまだ負けていないと開き直ってもいた。

 

 

 この祠を守り切れば、自分達の勝ち

 

 

 だけど、譲れないものがあるのはヤナギも同じだった。

 

「守り切るだと…だったら、やってみせろ!!!」

 

 車椅子に座る程に体が弱ってしまった老人とは思えない力強い声をヤナギが上げた瞬間、それを合図に氷人形の軍勢が一斉に祠と守る様に構えるアキラ達目掛けて押し寄せるのだった。




カントー・ジョウトの図鑑所有者+アキラとカイリュー+伝説のポケモン六匹VSヤナギ+氷人形の大軍勢。

次回、ウバメの森で一大決戦が繰り広げられます。
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