SPECIALな冒険記   作:冴龍

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最後の総力戦

 ヤナギの声を合図に祠へと押し寄せる氷人形の軍勢に対して、まずは飛んでいるフリーザー、サンダー、ファイヤーの三匹が一斉攻撃して勢いを削ごうとする。

 三匹の伝説のポケモンが放つ強力な攻撃で多くは吹き飛ぶが、元の数が桁違いに多かったので突撃してくる氷人形は山程いた。

 

 そして伝説の鳥ポケモン達の攻撃を突破した氷人形達を、今度は祠を守る様に陣取っていたアキラ達とそのポケモン達が迎え撃った。

 最初は特殊攻撃や飛び技で近付けさせない様にするが、次第に手が届く距離まで詰められたら直接打撃で対抗していき、正面だけでなく側面や背後からも氷人形が迫った。

 それらはスイクンやエンテイ、ライコウが当初は対応していたが、数が増えるにつれて他の面々も援護に加わり、自然と彼らは祠を中心に円を描く様な形で迫る氷人形達と戦う様になっていった。

 

「余計なことは考えるな! 今俺達に出来ることを全力でやるんだ!!」

 

 レッドの一喝に彼らと共に戦うポケモン達は更に気を引き締めた。

 終わりの見えない数だけでなく、氷人形は砕いてもエンテイの炎で無ければ際限なく再生するのがゴールド、クリス、シルバーの三人には強く印象付けられていた。

 だけどレッド達や氷人形の厄介さを知っているであろうアキラが一切臆することなく戦っていたこともあり、彼らはレッドの言う通り目の前の脅威の対処に力を入れた。

 

 相手が手強いだとか、どんなに攻撃しても再生するなどと言った余計なことは一切考えない。

 今の自分が出来る全力で相手をする。

 

 そう覚悟を決めると、不思議と冷静且つ力が漲った。

 その身から発する電撃や鋭い爪と牙で氷人形を砕いていくライコウ、巻き起こした突風や体当たりで突き飛ばすスイクン、そして放つ炎で氷人形を完全に無力化するエンテイ。

 かつてホウオウを助け出す際にヤナギを相手に戦った三匹だが、当時とは違って今この場には彼ら以外にも奮闘する面々がいた。

 

 手足を引っ込めて甲羅を回転させたカメックスが近付く氷人形を弾き飛ばし、リザードンは口から放つ炎で吹き飛ばす。

 掴み掛かりそうな氷人形から咄嗟にイエローを庇う形で前に出るレッドを助ける様に二匹のピカチュウが電撃を放つ。

 荒々しく吠えながら体に群がってくる氷人形を引き剥がしたり、薙ぎ払っていくオーダイルとツルで絡め取った氷人形を振り回して、別の氷人形にぶつけていくフシギバナ。

 真上からも飛び掛かって来る氷人形からゴールド達を守ろうと奮闘するバクフーンとメガニウム。

 そしてあらゆる角度から迫る氷人形を持てる力の全てを発揮して蹴散らしていくカイリュー。

 

 地中を除いたあらゆる方角から襲い掛かる氷人形達。

 冷静に考えれば何時までも戦い続けるのは難しいが、彼らはそんな先のことを考えることなくレッドの言う様に今目の前のことだけを考えて自分達に出来ることに全力を尽くす。

 戦うポケモンだけでなくトレーナーも狙われる時はあったが、彼らは上手く逃れたりポケモン達が守ってくれた。

 アキラに至ってはカイリューと肩を並べて腕に付けている盾で防いだり、逆に盾で殴り付けたり蹴り飛ばすなどで反撃していく。

 

 そうして戦っている内に彼は、砕かれても動きはするが何故か氷人形が再生しないことに気付いたが、それは何故なのかは知らないのと考えている余裕も無かったので、自分達に好都合なら余計なことは考えずに迫る氷人形を退けていく。

 

 だが、そんな状況が続けば、流石に氷人形達を操るヤナギも違和感を抱く。

 

 おかしい。何時まで経っても制圧出来ない。

 

 徐々にピチューの”フラッシュ”で麻痺していた視力は回復していたが、戦っている喧騒だけでヤナギは状況を把握しつつあった。

 これだけの数の氷人形を操るとなると、精密な動きは出来ないのや再生に関しても自動的になるのや空気中の水分の奪い合いになるので普通よりも遅くなるのは承知の上だ。

 だけど、エンテイの炎にでも溶かされない限りは際限なく再生出来るのには変わりない。いずれは数と勢いで押し切れる筈だが、全く押し切れる気配が無い。

 それどころか氷人形の数は、予想を遥かに超える勢いで減っている。

 

 明らかにおかしい。

 

 そうして原因を探っていく内にヤナギはあることに気付いた。

 

 氷人形の自動再生が無力化されていることにだ。

 

 一体何故なのかと思ったが、徐々に見えてきた視界は彼らに守られている祠から零れる光が強くなっているのが真っ先に目に入り、ヤナギの脳裏にある光景が甦った。

 

 まだ”時間(とき)をとらえるモンスターボール”の存在を知らず、祠に祀られている幻のポケモンの存在だけを知ったばかりで、自力での捕獲を試みていた時代。

 相性の悪さを覆す程の強さを持つ幻のポケモンに度々返り討ちに遭っていたが、凍らせようとしても時間を巻き戻される様に無力化されていた。

 今回の氷人形も、”時間が経てば再生する”という概念が止められている様に見えた。

 

 何故だか知らないが、祠の主が持つ何らかの力が氷人形に干渉して自動再生を無力化している。

 まるで間接的に彼らに力を貸しているかの様にだ。

 

「クソッ!!」

 

 時間が過ぎれば押し切れるかもしれないが、万が一そうでは無かったら全てが水の泡。

 苛立ちと焦りで、ヤナギは自身が乗る氷人形を走らせる。

 ラプラスが氷人形の軍勢を操作することに全力を尽くし、デリバードも追い掛けてきたゴールドとシルバーとの戦いで戦闘不能に追い込まれた今、動けるのは自身とウリムーだけだ。

 

 ここまで来たのだ。

 自らが体を張らない訳にはいかない。

 

 空中から氷人形を排除しようと攻撃を続けている三匹の伝説の鳥ポケモン達の猛撃を掻い潜り、氷人形を相手取っていたカメックスとリザードンを薙ぎ倒す。

 そして二匹の後ろにいたグリーンとブルーにも氷の手を伸ばそうとするが、彼らとの間に何かが割り込んでヤナギの氷の手を甲高い音と共に受け止めた。

 

「アキラァァァッ!!!」

 

 氷の手を受け止めたのがアキラだと認識したヤナギは、怨嗟も籠った怒りの声を上げる。

 右腕に付けた盾を両腕で支えて受け止めたアキラは、その後もヤナギの氷人形が両腕から繰り出す猛攻を動体視力と反射神経を駆使し、巧みに盾を操って先程の様に力任せに受け止めるのでは無くて常人離れした膂力も最大限に発揮した反撃も交えながら流していく。

 そうして氷で出来た片腕の一部を切り付ける様に叩き付けた盾で砕くも、反撃でヤナギはアキラを氷人形の腕で殴り付ける。

 咄嗟に彼は両手で支える形で盾を用いて防いだが、発揮出来る膂力を上回る力には敵わず、踏み止まれなかったアキラの体は祠のすぐ近くまで転げる。

 

 だがアキラを打ち負かした直後、横からカイリューが放つ”りゅうのいかり”がヤナギが乗る氷人形を襲う。

 ヤナギは咄嗟に残った氷の腕で防ぐも、片腕だけなのと放たれる竜の炎の勢いに負けて、彼が乗る氷人形はラプラスのすぐ傍まで大きく吹き飛ばされる。

 

「うぐぐ…おのれぇ…」

 

 攻撃そのものは車椅子に乗るヤナギに直撃はしなかったが、土台にしている氷人形を通じて伝わる衝撃は老体には響くのかヤナギは苦しそうに呻く。

 だがカイリューは一切手を抜くつもりは無いのか、追撃を仕掛けようと距離を詰めていた。

 

 すぐさまラプラスは氷人形の軍勢の操作や再生に専念することを止めて、ヤナギを守るべくカイリューの前に立ち塞がる。

 体を反転させることでカイリューの突き出した拳を背中の硬い甲羅で防ぐや、長い首を伸ばして冷気が溢れる口でドラゴンポケモンの首に噛み付く。

 首を噛み付かれたカイリューは苦しそうな声を漏らすも即座に反撃へと移り、ラプラスの首を握り潰さん勢いで鷲掴みにするや自爆同然の形で”10まんボルト”を放つ。

 

 互いにどこまで耐えられるかの根競べ――かと思われたが、耐えることにばかり集中していたラプラスをカイリューが空いている方の腕で打ち込む様に殴り付ける。

 不意を突く様な攻撃にラプラスは噛み付いていた首から口を離してしまい、カイリューは蹴飛ばす形でなみのりポケモンとの距離を取る。

 

 体勢を立て直す為と思ったが、下がったカイリューは全身から黄緑色のオーラを発し、瞬く間にそれを口内に集約していった。

 

「”げきりん”!!!」

 

 アキラの掛け声に合わせて、カイリューはドラゴンタイプ最大威力の技を光線の形で開放した。

 口から放たれた黄緑色の光線は、真っ直ぐヤナギとラプラスへと迫る。

 すぐさまラプラスは額の突起から螺旋回転する青白い光を放つ”つのドリル”を形成して、カイリューの攻撃を正面から防ぐ。

 負けじとカイリュー口から”げきりん”のエネルギーを放ち続けるが、ラプラスは少しずつ前に体を進めていく。

 

 もしポケモンリーグ会場での戦いみたいに、これがタイマン勝負であったらアキラとカイリューはまた負けていたことだろう。

 しかし、今この戦っているのは彼らだけでは無い。

 

「カイリューを援護するんだ!!!」

 

 ”げきりん”を放ち続けるカイリューに加勢することをレッドが呼び掛け、フシギバナとメガニウムが巨大な花弁に光を集めた”ソーラービーム”、リザードンとバクフーンはその口から”かえんほうしゃ”、カメックスとオーダイルは両肩のキャノン砲や口から”ハイドロポンプ”を放つ。

 更に二匹のピカチュウとその子どものピチューも”10まんボルト”で援護射撃をし始め、一気に威力が増した。

 

 五タイプの強力な技が合わさった極太の虹色の光にラプラスはジリジリと押され、”つのドリル”で弾いていたエネルギーも拡散し切れなくなっていた。

 

「凄い…」

「行ける!」

「レッド先輩! 後少しで押し切れるッス!」

 

 彼らの合体攻撃がヤナギをこれ以上無く追い詰めている光景に、スイクン達と共に氷人形から祠を守りながら戦っていたクリス、シルバー、ゴールドの三人は勝てることを確信する。

 氷人形の軍勢も、自動的に動けても規模が大きくなるとどうしても操作する担い手が必要なのか、ラプラスがレッド達の攻撃を防ぐことに専念し始めたことで、氷人形の軍勢の動きはかなり鈍くなっていた。

 状況は当初の絶望的なのから一転して、好転しつつあった。

 

「やらせは…やらせはしない!!!」

 

 ヤナギは狂気なまでの形相で声を荒げ、押されるラプラスの体を自身が乗る氷人形で後ろから支えた。

 しかし、それでも踏み締める氷の足やラプラスの体が彼らの合体攻撃に力負けして後ろへ擦っていくことには変わりなかった。

 

「…おのれぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 合体攻撃に耐え切れなくなったことを悟ったヤナギが怨嗟の声を上げた直後、ラプラスと後ろから支えていたヤナギは眩い光と共にエネルギーが弾けた衝撃で後方へ大きく吹き飛ぶ。

 押し負けた彼らは何回も地面を転がっていき、やがて止まった。

 

「やった…」

「っしゃあ!」

 

 クリスとゴールドは喜びを見せるが、アキラとしてはまだ気を緩められなかった。

 普段ならどれだけ強力な守りであろうと強引に貫通出来るであろう強力な合体攻撃ではあったが、それらを相手にかなりの時間抵抗して見せたラプラスの力。最早一般的なポケモンなのか疑わしくなるレベルの強さだった。

 それに動きは鈍っているものの氷人形もまだ残っているのだ。

 氷人形達との戦いを再開しようとした直後、祠から零れる光が突如として強くなった。

 

「! なんだ!?」

「眩しっ!」

 

 祠の周囲にいたアキラ達は思わず驚いてしまうが、その光を目にしたヤナギとラプラスは薄れつつあった意識がハッキリとしていくだけでなく体に力が漲った。

 

「退けぇぇぇぇッ!!!」

 

 彼の叫びに呼応する様に、体を起こしたラプラスの口からまるで堰き止められていた水が解放されたかの様な勢いと水量の”ハイドロポンプ”が祠目掛けて放たれる。

 あまりの規模に射線上にいた面々は咄嗟に避けることを選んだが、放たれた水流が祠を呑み込む寸前、目に見えない壁で阻まれるかの様に”ハイドロポンプ”は防がれた。

 だがラプラスは気にすることなく、続けて”れいとうビーム”で周囲に拡散していた”ハイドロポンプ”の水を地面ごと凍らせる。

 レッドを含めた何人かは、水で濡れた地面を接している足ごと凍らせてこちらの動きを封じるつもりかと考えたが、ヤナギ達の狙いは違っていた。

 

 すぐさまラプラスは先程レッド達の合体攻撃を防いだ”つのドリル”を展開、四つあるヒレを器用且つ力強く動かして”れいとうビーム”で凍らせた地面の上を滑らせて、祠目掛けて突進する。

 

「来るぞ!」

「止めるんだリュット!!」

 

 スイクン達を含めた何匹かのポケモン達が技を放って止めようとするが、”つのドリル”を維持するラプラスはそれら全ての攻撃を正面から弾き、同じ”つのドリル”を発動して立ち塞がったカイリューとは一瞬だけ鍔競り合いを演じたが、勢いのままに跳ね退ける。

 

 ヤナギ同様に何が何でもとばかりに鬼気迫る顔を浮かべ、祠に迫るラプラス。

 やがて青白い螺旋回転する光のツノが祠に触れようとした瞬間、一際強い光が祠から放たれてなみのりポケモンの体は弾き飛ばされる。

 そして光が溢れる祠の戸が開かれ、何かが飛び出す。

 

「あれは!」

 

 光を放つ祠から飛び出した存在に何人かは驚きの声を上げるが、その姿を目にしたアキラはその正体をすぐに悟る。

 曖昧な記憶ながらも、その特徴的なシルエットは一目でわかる。

 

 ヤナギが長年求めてきたジョウト地方に言い伝えられる幻のポケモン。

 

 

 ときわたりポケモン――セレビィ

 

 

 すぐさま氷人形の何体かがセレビィに飛び掛かるが、それらは全て先程のラプラスの様に何をやったのかわからない不可視としか言いようの無い攻撃で呆気無く返り討ちにされる。

 だけど、セレビィの注意がそれらに向いた際に見えた僅かな隙がヤナギには何よりも重要だった。

 ヤナギが乗る氷人形が”時間(とき)をとらえるモンスターボール”を握る腕を大きく振り被った。

 当然気付いたアキラは止めようとするが、遮る様に氷人形達に邪魔をされてしまって投げることを阻止出来なかった。

 ヤナギが投げた”時間(とき)をとらえるモンスターボール”は、セレビィに対して大きな効力を有しているのか、幻のポケモンは殆ど抵抗することも無く簡単にモンスターボールの中に収まってしまった。

 

「しまった!」

 

 襲って来る氷人形達の相手とセレビィの出現に気を取られていたこともあって、レッド達はヤナギの動きを黙って見ているだけで終わってしまった。

 一方のヤナギは、セレビィを収めたモンスターボールを感慨深そうに掲げていた。

 

「遂に…遂にこの時が…」

 

 目元が潤んで見える程の表情を浮かべながらヤナギは言葉を漏らすが、このまま見過ごすつもりはアキラ達には無かった。

 セレビィを捕獲したタイミングで氷人形の動きが鈍ったことも重なり、上空を飛行していたフリーザなどの三匹も含めた全戦力が全方位から一斉攻撃をヤナギ達に放った。

 情け容赦ない攻撃であったが、感慨に浸る時間を邪魔されたことでヤナギの怒りは一瞬にして頂点に達した。

 

「私達の失った過去を取り戻す旅出を邪魔するな!!!」

 

 ヤナギが一喝した瞬間、祠と彼らの姿を隠す程の巨大で激しい水の渦と猛烈な吹雪がそれらの攻撃を撥ね退け、周囲にいた面々も氷人形諸共吹き飛ばす。

 

「”うずしお”と”ふぶき”の併用か…」

 

 盾の鋭利な方を地面に突き立てて耐えながらアキラは分析した。

 手持ちのヤドキングも多用する防御手段であるが、勢いと規模が桁違いに大きく、更には”ふぶき”も加わっているにも関わらず水は多少は凍るものの”うずしお”の防御性能を更に高めていた。

 しかもラプラスは、渦そのものに”サイコキネシス”の力さえも纏わせているらしく、想像以上に強固な渦の防御だった。

 

 ラプラスとウリムーの二匹の連携と底無しに思える力に引き出しの豊富さ。

 

 全員で挑んでも優勢に進めることは出来てもすぐに逆転される辺り、積み重ねて来たであろう数十年の年月の重みを味わってきたが、本当の意味でまるで底が見えなかった。

 

 やがて猛烈な吹雪と渦巻く水が収まったが、そこには戸が開いた祠だけでヤナギ達の姿は無かった。

 

「消えた!?」

「奴はどこに!?」

 

 思ってもいなかった事態にクリスとシルバーは慌てるが、ゴールドはヤナギがどこへ消えたのか察していた。

 だけどその前にかなり数は減らせたが残っている氷人形達を片付けて場を落ち着かせることを優先した。

 

 ヤナギや操作などを担っていたラプラスなどの存在が居なくなったことで対処しやすくなっていたこともあって、エンテイの炎とその炎を”ものまね”したカイリューのお陰でようやく氷人形の軍勢の鎮圧が出来たタイミングで、ゴールドは叫ぶように声を上げた。

 

「アキラ! あんたが持っている”ぎんいろのはね”と”きんいろのはね”をくれ!」

「いいよ」

「そうかサンキュー! これで…って良いのかよ!!」

 

 ダメ元のつもりで頼んだら呆気無くアキラは持っていた二枚の鮮やかに輝く羽を渡してくれたので、思わずゴールドは勢いでツッコミを入れてしまった。

 今までの経験的に止められるか断られる確率の方が高いと思っていたので尚更だった。

 

「え!? マジで良いのかよ!?」

「ルギアとホウオウの羽には、二匹を呼び寄せたりと言った不思議な効果があるって言われている。だから他にも何かしらの効果を期待して何枚も持ってきている」

 

 驚くゴールドに簡単に二枚の羽を渡した理由を伝えながら、アキラは他に持っている何枚もの”ぎんいろのはね”と”きんいろのはね”を取り出す。

 

「本当に何枚も持っているわね」

「そりゃルギアとホウオウを相手に戦えば、多少羽が飛び散ったりするよ」

 

 ブルーの疑問にアキラは簡潔に答え、ポケモンリーグ会場でアキラと伝説のポケモン達との戦いを間近で見ていた三人も納得する。

 アキラとしてはブルーが隠す形でイエローが所持していることは知っていたが、流石にここまで変わっているとどこかで紛失している可能性もあったのや本格的な”時間(とき)のはざま”への突入を考えて持って来たことも理由にはあった。

 

「あるだけ搔き集めたから、一人二枚一組を持つことは出来る」

 

 一応所持者が近くに居れば、近くにいる存在は”時間(とき)のはざま”の影響は受けないが、それでも自由に行動したり離れてしまう可能性があることを考えれば、各々が羽を持っていた方が良い。

 取り返したイエローの分を除いて、一人ずつアキラが持っていた”きんいろのはね”と”ぎんいろのはね”を手にすると体のどこかに刺したり内ポケットに入れたりする。

 これでこの場にいる全員が、”時間(とき)のはざま”へ向かうのに必要不可欠な準備は整った。

 

「ヤナギが向かったのは、発言から考えるに恐らく過去だ。もしかしたら自分に都合の良い時間改変が目的かもしれない」

 

 グリーンの考察はある意味では当たっている。だけど、本当の目的が違うのを知っているのは、ある程度元の世界で見てきたが故に全てを知っているアキラとさっきまでヤナギを追い詰めていたゴールドとシルバーだけだ。

 特にゴールドとシルバーは、グリーンの言う時間改変よりも”別の時代で住む”というヤナギの発言を耳にしていた。

 ポケモンのことを”道具”と公言しながら、想像を遥かに超える威力の”おんがえし”を引き出す程に手持ちポケモンとの強い絆で彼らは結ばれている。

 そこまでして過去に戻りたいのは何故何なのか、そして失われた過去とは一体何なのか。

 

「祠の先の空間がどうなっているのかは知らないけど、一歩間違えれば二度と元の世界には戻れない可能性はある。それでも行くか?」

「当然だ!」

 

 アキラの問い掛けにゴールドは即答すると気合を入れてライコウの背に跨り、彼の肩にはピカとチュチュの子どもであるピチューも乗り、バクフーンも隣に伴って突撃準備なのを見せる。

 そんな中、イエローはスイクンに促されて額に触れる形で”トキワの森の力”を使い、彼らが伝えたいことを正確に読み取った。

 

「スイクン達は”時間(とき)のはざま”がどういう空間なのかを理解しているので、自分達が先導すると言っています」

「おっしゃ! 頼むぜライコウ!」

「お願い私達を導いてスイクン!」

「力を貸してくれ、エンテイ」

 

 ゴールドに続き、クリスはスイクン、シルバーはエンテイにそれぞれ手持ちを伴って跨る。

 ブルーは上空にいたファイヤー達をモンスターボールに戻し、グリーンやレッドも祠から通じている”時間(とき)のはざま”を見据えていた。

 

「それじゃ、準備は良いね」

 

 腕に付けた盾を細長い向きに切り替えて、剣に見立てるかの様に切っ先で祠の先を示しながらアキラは息を荒くするカイリューと並ぶと前に立つゴールドに問い掛けた。

 

「おうよ! 行くぜ!! 時間を! 時間(とき)を超えろおおぉぉッ!!!」

 

 ライコウに乗ったゴールドが雄叫びを上げながら飛び込むと、クリスの乗ったスイクンとメガニウム、シルバーを乗せたエンテイにオーダイルが続いて祠の奥に広がる空間へ飛び込む。

 そしてカイリューが荒々しく吠えながら突っ込むとアキラも飛び込み、続けてレッドとフシギバナ、グリーンとリザードン、ブルーとカメックス、イエローとピカチュウ達も突入し、ウバメの森は一転して祠から光を放つ以外は静寂に包まれるのだった。




ヤナギを追って時間のはざまへ突入するアキラ達。

原作では、あれだけ強いヤナギがGSボールの存在を知る前は力づくでセレビィを捕獲しようとしては、その度に返り討ちに遭っていたらしい描写があってビックリしました。
ホウオウやスイクン達を負かせるだけでなく相性でも有利な彼が、何故セレビィの捕獲に苦戦をしていたのか。
個人的には、作中内で描いた様にヤナギがセレビィを求めた理由でもある”時間”に関する固有能力によるものが大きかったのでは無いかと考えています。

次回、時間のはざまへと飛び込んだ彼らはあるものを目にします。
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