二年間の成果
カントー地方最大にして名門として知られるタマムシ大学。その大学内に設置されている図書館で、レッドは大学に在籍している学生に混ざって所蔵されている本を読んでいた。
二年前、サカキとの激戦を制した後に助けて貰った少女の頼みであるジムリーダーになる目標を叶える為の勉強目的で訪れたが、早々に頭から煙が上がってきていた。バトル関係ならわかると思っていたが、読んでいる本に書かれている内容が彼には理解できなかったのだ。知恵熱に悩まされたレッドは、無意識に近くに置かれているノートに手を伸ばすが、ノートは彼の手から離れた。
「あっ」
「あっ、じゃないよレッド。このノートの中身は、幾らお前でもダメ」
油性ペンで「ポケモンバトル2」と書かれたノートを見せながら、友人にしてこの図書館の利用を進めたアキラはノートを自分の手元に置いておく。
この世界はトレーナーの実力が物を言うのだ。
強くなりたいのなら、可能な範囲でやれるだけのことをやるべきだ。
その為、ノートには彼が今まで経験してきた負けたバトル全てと勝った中で特に印象的だったバトル、それらのバトルでするべきだった対策や反省点、試みるべき改善点などが記してある。
中でもレッドとのバトルは、参考にできることが多いことや彼に勝つのがアキラの目標の一つなので、彼とのバトルはポケモンリーグでの戦いを契機にカスミの元で特訓していた時期にまで遡って全て書き留めている。他にも彼のバトル時の傾向や確立できていない対抗策や戦法もノートには記してあるのだ。
中身を見られては、彼に勝つと言う目標が遠のいてしまう。
「良いじゃんケチ。俺が見たってどうせよくわかんねぇんだしさ」
「ヒントを見つけられたら困るよ」
確かに自分だけ理解出来れば良いので内容や纏め方は雑ではあるが、バトル関係だとレッドは妙に鋭かったり頭が働くのだ。理屈は理解できなくても、感覚的に理解してしまう可能性がある。
「それよりもジムリーダーになる為の勉強は? 折角カントー地方最大の大学の図書館を利用できるんだから、読めるだけ読まないと損だよ」
「お前は何時も利用しているから慣れているんだろうけど、ここにある本は難しいんだよ」
「ごめん。確かにそうだね」
この世界での保護者にして大学で教鞭を取っているヒラタ博士の手伝いをした後や暇な時間が出来ると、アキラは頻繁に退屈凌ぎも兼ねてこの図書館を訪れている。カントー地方最大の大学なだけあって、所蔵されている本の数はとても多く、知識を得ることには困らない。
ポケモン育成やバトルに関係する本が膨大に並べられた棚を見た当初は純粋にどういう内容が書かれているのかと言う気持ちの高揚だけでなく「これでレッドに勝てる!」と意気込んだものだ。しかし結果は、手持ち六匹から三匹選んで戦うスタンダード形式、手持ち六匹の総力戦であるフルバトル形式問わずに相変わらず全戦全敗。
それに最初から上手くこの図書館を利用できていたかと聞かれるとそうではない。
彼もこの図書館を利用し始めた当初は、レッドと同じく置いてある大半の本の内容がまるで理解できなかった。もっとわかりやすい市販の本を読んだりして少しずつ学んで、ようやく今に至れたことを彼は思い出した。
レッドがここに来る様になった時期や頻度も自分よりもずっと遅くて少ないのだから、解釈が難しい内容に頭を悩ませるのは仕方ないだろう。
「で、悪いけどこの漢字は何て読むんだ?」
「どれどれ?」
レッドの求めに応じて、アキラは彼が読んでいる本の内容に目を通す。
そこまで難しいことでは無かったので、読み方を教えると持っていた漢和辞典を彼に押し付けた。遠回しに自分で調べろと言われて、レッドは若干嫌そうな顔をするが、構わず椅子に深く腰掛けたアキラは「手持ち記録2」と書いたノートを開く。
この世界にやって来てから二年の間に、彼は手持ちの記録を含めた様々な事をノートなどに書き込むクセが付いていた。
学校の授業では無い自主的な纏めなので、長続きはしないと書き始めた頃は思っていた。しかし、書き始めると興味や好奇心が止まらないことやゲームの攻略メモを書いている感覚、指を動かしていると新しい発想が出てくるなどの理由もあって、今では学校の各教科の様にノートを使い分けるまでになっている。
今開いているノートは、題名通りアキラが連れている六匹について彼なりに纏めた内容が詰まっている。手持ちの状態が変わらないこともあって似た様な内容を書く時も多いが、それでも彼は再確認する意味も兼ねて定期的に書き込んでいた。
・リュット 公式名ハクリュー
・タイプ ドラゴンタイプ
・出会った場所 トキワの森
・確認時のレベル52 次の進化に必要なレベル残り3
・覚えている技
れいとうビーム、たたきつける、こうそくいどう、はかいこうせん、まきつく、でんじは、りゅうのいかり、ものまね、つのドリル、10まんボルト
・性格 好戦的できまぐれ
・バトル時の特徴
能力は平均的ではあるが、技を豊富に覚えているため対応できる範囲は広い。
力押しだけでなく変化技を使うなど、相手に応じて戦い方を柔軟に変えられる。
とてもタフで、相性の悪い攻撃を受けても簡単には倒れず強気で戦える。
昔よりは相性や体調を考える様になってはいるが、今でも相性関係無く大技に頼ることが多く諦めが悪かったり倒し方に拘る時がある。
・平時と近況
親しい者には気を許せる様になったからなのかリラックスして日々を過ごす様になり、機嫌を損ねても暴れることは無くなった。(ただし損ねると面倒なのには変わりない)
昔よりは問題は起こさず言う事を聞いてくれるが、気に入らない指示や理にそぐわないこと、必要無い一方的な命令口調で伝えられるのを嫌っている。
進化したばかりの頃は体調不良だったこともあって極力バトルはさせないでいたが、最近は改善されてきた。
練習を重ねて新しく”10まんボルト”を覚えたことで、進化だけでなく新しい技を覚えるのにも意欲的になっている。
一か月近く前に書いたのと見比べても、新しい技を覚えた以外ハクリューの内容はあまり変わっていなかったが、改めてアキラはカイリューへと進化する日が近付いているのを実感する。
同じポケモンでも進化に掛かる時間はトレーナーの技量次第で大きく異なるが、数少ない記録と情報を参考にハクリューの段階からでも大体数年は掛かるとわかっていたので、後一歩なのを考えると感慨深くなる。
だけど、一つだけ気掛かりなこともあった。
それはカイリューに進化することで、また体質が変わってしまうのではないかという事だ。
ミニリュウ時代に受けた負の遺産の影響で、一時期ハクリューはまともにバトルさせることがままならない時があった。最近は療養や体調管理に気を遣ったおかげで以前と変わらない荒いバトルが出来るまでに回復したが、カイリューに進化したらまたあの時の様になってしまうのではないか危惧していた。
こればかりは予測できないので、アキラはこのままハクリューをカイリューに進化させて良いものか少し悩んでいる。
「――何かあるのは嫌だけど、だからと言って一旦進化を目指すのは止めるって伝えたら、リュットは怒るだろうな」
なまじ彼は一時的、或いは力を貸し与えられた可能性があるとはいえ、あのミュウツーと渡り合えたカイリューになった時の力を憶えているのだ。ハクリューとカイリューの能力をレーダーチャートで記したのを見比べてみても、能力差は歴然としている。カイリューに進化して、もう一度のあの時の様な力を手にして更に強くなりたい想いは自分よりも強いし、促したのも自分だ。
とてもじゃないが止めることは無理なので、あの時以上に万全のケアーが出来る体制を整える必要性を考えながら、彼は次のポケモンについて目を通す。
・スット 公式名ゲンガー
・タイプ ゴースト・どくタイプ
・出会った場所 ニビ科学博物館
・確認時のレベル48
・覚えている技
したでなめる、ナイトヘッド、あやしいひかり、サイコキネシス、さいみんじゅつ、ものまね、かげぶんしん、みがわり
・性格 やんちゃでイタズラ好き。
・バトル時の特徴
能力は非常に高く、多くの変化技を覚えているため、相手の動きを制限したり惑わして有利な状況に持ち込みやすい。
頭の良さを活かした立ち回りも多く、指示以上の行動を度々起こすので予想以上の結果を残すこともある。
しかし、メイン攻撃技はゴーストタイプとエスパータイプの二タイプのみなので、弱点を突く以外では相手に大ダメージを与えにくい。
相変わらず調子に乗りやすいのと防御が低いからなのか打たれ弱いのも弱点。
・平時と近況
バーットや博士のお孫さんと一緒に特撮ヒーロー番組を見たり、ヒーローごっこ遊びらしきことをしたりと充実した日々を過ごしている。
相変わらずイタズラでトラブルを起こすことがあるが、テレビの視聴や技の習得などイタズラをするよりも楽しいことを見つけたからなのか、ここ最近は減ってきている。
今でもヤドットには頻繁にちょっかいを出しているので、いい加減に止めさせたいが良い解決策が浮かんでくれない。
手持ちの中では高い能力と知恵を有しているが、相変わらずゲンガーはイタズラやトラブルなど自分が楽しいと感じることを気ままにやるのが大好きな問題児だ。
ノートに書いてある通り、当人が積極的に習得の練習に時間を掛けたことで多くの変化技を覚えてきたが、メインとなる攻撃技の範囲が乏しい。それでも機転を利かせたりすることで、この二年は戦い続けることはできているが、負けたバトルや先の事を考えるともっと様々なタイプの攻撃技を覚えさせたい。
イタズラも他に楽しいことを見つけたからなのか、昔に比べると減ってはいる。
だが自分のトレーナーとしての技量が上がることに比例しているのか、ゲンガーも知恵を身に付けて巧妙化且つ悪質化しているので、実質プラスマイナス0である。他にもヤドンとは仲が悪いと言うか馬が合わないらしく、気付いたら喧嘩をしていることも珍しくは無かった。
「頭は良いんだから、少しはサンットみたいに真面目に過ごす意義を見出してくれないかな」
性に合わないのかもしれないが、自重と言う言葉を知って欲しいと願いながら、彼はある意味一番頼りにしている手持ちの纏めを見る。
・サンット 公式名サンドパン
・タイプ じめんタイプ
・出会った場所 トキワの森
・確認時のレベル44
・覚えている技
きりさく、すなかけ、ものまね、どくばり、スピードスター、あなをほる、じしん、じわれ(練習中)
・性格 優しくて真面目
・バトル時の特徴
防御に優れた能力を有しているが、他の能力も平均的なのと多彩な技を覚えているおかげで、あらゆる状況でもある程度の力を発揮できる。
近距離はいわ・ゴーストタイプを除けば大きなダメージが望める”きりさく”、中距離はタイプ一致の高火力技である”じしん”、遠距離は単発形式に制御することで威力と速度が上がった”どくばり”などの飛び技で対処。
しかし、単純な攻撃力などの地力は他の手持ちより低いので、力負けしやすいところがある。
・平時と近況
サンドの頃と変わらず、トレーナーである自分の手伝いや他の手持ちを気に掛けてくれる縁の下の力持ち。
普段は自由奔放に過ごしている手持ちの中では、珍しく自身よりも周りの事を気にしており、その誠実な性格が手持ちを纏めるのに一役買っている。
自分同様に個性的なメンバーに振り回されることも多くて苦労しているが、形は違えど皆からの信頼は厚い。
自由奔放だったりクセが強いのが多い手持ちの中では、サンドパンの素直で真面目な性格は一際異彩を放っている。もし彼の様な存在がいなかったら、どうなっていたのか考えたくも無い程にバトルのみならず日常生活など、あらゆる面でサンドパンはアキラを支えていた。自分が他のメンバーと比べて能力に恵まれていないことを自覚しているのか、鍛錬も熱心だ。
課題であった火力不足も、時間は掛かったが努力をした甲斐もあって、絶大な威力を誇る”じしん”を覚えたおかげである程度は解消された。だけどこれだけで満足はせず、この技を足掛かりに二年前シバのイワークが見せた様な一撃必殺技である”じわれ”の習得を今は目指している。
「サンットには苦労ばかり掛けているから、本当に申し訳ないよ」
普段の生活で他の手持ちを気に掛けたり纏めようと奮闘しているのも、本来なら自分がするべき事の幾つかを手助けすることで、負担を減らそうと考えているのだろう。何気無い気持ちで手持ちに加えたと言うのに、本当にサンドパンには感謝の言葉しか出ない。
強要するつもりは無いのと愚痴になるが、彼の爪の垢か砕けた爪の粉末を煎じて何匹かに飲ませてやりたいと思いながら、アキラは次の手持ちに移る。
・エレット 公式名エレブー
・タイプ でんきタイプ
・出会った場所 おつきみ山近く
・確認時のレベル46
・覚えている技
かみなりパンチ、でんこうせっか、がまん、ものまね、10まんボルト、ひかりのかべ、リフレクター、かみなり(練習中)
・性格 気が弱くて臆病
・バトル時の特徴
いわタイプに匹敵する防御力と打たれ強さを有しているが、守りの構えやダメージを軽減する技も覚えたことで、これらの長所に更に磨きが掛かった。
弱気になる場面が減った為、攻撃力と素早さを活かしたエレブー本来の戦いも出来るようになり、総合能力は今の段階での手持ちではトップクラス。
特に”がまん”解放時の倍返し攻撃の破壊力は驚異的で、格上の相手でも圧倒できるが、何回か正面から破られたことがあるので過信は禁物。
自信が付いたからなのか以前より力を発揮できる様になったが、根は臆病なので慣れない相手や状況だと恐怖を感じて動けなくなる時がある。
・平時と近況
普段はサンットやヤドットと一緒に行動しているが、リュットの傍に居たり、バーットやスットともテレビを見たり遊んだりするので手持ちの誰とでも仲良くしている。
エレブーらしからぬ打たれ強さを有している様に、種として強面で怖い顔が多いエレブーとは思えない程とても優しいほのぼのとした顔付きである。
当人は臆病な性格を何とかしようと努力はしているが、子供向け番組のホラー展開でも悲鳴を上げるのでしばらく治りそうにない。
後、未だに単独で行動させるとトラブルの元を引き寄せてくるので要注意。
手持ちに加わった理由は強引で仕方ない側面が強かったが、今ではエレブーは欠かすことが出来ない立派な手持ちの主力だ。
本来エレブーと言う種は、通常攻撃と素早さに長けて防御が一番低いのだが、このエレブーはその常識が当てはまらない。生半可な攻撃は素で耐えて”がまん”による倍返し、この二年の間に覚えた二種類の攻撃技を軽減する変化技も使えるなど、防御力はそこらのいわタイプよりもずっと高い。しかも防御力が高いポケモンにありがちな、攻撃力か素早さのどちらかが極端に低い事も無く高い水準であることも魅力的だ。
だけど、あまり痛い思いはしたくない気持ちは変わりないので、戦い方の幅が広がった今では積極的に相手の攻撃を耐えて”がまん”で反撃する必要性は薄まってきている。
「エレットは、このままエレブー本来の戦い方で育てていくので良いな」
折角いわタイプ顔負けの打たれ強さと言う長所はあるが、戦うのは自分では無くエレブーなのだから出来る限り彼の望み通りにはしたい。今まで”がまん”の破壊力に頼り過ぎて押し付け気味なところもあったし、痛い思いをしたくない気持ちはよくわかる。
臆病な性格が表に出るのは、時間は掛かるが色んな相手と戦わせて経験を積むことが克服の一番の近道だろう。
今でも目を離すと何らかのトラブルを起こすので、この点も気を抜いてはいけない。
課題は多いが、昔よりは悩むことは無い。
しかし、次の手持ちにアキラは再び表情を歪めた。
・バーット 公式名ブーバー
・タイプ ほのおタイプ
・出会った場所 ハナダシティのカスミの屋敷近く
・確認時のレベル51
・覚えている技
かえんほうしゃ、ほのおのパンチ、あやしいひかり、えんまく、テレポート、メガトンキック、ものまね、メガトンパンチ
・性格 血の気が多い不良気質
・バトル時の特徴
防御以外の能力は高く、人間に近い体格であるのが関係しているのか自らの体を活かした格闘戦が非常に強い。
数少ない特殊技や変化技で相手をかく乱することもできるが、パンチやキックで倒すのに拘る傾向がある。
実力はあるがリュット以上に気分次第で勝手な行動をする事が多く、戦い方が安定しない問題がある。
ガラガラが持つアイテムである”ふといホネ”を手に入れたので、最近はホネを扱った戦い方もやる様になった。
・平時と近況
近寄りがたい一匹狼の様な雰囲気を発しているが、大の特撮ヒーロー番組好きでスット以上に充実した日々を過ごしている。
自主的にトレーニングをしていることが多く、向上心は手持ちの中で随一ではあるが、内容は番組内でやっていた技や動きの練習が殆ど。
中でも自らの力を強化したり変化する能力を得る為の練習にはかなり力を入れているが、上手くいく様子は全く見られない。
目付きや態度は悪いが、”ふといホネ”を手にしてからは心なしか明るい表情を見せる様になった気がする。
加入当初から一筋縄ではいかないと感じていたが、今でもブーバーは六匹の中では一番扱いが難しい手持ちだ。
実力は手持ちの中で一、二を争える程高いが、バトルになった時の喧嘩っ早さと荒さにはゲンガーのイタズラ同様に頭を悩ませている。頭は良いので普段の生活ではある程度弁えてはいるが、それでも他と比べるとゲンガーと同じかそれ以上に自由奔放だ。
「バーットの性格には困ったものだな」
そんな問題児気質のブーバーだが、テレビ――中でもヒーロー番組は欠かさず大真面目に見ていると言う可愛い(?)一面もある。しかし、”ふといホネ”を手にしていることからもわかる様にテレビの影響を一番受けているので、最近はエレブー同様に目を離す訳にはいかなくなった。
自主トレでよくやっているテレビの真似は役に立っている動きもあるが、劇中に出てくるキャラみたいに”強化形態”へと変化する練習を続けるのは如何なものか。
一応、ブーバーには強化形態とも言える進化形のブーバーンが存在しているのをアキラは知っているが、公式ではまだ未確認扱いだ。仮に確認されていたとしても、進化条件を考慮すると今やっている練習が進化に繋がるとはとても思えない。冗談抜きで本気でテレビのキャラの様に能力の底上げが出来る方法を模索しているとしたら、幾ら何でも無理だと彼は考えていた。
だけど大分前に進化以外の可能性は無いことをさり気なく伝えたら、見ている番組の次の回が放映されるまで拗ねられたことがあるので、自主トレに関しては気が済むまで放置している。
今後のブーバーの育成方針を一旦頭の片隅に置き、アキラは次のページにある最後の一匹について自ら記した内容を再確認する。
・ヤドット 公式名ヤドン
・タイプ みず・エスパータイプ
・出会った場所 19ばんすいどうの砂浜
・確認時のレベル39 もう進化して良いはず
・覚えている技
ねんりき、かなしばり、みずでっぽう、ドわすれ、ものまね
・性格 冷静でのんびりな感じ
・バトル時の特徴
”ねんりき”が非常に強力だが、あらゆる反応が数十秒遅れで感じる変わった特徴がある。
一撃技以外のあらゆるダメージや刺激を認識するのが遅い性質を利用して、ボールから出すと同時に指示を伝えて、相手を”ねんりき”で一方的に攻めるのが基本。
試行錯誤はしているが、反応の鈍さ故に実戦的な戦い方は今のところこれしかない為、”ねんりき”での拘束が通じない相手には無力。
・平時と近況
性格は反応が数十秒遅れなの以外は至って普通ではあるが、遅いが故に意思疎通を図るのは一苦労である。
室内で自由に行動させても動くことはあまり無いが、スットとは初対面の印象が悪かったからなのか相性は良くない。
だけど、基本的にスットの方からちょっかいを出しているのが殆どなので、ヤドットから先に何かを仕掛けることはしない。
レベルから見てもヤドランに進化しても良いはずではあるが、進化の様子は見られない。
シェルダーを尻尾に噛ませようとしても尾を背中に張り付けているので噛ませることもできない。
流石に二年も一緒に過ごせばどういう性格なのかはわかるが、反応が遅い所為で他の手持ちと比べると、あまりヤドンとの意思疎通は円滑では無い。
疎かにしているつもりは無いが、意図せずに手持ちが機動力重視の戦い方なので、反応の遅さが災いして中々上手く育てられていなかった。新しく覚えた技もわざマシンによる”ものまね”だけなのや、レベルが他の手持ちと比べると低いのが何よりの証拠だ。
せめて反応速度だけは、普通のポケモンと同じであれば多少はやりようはあると思ってしまうが、すぐに彼は今に至るまで抱き続けた「手持ちと一緒にトレーナーも変わっていく」と言う心構えを思い出す。
ヤドンも望んで反応が遅い訳では無いのだ。問題が多いポケモンでも上手く育てるのは、ポケモントレーナーとしての技量向上や腕の見せ所と考えるべきだ。
「ヤドットは…やっぱり”サイコキネシス”とかの体を動かす必要が無い技を覚えさせるべきか」
すぐに頭を切り替えたアキラは、一通り再確認したノートを閉じて「ポケモン育成2」と書かれた別のノートを取り出す。
ノートの中には彼らの育成方針や方法、本で読んだ内容や教えて貰ったもの試した試行錯誤などの彼なりに集約したポケモン育成法が纏められている。本に書いてあった数値計算や具体的な理屈、自分が感じた感覚的なものなどがあまり纏まりなく書かれているが、ノートに積み重ねて記録したおかげで幾つか有用と判断できる方法や根拠を編み出せていた。
今後の事を考えれば、ヤドンだけでなく手持ちには対抗できる相手を増やす為にも更に多くのタイプの技を覚えさせるべきだろう。しかし、ポケモンに技を覚えさせる過程は、彼が知る限りでは練習することは勿論、ポケモンが有している素質頼みやわざマシン頼りなのが多い。ゲームと違って覚えられる数に制限は無いが、既に覚えている技が多い程、新しい技を覚えるには時間が掛かってしまう。
わざマシンにはその問題は存在しないが、一番楽に手に入る変化技系列のわざマシンでさえ、たまにタマムシデパートがやる特別販売でしか今のアキラには入手手段は無い。
攻撃技系列のわざマシンに至っては、その多くは小規模な大会の賞品だったりと手に入れることが非常に難しい。それらの事情を考えると、ハクリューに”つのドリル”を覚えさせられたのはとても運が良かったと言える。あれは半年前にあったサイドン騒動の後、レッドと一緒に送られた感謝の品にあったわざマシンを使って覚えさせたものだ。
やはり効率良く技を覚えさせていくには――
「アキラ」
「何?」
「ゴンに”じしん”って、どうやって覚えさせたら良いんだろ?」
「どうやるって言われても……”じしん”が使えるポケモンの動きを観察していれば何か掴めるんじゃない?」
「そうだな。今度からそうしよう!」
考えている最中だったので半分適当に言ったにも関わらず、レッドはアッサリ納得する。
ポケモンの技は動作以外にも、エネルギーや力の込め方などの複雑な条件があるので、本当にそれで良いのかと聞き返したくなったが、彼とその手持ちなら本当にそれだけで覚えてしまいそうだ。
何回かアキラは、レッドに助言を求めたり一緒に手持ちを鍛えたりしたが、やっている内に彼のポケモンへの指示や指導には少し独特な部分があることに気付いた。
具体的にどんなものなのか簡潔に説明すると、指導は擬音だらけ、指示も技名を除けば感覚的なものが多いのだ。
話を聞くと本人は明確にし切れてはいないが、ちゃんとした考えがあることは窺える。だが伝えられる内容は、擬音を多用した感覚的なものばかりで自分やサンドパンは勿論、一番頭の働くゲンガーさえも理解不能だった。
ところがブーバーだけは、彼のこの理解が難しい表現での指導を受けてから”メガトンキック”を完成させて完全に我が物にしていた為、わかる奴にはわかるらしい。ちなみに”メガトンキック”習得後、ブーバーは自分には一度もしたことが無い綺麗な一礼をレッドにして、最大限の感謝の意を伝えていた。
話はズレてしまったが、
二年経ってもやることや課題が山積みで、本当にポケモントレーナーは一生学んでいくものであることを改めて認識するが、時計の針が示す時刻が目に入る
「そろそろヒラタ博士の会議が終わる頃だから、もう行くね」
そう告げると、アキラは置いていたノートをリュックの中に纏め、机の上に置いていた何冊かを管理の人へ運んで貸出の手続きを始めた。
レッドもアキラが帰るとなると一人でやっていける気がしなかったので、一緒に帰るべく本を元の棚に戻すと手続きを終えた彼と一緒に図書館を出る。
「アキラ、借りたその本は何だ?」
彼が借りたのはポケモンバトルや育成に関係していそうな本が多かったが、何冊かはその二つと何が関係しているのかよくわからない本だった。
「あぁこれね。スットやバーットが見たがっているんだよ」
借りた本の一冊である「乱世のポケモン達」と言うタイトルの本をアキラが開くと、中にある挿し絵にレッドは納得する。本にはモンスターボールが無かった数百年前、当時の戦乱に参加していたポケモン達が身に纏っていたとされる鎧や付属していた武器などが、実物の写真や当時のイメージ図を交えて解説されていた。
アニメか何かで鎧を纏ったポケモン達が出ていたのをアキラはおぼろげながら覚えているが、どうやらこの世界も元の世界で言う戦国時代の様な時期を経ているらしい。
「本読めるのか? お前のポケモン」
「読める訳無いよ。挿し絵目当てだよ」
確かに彼らはレッドを始めとした他のトレーナーが連れているポケモンと比べても頭は良いが、それでも限度はある。本を読む姿を真似しているのか、彼らが本を読んでいる場面をアキラは何回か見たことはあるが、絵が殆ど無い文字だらけの本は理解に苦しむと言った様子であった。
「お前のブーバー、ガラガラのホネを使う様になったからな。良いのアレ?」
「良いと思うけど、流石にテレビの影響を受け過ぎなんだよな…」
この本の中にある鎧などの装備に、アキラの手持ちの一部はテレビの影響などもあってある意味憧れの様なものを抱いている。当然、現代のポケモンがこんな装備をしたら色々面倒だし、場合によっては法に触れる。
手持ちが望んでいる武器的なアイテムは、本来なら適切では無いブーバーに”ふといホネ”を持たせるので正直言ってギリギリだ。本当に彼らはすぐにテレビの演出や内容を真に受けて、そういうことを真似しようとする。
バトルに役立つことはあるにはあるのだが、それで何回面倒事を起こしてその度にサンドパンと一緒に頭を下げたことやら。
「そういえば、さっき会議って言っていたけど、何の会議なの?」
「半年前に現れたサイドンに関係する会議。博士も大変だよ。今まであんまり注目されていなかったのに、急に注目されるようになったんだから」
半年前に現れた巨大サイドンが暴れたのは、海沿いの町だけで留まったが、尋常じゃない被害の大きさやサイドンの特異な状態など前例が無いことだらけだった。
故に、今回の出来事に関係しているであろう現象や要因の研究を以前から進めていたヒラタ博士に、突然周りは注目し始めた。
博士が個人的に進めていた「外的要因によるポケモンのタイプ変化」と呼ぶべき研究は、データはあっても物的証拠が無いことやあまりにも荒唐無稽過ぎるのが原因で、発表しようにも出来ない状態であった。しかし今回の事件は大きな被害を出しただけでなく、捕獲されたサイドンがほのおタイプも含んだ異例の三タイプを保有していたことを多くの第三者が確認するなど、これまで発表を躊躇っていた要因の大半を解決してしまった。
その為、白羽の矢を立てられたヒラタ博士は対策会議への助言のみならず、中途半端だった研究成果や未発表の論文の整理に追いやられたりと多忙を極めていた。
ちなみに捕獲したサイドンについてだが、これまで博士が確認・記録したタイプが変化したポケモン達の例に漏れず、数日の内にほのおタイプは消えて常識外れの三タイプから本来の二タイプに戻った。ほぼ同時に身に纏っていた赤いオーラや体の発光も無くなり、6m以上はあった巨大な体も元のサイズに縮み、良く知られるサイドンの状態に戻っている。
こんな切っ掛けで注目を浴びることにヒラタ博士は複雑な気持ちらしいが、アキラとしては紫色の濃霧やポケモンのタイプ変化についての研究は大きく進むと個人的に思っていた。
今までは自分とヒラタ博士、時たまに手伝いに来る学生だけで研究を進めていたが、今回の事件によって事態は深刻であると判断したエリカを始めとした大きな権限や豊富な資金を持つ人間がバックに付いたのだ。資金不足や人員不足で出来なかったこと、一歩間違えればオカルトやインチキ研究と言われそうな研究が大々的に行えるはずだ。
でもその前に今の多忙さを如何にかしなければ、研究を進めるどころでは無い。
「何か大変そうだな」
「俺より博士の方が大変だよ」
自分は精々、重要資料が関わらない雑用やフィールドワークをする際にヒラタ博士の身の安全確保くらいしか出来ない。出来る事なら自分も研究に携わったり資料の纏めを手伝いたいが、専門的な知識に学も無い。あったとしても難しかったり複雑でポカをやらかしそうで、とてもではないが無理だ。
ポケモントレーナーとして自分を磨くことも大事だが、博士の助手としての在り方も磨く必要があるのではないかとアキラは思うのだった。
アキラ、レッドと一緒に勉強しながら手持ちの再確認を行う。
作中で描いたレッドの指導方法は、とある有名監督の擬音指導みたいなものです。
理解できる人はわかるけど、理解できない人はとことんわからない…らしい(少なくとも自分はイメージは出来ても実践は無理)
ポケモンバトルは作中でサカキがレッドに指摘していた様に、現実のゲームでもトレーナー側の知識や技量が重要と考えていますので、アニポケで事あるごとにメモをして役立てようとしたショータや幼い頃から図書館に通い詰めて学ぶだけでなくノートに計画書などを書いていたブラックの姿勢は、個人的にはとても好感を抱いています(ブラックはキャラ的にも大好きです)
後、第二章スタートと銘打っておきながら、二章に関わりがある展開が無いのに投稿準備を進めている時に気が付きました。