SPECIALな冒険記   作:冴龍

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タイトルからも分かる様に、この話から少しだけジョウト要素が出てきます。
二章はジョウトメインである三章の直前だからなのか、ブルーが隠し玉の七匹目にジョウトのポケモンを連れていたのやカンナがヤドキングの存在を示唆していたので。


よろいポケモン

 ポケモンの世界は、実在の地域をモチーフにしていることもあって、アキラから見ると元の世界を彷彿させる風景が幾つもある。

 

 その中で最も代表的なのが、彼の世界では富士山に酷似しているシロガネ山だ。

 この世界でもこの山は霊峰とされているが、連なる山脈に遮られた影響でカントー地方は他地方との交流が極端に少なかったとされている。

 

 その霊峰の麓から少し離れた場所に広がっている森に、アキラは訪れていた。目的は半年前に捕獲したサイドンを野生に帰すべく、シロガネ山近辺が適しているのかを調べに来たのだ。

 

 既にサイドンは暴れていた時の様な巨体とほのおタイプの性質を失っており、これ以上調べる必要は無くなってきていた。しかし、野生に帰そうにも一度は大きな被害を出したポケモン。元に戻ってからは過剰に攻撃的では無くなったが、それでもレベルや気性を考えると近辺に逃がす訳にはいかなかった。

 同時並行で引き取り手も探していたが、手懐けられそうなトレーナーは中々見つからない。

 

 その為、並みのトレーナーでは歯が立たない屈強なポケモンが多いとされるシロガネ山が帰化先の有力候補だった。本当ならシロガネ山の近くでは無くて麓付近に行きたかったが、流石に今の彼では実力的に危険なので立ち入り禁止区域に向かう許可は貰えなかった。だけど立ち入る許可が下りなくて良かったと、最低限人が通れる荒れた道をボールから出した手持ちと一緒に走りながらアキラは思っていた。

 

「にしても、しつこいな」

 

 後ろに目をやると歌声の様な鳴き声を上げながら、地面からモグラ叩きみたいに出たり引っ込めたりを繰り返すディグダとダグトリオの群れが彼らを追い掛けていた。この辺りでさえ血の気が多いポケモンが多いとは聞いていたが、顔を見るなりいきなり襲ってくるとは思っていなかった。

 撃退しても一匹倒せばディグダは二匹に増えて、二匹倒せばディグダは四匹に増えるだけでなくダグトリオが加わったりとキリが無かった。

 

 逃げる途中で一時退避に良さげな木を見つけたアキラは、急いでその木によじ登る。途中でブーバーに踏み台にされて滑り落ちたが、エレブーやサンドパンの助けを借りて何とか登り切る。

 

 ディグダとダグトリオは、自然を大切にするポケモンだ。

 木を盾にすると言うのは少し卑怯な手だが、これくらい良いだろう。

 読み通り、追い掛けて来たディグダとダグトリオの集団は、彼らが登った木の周りをグルグル回るだけでそれ以上は何もしてこなかった。

 

「さて、どうしようか」

 

 慌てていたので気付かなかったが、どうもディグダとダグトリオ達は戦いに飢えていると言う雰囲気では無い。具体的にどういう事なのかまではわからなかったが、とにかく彼らから逃げることが最優先だ。

 

「バーット、”テレポート”を頼む」

 

 どこに行くのかわからない問題点はあるが、ここはブーバーが持つ逃走手段に頼るしかない。やれやれと言った様子で、ブーバーはアキラの腕を掴むと他の面々が間接的に自分の体に触れていることを確認して、彼らは木の上から姿を消した。

 

 

 

 

 

 目論見通り、何とかアキラ達はディグダ・ダグトリオ達から逃れることは出来たが、”テレポート”による一時的な浮遊感の所為でブーバー以外は尻餅を付く形で着地する。

 

 ロケット団との戦いなどの経験から、彼は今後自分の手に負えない事態や命の危険に関わる状況に度々遭遇する可能性を考えていた。それらの事態から逃れるのと態勢を立て直す意図も含めて、アキラは逃走手段とそのパターンを幾つか考え、手持ちのポケモン達と一緒に練習していた。

 逃走の主軸であるブーバーを含めて、何匹かは敵に背を向ける練習をすることに気は進まなかったが、粘り強く逃げる必要性を説明して練習した甲斐があった。

 何回やっても”テレポート”の感覚には慣れないが、気が抜けていたアキラはズボンに付いた土を払いながら誰一人欠けていないかを確認して一安心する。

 

「よし、移動するか」

 

 ブーバーが使う”テレポート”は、場所まで指定することはできない。なので今自分達がいる場所が立ち入り禁止区域である恐れもある為、一刻も早く現在地を知る必要がある。

 アキラの呼び掛けにブーバーとサンドパンは応じるが、エレブーだけは何かを気にしているのか余所に顔を向けていた。

 

「どうしたエレット?」

 

 尋ねると、唐突にエレブーは森の中を指差す。

 指された森の先は、広がっている枝や葉で若干陽が遮られて薄暗い以外特に異変は見られない。

 一体何があるのかわからず、アキラとブーバーは顔を見合せて首を傾げるが、サンドパンだけはエレブーの意図を理解したのか彼の服の裾を引っ張って行くのを促す。

 

 エレブーだけなら、また何かトラブルの元があると考えてしまうが、サンドパンもとなると何かあるのだろう。万が一を考えてヤドン以外の残りの手持ちを出したアキラは、先頭を歩く二匹の後を追う形で慎重に森の茂みへ足を進める。

 枝が頬などの素肌を引っ掻かない様に進んでいくと、彼の鼻は匂いの変化に気付いた。

 

 植物の匂い以外に獣っぽい匂いに、嗅ぎ慣れた何かが爆発した時に出る煙によく似た匂い。最初に抱いたトラブルの予感がして立ち止まるが、それでもエレブーとサンドパンは先に進んでいく。

 

「仕方ない。どうせあれ以上のトラブルは無いんだろうし」

 

 万が一を考えてハクリュー達に戦う準備を促して、被っている帽子を整えたアキラはサンドパンとエレブーを先頭に歩いていく。

 

 嫌でも磨かれた第六感とも言える直感が森の奥に何かあることを告げてはいたが、構わず先を進んでいくと、息切れしているかの様な荒い呼吸音が聞こえてきた。漂う匂いを考えると負傷したポケモンがいるのだろう。付いて来る手持ちも事情を察して、皆真剣な目付きで極力音を出さない様にする。

 気配が強くなるにつれて見つからない様にアキラは体を屈めて、木の幹や茂みに身を隠しながら音の元を窺うが、その正体に瞠目する。

 

「――バンギラス…」

 

 茂みの隙間から見える木に背を預けて休息を取っているポケモンの姿に、アキラは半信半疑でその名を口にする。

 

 よろいポケモン、バンギラス。

 既に元の世界に居た頃の知識や記憶はかなり薄れているが、それでも彼がハッキリと憶えているポケモンの一体である。最近、カントー地方の隣にあるジョウト地方を中心にオーキド博士が発表した150種以外のポケモンが報告される様になって、ポケモン一覧の再編が進められている。

 まだバンギラスはその姿どころか名も広く知られていないが、アキラが知る限りではカイリューと同じく伝説に匹敵する力の持ち主と記憶しているポケモンだ。

 

 確かにシロガネ山は屈強なポケモンが多く生息しているが、こんな山奥とは言えない場所にバンギラスがいるとは思っていなかった。更に様子を窺うと、戦った後なのかサイドン以上に硬そうに見える体皮は煤や傷だらけである。

 苦しそうにしているので、持ち合わせているアイテムを使って治療などの手助けはやろうと思えば出来るが、手負いとはいえ相手はバンギラスだ。能力は間違いなく最強クラス、気性が荒いイメージもあるので下手に刺激をしたら大変な事になる。

 でも見捨てるのも良心が痛むのでどうしたら良いのか悩んでいたら、隠れていたサンドパンが茂みから出てバンギラスに姿を現した。

 

「ちょ! 何をやって――」

 

 止めようとアキラは飛び出し掛けたが、エレブーとゲンガー、ブーバーに潰される形で取り押さえられる。後ろの騒ぎと目の前から飛んでくる唸り声と鋭い眼光を気にせず、サンドパンは堂々と身振り手振りで敵意が無いことをアピールする。

 サンドパンはアキラの手持ちの中では、そこまで秀でた強さを持たないが、誠実さなら一番だ。

 

 バンギラスは今にも襲い掛かりそうな空気を滲ませるが、サンドパンは仰向けに寝転がって無防備な姿を見せる。流石にそこまでやると敵意が無いことを理解したのか、よろいポケモンは態度を軟化させる。少し立ち上がっていた体を下ろして再び木に腰掛けたのを確認すると、サンドパンは茂みに隠れている面々に来て良い合図を出す。

 

「出て良いのかな?」

 

 取り押さえられていたアキラは合図に応じて茂みから出ようとするが、ブーバーに後頭部を軽く殴られて黙らされた。痛みに悶絶している間に、ゲンガーは彼が背負っているリュックの中を物色して、”すごいキズぐすり”と”なんでもなおし”を持って茂みから出る。

 

 持ち出した道具と様子を見る限りでは、どうやら彼らは目の前にいるバンギラスを治療するつもりらしい。自分が出ずにポケモン達だけでやるつもりなのを見ると、バンギラスに人間である自分の姿を見せたくないのだろう。

 

「でも使えるのか?」

 

 アキラは自分の手持ち、特にゲンガーが賢いのは良く知っている。

 だけど人間の使うちょっと構造が複雑な道具をポケモンが使えるのか気になった。

 しかし、彼の心配は杞憂だったらしくゲンガーはスプレーの出し方を知っていた。バンギラスの了承を得ていざ治療を開始しようとした直前、何かに気付いたのかゲンガーは手を止める。

 

「……どうしたんだ?」

 

 何か気になることでもあったのか、考える素振りを見せるとサンドパンと言葉を交わして二匹は隠れている茂みに目を向ける。

 ゲンガーが手招きする様に手を振ると、アキラに圧し掛かっていた重みが消える。ようやく自分の出番かと思いきや、ハクリューの尻尾に叩き飛ばされる形で茂みからアキラは飛び出す。

 

「ギエプッ!」

 

 地面に顎をぶつけて変な声が漏れるが、突然の人間の登場にバンギラスは庇う様に体を横に向けて再び警戒する。すぐにアキラは弁解するべく立ち上がったが、その前にハクリューの長い体が巻き付いてきた。

 

「あれ?」

 

 そこまで力は込められていなかったが、体を包み込む様に巻き付かせているので身動きが全く取れない。加えてブーバーも、背負っていた”ふといホネ”を手にして首元に突き付けてきた。

 何が何だか訳が分からなかったが、サンドパンがバンギラスにしている身振り手振りの説明で何となく事情を察する。人間に警戒心を抱いていると思われるバンギラスを納得させる為に、彼らはこういう行動を取っているのだろう。

 しかし――

 

「なぁ、何時になく俺の扱い酷くない?」

 

 手持ちからポケモントレーナーとは思えない程ぞんざいに扱われることには慣れているが、今回は何時も以上に酷い。

 アキラの疑問に、彼を取り押さえているハクリューとブーバーは揃って「何を言っているんだこいつ」的な呆れ混じりの表情を浮かべる。

 挙句には、何故かゲンガーが残ったモンスターボールからヤドンを勝手に出す始末。救いがあるとしたら苦笑しながらサンドパンとエレブーの二匹が、両手を合わせて謝っていることくらいだ。

 

「はぁ…もう如何にでもなれ」

 

 こういう時は余計な事は考えたり悩んだりはせず、激流に身を任せた方が良い。

 取り敢えず自分が必要になった理由を尋ねると、使い方はわかってもバンギラスのどこにやればいいのかわからなかったかららしい。

 

「目に見えて怪我している箇所に噴き掛けるだけで良い。後、これだけの傷だと結構沁みることも伝えた方が良いよ」

 

 確かに手持ちには色々酷い扱いをされるが、伊達に彼らを二年近く率いていない。

 すぐにアキラは頭を切り替えて、指示を乞うゲンガーに適切な箇所がどこなのか伝える。アキラのアドバイスにゲンガーは頷き、いざ”すごいキズぐすり”を噴き掛けようと言うタイミングでまた手を止めた。

 

「どうしたスット?」

 

 尋ねるとゲンガーは困った顔を見せる。

 何を困っているのかわからなかったが、アキラはバンギラスの姿勢が少し前のめりになっていることに気付いた。苦しいからそうなっているのかと思ったが、両腕で何かを抱えているらしい。

 このままでは治療の妨げになるし、大事な物だとしたら傷に沁みる時の拍子で傷を付けてしまう可能性がある。

 

「サンット、バンギラスに抱えている物を一旦手放す様に説得してくれないか?」

 

 サンドパンもその辺りを理解していたのか、すぐに動く。

 しかし、余程手放すのは嫌なのか、バンギラスは何かを抱えている姿勢を崩さなかった。長期化すると思われたが、サンドパンの粘り強い説得にバンギラスは応じて渋々両手で大事にそうに抱えていた物を見せるとアキラは目を疑った。

 

 それはタマゴだった。

 

 タマゴ、つまりポケモンのタマゴ。

 この場合だとあれはバンギラスのタマゴ、そこまで思考を繋げていくと確かに大事なものであることをアキラは理解する。成程、サンドパン達はバンギラスが何を持っているのかわかっていたからこそ、自分をこうまで酷く扱って危害を加えないアピールをする必要があったのだろう。

 バンギラスが抱えていたタマゴをエレブーが両手で慎重に受け取るが、バンギラスの手から離れた直後、急に足元がおぼつかなくなった。

 

 動きから見て、バンギラスのタマゴがかなり重いのが原因らしい。普段のエレブーのおっちょこちょいな姿を知っているだけに、アキラと他の手持ちは顔を青ざめさせたり全身の毛を逆立たせたが、エレブーは無理に立つのではなくて座り込むことで無事に解決した。

 最悪の展開を避けられて、彼らは安堵の息を吐く。

 

 エレブーとサンドパンが一緒にタマゴの面倒を見ている間に、ようやくゲンガーはバンギラスの治療を始める。焦げた箇所に薬液を噴き掛けると、傷が沁みるのかバンギラスは呻き声を漏らすが、目に見えて傷は治っていく。”すごいキズぐすり”では如何にもならない傷も、”なんでもなおし”の薬液を噴き掛ければあっという間だ。

 

 治療はしばらく続くが、一通り体中に薬液を浴びせたゲンガーはバンギラスから離れ、よろいポケモンは立ち上がって体の調子を確認する。

 動きから見てどうやら問題は無さそうで、よろいポケモンはさっきまでとは一転して穏やかな表情を見せる。もう必要は無いと判断したのか、ハクリューとブーバーはアキラを解放するが、その直後にバンギラスは治療する薬を提供したことに感謝しているのか彼を抱き締めてきた。

 

「ちょ、気持ちはありがたいけど力が――痛い痛い痛い!!!」

 

 力が強過ぎて、アキラはバンギラスの抱擁に悶絶する。

 久し振りに骨にヒビが入る危機が頭を過ぎると同時に放して貰ったが、体に力が入らなくてフラフラしてしまう。

 

 そんな時だった。

 

 エレブーが預かっていたタマゴが、急に光を帯びて膨らみ始めたのだ。

 異変に気付いたサンドパンは、すぐに仲間とバンギラスにそのことを知らせる。

 

「え? 生まれそうなの?」

 

 タマゴの様子にアキラは驚き、エレブーも慌ててタマゴをバンギラスに返そうとするが、重過ぎるのとタマゴの揺れが激しくなってきた所為で中々実行できない。

 それでも何とか立ち上がるが、やはりタマゴが重過ぎるのか足元がフラつく。

 

「ちょ! 危ない!」

 

 バランスを崩し掛けたエレブーをアキラはサンドパンと一緒に支えようとするが、予想以上の重さに支え切れず後ろに倒れ込んでしまう。

 エレブーとタマゴの重みが下敷きになった彼らに圧し掛かるが、タマゴは無事に守り抜く。バンギラスの方も最初はタマゴを手に取ろうとしたが、様子から見て変なことはせずにそのまま見守る事にした。

 

 七匹と一人が見守っている状況で、淡い光を放ちながら小刻みに揺れるタマゴにヒビが入ると、あっという間に割れて中から小さなポケモンが顔を出した。

 

 バンギラスの進化前であるヨーギラスだ。

 

 生まれたばかりであることも関わっているのか、タマゴを割って出てきたヨーギラスはまだ目を閉じたままだ。その姿にブーバーとゲンガーは、今にもぶつかりそうなまでヨーギラスに顔を近付けるが、ヤドンが発揮した”ねんりき”で二匹は弾丸の様なスピードで後ろに吹き飛ばされた。

 そして誕生したいわはだポケモンは、ゆっくりと閉じられていた目を開いた。

 

 動きを確かめる様に、ヨーギラスは可愛らしく目を何回も瞬かせると周囲を見渡す。

 生まれたばかりなのもあって、まだ状況がよくわかっていないのか、それとも誰が親なのか探しているのだろう。首を静かに動かしていたヨーギラスの目は、今自分が乗っているお腹の主であるエレブー、順にまだ下敷きになっているアキラとサンドパンに向けられる。

 

「は…初めまして」

 

 恐る恐る伝えるが、ヨーギラスは首を傾げるだけだ。

 一通り見渡したのか、次にヨーギラスは足に力を入れて震えながら立ち上がった。見ていて危なっかしいかったが、どうやら本能的に親がわかっているのかゆっくりとバンギラスに歩み寄ろうとする。

 途中で転びそうだったので、親のバンギラスがヨーギラスを持ち上げると圧し掛かっていた重みが幾分か軽くなり、アキラとサンドパンは這う様にエレブーの下から抜け出す。

 

「写真…どうしようかな」

 

 立ち上がったアキラは、親子の対面を喜んでいる二匹の姿を見て迷う。

 紫色の霧絡み以外にも新種のポケモンを発見した時、写真と言う形で証拠を残すべくアキラはカメラをヒラタ博士から持たされている。今の二匹はあまり明かされていないポケモンの親子関係を示す構図としては最高だが、勝手に撮っても良いものか。

 

 空気を読まずに二匹に声を掛けようとした直後、この世界に来てから研ぎ澄まされてきたアキラの直感的な危機察知能力が何かを感じ取った。

 彼の変化にハクリューがいち早く気付くが、遅かった。

 

 彼らの頭上から網の様なものが、突如覆い被さったのだ。

 

「っ! なんだこりゃ!?」

 

 四方に重りが付いているのと網の質的にも人工物なのは明白だ。

 抜け出そうと何匹か暴れるかと思ったが、バンギラスも含めて皆鬱陶しそうにしてはいたが抜け出そうと暴れる様子は無かった。意外にも周りが静かだったので、冷静に今の現状を整理しようとした時、薄暗い森の中から人が姿を見せた。

 

「ニドクインもどきを追い掛けていたが、他にも珍しいポケモンも捕まえられたな」

「ハクリューにブーバー、エレブー。どれも珍しいな」

 

 見るからに悪そうな人相をした中年に近そうな風貌の男二人。正体は不明だが、口にした台詞などからアキラはバンギラスがボロボロな理由を含めて彼らが密猟者なのを察する。

 

 二年前にロケット団が潰れた後、押収した資料から取引をしたと思われる密猟者や関係者の多くを捕まえたと言う話は聞いていたが、まだ残っていたのだろう。或いは、ここ最近活動し始めた可能性も十分に考えられる。

 強いポケモンや珍しいポケモンは高値で売買できることは勿論、手持ちが強ければ警察などの追手から逃れることも容易いからだ。

 

「でもトレーナーがいるのは邪魔だな」

「女なら良かったが野郎じゃな。口封じにどこかに埋めるか?」

 

 何やら恐ろしいことを話しているが、それよりもアキラは手持ちの雰囲気が殺気立ってきている方が気になった。テレビの影響で余計な正義感が身に付いたこともあるが、元々彼らは性格上こういう輩を嫌う傾向がある。

 しかし、状況的にこちらが不利なので下手に戦いを挑む訳にはいかない。

 

「バーット、”テレポート”を頼む」

 

 ここから抜け出すことも兼ねてそう命じると、ポケモン達は皆直接触れたり間接的に触れたりする形でブーバーに触れる。

 バンギラス親子もエレブーとサンドパンが触れていたので、皆が繋がっていることを確認したブーバーは若干不服そうではあったが念の力を発揮すると、彼らは密猟者達の前から姿を消した。




アキラ、シロガネ山でバンギラスとそれを狙う密猟者に遭遇する。

二年も一緒に過ごしているのに相変わらずアキラは手持ちに雑に扱われていますが、彼が許容している様に今後も程度はあれど、彼らの関係はこんな感じです。
作中で書いてある様に、アキラはバトルに勝つのは勿論ですが万が一を想定して逃走する手段を色々と練っています。

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